第3話 決闘
次の日、寝坊はせず職員室に向かい御影先生と共に書類や事前講義を受けた。
いやぁ、元一般人からすると何というか荷が重いというか何というか…あまり聞いたことないことや専用AGの持つことの重みを知ったよ。
「あー…終わったけど、はぁ」
今は職員室での講義や書類が終わり教室に向かっている。
結局、昨日の夜は軽くAGの事について勉強し、動画を見て学んだが…操作はその時の俺の判断次第になる。
あんな高速で動きながらか、でも確か俺のAGにはスラスターやブースター、ジェットはついていない、ということは必然的に俺は飛べない。
これさ、フレヤさんの機体が飛べるなら俺は飛べないから無理じゃない?
一方的に空中から攻撃されたらどうしようもないんだが!?
…まあ今考えても遅いな、当日だし。
というか専用AGもまだ学園に届いていないみたい、いくらでも待つけど今日いきなり手放す可能性もあるからな。
「あら、まだ居ましたの?」
「フレヤ・アレクサンダーさんか」
「覚えていること自体感心します、勝者の名前を」
偶然、教室へ向かっているところでフレヤさんと会った。
何故フルネームで言ったのかというと、ここで『フレヤさん』と馴れ馴れしく読んだら即決闘な気がしたからだ、生身対AGなんて絶対に勝てない。というか俺が死ぬ。
「貴方のAGは?」
「まだ届いてない、さっき職員室で事前講義やら書類やら済ませたところだ」
「ふん…最後に聞きますが本気ですの?」
「何がだ?」
「今なら泣いて媚びるなら逃げてもいいですわ」
「冗談じゃないな、俺は逃げも隠れもしない」
「そうですか…なら本日の放課後に第二アリーナに来なさい」
「分かった」
「その選択に後悔しないことですわ」
そういってやや早歩きで教室へフレヤさんは向かっていった。
…いや早歩きで行ったところ悪いけど俺と同じクラスだからどちらにせよ会うぞ何て指摘しようとしたが、やめておこう。
「今日の放課後、か」
それが俺の最後か始まりか…まだ分からないけど、負けるわけにはいかない。
ーーー
それから何事もなく授業を受けたが、どうしても放課後の決闘の事が気になりすぎて授業にあまり集中できなかった。
正直今日何を学んだかと問われても絶対に答えられる自信がないほどに理解しておらず、食堂のあの超絶激ウマかつ丼定食も味が分からず、静かに食べて静かに食器を戻した。
あとの授業も午前と同様、集中できず授業の内容は何一つ頭の中に入っていない。
そうして気づけば放課後を迎え、今は第二アリーナのAGのエントリーゲートの待機エリアにいる。
フレヤさんと俺の決闘は多くの女子生徒達の話題の中の一つに入っており観客席には席を埋め尽くすほどの他の女子生徒たちが居るし、教員も何人か来ている。
のだが、今俺は最大の問題に当たっている。
「…」
そう、俺のAGが届いていない。
どういうことだ!授業が終わった後に柊木先生に呼び出されて、AGの受け取り時間を聞いて食堂で飯を食ったのち直ぐにコンテナエリアに向かい、受け取り時間になったが肝心のAGは届かず…昼休みが終わり、柊木先生に聞いたがどうやら到着が遅れるとのこと。あ、ちなみに今AG用のスーツを着ているのだが、良かったスク水じゃない。でも両ひざ、両肘までのぴちぴちスーツだった、これから乗るかもしれないから着てるけど。
…んで今に至る、延長された到着時間は軽々しく超えていて少し俺もイラついてきた。
時間厳守しないことが一番嫌いだ、遅れるとしても連絡をくれればいいが…何故二度目の連絡を俺にしなかったんだと心の中でキレている。
すると
「く、九条君!!お待たせしました!」
「…柊木先生?」
走ってきたのか額に汗を浮かべた柊木先生がこちらに向かって走ってきた。
…ばるんばるんと胸を揺らしてきたがこの際どうでもいい。
