第47話 枷は外された
あのひと悶着から時間は過ぎていった。
俺も練習の日々を送り、演劇部の感覚を思い出していく。物語の人物を自身の中に取り込むように…クラスメイトからも完璧と称されるほどに。
それで…問題のフレヤなんだがあれからも時々深夜にフレヤの部屋に入り、軽く話し合いながらメンタルケアを行い、何とか精神は持ったようだ。
だが…今日の演劇祭で何かを起こさなければフレヤはこの学園を去り地獄の日々を送る可能性もある。そのためにも、俺は。
「はるちゃん?」
「…あぁすまん、考え事をしてた」
隣に歩く谷氏、たそ、はちおと共に専用ステージに向かう。
専用ステージっていっても体育館だ。ただ体育館といっても変形して広くなった専用ステージ。室内だし雨天でも大丈夫、寒くても暑くても室内だから室内エアコンを使えば一括で問題解決。
「…本当に改めて思うけど女子ばっかなんだな」
「あぁ、こういうイベントじゃない限り俺以外に居ないし」
「ふーん、最初羨ましいとか思ったけど想像以上に辛そう」
「慣れれば楽、みんなめっちゃいい子だし」
「先生かよ」
「先生も綺麗だぞ」
「それはズルい」
「なぁロリッ子とかいないのか?」
「居るわけねぇだろ…!」
と様々な言葉を交わしていくうちに体育館についた。
「んじゃこの中だからな」
「はるちゃんは?」
「色々準備とかあるから」
「そうだな、頑張れ主役」
「どちらかというと姫の方が主役じゃね?」
そうして三人が体育館に入ったことを確認して俺は校舎に向かって歩き出す。
「ふぅ…」
『春斗、大丈夫ですか?』
「まぁ…緊張してる。演技もしつつフレヤを助けるために色々頑張らないといけないし」
『そうですね、それとご家族の方は?』
「既に体育館の中だ」
いや…保護者枠で爺さんと婆さんが来たのは良いけど、剣道の教え子みんな来るとか思わないじゃん?一番驚いたの俺だぞ?急に後ろから『九条先輩』とか呼ばれて後ろを振り向いたら皆いたんだから…。
『それと周囲に赫蝶を飛ばしておきました。これで目標の人物も探しやすくなるかと』
「本当、ありがたいよ」
『それとフレヤさんは校舎屋上にて誰かと話しています』
「…目標の人物かもな」
案外すぐに見つかったかもしれない。校舎について急いで階段を登っていく。
すると
「!!」
俺に目もくれずフレヤが泣きながら階段を降りていく姿が見えた。
そうなると…この先にか。
屋上の前の扉について、ドアノブを握りしめて扉を開ける。そこには
「君は?」
「…」
大人の男性と女性が居た。
フレヤに似ている顔つきに髪色、スーツ姿でピシッとしている雰囲気。
恐らくこの二人が…。
「フレヤの親ですか?」
「知っているのかい?」
「恐らくで言いました。違いましたらすみません、今探しているんです」
「…君の探し人は私たちで合っているよ」
「分かりました」
やはりこの二人で合っていたようだ。
「では、時間もないので単刀直入に聞きます。フレヤの結婚の件は分かっていったんですか?」
「そこも知っているのか、盗み聞ぎか?」
「いいえ、フレヤ本人から聞きました。もう一度聞かせてください、貴方たちはフレヤの気持ちを分かって言ったのですか?」
「…あぁ」
やや考え込んでからいって来た。
「俺に嘘を付く必要はないです」
「そうか…なら君になら言ってもいいかもしれない」
「あなた!でも…」
「いいんだ、フレヤが認めたこの男子なら」
「…」
「フレヤにも言っていないが、この婚姻の詳しい話をさせてくれ」
「えっと、先に名前を聞いても?」
「おっと自己紹介を忘れていたな、すまない。私は『グレイソン・アレクサンダー』、そして妻の『マリア・アレクサンダー』だ。君は」
「九条春斗です」
そうしてフレヤのお父さんこと、グレイソンさんは語り始めた。
「君が何処まで知っているかわからないが、はっきり言うとこの婚約は私は認めていない」
「認めていない?」
