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インフィニティ・ギア  作者: 雨乃時雨
第三部
61/122

第59話 帰還者

第三部に入りました。

この部が最後になりますので『インフィニティ・ギア』の終わりが近づいてきていると作者もひしひしと感じている所存です。

今のところ終わりとは程遠いですが楽しんでください。

では本文へどうぞ~。

「それじゃあ、またしばらく帰ってこないけど行ってきます」

「うん、気を付けて行ってらっしゃい」

「いつでも帰ってきていいからな」

「あぁ」


爺さんと婆さんに挨拶し、車を降りて電車に乗り込む。俺が降りる駅はIGD学園へ向かうモノレールがある駅。

なんやかんやあって家族旅行は普通に終わった。何時ぞやの混浴事件は何事もなかったかのように終わり…いや何事しかなかったけど。

翌日に爺さんと婆さんと共に帰宅し、IGD学園に戻るための準備を進め、戻るべき今日が来た。


『やっと戻れますね』

「そうだな、というより棚から牡丹餅だけどな。偶然、京都に俺が居ただけだし」

『これは、俗にいう運命というものでは?』

「…かもね」


携帯電話をいじりながら時間をつぶしていく。

その間、電車内のモニターに目を移すとニュース速報で俺のことが言われていた。

…京都の事件を防ぎ、皆を守るために動いた人として。

そんな大層な事をやったつもりはない。偶然、チャンスが俺に転がってきただけだしな。

それと、俺は本当の意味で世間に認められた。俺は人間じゃない。赫蝶を宿し、肉体の半分はナノマシンAnotherによって補強されている。

でも、俺は認められた。人としての生活が許された。今日からは胸を張って外に出れる。


『そういえば春斗』

「うん?」

『学園についたら何をしますか?』

「まずは職員室、再入学の書類とかやらないといけないしね」

『なるほど…先生方は帰還者を祝うのでしょうか』

「そんなわけあるか」


赫蝶と話している間に電車は俺が降りるべき駅につき、電車から降りてIGD学園へ行くモノレールに乗り込む。


「あ、君。男子はこれに乗っちゃ…って九条春斗!?」

「こんにちは、えっと一応学生証です」

「ほ、本物だ…ごめんなさい、失礼なことを」

「いいんですよ」


この感じ、少し懐かしいな。てか俺の存在自体、割とイレギュラーだったこと忘れてた。

モノレールの席に座り外を眺める。

まだ昼頃だし、日も高い位置にある。ただこのモノレールには俺しか乗っていない。

そりゃそうだ、今学生たちは学業に励んでるしね。


『春斗はいつもこうやって登校していたんですか?』

「いいや?寮で生活してたし、何か買い物とかするときだけモノレールを利用してた。確かアナスタシアとテーマパークに行ったときに使ったぞ?」

『…多分、寝てました』

「あー…じゃあしょうがない」


会話している間にモノレールは動き出し、IGD学園へと向かう。


「そういえば俺も赫蝶に聞きたいことがあったんだが、いいか?」

『どうしました?』

「今、俺の身体の中には赫蝶が凄い量いるだろ?赫蝶同士で繁殖しないのなら数には限りがあるはずだ。あとどれくらいの赫蝶が野に放たれているのかなって」

『どうでしょう…でも殆どは春斗の身体の中にいますし、精々1000匹くらいじゃありませんか?』

「け、結構いるな。てか、俺の身体の中には何匹いるんだ?」

『8000後半くらいいますね』

「ヤバすぎるだろ」


一瞬、蝶が8000匹集まった状態を想像してしまった。

うーん…集合体恐怖症とか虫が苦手な人とかが見れば泡を吹いて気絶しそう。


「でも、集まっていく度に赫蝶も赫蝶で進化していっている気がする」

『私も感じていますよ。今なら感情とかありますし…ただ記憶は曖昧で』

「まぁその辺も追々取り戻せるさ」

『あ、1つ出来るようになったことがありますよ?』

「急だな、どんなこと?」


すると、俺の身体から赫蝶たちが飛び出していく。

