第50話 戦いを知った者はそう簡単には元に戻らない
気がつけば50話も書いていました…。
作者でありながらも驚きでいっぱいです。
あ、あけましておめでとうございます!(2024/01/01)
今年もインフィニティ・ギアも含めよろしくお願いします!!
「…」
重い体を起こす。
ここは、見覚えがある。
IGD学園ではない、俺の部屋。
「はるちゃん…?」
「婆さん…」
「よ、よかった。目を覚ましたのね」
布団から身体を起こした俺の元へ駆け寄ってきた俺の婆さん。
「何か食べたいものはある?何でも作ってあげるから」
「じゃあ…煮魚が食べたいな」
「わかった、ちょっと待っててね」
そうして婆さんは俺の部屋からやや駆け足気味に出ていく。
『春斗…』
「…あの後どうなったんだ?」
赫蝶から俺が意識を預けてからの話を聞く。
どうやら黒龍となり、空を飛んで俺の住む街へと飛び立ったのは良かったが俺の身体が回復しきっておらず、活力もそこまでなかったので途中で黒龍状態は無くなり墜落。
その墜落した場所が俺の住む家の近所の公園だったらしい。
「そうだったのか。てか赫蝶の事は」
『それなのですが…実は春斗が墜落し、倒れている間に研究者たちが来たんです』
「マジ?」
『はい。ですが…』
あの時の光景を話してくれる赫蝶。
俺を抱える爺さん、そして近所に住むみんなと俺の親友や友人たち。
それが一丸となって俺を守り、追い払ったそうだ。
「追い払ったのか、凄いな」
『農具とは武器になるのですね』
「…いったいどんな使い方したんだよ」
『話しましょうか?』
「いや…大丈夫だ。それよりも俺の処遇はどうなったんだ?」
『この街に住む者たちは私たちを受け入れると、例え見た目が化け物だろうと心は人間であると判断したとのことです』
受け入れてくれた事はとても嬉しいが…何というかほんの少し複雑だ。
こんな俺を受け入れていいのかと。
『ただ…1つ問題が』
「問題?」
『はい、最悪なタイミングであることは分かっているのですが…』
そうして赫蝶は語りだす。
『現在、春斗の活力を上回る量の赫蝶が身体に宿っています』
ーーー
婆さんが作ってくれた煮魚と白米などを頂いたのち部屋に戻り赫蝶の話しに耳を傾ける。
「それで、俺の活力を上回るの何かマズイ事でもあるのか?」
『簡単に説明すると…赫蝶が春斗の活力を全て吸収してしまうようになってしまいました』
「…?」
言っている意味がよく分からない。
俺の活力を全て吸収…?
「マズいのか?」
『はっきり言いますがはい。私自身も全てを操れるわけではないので…赫蝶の動きの流れや春斗の活力の吸収量を見ていたのですが、現在赫蝶は春斗の『生命エネルギー』すらも糧にしています』
「生命エネルギー…?」
『大まかに話しますと自己治癒力などで…このまま糧にし続けると春斗の身体は自壊し始める可能性があります』
「け、結構マズくない?」
『…はい』
今の赫蝶は俺の生命エネルギーすらも糧としているのか。
待てよ?これでも全ての赫蝶は俺の身体に宿っていない。つまり…このまま赫蝶の数が増え続ければ、俺の身体の自壊を早めてしてしまう。
「どうしようもないのか?」
『別途でギアを動かすエネルギー等が入手できれば赫蝶たちのエネルギーに変えることもできますが…』
「エネルギーはそう簡単には入手出来る代物ではないって事か」
『…はい。これでは春斗の身体が』
「そうか…」
ある意味死刑宣告に近い物だ。
対処方法を見つけないと俺の身体は自壊を始める、そうすれば…死ぬ。
いや、今更俺の身体なんぞどうでもいいが、赫蝶がどうなるか分からない状態で俺が死ぬのは少しマズイ。
出来る限り赫蝶の力を使わないようにすればいいと一瞬思いついたがダメだ、赫蝶の数が増えていけばどうしようもない。
…ギアのエネルギーってなるとその辺で売られているような代物ではない。
高級品に近い物だし、そもそも実験やAGで使うようなものだ。おいそれと入手できるようなものじゃ…。
(いや、ある。ただ…これは)
1つ、当てがあった。
別途でエネルギーを入手できる方法が。
でも…この方法は。
ーーやるしかない。
赫蝶のせいでこれ以上の被害を出させないようにするためにも。
赫蝶を『兵器』にしない為にも。
決意を固めて携帯電話でとある番号を入力して電話をかける。
1コールでその相手が出た。
『こちらタービュランス『テンペスタ』九条春斗君、私に電話してきたってことは…そういうことでいいのかしら?』