「はぁはぁ…と、届きました!九条君の専用AGが!」
と柊木先生は息を切らしながら壁についているレバーをガコンと降ろす。
するとエントリーゲートの待機エリアに下からゆっくりと『黒色の装甲のAG』が出てきた。
「これが…」
「あぁ、これが黒鉄だ」
いつのまにか御影先生も来ていた、気づかなかったぞ。
…思えばアリーナで見学しようと思ったときも御影先生に背後を取られてたな。
「九条、早速だが装着しろ。対戦相手であるフレヤは待っているし、最初のフォームアップや機体設定をしている時間は無い、きっと細かなセッティングはAG本体の自動フォーマット機能がやってくれるはずだ」
「りょ、了解です」
そうして俺は黒鉄を装着したいのだが…どうやってやるんだこれ。
装着方法は一応書類や講義でやったけどさ、『装着するイメージ』って説明された時は目が点になったぞ。
とりあえず触れてみるかと思い俺よりも大きい黒い装甲を持った黒鉄に触れる。
「…!」
何だこれ、頭の中に黒鉄の情報や性能が流れ込んでくる?頭の中に知識が強制的にねじ込まれている感じになるが…悪くない気分だ、初めて乗るのに。
そして何故かこうすれば装着できると頭の中に浮かんできた言葉を口にした。
「黒鉄、展開」
次の瞬間、黒鉄は粒子化し俺の周りに漂い始めて俺の身体に集まり始めた。
足先から少しずつ粒子が俺に纏い始め、そこから腕の先へと纏われた時、黒い装甲は俺を包み込んだ。
装甲の所々からキーンと音が鳴ったり、空気の抜ける音がなるのが心地よく感じる…。
「馴染む…」
初めて装着したとは思えないほどの馴染む、試しに両手に装着されたアームや手を動かしてみる。
カチャカチャと音はなるが俺の意識できちんグー、パーと動きアームもきちんと俺の思った通りに動いてくれた。
これを生半可に『操作』とは言えず『繋がっている』と言えるだろう、俺の脳から受け取った動きをこの黒鉄は理解し、動いてくれる。
「!」
俺の周りの装甲から音が止むと一気に視界がクリアになり、このAGとの一体感を感じる。
さっきの緊張も嘘のように無くなり力が抜け、それと同時に俺の目の前に大量のディスプレイビジョンが浮かび上がり様々な事が書かれて、一つ一つ理解できる。
何なんだろうか、この感覚は
「どうだ九条?」
「馴染みますし、落ち着きます」
「そうか、自動フォーマット機能も問題なく作動しているな」
「…ん?」
すると、ディスプレイビジョンに赤く文字が浮かび始め音声が流れた。
『ここから約150メートル先、上空に敵AGを捕捉。操縦者フレヤ・アレクサンダー。機体名『スプライト』遠距離型AG、専用アビリティ所持』
「これは…」
「AGのスキャンセンサーだ、付近の物やAG、敵勢力の発見を補ってくれるが…やはり」
「どうしました?」
「お前の機体は並みの機体よりもスキャン範囲が小さい、視界内のスキャンや捕捉は九条の目が頼りになりそうだ」
「わかりました」
並みの機体よりもスキャン範囲が小さいと言われたが何とも思わない、というよりこの機体なら大丈夫だと思えてくる。
「では九条君、ゲートに搭乗を」
「了解です」
柊木先生に案内されたエントリーゲートに行き、ディスプレイビジョンで表示された通りゲートの射出装置にレッグを装着し、腰を少しかがめる。
『ゲート開放および射出10秒前』
これから戦うのに緊張感は一切感じない。
中学時代の部活の試合の時なんていつも心臓バックンバックンだったのに…この機体には身体を預けられる安心感がある。
安心感を俺に与えながらもこの機体はセッティングやフォーマット、夥しい量の情報を処理してくれる…今思ったけど何でこんなに嬉しいんだろう?
『3秒前』
「その辺は黒鉄に任せて俺は戦いに集中だ」
三秒前と言われハッとし意識を戦いに戻す。
黒鉄にセッティングなどは全て任せて、深く深呼吸…よし黒鉄、行こう!