「だが認めざる得なかったんだ。君はアレクサンダー家のAGは知っているね」
「はい、『スプライト』ですよね」
「あぁ…今も思うが私はとんでもない物を作ってしまったと後悔している」
「?」
「…あの機体はまだ初期設定が終わっていないのだ」
「はあっ!?」
あまりにも衝撃的な発現に驚く。初期設定が終わっていない状態であの性能なのか。
何というかゼフィルスのような感じだ。
「まだ秘めたる性能があるがそのせいで、フレヤが危険にさらされてしまったのだ」
「何故危険に?」
「知らないと思うが国外からの専用機持ちの生徒はこの学園に入るためには初期設定を終わらせていないといけない。理由はフォーマット時の異常や整備不良をこの日本で治すことは難しいので禁止だからこそだ」
「初期設定が終わってないのに学園に来てしまったのがマズいと」
「あぁ」
「何故そんなことを?」
「あの子を…フレヤを守るためだ」
すると取り出したのは一枚の写真。
「それは?」
「昔のフレヤの写真だ。あの時は健気で元気な子だった、アイツが現れるまでは」
「アイツっていうのは、フレヤが言っていた…?」
「恐らくその通りだ。私はフレヤを守るために早期入学させた。理由はフレヤを魔の物から守るために、もう二度と傷つかないようにだ」
「…」
「だが…バレてしまったのだ。その亡者に」
「!」
最悪な予想が頭をよぎる。だがそれが実現してしまった。
「名前は『ルゥサ・ガリアルド』。初期設定も終えていない機体を持ちながら規則を破り、学園に入学したフレヤを知り…手に入れる為だけに私たちアレクサンダー家を脅してきたんだ。もし取引に応じなければ、本国にてアレクサンダー家の闇を晒してやると」
「…」
「その取引の内容は…フレヤとその亡者を結婚させることだ。私のせいだ…私のせいで」
「そうか、なら」
「歯を食いしばれぇぇぇ!!」
俺はグレイソンさんの胸倉を掴み思いっ切りぶん殴った。
「九条…君?」
「何故それをフレヤに言わなかった!!」
「君には…私の思いが分からないだろう?」
「あぁ分からないさ!だとしてもだ…それを言えばフレヤは二度も泣かなかったはずだ!!」
「二度…だと?」
「アンタたちは知らないと思うが…理由を知らずにフレヤは絶望して泣いていたんだぞ!何故話し合わなかった!アンタたちは家族だろ!?血がつながった大切な家族だ、それなのに…何故だ!!」
「…言えるわけがないです」
殴られ俺の言葉に言い淀んだグレイソンさんではなく横にいたマリアさんが口を開く。
「私たちは怖かったのです。あの子に拒絶されてしまうことが」
「!」
「あの子は確かに優しく凛々しく立派に育ってくれましたが…それ以上に私たちはあの子をこれ以上傷つけたくなかった。ですが傷つけたくないという感情のまま育ててしまったが為に、私たちはフレヤに拒絶されたく無かったんです」
「…」
「親としても子が離れていくなんて…そんな生殺しのような事が嫌だったんです」
そうか、怒りのまま殴ってしまったけどこの人たちも親だ。実の娘から拒絶なんてされたくなかったんだろう。だからこそ言えなかった、か。
「グレイソンさん、殴ってしまったことをお詫びさせてください。もし許せなければ遠慮なく俺を殴ってください」
「いや…いい。大丈夫だ」
グレイソンさんに手を伸ばして立ち上がらせる。
「その、こんなことを聞くのもアレなのですが何とかならないんですか?」
「…1つだけある」
「1つだけ?」
「実は今日のフレヤの舞台が終わったと同時に本国に連れ戻される、その亡者の刺客によって」
「刺客…」
「それを無力化、あるいは倒すことが出来れば時間を稼ぐことが出来る。そうすればまだフレヤとも話し合えるかもしれないが…私たちにはもうどうしようも」
「分かりました」
「え…?」
「刺客を無力化すればいいんですね」
聞いた事を頭の中で復唱して、ミッションの内容を確認する。
先に言っておくがこれは依頼されていない。偶然!偶々!俺が聞いちゃっただけだから!
