表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
インフィニティ・ギア  作者: 雨乃時雨
第二部
50/122

第48話 此処より龍は降臨する

私は…こんな外道に操られていたのか!

九条春斗の制服を握りしめながらルゥサを睨みつける。


「まぁいい、生身の人間でどれだけ抵抗できるか楽し」


ーードンッ! 


「…は?」

「え?」


次の瞬間、辺りに衝撃が走り…春斗を囲っていたAGは全て跡形もなく破壊された。


「な、何が起きた!?」


ルゥサは明らかに焦り、元凶であろう春斗を見る。


「貴様…まぁいい!僕にも最終兵器がある!」


そう言ってルゥサは『AG』を展開し装着した。


「AG…!?」

「男がAGを使っても本来の力は出すことが出来ない。なら簡単だ。元の出力を上げてしまえば戦える!」


ルゥサが展開したAGがどのような機体なのか分からないが…拳を振り上げて春斗に振り下ろした。

しかし


「…え?」


振り下ろした右腕のアームはバラバラに砕け散り


「ごはっ!?」


春斗に殴り飛ばされAG諸共上へ飛んでいく。

そして…春斗の周りを赤い蝶と『鎖』が纏うように飛び回っている。


「…よくも」

「く、九条春斗?」

「よくもッ!!」


◇◇◇


場所は変わり、変形した体育館の中。

中は混沌に包まれていた。


『えっと…1年1組の九条春斗君とアイヴィー・モルドレッドさんは何処に居ますかー!!』


1年1組の鷹月さんが叫んで今舞台に居ない主役ともう一人を呼ぶが一向にステージに来ない。

もちろん1組の全員は焦っているがそれ以上に焦っていたのは…。


(お二人とも一体どこへ…?)


フレヤだった。元々二人が険悪な関係だったことは知っているが…この舞台を忘れて何処かで戦い合うなんてことはあり得ないはずと考え込んでいた。


「フレヤどうしたの?」

「い、いえ何でもありませんわ」


心配そうにレベッカが声をかけるがフレヤ本人はもうそんなことも気にしてられない状況だった。

次の瞬間


ーーバギャアッ!!