2、1とカウントが進み0になった瞬間、ゲートは開きビーッと音が鳴り射出装置は前へ進み始め、俺は黒鉄と一緒にアリーナの決闘場に射出された。
「…」
地面に足をつけて上を見上げるとそこには『敵』が空から俺を見下ろしている。
『きちんと逃げずに来ましたのね』
フレヤさんからの通信がこちらに繋がりそう言われる。
あの機体がスプライト…赤色の装甲に浮遊している二枚の浮遊シールドにジェット機構、そしてAG並みの大きさのスナイパーライフルを携えている、空に浮いているからあそこまで大きな武具でも邪魔になることは無いのか、なるほど…。
あ、黒鉄が武器の情報を出してくれた。
超口径レーザーライフル『スターダスト』、直径40cmのレーザー弾を放ち、射程範囲は1500m、現在地点だと俺への着弾までの時間はおよそ0.32秒…うーん、ほぼ予測か反射で避けるしかないな。
でもまぁ敵の武具を調べてくれるのは助かる。
「言ったろ?逃げも隠れもしないって」
『ふん、その調子がいつまでもつのか見物ですわね』
「こんな事をいうのは気が引けるが、敵に雑談する暇があるなら集中したらどうだ?」
『…なんですって?』
「クラスメイトだろうが、イギリスの貴族だろうが今は敵だろ?」
文句には文句、煽りには煽りで返す。
『警告、敵AGが武器のセーフティーを解除』
…怒ったみたいだ、はぁワンチャン死ぬな俺、死なないようにその時の判断を信じて戦おう。
『ただでは殺しませんわッ!!』
『敵AG戦闘態勢へ移行』
キィーンと中々聞いたことの無い音がなると同時に閃光が見えたその刹那、『光』が俺に向かってきていることに反応できた俺は黒鉄のレッグで地面を蹴り横に回避。
「っぶねぇ!?」
『よ、避けましたの…!?いいえ!まぐれですわ!』
反応は出来たが、これが動きながらだと回避なんて絶対無理だ。
少し地面を走り距離を遠ざけたいが遠ざければ一方的に撃たれる事なんて目に見えてる、なので…あえて詰める!
『苦肉の策ですわね!』
もう一発来る!反応は出来たが…
「ぐっ!?」
レフトアームに被弾し、衝撃が直に伝わり少し後ずさる。
『レフトアームに被弾、ヘルスエネルギー32低下、アーマー損傷:低。ヘルスエネルギーの残量:968』
やっぱりヘルスエネルギーは持ってかれるか!
このAGの戦いは相手のヘルスエネルギーを0にすれば勝利となる、こういう決闘でもマジの戦いでもだ。
AGには三つのメーターがありそのうちの一つが『ヘルスエネルギー』、人間でいうところの血液であり、AGの心臓を動かすためのエネルギーだ。血液が無くなれば人間は死ぬ、それと同じようにヘルスエネルギーが0になればAGは止まる。
あと、今気が付いた事なんだが、俺の画面に映っているメーターや数値に目を向けると本来あるはずの三本メーターが…二本しかねぇ!?
ヘルスエネルギーの他にも、『パワーエネルギー』『シールドエネルギー』とあり、パワーエネルギーはAGでのスラスターやブースターの出力を上げた行動や、高速飛行など様々な行動に使われるエネルギー、人間で言うと『活力』だ。
シールドエネルギーはAGの本体のヘルスエネルギーの消費を抑えアーマーや操縦者を守るためのエネルギー、使用用途はアーマーの損傷を抑えたり、操縦者が死なないようにする為が全てであり、このエネルギーの残量が少なくなるにつれてヘルスエネルギーが減りやすくなりアーマーに損傷を与えやすくなる。
そして最も考えたくないのがシールドエネルギーが0になった時、操縦者を守るエネルギーが無くなるため攻撃をくらうと直にダメージが入る…つまりだ。
この状況でシールドエネルギーが0になりあのスターダストを貰うと…俺は死ぬかもな。
んで今の衝撃を受けて気づいた、この黒鉄シールドエネルギーが一切ない!
