第63話 変わり行く
橙色の装甲と炎を纏い、鴉と共に空へ舞う。
鴉の刃の羽とぶつかり合いながら夕焼けに照らされた空の下、火花を散らし合いながら互いにぶつかる。
「キィィィ!」
「くっ…!」
攻撃し合うが幾分かは鴉の方が上だ。流石、空に住むものは戦い方を知ってるってことか。
だが俺も負けてはいない。地上で過ごしてきたが、空の戦い方にも慣れた。
距離を取ってからいきなり加速し、俺に向かって刃翼切り裂こうとしてきたところを空中で身体を捻り、躱しながら逆にこちらが翼を切り裂いたがその傷は瞬く間に再生していった。
「再生するのか、何なんだアイツ…」
『こちらも色々調べていますがデータが』
「…そりゃそうだよな」
もしコイツが機械だとしても俺はこんな機械を見たことがなければ聞いたこともない。
今でもAIが発達し、機械もそれに伴って進化していったがやはり人間との協力関係は切っても切れない。
損傷やバグ、人間にとって怪我やウィルスのようなものは機械自身や機械同士で治すことは出来ない、というより不可能。機械は人間と違って感染しやすく、機械単体の修繕では何かしらの不具合が出やすい。
そこに人間の手が入るのだが…コイツは自分自身で再生し、自分自身で治している。
今までの機械やAIの中でもかなり逸脱した存在。
それが…今、この町に6体も出現したんだ。
はっきり言おう、偶然じゃすまされない。
誰かしらの計画的犯行、あるいはテロ行為だと俺は思っている。
空中で鴉と見合う。
「分からないかもしれないが…お前、何者だ」
「…」
バッサバッサと音を鳴らしながら飛んでいる鴉。その嘴からは何も告げられない。
「目的はなんだ、何故襲ってきたんだ?」
「…」
「…だんまりか。まぁ期待はしてなかったが」
篝火を構える。
さて、問題はコイツをどうするかだ。
今のところコイツらの特性は『再生』、傷を付けても回復する。
頭部を切り離しても直ぐにとはいかないが再生していたしな、あの狼が。
そうなってくると明確な弱点は存在しない。なら再生するより先に傷を付け続ければいいかもしれないが…そう簡単な話じゃない。
ジェット機くらいの速さで飛び回る大鳥をずっと斬り続けるなんてことは至難の業だ、限度がある。
どうするか…。
『春斗、1つ案があります』
打開案を見いだせないかと考え込んでいたら椿から声が聞こえてきた。
「何だ」
『心臓を狙うのは如何ですか?』
「心臓?」
『はい、AGにも心臓のようなギアというものが存在しますし目の前の鴉にもそういう部位があってもおかしくありません』
「…なるほどな」
ありとあらゆる物には心臓や動力源になる何かが存在するはず。
それを見越してこの鴉にも何かしらの動力源あると椿は踏んだのだろう。
かなりあり得る。
「分かった、狙ってみよう」
狙うはあの鴉の心臓部分ということで決まったのは良いが…どうする?
どうやってそこに攻撃を仕掛けるか…。
刃翼を躱したところで攻撃しようと思ったころには俺は鴉の背後に回ってるしな。
「あっ」
1つ浮かんだ。コイツを倒すためにはこれしかないだろう。
思い立ったが吉日、俺は篝火を納刀し暁光来光を発動した。
装甲が変形し放熱機関が露出、ウィングがレッグアーマーに装着しレッグダガーと両腕の装甲からレーザークローが展開された。
『春斗…?』
「うおぉぉぉぉぉ!!!」
正面から鴉に向かって飛ぶ。
それに反応した鴉も正面から俺に向かってきた。
もちろん、俺はこの攻撃を待っていた。
その刃翼を躱す…のではなく。
ーーーガシッ!
受け止めた。
『春斗!?』
完全に受け止めることは出来ず後ろに押されているような形にはなっているがこれでいい。
その刃翼に押されながら俺は鴉の胴体に移り、攻撃を仕掛ける。
ダガーとクローをただひたすらに突き刺し続ける、いくら俺に緑色の体液がかかろうが知ったことか。
「キィィィィ!!!」
「ぐおっ!?」
流石に効いたのか鴉のスピードが落ちてきて空中で身悶えし落ち始めた。
そこから離れない様に鴉の胴体にしがみ付きまた突き刺し始める。
すると
「ワオォォン!!」
「何ッ!?」
鴉と共に地面に落ち切る前に再生した狼が飛びかかってきて俺の胴体に噛みつき地面に投げつけた。
「…いっつつ」
起き上がる。
俺の目の前には弱弱しく立ち上がる鴉とそれを守るかのように立ちふさがる狼がいた。
「…ぺっ」
口の中に広がった鉄の味がする液体を吐き出す。
シールドエネルギーは無し。ヘルスとパワーがまだあるくらいか。
今更肉体のダメージくらいどうでもいい。
「…」
「グルルル…!」
構える。
ここで負けてられねぇんだよ…!!
「うぉぉぉぉぉ!!」
◇◇◇
…私は今何を見ているのでしょうか。
『ワオッ!!』
『くっ!!』
目の前に広がるダガーと爪をぶつけ合う春斗と狼。
いつも見た景色のはずなのに、1つ思う。
九条春斗という人間が『変わりつつ』あることを。
この人は元はただの一般人。でも他の人と違うことがあるとするならばAGを使え、人体の右側がナノマシンのAnotherで補強されているくらい。
でも心は人間そのもの。
なのに、今の彼が『人間に見えない』。
身体がいくら傷つこうとも気にしない、自分自身の人生を投げ出しても気にしない。
死ぬかもしれないのに気にしない。
私は思うのです。
彼は、『死』が怖くないのかと。
人間、誰しもが恐怖心を持ちます。特に死への恐怖は。
軍隊に所属する者や戦う者たちには多少なりと死への恐怖が抑えられるかもしれませんが…目の前の彼は一般人。
しかも決意もなく戦場に降り立ってからまだ一年もたっていないのにここまで変わるモノなんですか。
何故か…懐かしく思います。
まるで昔の私を見ているかのような…。
◇◇◇
あれからどれくらいの時間がたったのか分からない。
とにかく春斗は腕を、足を、全身を動かし続けた。
その最中、撤退という単語が聞こえた気がするが気のせいだろうと思いながら戦い続けた。
「だぁァァァ!!!」
削り切った狼の心臓部を目掛けてダガーを突き刺す。
奥に奥に、深々に。
「ア…オ…」
その口元から弱弱しい掠れた声が聞こえたと同時にドシンと音を立てて狼は倒れた。
「…」
気が付けば鴉の方も弱弱しく倒れていたが何も口ずさむこともなく静かに眠っていた。
「…」
終わった。
オワッタ。
おわった。
「がはっ!!!?」
ーードサッ。
口から大量の血が吐き出て春斗は狼と鴉と同じように地面に倒れた。
『春斗ッ!!!』
木霊する椿の叫び。それでも反応しない春斗の身体。
そこへ。
『!?』
倒れた狼と鴉の中から緑色の蝶が一匹現れ春斗の左腕に止まり、塵となって消えた。
誤字脱字、語彙力がほぼ皆無に等しいのでミス等がありましたらご報告お願いします
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