第71話 彼方から蝶は舞う
『九条!』
「はい!」
御影先生の掛け声と共に赫蝶を纏い、インパクトブーストで一気にワームとの距離を離す。
案の定というより予想通り、俺を狙って飛んできている。
『春斗、御影先生は何を狙っているのでしょうか?』
「いや簡単だ。アイツは俺しか狙わないかつ弱点は口元だ、しかも…」
椿の質問に答えつつ、後ろを振り向くとワームは口を開けっ放しで俺に向かってきている。
「今だと常時弱点を露出してるだろ?」
『なるほど、引き付けはこのために…それで今はどこに向かっているんですか?』
「さっきの第3アリーナ。座標情報と柊木先生の位置を見るにそこに柊木先生を含めた先生たちが待機してると思う」
御影先生の掛け声の後に位置情報が送られていた。
その辺の指示が俺に出せなかったのは御影先生が柊木先生を含めた先生たちの指示に当たるためだと思う。
決め切るとするなら、瞬間火力と弾幕の暴力しかない。
『九条、向かっているな』
「はい」
『こちらからも既に確認できている、それとこちらの準備は完了した』
「分かりました、それで俺はどうすれば?」
『…正直、これを生徒に命じたくないが撃たれる弾丸を避け切り、途中で離脱しろ』
「了解です」
作戦は理解した。
俺を狙っているこいつはずっと口を開けたままだ、となれば弱点であろう中への攻撃は容易い。
勿論、俺も狙えば良いが総合火力を見ても先生たちに撃ってもらった方が倒しやすい。
それなら俺を囮にして弾を撃ちまくればいいってことだ。
…この際、もう倒せるなら何でもいい。
『九条君、準備は良いですね』
「ふぅ…はい!」
『よし、一斉射撃開始!!』
その声とともに下から大量の弾丸が飛び交ってくる。
『私もサポートします!』
「助かる!」
下から放たれる弾丸を交わしつつ、後ろを見て様子をうかがう。
「ゴォォォォォォ!!??!」
明らかに効いてる。爆風と共に緑色の液体が吹き出ていて、明らかに再生できていない。
やれる、倒せるぞ!
『九条、離脱しろ!!』
下を向くと…青い炎が御影先生の右手に集中している。
俺も本能的に理解できる。あの攻撃はやばい!!
すぐさま赫蝶を身体の中に戻して弾幕から外れるようにインパクトブーストで離脱する。
それと同時に…。
『消え失せろッ!!!』
青い炎に包まれた槍が放たれ、ワームの口の中に入り…青い炎は身体を焼き尽くし、槍はワームの胴体を貫通して空へ飛び出した。
「すげぇ…!」
惚れ惚れする火力と槍投げの正確さ。
口は大きく当てやすいかもしれないが、俺がさっきまでいた空中と御影先生の居る地上はかなり離れていた。寸分のズレすら許されないであろう投擲を正確に捕え、放った。
凄い、その一言に尽きる。
「ォォォォォ…」
身体を貫かれ、弱点部位であろう内部は焼き尽くされたせいかワームは力なく地面に落下していき…第3アリーナにぶつかりながら、完全に止まった。
「…やったか?」
地面に降り立つ。
「恐らくな」
槍を回収した御影先生がいつの間にか俺の隣にいた。
「助かりました、ありがとうございます」
「助かったのはこっちのセリフだ。それと…すまなかったな、無理をさせて」
「いいんです、もう倒せれば何でもよかったので」
「…ですが!」
とその話の静寂を撃ち破ったのは柊木先生。
「九条君、最初に自分から進んで囮になろうとした事を私は許していませんからね!」
「は、はい…」
「はぁ…本当に生きた心地がしませんでしたよ」
「本当にごめんさない」
とりあえず、これでワームは終わり
ーーパキッ
「ん?」
何処からか割れる音が聞こえてきた。
…嫌な予感がする。
そう思ったと同時に俺の身体は気がつけば宙を待っていた。
(…は?)
「ツばキィィィィィィ!!!」
緑色の何かが俺の目の前にいる。
よく見ると緑色の蝶が人の形を成して、俺を掴み何処かに向かって押していっている。
「がはっ!?」
反応が遅れた…!?
俺の首と左腕を掴みながら飛ぶ。俺も負けじと焔で逆方向目掛けてインパクトブーストしようとしたが…タイミングが悪かった。
(パワーエネルギーがもう無いのか!?)
先程のワームで使い切っていたみたいだ。
最悪だ…!