しかし魔剣や複製の時よりも更に多い量の赫蝶が俺の身体から飛び出して行き、形を形成していく。

形成された形は人間に近く…いや人間そのものだった。


「お、おぉぉぉ…?」

「…どうやらこれが限界みたいです」


赫蝶たちは人を作り上げた。俺が赤い彼岸花の花畑で見た少女が成長したような見た目をしていた。

しかし、足が無い。幽霊のような感じでふよふよと浮いている。


「どうですか春斗、これが私…らしいです」

「らしい?」

「記憶の中にある私の人物像と言えばいいのでしょうか?その記憶を出来る限り再現した結果がこれです」

「そうか…凄く綺麗だ」

「そ、そうですか」


サラッとした長い白髪の髪の毛に深紅の瞳、そして純白の肌。

なんかアートみたいだな。


「ってそろそろ着くな」


キャリーバッグとリュックを背負って降車の準備をする。


「何か持ちましょうか?」

「…持てるのか?」

「何気に失礼ですね」

「い、いやそういうつもりじゃなくて…幽霊っぽいしどうなんだろうって」

「試してみます?」


そんなわけで俺がさっきまで飲んでいた水のペットボトルを赫蝶に渡す。

赫蝶の白い手がペットボトルに添えられたが床に落下した。


「この身体では握力が無いみたいです」

「そうなのか?」

「恐らく肉体の生成に全ての赫蝶を使っているので中身が空っぽ何だと思います」

「なるほどねぇ、てかしれっと口で喋ってたな」

「中身がないとはいえ声帯くらいはありますよ」

「そこまで強く言ってないぞ俺は…」


落ちたペットボトルを拾い、扉が開いたのでモノレールから降りる。


「向かうか」

「そうですね」


ーーー


IGD学園の正門をくぐり職員室に向けて歩く。

何気に門番の人が変わっていた。


「おぉ、ここがIGD学園」

「知ってるだろ?」

「えぇ、ですが自身の目で見るのは初めてなので」


そういえばそうだった。今は俺の身体から出ているがいつもは俺の身体の中に居たから自身の目で景色を見るのは初めてか。


「これからどんな景色を見れるようになるのでしょうか」

「本当に様々だろうな」

「楽しみです」

「あとさ、大丈夫なのか?」

「何がですか?」

「赫蝶は俺の活力を糧として動いていたんだろう?今は俺の身体から離れているし…」

「これくらいの距離なら大丈夫です」

「ならいいけど。でもさ、手をつなぐ必要あるか?」

「ありますよ、女心が分かっていませんね」


よく言われた事を赫蝶に言われた。

相棒にすら女心が分かってないって言われるのか俺は。


「それと…何て呼べばいいんだ?」

「急にどうしました?」

「いや…思えばずっと赫蝶赫蝶って呼んでたけどさ。俺の中にいるのも『赫蝶』だし、まだ野に放たれてるのも『赫蝶』でごちゃごちゃにならない?」

「思えばそうですね、では」


「『椿つばき』…と?」

「椿?」

「いえ…何故か私は椿と呼んで欲しい気がして」

「ふーん?なら椿と呼ぶことにする。もしかしたら何か思い出すかもしれないしね」

「わ、分かりました」


とりあえず俺の中に居る赫蝶たちは改めて『椿』と呼ぶことにした。

うん、呼びやすいし分かりやすいと個人的に思いつつ椿の過去について考える。

少なくとも俺が前に見たあの研究施設に捕えられていた少女。

あの子が今の椿だと仮定したが多分違う。纏っていた蝶が緑色だったからな。

予想になるけど緑の蝶を纏っていた子が守れなかったのはこの椿の事じゃないかって思っている。

それを決定的にする何かは無いけどね。

と、いつの間にか職員室まで来ていたな、コンコンと扉をノックする。


「…?」


返事がない?ノックの音が小さすぎたのかと思い少し力を入れて再度ノック。

…返事なし、てか中に人がいる気がしない。


「居ないのか?」

「…入ってみます?もしかしたら、なんてこともあり得ますし」

「そうだな」


入室の許可は得てないが扉に手をかけて少し開け、中の様子を確認する。

隙間から中を見ても誰も居ない、そんなことあるのか?