「では」
「ま、待ってくれ!何をする気だ!」
「俺が刺客を止めます」
「な、何故だ?君は私たちとは無関係のはず」
「かもしれません。ですが…」
『皆さまと一緒に笑いあって競い合って…友達らしいことをして…どれも大切な思い出ですわ!それを手放すなんて…私には』
「これ以上友人が傷つかない為に戦うだけです」
フレヤはこの日常が奪われたくないと言っていた。なら俺はその日常が奪われないように刃を握る、それだけだ。
「それでは」
そうして俺は屋上から飛び出して、赫蝶の情報を元に刺客を探し始めた。
◇◇◇
「あの少年が九条春斗か。なるほど、フレヤの言った通り無鉄砲で自己犠牲すら厭わない。でもそれ以上に優しさは本物である、か」
「フレヤが惚れるのも納得ですね」
「あぁ…あの少年とフレヤがもう少し早く会っていればこんなことにはならなかっただろうに」
二人の親は去っていった娘が愛する者の背中を見てふと呟いた。
◇◇◇
しかし飛び出したのは良いが…一体誰が刺客なのかもわからないな。
校舎内を軽く歩いているが周りを歩いている人たちも何一つ関係なさそうに体育館に向かっているし。
(手掛かり無いとそりゃこうなるよな…)
手当たり次第に情報を仕入れるのはRPGの基本で今やることもできるがマシな情報を得られそうな人がいねぇ。
うーん…。
『春斗』
「うん?どうした」
『学園中に放っていた赫蝶ですが、変な痕跡を見つけました』
「痕跡?」
『はい。場所は学園、校舎の地下2階の隔壁にこじ開けられたような痕跡を二つ見つけました』
「…二つ?」
『中に赫蝶を飛ばそうとしたのですが、周りが暗く赫蝶の粒子でバレる可能性があります』
「わかった、なら直接向かおう。丁度校舎内だしな」
『了解です、では案内を開始します』
俺の右手から一匹の蝶が出てきたのでその後ろをついていく。
「てか地下か」
思えば地下に行けるような階段やエレベーターとか見たことがない。
そもそも地下があること自体驚きだ。いや…何処かで聞いたのを俺が単純に忘れているだけなのか。
いやね?この学園広すぎるんだよ、半年以上ここで過ごしてるけど今だに知らない所とかあるからな。
しかも地下も存在するとか…この学園の全ての地形やら何やら覚えるのにどれくらいの月日をかけないといけないんだ?
『ここです』
「…え、何もないぞ?」
赫蝶の後ろをついていっていると今は人気のない校舎裏に付いた。
パッと見、階段も無ければエレベーターもない。梯子もだ。
『赫蝶が示す場所に手をかざしてもらってもよろしいですか?』
「ここか?」
言われた通り赫蝶が示した場所に右手をかざすと何も起きないが…押し込めそうなくぼみがあった。もしかしてこれはスイッチか?
押し込むとガコンと音が鳴り、地面の一部が変形し始め地下へと続く階段が出来上がった。
…いや、何で?
「ここまで来ると学園というか…基地?」
『私も同じ感想です、この学園はいったい何なのでしょうか』
「何だろうな。とにかく行くぞ」
制服を脱いで中に来ていた対AG用強化スーツに身を包み、非常用灯くらいの明かりしかない薄暗い階段を降りていく。
降りている間も警戒を解かず神去の柄に右手を添える。
(地下2階…この階か)
階段を降りているときに壁に付けられていた表記を視界に捉え、階段を降りるのをやめた。
てか、まだ下れそうなんだよな。地下何階まであるんだ?