0というより無い!メーターすらもだ。
『今ので気づきましたわ、貴方のAGは飛べませんのね?』
「…」
『黙認ですか?』
痛いところがフレヤさんにバレたな、しかもさっきよりも高度を上げたし…一方的に撃ち下ろすつもりか。
『まぁこの際どうでもいいですわ、なので楽にして差し上げます…!』
「!?」
何だ?浮遊シールドから何か出てきたぞ…?四個の小さな浮遊物体を見ていると、その浮遊物からスターダストより出力は抑えられてはいるがエネルギー弾が放たれた、ビットかアレ!
「まずっ!?」
俺を狙ってきた四発のエネルギー弾を間一髪で躱したが…
『ふふっ、予想通りですわ!』
「!」
スプライトが持つスターダストのレーザーがこちらに向かって放たれ、それをレフトアームで受ける。
『警告、警告。レフトアーマーの損傷が中になりました。ヘルスエネルギー270減少、ヘルスエネルギーの残量:698』
クソ…ヘルスエネルギーがごっそり持ってかれた、てかシールドエネルギーが無いからヘルスダメージがデカいのか!
お陰様でレフトアームから少し嫌な音がする…結構マズイ!
『まだまだ行きますわ!』
空からレーザー掃射の雨が降り注ぐ、避けるので手一杯だ!
所々避けられず被弾してしまい、黒鉄からけたたましくアラートが鳴り響き損傷部位の画像が送られてくるが、全部見てられる時間がない!今じゃ一分一秒が惜しい!
「な、何か無いか!?」
思えばこの戦闘が始まってから手ぶらだ、武器も何も持ってない。
黒鉄が現状可能装備一覧を見せてくれるが…一覧という意味を問いたいと思った。
装備できるのは一つのみ、『ブレード』としか書かれていない近接用武器だった、遠距離武器は何一つない。
だがないよりはマシだ!
「ブレード展開!」
黒鉄が粒子を放出しそれが右手に集まって、黒色の長方形のブレードが握られた。長さは大体1.5m程。
これが俺の剣、てか剣…なのか?どちらかというと菜切り包丁みたいな感じだ、刃が切れなさそうだけど!
『遠距離AGに対してブレードを装備するなんて…笑わせないでほしいですわ!』
すぐさまスターダストで俺に向かって撃ってくるが躱す、もうその動きは見た。
(何か突破口は無いのか!?)
このままじゃ中に浮いているフレヤさんの機体『スプライト』にダメージを与えるなんて不可能だ、俺の機体とは違って飛べるからな近づく前に潰せばいいからフレヤさんの方が圧倒的に有利だ。
「!」
また四本のビットからエネルギー弾が放たれる。
クソ、ビットがまた俺を狙ってくるのか!
「…?」
狙いが甘い…?
ほぼ確実に俺の機体を狙って来ていたのに狙いが甘く回避しやすい、何か怪しい…そう思ったのも束の間、上を見上げると
『これで終わりですわ!』
「げっ!?」
スプライトのウェストフレームが変形し、二本のバレルが姿を現す。
またレーザーかと思ったが放たれたのは…ミサイル!?
(やばい!やっぱり罠だし、レーザーかと思って撃つより先に回避を選択しちまった!)