扉を開けて職員室に入室。


「誰も居ない…おかしいな、時間も合っているはずだし」

「様々なコンソールにアクセスしてみます」

「了解、俺は置手紙とかないか探してみる」


そうして椿と役割分担し職員室の中をくまなく探すが、これと言って収穫無し。


「置手紙もない、本当にどこ行ったんだ?」

「こちらもこれと言って情報はありませんでした」

「…うーん」


こうなったら直接教室に乗り込むか?誰も居ないし。


「春斗?」

「流石に職員室に誰も居ないなら直接教室に乗り込む事にする。『教室には絶対に来るなメンドクサイことになる』って御影先生から言われたけど流石に異常事態だからな」

「賛成です、それと一応武装しておきましょう」

「…そうだな」


タービュランスの時にテンペスタから貰った対AG用強化スーツを身に着ける。

俺が元々使っていた神去と対AG用強化スーツと焔は残念ながら手元にはない。強化スーツと神去はまだ返されていないし、焔は修学旅行の帰りの時に何故かいた吾郷さんに渡したからな。

それと、焔がないから自壊するんじゃないかって思ったんだが、自壊に慣れたのかはたまた俺の身体に何かが起きたのか知らないが…『起きなくなった』。


「あと椿、俺の中に居とけ」

「何故ですか?」

「危ないだろ?人間かどうかはさておいて女の子だしな、守らせてくれ」

「…」

「…椿?」

「分かりました、それと春斗」

「うん?」

「たらし」

「うえっ!?」


椿にたらしと言われうろたえた瞬間、椿は蝶となって俺の身体の中に入った。


「な、何故たらし…?」

『自分で考えてください!』

「何でそんな怒ってるんだよ!?」


そんな頭の中で椿と喧嘩しつつ職員室から退出し、鞘に収まった近接ブレードをホルスターに展開する。

何かしらの敵勢力を発見次第撃滅する為に。

そう考えこんでいたら。


「!」


廊下にさっきまでなかった機械が置かれていた。

プシューッと音を鳴らし人型へ作り上げていく。IGD学園の警備のロボットだと思ったが、どうやら違うみたいだ。仮に警備ロボットだとしても俺の手元には再発行された学生証がある、わざわざブレードを抜いて刃を俺に向けるなんてことはしないはずだ。

…つまり、コイツは『敵』。


『人造兵隊ですが…製造元が分かりません、暗号化されて見れないようになっています』

「わかった、人造兵隊と分かっただけいい」

『サポートは任せてください』

「あぁ、ありがとう」


腰のホルスターに展開されていたブレードの柄を握り刃を出す。


「敵勢力を排除する」


◇◇◇


「お、九条君接敵したみたいだね」


場所は変わり体育館。

そこには全校生徒と全職員、そして吾郷技研の木手吾郷が展開されたモニターを見て呟いていた。


「おい、吾郷」

「なに?」

「…何故こんな回りくどいことをしている?」


そんな木手に声をかけたのは御影紗月。


「だって、腕がなまっていないか確認したいって言ったのは御影先生でしょ?」

「だとしても、何故学園が襲われているかもしれないというケースで九条を戦闘させてようとする?」

「簡単だよ、これが一番九条君の能力を引き出せるからね。それに今回の人造兵隊は改良機!そう簡単に倒されるはずは」


ーーバァン!!