相手はタービュランス『テンペスタ』。連絡先は俺がIGD学園を去る前に貰っていたから分かっていた。
「…あぁ。ただ俺にも条件がある、いいな?」
『あらそうなの?なら詳しい条件を聞かせてもらおうかしら』
「今か?」
『いえ、先に九条春斗君に動いてもらうわ。私が指定する場所に来て頂戴。迎えを用意しておくわ』
「…了解」
電話を切って、携帯電話の通知を見ると写真付きで連絡が来ていた。
場所は俺の住む町の駅前。そこに迎えを用意しておくか。
正直、俺がやろうとしていることは許されない行為そのものだ。この世の全てを敵に回そうとしている。だとしても…
「赫蝶、行こう」
『いいのですか?確かにタービュランスならAGのエネルギーくらいなら造作も無さそうですが…』
「分かってる、でもそれ以上に俺がくたばって君を兵器にしてしまう可能性がある。それが一番マズイ」
『春斗…』
「一種ある意味言い訳に聞こえるかもしれないが、やらないと」
毒を以て毒を制す。
そう頭に言い聞かせ、部屋の窓から外に飛び出す。
例え裸足だろうが関係ない。月夜に照らされるアスファルトを駆け抜けて駅まで向かう。
今更足裏のダメージだろうが冷たさだろうが関係ない、とにかく走る。
走っているうちに駅前についた。ここまで誰にも見つかっていない。
「こんばんわ、九条春斗君」
この田舎には合わないリムジンの中から1人の女性が降りてきた。
声色で分かる。テンペスタだ。
金髪の髪に赤色のドレスを着て様々な装飾品の数々を身に着けている。まるで貴族だ。
「…こんばんわ」
「とりあえず立ち話もあれですし、乗りなさいな。安心して、変な場所に連れて行くような事はしないわ」
テンペスタに言われた通りリムジンに乗り込む。
「あっ、ダーリン♡」
「…ケッ」
中にはハリケーンと…もう一人乗っていた。
恰好が少し部屋着のアナスタシアに似ている。
「座って」
言われた通りの場所に座るとリムジンは発車しだした。
それからしばらくして
「それで九条春斗君、条件って?」
テンペスタが俺の隣に座り、俺の課す条件を聴き始めた。
「その条件を話す前に確認だ。AGのエネルギーの備蓄はタービュランスにはあるか?」
「もちろんよ。任務によってはAGも使用するんだから」
「…俺の願い条件は全部で三つ。一つ、俺の任務の報酬金は受け取らない。その代わり、その分のAGのエネルギーを渡してほしい」
「それはどうして?」
「語る必要はない」
「テメェ…!テンペスタにその口の聞き方は」
「止めなさい、サイクロン」
「…ちっ」
サイクロンと呼ばれた女性が立ち上がり俺に掴みかかろうとしたがテンペスタが止める。
立場上はテンペスタが上なのだろう。
「二つ、基本的に俺はタービュランスの任務には従わない。その代わりIGD学園やその生徒が関係する依頼ならその依頼主を潰す」
「なるほどね…それならこちらとしても助かるわ」
「助かる?」
「IGD学園の儲け話はかなり多いのよ。ライバルを潰してくれるなら市場を私の手の中に収められるようになるでしょう?」
「それが二つ目だ」
「えぇ。その条件で飲みましょう。それで最後の条件は?」
「…俺の存在を周囲に明かすな。そしてルゥサがIGD学園を巻き込む何かをした瞬間、俺は即座にソイツを『破壊』する。いいな?」
「構わないわ、こちらとしても迷惑しているし」
「…ならいい」
「では歓迎するわ。九条春斗君、そして君は今日からタービュランスの『ストリーム』の名を与えましょう」
ストリーム…俺のタービュランスとしての名前。
「早速だけどストリーム、貴方に任務を課すわ。今から向かう場所の敵の人造兵隊を全て破壊し、主を攫ってきなさい」
「了解、敵総数は?」
「ざっと300ね」
「赫蝶、全て糧にすれば俺はどれくらい動ける様になる?」
『約…2.3日程です』
「分かった」
そうして指定された場所にリムジンがついたようだ。
「ここか?」
「まずはストリーム、着替えなさい」
俺がテンペスタから渡されたものは…対AG用強化スーツだ。
「これって…!?」
「秘密裏に入手したものよ。勿論、君が着ていたものとは違うものだから安心して頂戴。それに君はこれの方が使い勝手がいいでしょう?」
受け取った対AG用強化スーツを着用し、武装を貰った。
不殺弾が装填された二丁拳銃に、近接ブレード。そして無線機。
「これなら行けるかしら?」
「余裕だ」
「なら任せるわ、こちらもバレない様に色々やっておくから。目標を回収したら連絡して頂戴」