まぁ…おいおい分かるようになるだろうとは思うけど、とにかく行こう。
赫蝶の導きの元歩き続けると、確かに隔壁がこじ開けられている。
この先に何かあるのだろうか?
学園の隠された秘密?秘宝?データ?機密事項?…とその先にありそうなものを例として挙げるがキリが無い。
こういう時は。
「どちらにしようかな、神様の言う通り…右だ、よし」
『…そんな適当に決めるものなんですか?』
「だって他に決める方法が見つからないだろ?」
『はぁ…』
「え、ため息!?」
『いえ、気にせず』
赫蝶の反応が少し気になるが俺の指に宿った神様は右を指したので右側のこじ開けられた隔壁をくぐり中に入り、歩く。
…すると。
「!」
『AG』が居る。
俺に背を向けていて俺に気づいていないが…この学園の誰のでもない機体。黄色い装甲でシャープな曲線を描いていて、俺の白鉄に似ている装甲や造形。それにアレは…剣?
待て、剣だと!?
「アイヴィー!?」
「!!」
しまった…!驚きのあまり声を出してしまった。
「何故ここに居るんだ!九条春斗!」
「それは俺のセリフだ!何でここにアイヴィーが…」
「…まさか貴様」
「そうなのか?」
突き刺していた剣を抜いて俺に剣先を向ける。
「…正直な話、俺もそんな気がしてきたぞ。お前が『刺客』か?」
「…!」
俺が質問に対して質問に返していると、剣先が俺に振り下ろされる。
それを神去で受け止めた。
「やはり、か…アイヴィー・モルドレッド!!」
「くっ!」
お互いの刃から火花を散らしながら互いの様子を伺う。
流石、専用機だ。訓練機とは比べ物にならないくらいのパワー…しかも近距離型と来たか。
一度相手の武装を確認したほうがいいかもな!
振り下ろされた剣を左に流して、後ろに後退する。
「赫蝶頼めるか?」
『春斗ならお願いすると思って既に終えています』
「流石だ…!」
赫蝶の情報を頭の中に流しながらアイヴィーの剣を受け流したり防いだりする。
機体名『ランスロット』やはり近距離型AG、武装は『聖剣:エクスカリバー』のみ。
遠距離武器はないが機動力やパワーも高い。そして専用アビリティ持ちか。
ガギィン!と刃を交えて受け流しつつ、神去の斬撃を左手のアームに防がれたので右足のハイキック。
よろけながらも剣を振ってくる。俺は交わしながら回り込み、納刀。
飛び上がりアイヴィーの背を取る。
トリガーを引くと、杭が飛び出す。その速度のまま、抜刀。
「がっ!?」
怯んだと同時に背中を両足で蹴り、距離をとって刀を構える。
「どんな身体能力をしているんだ…!生身の人間がAGに適うわけがない!」
「かもな。だが…それは並みの人間ならだ!」
身体を起こしながら俺に剣を構える。
「なぁアイヴィー、1つ聞かせろ」
「…」
「お前がこんなことをするとは思えない。フレヤ様と慕うお前が…フレヤを地獄に叩き込むようなことを!」
「…そんなこと」
「!!」
インパクトブーストしながら俺に剣を振り下ろしてくる。神去の腹で受け止めるが…衝撃が足にかかる。
「ぐっ!?」
「そんなこと…私が一番わかっている!!」
「がっ!?」
アイヴィーの叫びと共に俺は蹴り飛ばされ冷たい通路を転がっていく。
「ぐっ…割と痛いな」
痛みがところを押さえながら神去を突き刺して立ち上がる。
「お前には私がどういう人生を送ってきたか分かるまい!」
「…」
「私は…貴様のような男どもに下りたくはないんだ!!」
ミシッとアイヴィーの握る聖剣から握りしめられる音が聞こえてきた。
それほどまでに…?