「…え?」


接敵してから約4秒。改良機、機能停止。


「う、嘘!?改良機がこうも一瞬で…!?」

「…」


腕を上げているどころの話ではない。御影先生が春斗に教えた対AG用の戦闘スタイルとは打って変わり敵勢力を排除する動きへとシフトしていることに御影先生は気が付いた。

全校生徒も全職員も知っている。彼は学園から離れている間にこの学園を守りつつ、自身の自壊を防ぐためにタービュランスに所属して居たことを。

教員や専用機持ち達はそこで得たであろう彼の動きに驚く。


『撃破。他は居ないか?え、体育館に?…分かった』


春斗が独り言のように話しているが相手は彼の中にいる赫蝶だろう。

皆がいる位置を知り、体育館に向かって走り出す春斗。


「こ、これは…どうしよう」

「まぁ弱くなっていないようで安心したが、吾郷どうする?」

「どうするって?」

「九条の戦闘能力を引き出せる方法はあっているだろう、だがそれの代償は?」

「…あ」


確かに生徒や教員含めIGD学園が危険にさらされているとなれば一番黙っていないのは九条春斗だろう。現に彼はIGD学園にあだなすものを全て力、そして『怒り』で排除してきた。

そう、彼は怒る。

あだなすものを二度と立ち上がらせないために、破壊しつくす。

…つまるところ、この吾郷という人間は春斗の地雷を踏み抜いた。

そして、その阿修羅は体育館に向かってきている。


「…」


吾郷の額に冷や汗が垂れる。


「ど、どうしよう…」

「無理だな、諦めろ」


その言葉と共に体育館の入口の扉が開かれて件のモノが入ってきた。


「皆!ぶ…じ?」


ブレードを握りしめたまま突入してきた彼の顔が素っ頓狂な顔に変わる。

生徒や教員たちの方はというと少し居心地が悪そうに目をそらす。


「来たな、九条」

「み、御影先生!これは…?」

「あぁ、お前の腕がなまっていないかの確認をするためにやったことだ」

「御影先生…!」

「コイツが」

「御影ぇ!!」


一瞬、吾郷を庇ったように話したが現実は非情。

堂々と真実を言い放った。


「は?」


次の瞬間、九条の後ろの龍が映る。

間違いない


ーー怒である。


「へぇ…?」


こめかみに血管が浮き出始めた九条。

笑ってはいるが、目に光がともっていない。


「あ、その…九条君」

「何ですか」

「…怒ってる?」

「自分の胸に手を当てて自分自身に聞いてみたら如何ですか?」

「えっと…その…」


「凄く…柔らかいです…なんて」


のちに何が起きたのか彼女たちは語った。


『本当に春斗さんを怒らせるのは命に関わると思いましたわ』

『しょ、小学生の時、守ってくれたのだが…あの時の怒りが自分に向いたりしたら本当に死ぬと心の底から思った』

『…自業自得かなって』

『うむ、思えば私は過去に春斗に喧嘩を売ってしまったことを今後悔しているぞ…』

『えっと…その…あの怒りに私は守られたけど、本当に怖いなぁって。アニメのキャラクターの怒りの覚醒ってこんな感じ…なのかな』

『ノーコメントよ』

『騎士道精神をもってしても、バーサーカーとなった九条春斗を止められる気がしない。せめて安らかに眠ってほしい』


木手吾郷、ここに眠る。(気絶)