と割れる音と共に体育館中央の床に風穴があき…1人のAGが降ってきた。


「る、ルゥサ…!?」


フレヤのトラウマの張本人が体育館の中心から現れたのだ。普通、こんな生身の人間では体育館の床を抜くことなんてできないはずと焦っている。

すると今度は


「…」

「は、春斗さん!?」


春斗がその穴から空中に現れた。

だが…様子が明らかにおかしい。無言のまま俯いている。

蝶と鎖を纏わせて体育館の床に着地したと同時にモニターに大量の赫蝶が纏わりつき1つの動画が再生される。


『あれほどまでに良いルックスや身体を持つのに戦場で失くすのは勿体ない。だからこそ僕の家で匿えばいいだけだ』

『あぁ、安心しろ。殺すこともない。そこにいるアイヴィーと一緒に地下で仲良く暮らしてもらうだけ。まぁ…僕たちを『奉仕』してもらうが』


流れてくる声はルゥサの声で、とてつもなく悍ましいことを話している動画だった。

一番震えたのはフレヤであろう。もし、連れていかれたらそんなことになっていたということに。


「フレヤ大丈夫!?」

「だ、大丈夫…じゃないかもしれませんわ」

「アイツ…よくもフレヤを!!」


クラスメイトや他の生徒、更に他の来賓の人たちも飛んできたルゥサを睨みつけ罵声を浴びせる。

だが…その中でも一番怒り狂っている者が居た。


『殺す』


『殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す』


夥しい量の『殺す』という文字が赫蝶が纏わりつくモニターに表示される。

…そしてこの学園にいる者たちは分かってしまった。あの文字列が今の春斗の感情。

優しさもない、笑顔もない。ただ目の前にいる愚者を怒りのままに殺す者。

それが今の春斗。怒りに完全に支配された者。


「があぁァァッ!!」


春斗が叫び声…いや雄たけびを上げる。

その声に共鳴するかのように鎖と赫蝶は春斗の身体中を覆っていく。

やがて春斗は蛹のように鎖で包まれ、その四方に鎖が放たれて行き形を成す。

そして春斗だったものは…


「グォォォォォッ!!!」


ーー黒い龍へと変貌した。


「春斗さん!?」

「春斗!?」

「はるちゃん!?」

「ガァァァァ!!!」


前身は黒い鱗で包まれ強靭な後脚に尻尾、鋭利な爪を持ちえた前腕。

そして翼は無く、その部位からは赫蝶の粒子が吹き出し、頭には二本の大角が生え…深紅の龍の目は殺すべき者を見つめていた。

もはや人間と呼べるものではない。

呼び名をつけるなら『黒龍』。

形を成した黒龍は地に足を付ける。


「な、何なんだお前!!」

「グリャァァァ!!!」

「ぐはっ!?」


雄たけびを上げながらルゥサのAGを左手で掴み床にたたきつけひたすらに拳を叩きつけ、吹き飛ばされる。


「クソ…!!おい、早くアイツを殺せ!」


ルゥサが命じて付近にいた無人AGが黒龍に向かって攻撃を仕掛けるが。


ーーひと振りの拳で全て破壊された。


「う、嘘だ!?」


全てを凌駕する圧倒的な個の暴力。

一騎当千、天下無双、百戦錬磨、万夫不当、完全無欠。

天上天下唯我独尊。

遮るものも、比類するものも、通用する物も。

全て、に等しい。


「グォォォォ!!」

「だ、だがAGはシールドエネルギーがある限り搭乗者に危害が加わることは無い!」


そんな戯言には耳を貸さず、この世界の法則すらも。


ーー黒龍はたった一撃でこの世界の最強を冠する物(AG)を粉砕した。


一撃の拳でルゥサの装着していたAGのシールドエネルギーとヘルスエネルギー、遂には装甲諸共粉砕し、AGと言えるような代物は無くただの鉄屑に変わった。


「…くっ!!お、おい!!全てのAGをコイツにぶつけろ!!」


AGも使い物にならなくなり、通信機を握りしめたルゥサが誰かにそう命じると、また大量の無人AGが現れ、黒龍に攻撃を仕掛ける。

すると黒龍の動きが変わり、腕で顔をガードするかのように覆う。

ルゥサは攻撃が効いた、殺せるぞと一喜一憂する。

しかし…黒龍の背に赤色の輪が出てきた瞬間、無人AGに一斉に赫蝶が襲いかかり管のようなものが黒龍と繋がっていた。

そして無人AG達の動きは徐々に悪くなっていき停止。その場で蹲る。

完全な新品なのに何故止まるのかとルゥサは焦るが。


「ガァァァァッ!!」


この光景を見た瞬間察してしまった。先程よりも背中から吹き出す赤い粒子。

そう、この黒龍は…無人AGたちを『(エサ)』としたのだ。


「…グルルル」


空を飛び全身を粒子、蝶、鎖で纏う異質な龍。

その瞳は怒りを宿し、静かに標的を見ていた。


「ま、待て!落ち着け話をしよう!!」


通信機を投げ捨てもう使えない武装もすべて解除し、頭を垂れ、黒龍にお辞儀するかのように伏せる。


「わ、悪かった!フレヤとアイヴィーを狙ったことは謝罪する!お金もたんまりやる!好きなだけ抱ける女もやる!だから見逃して」

「キシャアアァァァァ!!!」

「ひぃぃぃっ!?」


人も丸のみできそうな大きな口を開き、叫ぶ。


『許サナイ、死ネ』


無慈悲にモニターにそう書かれていた。


「へ」


拳が振り下ろされる。

だが…受け止められた。


「や…めろ!九条春斗!!」


なんと黒い拳を受け止めたのはAGランスロットに身を包み聖剣エクスカリバーを握りしめたアイヴィー・モルドレッド。


「ま、守るのが遅」

「黙れっ!!」

「ぶっ!?」


聖剣で強大な拳を受け止めながらも、ルゥサを蹴り飛ばすアイヴィー。


「お前は…確かにフレヤ様の言う通り…無鉄砲で自己犠牲も厭わないバカ者だ!私が敵だと知っていても助けるような大バカ者…だがお前の優しい気持ちは今まであってきた男の中でも唯一の物だ!!」