「なのに…私は…私はッ!!」
「ぐっ!?」
さっきよりも力の込められた剣技。防いだり交わしたりするがまともにくらえば死ぬ。
「がはっ!?」
防いだが吹き飛ばされ背中を壁に叩きつけられる。
「いってぇ…!」
「…私は」
下を向きながら剣を両手に構えてだらんとしている。
さっきからアイヴィーさんの様子がおかしい…?
「すまん、こんな戦いの最中だが聞かせてくれ。お前は何故協力している?」
「…九条春斗」
「…」
「脅されているのはアレクサンダー家だけではない」
「!!?」
そういいながらAGスーツの襟をグイッと引っ張るアイヴィー。その先には…。
『黒い首輪』が付けられていた。あまりにも似合わなすぎる異物。
「それは…!?」
「モルドレッド家…いや、今はあんな物などどうでもいい」
「どうでもいい…?」
「私は堕ちた貴族の娘だ」
「…」
俺を…いや『男である』俺の存在を敵視するかの如く俺を睨みつける。
「モルドレッド家は今まで、騎士道を重んじる貴族として存在していた。もう騎士道も何もないが」
「何もない…」
「私は生まれてきてから母はおらず、様々なことを父に強要されて育ってきた。この剣技だってそうだ、父から教わられた忌々しい術…そして学校に入学した際には男どもに虐げられた。女が剣を持つな、女風情が男の前に立つな、と。そんな時に出会ったんだ。フレヤ様と」
「そこでフレヤと出会ったのか」
「私が弱く男に虐げられている時、間に入り助けてくれた…唯一私に手をさし伸ばしてくれた人なんだ。私の…唯一の光なんだ」
「なら何故…」
「奪われる様を黙ってみているほど私は愚かではない。反抗したさ…ガリアルド家に!」
そうして拳を壁に叩きつけた。
「だが、無意味だった!既にモルドレッド家の大多数はガリアルド家に売られ、私の父も…私が生まれた時からアイツらの仲間だったんだ!!母も…売られたと聞いた」
「!!」
「私にはこれしかないんだ、こうするしかなかったんだ…!」
刃を構えて俺を見る。
「私はお前を倒し、フレヤ様を連れて何処かへ飛び去る。二度と…光を奪わせないように!!」
「そういうことか…!」
アイヴィーは協力しつつも根本の願いは違う、手に入れるのではなく…『救う』。
フレヤを地獄の呪縛から逃がすことだけを考えているんだ。
「その計画の為にも、お前を倒さなければならない!!九条…春斗!!」
俺に向かって殺意を飛ばしながら叫ぶアイヴィー。
その覇気に若干驚きつつも刃を構えた。
次の瞬間
ーードゴォォォォォン!!
「うぉっ!?」
俺らの通路の地面が爆発し、アイヴィーのみがその下へ落ちていく。
「アイヴィー!!」
…何故爆発が起きたのかはわからない。アイヴィーの過去も俺には真の意味で理解が出来ない。
刺客は転落し、無力化は完了した。
…アイヴィー自身は何も悪くない。アイヴィーの父とガリアルド家の命令している者が元凶だ。
(助けよう、根本は違えどフレヤを助けようとしている気持ちは俺には分かる)
神去を納刀し、ぶち抜かれた大穴を少しずつ下っていく。
(何処まで下に落ちたんだ…?)
◇◇◇
「う…うっ?」
私は…?