◇◇◇


「九条君」

「はい」

「すみませんでした」

「…本当に思ってます?」

「ハイ、今回ばかりは、真面目に」


場所は変わり保健室。

ベッドに寝ている吾郷さんにやや圧をかけつつ先程の行為について謝罪を聞いていた。

もちろん、きちんと反省したのかも。


「じゃあいいです」

「ほっ」

「次やったら、わかってますね」

「はいぃ!!」

「…何でそこまで縮こまるんです?」

「い、いやぁ…ちょっと思い出したくないなって」

「???」


よく分からないが反省したようなので、よし。

ちなみに、俺の視界の端で御影先生が口元を押さえてくくくっと小さく笑っている。


「えっと、それで吾郷さんは何故IGD学園に?」

「もちろん、それは今日君が帰ってくるって聞いたからね。渡すものがいっぱいあるから」


そうして何処から取り出したのか分からないがアタッシュケースが三つ渡された。


「君の焔に再調整しなおした神去と対AG用強化スーツだよ」

「お、おぉ…」

「…それで一番大切な物がこれ」


そしてアタッシュケースとは別に封筒?を渡された。


「これは?」

「ちょっとね…君の親に関することなんだ」

「!」

「本当はしたくなかったんだけど、夏樹と克樹の研修施設から君の身体に関する情報を得てね」

「俺の…身体」

「殆どの実験のレポートやら何やらは燃やされたり、削除されたりしたけど、奇跡的にこれだけが残っていたんだ」


封筒を開けて中から髪の束を取り出す。

やや煤がついているが軽く払い、ぺらッとめくる。そこには赤子が血まみれの写真が貼り付けられ、人工ナノマシンAnotherの移植手術について書かれていた。

やはり…そうなのか。


「正直、私の方で保管するべきだとは思ったんだけど…これを一番知るべきなのは君だよ、九条君。恐らくだけど君は自分自身の身体について何一つ知らないだろう?」

「…そうですね」

「なら、尚更だね。この書類は君に預ける。くれぐれも失くしちゃだめだよ?」

「分かりました」


この書類は後で見よう。かなり…重い内容だと思うからな。


「さて、これで私の用事は終わりだよ。君はどうするの?」

「職員室で再入学の手続きをしてきます」

「あぁ、九条。それなんだが」

「?」


椅子から立ち上がり保健室から出ようとしたところ御影先生に止められる。


「既に終わっているぞ」

「…へ?」

「終わっているというより終わらせたの方が合っているか」

「ど、どういうことですか?」

「どういう事も何も、こっちで全部終わらせておいた」

「な、何故…」

「お前はこの後食堂に行かないといけないからな」


しょ、食堂?何故に?


「お前の帰りを心待ちにしていた小娘どもが居るからな。時間くらいはこちらで作らせてもらった」

「…御影先生」

「早く行ってこい」

「わ、分かりました!」


俺はアタッシュケースを抱え、書類を持ち保健室から飛び出し食堂へ向かった。


「御影は生徒思いだね、中々ないよ?上層部に突撃なんて」

「…私だけではなかっただろう」

「そうだねぇ…今でもとんでもないことだと思うよ?全校生徒、全教員、そして九条君に助けてもらった全員でIGD学園上層部及びデマを流した出版社に突撃するなんてこと」

「ふん…」

「流石夏樹と克樹の子だよね、私たちの心すら揺さぶってくるんだもん」

「…何だ?あの後、玉砕したのか?」

「さぁね、だいぶ前の話しだし忘れちゃった」


ーーー


食堂に向かおうとしたが、流石にこの荷物で向かうのはアレだったので一度俺の部屋に戻った。

いい意味で何も変わっていなかった。これで俺の部屋が取り壊されていたりしたらどうしようとか思ったけど。

…持っていけなかった皆からのプレゼントも綺麗に保存されてあった。


「…」


アタッシュケースをしまい、書類を机に置く。

この中に俺の身体について書かれているのか…。


「春斗」

「椿」

「今、読むのはやめましょう。それより食堂に行きましょう、皆待っているかと」

「…そうだな、行くか!」


辛気臭い顔で行ったら皆にどんな反応されるか分からないけど、今日くらいは元気に。

そして意気揚々と部屋の扉を開け


「「「「「「…」」」」」」


勢いよく扉を閉めた。

な、何だ今の!?あまりにも衝撃的な光景が目の前に広がってうっかり扉を閉めちゃったんだが!?

一旦、落ち着こう。深呼吸、深呼吸…。

よし、落ち着いた。先程の光景を少しずつ思い出しながら処理しよう。

まず扉の前に居たのは葵、フレヤ、レベッカ、アナスタシア、水津、アイヴィー。

まぁ、いつもの面々だな。

次に格好だ。全員制服を着ていたな。久々に見たぞ。

最後に何を持っていたのか。ロープと麻袋を持っていたな。

うん。


(何でだよッ!!)