「了解」
近接ブレードと二丁拳銃をホルスターに通して装備し、リムジンから降りる。
目の前に広がる、工業プラント。それを守るかのように守備する人造兵隊。
人間の見た目をしているが中身はアンドロイド。いくらぶった切ろうとも殺人罪に問われることもない。
こいつらを全て破壊し、目標を捕える。
「赫蝶、この任務の主はどのような事を?」
『テンペスタから抜き取った情報によりますと、IGD学園の設備のエネルギーを完全にジャックし来るべき作戦に供える為とのことです』
「どちらにせよ、IGD学園に害を成す存在か」
『…では気は乗りませんが参りましょうか』
「あぁ」
そうしてホルスターからブレードを二本取り出して、構える。
さぁ。
ーー食事の時間だ。
ーーー
IGD学園体育館、緊急集会が開かれた。
「緊急集会って何だろうね」
「うむ…そういえばフレヤと春斗は?」
「フレヤ様は今寝込んでいます。理由は…直ぐに分かると言われたのですが…」
「そうか…」
レベッカ、葵、アイヴィー、アナスタシアはこの場に居ない二人の心配をしていた。
あの一件以来アイヴィーはクラスメイトや様々な人と打ち解けることが出来た。
それは少なからずも春斗のお陰なのでお礼が言いたかったのだが…あれから一度も春斗と出会っていないアイヴィー。そしてあの一件以降元気の無いフレヤ。
『えっと今回の緊急集会のないようなのですが…』
『すまない、マイクを貸してくれ』
司会進行の生徒からマイクを奪い取り、壇上へ上がっていく御影先生。
その光景を見ていた一同はスン…と静かになり、誰かが固唾を飲んだ。
『…今回の緊急集会の内容だが、全生徒に知ってほしい事だ。心して聞くように』
軽く深呼吸をし、御影先生は言い放った。
『この場に居ない人間、大体の人は察しついているだろう。九条春斗についてだ』
「!!」
『彼は…退学処分でこの学園を去った』
一気にざわついていく体育館内。
「ちょ、ちょっと先生どういうことですか!!」
「九条君が退学だなんて…何かの手違いじゃ!?」
『皆、落ち着け!予め言っておくが…これは私たち教員の総意ではない。あの一件で現れたフレヤの関係者であるルゥサの家の者から学園に圧をかけてきてな…』
やや悲しそうな顔をする御影先生。
『そして、私たち教員は彼に退学処分であることを話し、何とかすれば退学せずに済むように、九条がまだ学園に居れるだろうと思い引き止めたんだが…彼も脅されていた』
『もし学園から去らなければ九条春斗以外の人間の殺害をタービュランスに命じると』
全員分かっていたのだ。九条春斗と言う者がどのような人間であるかを。
一番効く文言だと全員が自覚した。それは自分の事を考えない彼だからこその答え。
『…生徒一人守れない教員ですまなかった』
御影先生のマイクを握りしめる音が流れる。
するとそこへ
「み、御影先生!大変です!!」
息を切らしながら柊木先生が体育館の中へ入ってきた。
『どうした?』
「む、無人AGです!無人AGが侵入してきました!!」
『何!?』
空気を読んでほしいタイミングで敵の襲来。
「葵?」
「な、何だ…?」
「大丈夫?」
「…大丈夫だ」
「無理もない…正直出来ることなら春斗を探しにでも行きたいが、アイツは私たちを守るために学園を去った。それに報いる為にも」
アイヴィーがAGランスロットを装着して外に居る無人AGに攻撃を仕掛けに行こうとするが…。
「え…?」
アイヴィーの動きが止まる。
『どうしたアイヴィー?』
「…既に戦闘が終わってます!」
『何!?ど、どういうことだ!?』
御影先生は急いで外を画面をモニターに移した、するとそこには。
鉄屑に変わった無人AGが大量に破壊されていた。
一瞬。そう、一瞬だった。
柊木先生の報告が入ってから10秒も立たずに6機の無人AGは見るも無残な姿に変わり、地面に堕ちていた。
『いったい誰が…?』
映っていたモニターの映像を巻き戻すと、黒色の何かがAGに乗り移っていき…。
ーー破壊。
斬ったのかあるいは撃ったのかも分からない何かは無人AGを的確に破壊していた。
そしてその黒い何かもこの学園の者なのかあるいは外部者なのかも分からない。
件の映像を見たものはその謎の存在に悩まされることになった。
資料集更新
更新内容:九条春斗
誤字脱字、語彙力がほぼ皆無に等しいのでミス等がありましたらご報告お願いします
感想も待っていますので気軽にどうぞ!
超絶不定期更新ですがご了承ください…