やがて俺を盾にするかのように地面に向かって叩きつけ、モグラのように地面を進んでいく。
そして…。
ーーバゴォン!!
「ぐっ!?」
「は、春斗!?」
とある場所に出る。そこには生徒やみんなが居た。
やばいみんながいる!?
コイツ、まさかみんなの位置を知って俺をここに運んだ!?
「つバキィィィィィィ!!!」
「があぁぁぁぁぁぁぁ!!!?」
俺を地面に押さえつけ、左腕からメキメキと異音が鳴り響く。
コイツが掴んでいる部位から鳴っている、俺の腕を握りつぶす気かよ…!
クソ、ピクリとも動けねぇ!
『春斗!脱出を!』
「む…りだ、抵抗…出来ねぇ!」
『そんな…!』
「がはっ…」
やばい、意識が…!呼吸がままならない…。
チラッと左腕を見ると明らかに変形していて、緑色の塵みたいなものが左腕に付着していっている。
「ク…ソ」
右腕をその何かに伸ばすが、俺の意識は持たず。
ーー視界が真っ黒になった。
ーーー
(このままじゃ、春斗が…!)
気絶してもなお、この緑色の何かは春斗の左腕を握り潰そうとしている。
「春斗から離れろぉぉぉ!!」
「離れてっ!!」
葵さんと水津さんがAGを起動し、切りかかろうとするが。
「キャアァァァァァァァァァ!!!」
「ぐっ!?」
「ううっ…!?」
耳が痛くなるような金切り声が響き渡り、耳を塞いで座り込んでしまう。
このままじゃ、本当に春斗が死んでしまう。
(…?)
一瞬、頭の中にノイズのようなものが走る。
『…ツばキおネエちャン』
ツギハギだった何かが思い出され、聞こえてくる。
『椿お姉ちゃん』
「貴方は…」
浮かぶ姿。
あの時、地下の駐車場で見た時のあの青葉と言う少女に似ている少女が目の前に映る。
『椿お姉ちゃん!嫌だ!行かないでよ…!!』
『ーーー』
『いや…!お願い行かないで!』
その少女は顔にモヤがかかっている少女にすがるかのようにしがみついている。
何を話しているが聞こえない。
『ーーー』
『…椿、お姉ちゃん』
『ーーー』
そしてその少女は青葉に似ている子を抱きしめて…赤い塵となって消えた。
何故だろう、凄く身に覚えがあるのに思い出せない。
でもなんでこんなにも胸が苦しいんだろう。
「…」
春斗、私を唯一受け入れてくれた人。
この人は失っちゃダメ。
絶対に…!
ーー守る!
ーーー
誰も襲われている春斗に近づけず、ただ怯む事しか出来ない。
そこに御影先生、柊木先生を含めた先生たちが到着するがどうしようもない。
撃ちたくても春斗に着弾する可能性もある、だからこそ撃てない。
ーーキィィィィィィンッ…!
何処からか起動音が聞こえてきて、その音が徐々に大きくなっていき…!
ーーバゴォーン!!
「ゼ、ゼフィルス!?」
壁を突き破って来たのは、倒したはずのゼフィルス。
元々、危険性を見てIGD学園の地下に幽閉していたはずの機体が何故か今このタイミングで急に動き始めた。
そして、ゼフィルスはレーザーブレードを構えて春斗を目掛けて振り下ろしたように見えたが、狙いは春斗ではなく、あの緑色の何か。
「何…!?」
緑色の何かが距離を離したと同時にゼフィルスは春斗を抱えて、ディザスターを構えて何かに向けた。
まるで春斗を守るかのような動きをしている。
「ツバきぃぃぃぃぃぃぃ!!」
緑色の何かは雄叫びをあげながらゼフィルスに襲いかかるが…レーザーを放たれて、緑色の何かは塵となって消えていった…。
「ゼフィルス…」
対象が倒れたのは良いが、別の疑問が湧き始めた。
何故、倒したはずのゼフィルスが動き始めたのか。
何故、春斗を守るような動きをしたのか。
でも、春斗が人質に取られる可能性を見て御影先生は槍を構えるがゼフィルスはそれに気が付き春斗を床に降ろして距離を取った。
「春斗!」
葵が近寄り、春斗の様子を確認する。
その間に入り込むように御影先生と柊木先生が入るが…ゼフィルスは停止している。
「…ゼフィルス機能停止しています」
「何なんだこの機体は」
誤字脱字、語彙力がほぼ皆無に等しいのでミス等がありましたらご報告お願いします
感想も待っていますので気軽にどうぞ!
超絶不定期更新ですがご了承ください…