ジャンプして飛び上がった機体に容赦なく迫ってくるミサイル。
俺はこのブレードの腹でガードしようと試みるがドゴォォォン!と轟音が響き目の前が赤く染まり衝撃と熱が全身に伝わりそのまま吹き飛んだ。
「ぐはっ!?」
地面を転がり飛びかけた意識を黒鉄が取り戻してくれた、シールドは無いけど気絶などを抑えてくれる機能『操縦者生命保護機能』はついていたか…。
「ありがとう…黒鉄!」
ブレードを地面に突き刺してそれを使いながら身体を無理やり起こす。このままじゃ埒が明かない…どうすれば。
そう考えていると
「む?」
黒鉄から警告アラートとはまた別の音が鳴りディスプレイビジョンに何か表示されたと共に音声が流れた。
『ファーストフォーマット完了。ジェット、スラスター、ブースター解放されました』
ーーー
「あ、あのー…御影先生?」
「何だ?」
「えっと…その、あまりにも一方的な試合ですがどう見ていますか?」
「…」
場所は変わりアリーナ管理室。
今、ここには柊木先生、御影先生の他にも様々な先生や専用機を持つ上級生、生徒会生徒がいる、もちろん全員フレヤ対九条の対決を見ていたが…ほぼ全員の意見は一緒で『あまりにも一方的な試合で見てて辛い』とのこと。
今すぐにでもこの試合を中止にしたいと思っている生徒や教員がいるがそれを否定するものが一人居た、それが御影先生。
「どうも何もまだ分からない」
「まだわからないって…現状の状況だと九条君が負ける方が」
「みなはそう思っているだろうが、私は違う」
「と言いますと?」
柊木先生が何故御影先生が一方的な試合だと思っていないのかを問う。そういうと御影先生はもう一度モニターを見る、全職員全生徒が見たモニターを。
殆どの生徒は試合展開など何も変わっていないと思ったが…。
「気が付かないか?」
「あっ…!?」
ここで柊木先生は何かに気が付いた、急いで現段階の戦闘データのグラフを見てそこで確信した。
「動きが良くなってる…!」
「あぁ、明らかに最初に比べて動きが良くなってきている」
ここで他の先生方や他の生徒も最初の戦闘の動画を見てから今の戦闘を見ると、全員納得した。
最初のダメージ被弾率はとても高いが少しずつ、というより一気にダメージ被弾率が下がっている。
画面の先ではフレヤの放つビットのエネルギー弾やビームライフルのレーザーも避けている。
今の九条と黒鉄は間一髪やまぐれで回避、というよりも予測して避けているいるのだ。
「それに今通達が来た、たった今黒鉄のジェット機能が解放されたらしい」
「でも何故九条君は使わないんでしょう?使った方が戦況は変わると思いますが…」
「恐らくだが、九条は待っているんだ」
「待っている?」
「アレクサンダーの決定的な隙を」
ーーー
(クソ…!)
『残りヘルスエネルギー543』
フレヤさんの動きは大体分かった、お陰で回避しやすくなったり攻撃先も分かるようになったが…如何せん被弾は0には出来ない。
あのビットの動きが読めん!だが一つ分かったのはビットの攻撃とあのスターダストの攻撃は一緒には来ない、絶対にビットで俺の回避先を確定させてから撃つ戦略の頻度が高いし、その攻撃自体多い、スターダスト単体で攻撃してくるときもあるがその時のビットは動いているだけで背を見せても撃ってはこなかった。
でも俺が欲しい攻撃はそれじゃない!
『くっ!ちょこまかと…!』
「!」
ビットの攻撃!明らかに俺を右に回避させるように撃ってきた、この回避の後絶対にフレヤさんはスターダストで撃ってくるはず!
(来た…!)
武器をを構え、ブレードの腹でレーザーを受け止めてそのままはじく。
『決闘開始から二十分も…中々持った方ですわね』
「そうかい…」
『しかし、これでフィナーレですわ!』
またさっきと同じようにウェストフレームが変形し始め二本のバレルが姿を現した。
(今だっ!)
そのバレルが見えた瞬間、レッグで地面を蹴り空中にいるフレヤさんに出来る限り近づく。
『愚策ですわね!!』
空中で後退しながら俺に容赦なく向かって放たれる二個のミサイル、そのミサイルが俺に近づくたびに少しずつ足裏のジェット、レッグフレームのスラスターとブースターにエネルギーを集中させる…。
(下がるな!前へ進め…!!)
ミサイルをブレードで受けずスラスターで前に進みながら躱すと俺の後ろで爆発が起きた。
爆風が俺の背中を押し始めた瞬間一気にジェットとブースターを解放!