今、着ている春斗の制服を軽くみるアイヴィー。


「お前の優しさでコイツを殺せば私たち二人や他の者たちも救われるかもしれない!だが…私はお前を『人殺し』にしたくない!私の後ろに居るような薄汚いゴミと括られるような者になってほしくないんだ!!」


聖剣で強靭な拳を弾く。


「だからこそ…私はお前の目を覚まさせてやる!」


その聖なる刃を黒龍へ向ける。


「グォォォ!!」

「くっ!?」


アイヴィーを完全に敵として捉えた黒龍は攻撃を仕掛ける。

本気の拳、強靭な足を使った足払い。そして口を使った噛みつく攻撃。

アイヴィーは一瞬の隙すら与えない攻撃の嵐に防戦一方だった。


「しまっ!?」


尻尾の薙ぎ払いで体勢を崩され、アイヴィーに拳が振り下ろされるが…。


「!?」

「させないぞ…春斗!!」

「僕だって!」


その拳を受け止めたのは葵とレベッカ。


「アイヴィーさん、こちらも協力しよう。考えていることは同じだ」

「私も…!」

「お姉さんも頑張っちゃおうっかな!」


アナスタシア、水津、雪華もAGを展開して黒龍の中に眠る春斗を叩き起こすために戦いに参加することを決意する。

もちろん…。


「アイヴィー」

「フレヤ様…」

「私も参りますわ。私たちの為に怒り自我を失ってしまった彼を取り戻すために」

「…私も参ります」


フレヤもだ。スプライトを展開して、愛する物を取り戻すためにバレルを向ける。


「さぁ行きますわよ!私たちの七重奏(セプテット)で春斗さんを元に戻しますわ!!」


そうして春斗を元に戻す戦いが始まった。

既に御影先生、柊木先生を含めた教員たちが来賓の全員を避難させている。


「はあっ!!」

「やぁぁぁ!!」


葵の二刀と水津の薙刀で黒龍に攻撃を仕掛ける。

それを黒龍は腕をクロスし、防ぐが


「はぁぁぁぁっ!!」


聖剣を握りしめたアイヴィーの斬撃によって黒龍はよろける。


「グルル…キシャァァァ!!!」


口に粒子を集めていく黒龍。


「させない…!!」


水津の拡張武装、ミストバーストのミサイルの雨が黒龍を襲う。

龍の頭が爆炎に包まれていく。


「…やった?」

「いえ、まだ来るわ!!」

「グオォォ!!」


爆炎を振り払った黒龍。


「春斗を返してもらうぞ!!」

「春斗を返して!!」


アナスタシアのパンツァーカノーネとレベッカのショットガンの乱射が黒龍の心臓部分に着弾する。


「グッ!?」


心臓部を押さえて倒れこむ。


「春斗さんを私から奪おうなんて100年早いんですのよ!」


その隙を逃さず黒龍の頭部に狙いを定めてスターダストを放つが…防がれる。

防いだのは…。


「ぼ、僕のシールド!?」


レベッカの持つシールドに酷似していたシールドだった。

それだけではない、空中に春斗を目覚めさせようとする彼女たちの武装が複製されていく。


「春斗の…複製」


その武装たちの攻撃が繰り出されると思い総員構えたが…。


「グッ!?ギシャァァァ!!」


急に黒龍は見る方向を変えて…粒子と化していく。


「えっ!?」


全員驚いたまま粒子化していく黒龍を見ていくと大量の粒子たちは…避難している方向へと飛んでいっていることが分かった。


「みんな、急ぐわよ!」

「「「「「了解!」」」」」


全員体育館から飛び出し、粒子化して去っていく黒龍を追いかけていく。

だがアイヴィー以外の皆は、1つ疑問があった。

暴走しているとはいえ、急に春斗が他の人を傷つけるのか、と。


ーーー


黒龍が粒子化してこちらの避難所に向かってきていることは知らない避難した人たち。


「アレが…はるちゃんなのか?」


まだ現実を受け入れ切れていない人たちが。

それは春斗の叔父と叔母である歌方實と歌方よね子、そして谷氏、那由多、蜂である。

変貌を遂げた家族あるいは親友。

だが…一つあった疑問それは暴走しているのに何故他を狙わないのか。

何一つ考えられず目の前の物をすべて破壊する物ならば、あの男を狙うよりも先に観客を狙うはずだと考える。


「クソ…ただじゃ死なねぇぞ!!」


するとその避難所に現れたのは、先程龍へと変貌した春斗が一生狙っていた標的。

どんな人間なのかはそこに避難していた全員が知っていた。

だからこそ…。


「元凶がここに来るなぁ!!」

「さっさとどっかにいけぇ!!」

「この学園から出て行けぇ!!」


と罵声を飛ばされ、ゴミを投げられる。


「ゴミどもが…!こうなったら…!」


そうして懐から出したのは、ハンドガンだった。


「この際誰でもいい…フレヤとアイヴィーがここに来なければ死者は出なかったと刻んでやる!」


もう人間性のカケラもない思考回路の元、ハンドガンを乱射する。

ある弾丸は天井を、ある弾丸は壁を、ある弾丸は…。


「えっ?」


實を捉えていた。春斗の叔父に迫る死への手向け。

…だがその弾丸は實には命中しなかった。

何故か?