意味が分からねぇよ!?何でロープと麻袋!?

しかも全員無言だったし!


「…や、春斗君」

「うわぁっ!?」


扉の前で座り込んでいると何処から入ってきたのか分からないが雪華さんが俺の目の前にいた。


「せ、雪華さん!?ど、何処から!?」

「シャワー室から、ずっと待ってたのよ?」

「いや…えっと…あの、皆は?」


言いたいことが色々あったが、とりあえず全部聞きたいことを聞こう。


「居たじゃない」

「ロープと麻袋を持っていましたが!?」

「細かいことはいいじゃない、それよりこれなーんだ?」

「…わー、ロープと麻袋だぁー」

「おとなしくしなさい!」

「ヤダぁ!!」


全部聞くより先に答えが目の前から襲いかかってきた。

正面から突撃してきた雪華さんを受け流し、ベランダ方面に逃げ込む。


「あら、自分から退路を絶っちゃうの?」

「雪華さんを受け流して扉から出れば」

「そうはいかないぞ、春斗」


あ、そうじゃん。と思ったときにはもう遅い。

雪華さんが扉を開けて増援が入ってきた。最も俺のその増援は味方じゃないけどね。


「春斗」

「おとなしく」

「お縄につきましてよ」


葵、レベッカ、フレヤがロープを握りしめ、アイヴィー、アナスタシア、水津が麻袋を構えている。

…いや、改めて思うけどどんな状況だよ!何をやったらこんなことになるんだ!?


「大人しくしろ、春斗」

「悪いようにはしない」

「春斗、ごめんね…」

「ふふっ…総員突撃!!」


雪華さんの掛け声とともに突撃してくる。


「つ、椿!」


俺は唯一の助け船に声をかける。もしかしたら椿なら何とかできるかもしれない。


『…』

「椿?」

『春斗、こんな状況に合う一言を見つけました』

「ひ、一言?」

『何事も。諦めが肝心です』

「椿ぃぃぃぃぃ!!!」


※ここからは音声だけでお楽しみください。


「この人数に勝てるわけないだろ!」

「馬鹿野郎!俺は一人でも勝つぞお前…いやこの人数は無理!!」

「足は縛ったよ!」

「こっちは腕を拘束したぞ!次はどうする!」

「胸元も縛って、亀甲縛りにしちゃおう!」

「雪華さん!?」

「よ、よし!行くぞ春斗!」

「や、やめろ葵!何か色々とそれ絶対マズいから!てか、目が滅茶苦茶血走ってるぞ!?」

「暴れるな!」

「ちょ、ちょっと待って…!それは何というか男として何かを失うから止めて!!」

「…録画」

「水津ゥ!?」

「よ、よし縛り終わったが…」

「何というか…」

「うん…」

「「「いけないことをしている気分になる…」」」

「ロープで縛ってる時点でもうやべぇんだよ!!」

「じゃあ、皆!春斗君を運ぶわよ!」

「いやぁぁぁぁぁぁ!!!」


俺が個人的に仲の良い女子だと思っていた人たちにロープで縛られ、担がれて運ばれる。

恐らく行く先は食堂だろうが…。


(何で俺はいつも誘拐みたいな感じで連れてかれるのだろうか…)


抵抗するという意志はなくなり、半ば諦めた状態で身体を預ける。


『春斗』

(…なに?)

『愛されていますね』

(愛してくれるならロープで縛るなと言いたいが?てか、どうすればいいの俺)

『…愛されていますね』

(思考を捨てるなよ!?)


誤字脱字、語彙力がほぼ皆無に等しいのでミス等がありましたらご報告お願いします


感想も待っていますので気軽にどうぞ!


超絶不定期更新ですがご了承ください…

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