「うおぉぉぉぉ!!!」
超高速で空に向かっていき、その先には…
「なっ!?」
『敵』が居る。
空を飛べないはずの敵がこんな行動をしてくると思わなかったフレヤさんは俺に向かってスターダストのレーザーを撃ってくるがそれをさっきと同じようにブレードの腹で受け止め横にはじく!
(さぁ何処に避ける!!)
ブレードを構えながらフレヤさんの動きに集中し、動いた方向への行動を考える。
この攻撃はあくまで当たればいい、次の攻撃で勝負を仕掛ける!
「無茶苦茶なことをしますわね!」
俺の攻撃は躱され、上昇していった。
そこを…!
「まだだ!」
ブレードを上向きに構えながらブースターでもう一度飛び今度はフレヤさんの上へ。
「逃がさねぇぇぇぇ!!!」
「くっ…!?」
ブレードを振り下ろす、反射なのかスターダストで俺のブレードをガードしたフレヤさん。
ここでビットの動きが変わり俺の方へ向かってきていた、きっとビットを呼び寄せ俺にエネルギー弾を放とうとしている。
だが…それより先に!!
「おぉぉぉぉ!!!」
肩、腰に力を入れて、ジェットも使いながら思いっきり切り抜けろ!!
「きゃあぁぁぁぁ!!?」
フレヤさんの機体はスターダストでガードしていたが衝撃をまともに受けてアリーナの地面に叩きつけられ、転がっていった。
でも試合はまだ終わってない!このまま一気に近づいて終わらせろ!!
ブースターを再発動し、一気に低空飛行のまま倒れているフレヤさんに距離を詰めていく。
「!?」
するとフレヤさんはスターダストとはまた別のスナイパーライフルを構えていた。
でもそんなことは気にしてられない、俺は臆せず突っ込む!
(いける!)
このままもう一度切り抜けば勝てる!
「うおぉぉぉぉぉ!!!」
目を見開き敵を見据えて更にスピードを上げてブレードを構え、振り下ろす
…しかし次の瞬間
ズドォォォォン!!!
俺の振り下ろしよりも先に後ろから轟音と共に風圧が
「うぉっ!?」
「きゃっ!?」
風圧を背から受けてそのまま吹き飛んだが、地面にブレードを突き刺して飛ばされないようにした、危うく壁に叩きつけられるところだった。
「きゃあぁぁぁぁ!?」
「おっと!?」
砂埃が舞い視界が悪い中、目の前からフレヤさんのスプライトも一緒に飛んできたので受け止めた。
「だ、大丈夫か!?」
「え、えぇ…」
良かった、大事ないみたいで…だがフレヤさんが飛んで来たって事はスプライトがやった訳じゃないのか、じゃあ誰が?
砂埃が少しずつ晴れて行き、その先には黒色の長方形のブロック?のようなものが突き刺さっていた。
「何だ…あれ」
でも待てよ?アリーナの試合中は遮断シールドっていうのが周りに張られ観戦者に攻撃が及ばないようにするはずだ、それが貫通するなんてことは無いはず。
「えっ…!?」
空を見上げると一部分の遮断シールドが貫かれ割れている!?
「な、なぁフレヤさん」
「どうしましたの?」
受け止めたフレヤさんに対して質問する。
「フレヤさんの機体、スプライトのスターダストで遮断シールドって壊せるか?」
「無理です、私の火力では撃ち破ることは不可能ですわ…」
「ってことはあの物体はAG以上の攻撃で…?」
尚更ありえねぇよ…!?スプライトのスターダストでも壊せないシールドをアレは壊したのか!?
と内心焦っていると、あのブロックからブォォォンと音がなりながら変形していき形を生成していく。
長方形だった物が人型に形を変えていき…
『襲撃者』は俺たちに本来の姿を見せた。
誤字脱字、語彙力がほぼ皆無に等しいのでミス等がありましたらご報告お願いします
感想も待っていますので気軽にどうぞ!
超絶不定期更新ですがご了承ください…