「は、春斗…?」

「…」


それを防ぐ強靭な腕が現れたからだ。その強靭な腕の持ち主は言わずもがな九条春斗が変化している黒龍の前腕。

黒龍は實を含めた人たちを守るように包み込んでいた。


「なっ!!」

「ギ…グギャガァァァ!!」


先程よりも粒子が溢れ出し、黒龍の身体、足、角、爪そして目元に赤く血管のような模様が浮かび上がりルゥサは察する。


ーー本気で怒らせてはいけないものを怒らせたと。


ルゥサに迫る激怒の拳。それを


「水津ちゃん!」

「うん…!」


海神の水結界とフロストクイーンの氷結界で凍結させ、腕と足の動きを止める。


「春斗!!返ってこい!!」


葵の飛脚の白露と村雨の連続斬りで胸の外殻にヒビが入る。


「行くよアナスタシア!」

「あぁ!」


アナスタシアのレオンとレベッカのシトリンの一斉射撃で外殻を弾き飛ばす。

その先には、鎖が集まっていた。

恐らくあそこに春斗が眠っているのだろうと予想した。


「行くぞ…ランスロット!!」


アイヴィーは聖剣に光を宿し、鎖に向かって斬りかかる。

アイヴィー専用AGランスロット、専用アビリティは『絶対なるオンリーワン』。

今までの攻撃で貯めたエネルギーを一気に解き放つことが出来るアビリティ。

春斗とも黒龍とも戦ったおかげでエクスカリバーにはとんでもない量のエネルギーが凝縮されていた。


「聖剣よ!闇を切り裂け!!」


エクスカリバーが鎖を断ち切る。その中には…。


「春斗!!」


大の字に縛られている春斗がそこにいた。

しかし


「がぁぁぁぁ!!」

「ギシャァァ!!」


春斗の声と黒龍の声が重なり鎖がまた春斗を覆いつくし、外殻を覆った。


「くっ…ダメか!」

「あの外殻を貫通する一撃が必要かも…」

「…なら私が行きますわ」


スプライトの専用アビリティのアクセラレータを構えるフレヤ。

アクセラレータの貫通力があれば鎖諸共貫通し、春斗を元に戻せるのかもしれない。


『フレヤ聞こえるか?』

「お、お父様!?」


するとそこに入る通信。相手はフレヤのお父さんであるグレイソン・アレクサンダー。


「…急にどうしましたの」

『先程のはすまない、そしてもう一つ話しておきたいことがあるんだ』

「…」

『…私が渡したスプライトはまだ初期設定が終わっていない』

「!!」


その話の内容は本来学園の規則に反し、フレヤを守ろうとしたこと。何より目の前にいる黒龍の外殻すらも貫けない可能性がある…という話だった。


「なぜ今になって…!」

『彼に怒られたんだ』

「えっ…」

『九条君にね。何故話し合わなかったって殴られて怒られたよ』

「春斗さんが…?」

『君の言う通り彼は無鉄砲で自己犠牲を厭わない人間だが…優しさは本物であるって言うフレヤの評価が身に染みたよ』

「…」

『戦いを見ている私が言うのもあれなのだが…恐らくスプライトでは』


「それが…負ける理由になりますの?」


『え?』


そんな言葉を無視するようにアクセラレータを黒龍に向け、トリガーに指をかけるフレヤ。


「例えこの機体が初期設定でも、例え火力不足だったとしても信じてくれた人間があの中に居るんです。私の撃ち抜けると言う言葉だけで信じてくれた人が居るのですわ!」


その言葉と共に過去に春斗から言われたことを思い出す。


『いいんですの?』

『あぁ、フレヤさんが撃ち抜けると言えば撃ち抜ける』

『…疑わないんですの?』

『さっき言った通り、仲間を信じれなくて何を信じるんだ?』


思えば巨人が乱入した時よりも前、初めて春斗と会った時から惹かれていたのかもしれない。

明らかに今まであってきた男性とは違う雰囲気や性格。

どれだけ辛い状況でも決して泣き言を言わず、どれだけ罵っても泣かず媚びず…そして優しさがあった。

その信じる気持ちに報いるために…。


「私は…絶対にあきらめませんわ!」


その叫びと同時にスプライトの装甲が、武装が変形していく。

今までの戦闘や訓練の中でスプライトは待っていたのだ。フレヤ自身の決意を、思いを。

そして答えた。『彼』を救おうと。

赤い装甲は変形しジェット機構が二つ増加。ビットも4つから8つに増え…チャージし赤熱化したアクセラレータの銃身の周りに回転し、アクセラレータとシンクロしていることを確認したフレヤ。


「アクセラレータ・シングルポイント!!」


全ての想いと春斗への感謝の気持ちを込めてトリガーを引く。

一点に集中したエネルギーライフル。その弾はありとあらゆる障害を貫通する。

故に


「グギャァァ!?」


ーー必ず命中する


両腕、外殻、鎖を貫き、本体である春斗が避難所の床に落ちる。


「春斗!」

「春斗さん!!」


床に倒れた彼に一斉に近寄る一行。だが…


「ぐ…ガァァァ!!」


彼の瞳は、身体は、怒りに蝕まれていた。

その双眸は深紅に染まり、目元は赤く血管のような模様が浮かび上がっていて。

所々破れた強化スーツの隙間からは黒い鎖のような模様が刻まれていた。


「お…レは!…フレヤとアイヴィーを…!!守ラないと…」


自身の身体がどれだけ蝕まれようとも、怒りに飲み込まれても彼自身の目的はただ一つ。


『二人の少女を守ること』


それだけだった。

その発言でアイヴィーは気が付いた。


(…これが九条春斗に皆が惹かれる理由か)


自分がその一人になりかけていることも知らず、思う。

今では人間なのか分からないが、並の人間が持つような者ではない度が外れた優しさ。

彼の優しさこそが今の彼女たちに必要だった。手を差し伸べてくれる人が。


「俺ハ…オレは!!」

「…」


するとフレヤがAGを解除して今立ち上がろうとしている春斗に歩いて近づく。


「フレヤ様!?」


アイヴィーの静止を無視して春斗の目の前にまで近づく。


(ここまでボロボロになっても私たちの事を最優先で考えてくれる…それが春斗さんらしいところですわね)


今の春斗の姿は醜い。

だが醜くなろうとも、彼は優しく守ろうとする。

そんな彼をフレヤは


ーー優しく抱きしめた。


「…!?」


急な事に驚く春斗。

そんな事も気にせず、フレヤは話し始める。


「春斗さん、貴方は…いつも私に心配をかけますのね」


「どんな時でも1人で、私にも知らせず1人で立ち向かい…私の知らないところで傷つく」


「それでも弱音を吐かず、ただ1人で立ち向かうのが春斗さんらしいです」


「…でも、私が泣いたときのように」


「貴方も私に甘えてもいいんですわよ?」


「守られるだけでは、アレクサンダー家の娘としても春斗さんと共に居る者としても示しが立ちませんわ」


その慈愛に満ちた言葉を聞いた瞬間、春斗の身体中の鎖は無くなり、両目はいつものように戻り…。


彼の怒りは、潰えた。


「…」


気を失い、フレヤに倒れるように気絶する春斗。

しかし、その顔はあの怒りに狂った時とは違う。安心して眠っていた。


「無理をしすぎですわ、春斗さん」


(…待てよ、今共にいる者って言わなかったか?)

(今の告白だったんじゃ…!?)

(さ、先を越されたか!?)

(…ずるい)


先程のフレヤの言葉に内心めっちゃ焦っていた4人。

するとそこへ…。


「認めない…!」


空気を読まない悪人が立ち上がった。


「…ルゥサ」

「認められるわけがない!お前は」

「もう二度と私の前に現れないでください」

「は…?」

「私はスプライトが初期設定だったからこそ狙われましたが、もう違います。初期設定は完了し、異常を見られず春斗さんは元に戻りましたの。それに私はただで指を加えてただけではありませんわ」

「何だと…?」


そうしてフレヤは懐からUSBメモリーを取り出し、それをルゥサに投げつける。

それを拾ったルゥサは中身のデータを確認する。その中身は


「こ、これは!?」

「ガリアルド家の汚点…というより犯罪行為の全てですわ」


なんとガリアルド家が行っていた卑劣極まりない行為の全てがまとめられたデータだった。


「だがこれを破壊すれば結局は」

「まだわかりませんの?もう本国に送りましたわ」

「…へ?」

「今の私にそんなデータ、必要ありませんわ」

「…な、なら!アイヴィー貴様は」

「無駄だ」


次に投げつけられたものは異様な黒い首輪だった。


「い、いつの間に…!?」

「先に言っておくが外したのは私ではない、今眠っている九条春斗がしてくれたんだ。黒龍となる前に身体から伸びた鎖が私の首輪を破壊してくれたからな」

「何…だと…」


王手。チェックメイト。詰み。

それらの現実が一斉にルゥサを襲う。


「ルゥサ・ガリアルド。逮捕する」


絶望感に浸っているうちにルゥサの周りは、AG行動隊に囲まれていた。


「ま、待て!貴様ら僕はガリアルド家の息子だぞ!そのような行為は」

「犯罪者にかける慈悲はない」


無慈悲にもその両手に銀の輪を模したアクセサリーこと手錠を嵌められる。


「い、いいのか!?あの男は…化け物だぞ!?それに僕を殺そうとしたんだ!」

「まずは貴様だ。それに倒れている者よりも貴様の方が化け物だろう」


どんなに反抗しようとも万事休す。

だが…


「…クソ!タービュランス!!僕を助けろ!!」

「!!?」


その叫び声に全員が反応する。


『はぁ…ここまで無様を晒したのに助けろっていうの?』


避難所のアナウンスからタービュランスの声が聞こえてくる。


「そんなことはどうでもいい!早く助けろ!」

『無料で助けるほど貴方には価値がないわ』

「いくらでも出す!」

『仕方ないわね…ハリケーン、サイクロン。行きなさい』


その名前が聞こえたと同時に空間が歪み2機のAGが行動隊に攻撃を仕掛け、ルゥサを持つ。


「おい!もっと丁寧に扱わないか!」

「うだうだ言うな、うるせぇんだよ。おい!ハリケーン、行くぞ」

「え~、こんな奴のために帰らないといけないのめんどい~」

「…今回ばかりは同じ考えだ。だがテンペスタが言うんだ大人しく帰るぞ」

「はーい」


そうしてルゥサとハリケーンとサイクロンは何処かへと飛び去って行った。

誤字脱字、語彙力がほぼ皆無に等しいのでミス等がありましたらご報告お願いします


感想も待っていますので気軽にどうぞ!


超絶不定期更新ですがご了承ください…

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