さっき九条春斗と戦っていて、急に地面が爆発し転落して…。
くっ…頭が痛い。AGで衝撃を受け流しきれなかったか。
「無様だな、アイヴィー」
「!!」
その声に反応してからを勢いよく身体を起こす。
「ルゥサ…!」
私の…恨むべき相手が目の前にいた。
「何故ここにいる!!」
「そんなことどうでもいいだろう?それよりもお前は僕たちの計画を裏切った。その罰を受けてもらう」
「うぐっ!?がぁぁぁぁぁっ!?」
私の身体中に電撃が走る。
私の…首に着けられた首輪がそのような装置であることは知っている。というより反抗した際にこの機器が付けられて同じような痛みを味わった。
これのせいで、私はコイツに反抗できない。
「使えると思ったが…興ざめだな」
「くっ…!」
「なんだその目は?ふん」
「がはっ!?」
いつの間にかAGは解除されていて、倒れていたにもかかわらず私の腹に蹴りを入れるルゥサ。
「…いや、いいことを思いついた。おい、やれ」
「はっ」
ルゥサの側近が近寄り、私の着ていたAGスーツを破り捨てた。
「な、何をする!!」
身体を覆い隠すように腕を回す。
「お前も母と同じように慰み者になれ、多少それで場は濁せる」
「貴様…!」
「ほら、お前らやれ。好きにしていいぞ」
「…だってよ」
私のAGスーツを剥いだ二人が両手を私に伸ばしてくる。
ーー嫌だ。
逃げるように走るが電撃を受けた身体じゃまともに走れず腕を捕まれ、壁にに押さえつけられた。
「逃げんなよ…へへっ、俺たちで楽しむとするか」
「あぁ、そうだな。騎士の癖にそんなだらしない物をぶら下げているのが悪いんだからな」
嫌な笑いをしながら私の身体に手を伸ばしてくる。
嫌だ…私は…!
慰み者として終わってしまうのか…?
その時
「はぁっ!!」
「ぐあっ!?」
私の身体に触れようとしていた二人がルゥサの方へ吹き飛ばされた。
「く、九条…春斗…?」
「…」
すると春斗は…私に近づいてくる。
(あぁ…助けられたと思ったら結局は自分の欲を叶えるだけの男か)
一瞬見えた希望も消えてこの世の全てに絶望していたら…ファサッと何かを身体にかけられる。
「…え?」
「俺の制服で悪いがそれを着ていてくれ」
かけてきたのは九条春斗の制服。それを着るように言ってきた。
「くっ…お前何しやが」
「黙れッ!!」
次の瞬間、吹き飛ばされた二人を九条春斗が殴り飛ばして私の元へ近づけない様にしてくれた。
そして思い出す。フレヤ様の彼の評価を。
『フレヤ様』
『どうしましたの?』
『貴方に無礼な口調で話しかける九条春斗とはどのような人物なのですか?』
『…そうですわね』
『春斗さんは無鉄砲で後のことも考えず自分の命を簡単に投げ出すような愚か者かもしれません』
『でも…それ以上に彼の中に宿る優しさは本物なのです。どんなことでも手を差し伸べ私を助けてくれるような…王子様のような存在ですわ。あ、でも色々な所で人を助けてしまうのでライバルが多いことも欠点ですわね』
私は初めて頬を赤らめながら語るフレヤ様を見た。
認めたくなかった、フレヤ様をたぶらかす男を。どうせ裏切るに決まっている、そう思っていた。
だが…。
「お前…俺のクラスメイトに何してくれてんだ?」
今私の前に立ち、刃を抜いて私を守ろうとしてくれている。
先程までに敵だった私を。
「アイヴィーさん」
「!」
「前に庇うことに理由は必要か?何て言ったな」
「…」
「たった今理由が出来た」
「俺はフレヤと…アイヴィーさんを守る。コイツを倒して呪縛を消すために」
「!!」
私は手を差し伸べられるのではなく、『守る』と言ってくれた。
他の男とは違い、私を守る。フレヤ様と違って手を伸ばし共に歩くのではなく、歩いていけるように守ってくれるような…そんな優しさを持つ男。
それが九条春斗。
ーー騎士である私を、唯一守ってくれる男…か。
◇◇◇
とんでもない光景が目の前に広がったせいで高所から飛び降りて蹴っちゃったぜ…。
もちろん、狙ってやったけどね。本当は殴り飛ばしただけで済んだことを感謝してほしいくらいに…今、俺は機嫌が悪い。
「…さて、聞こうか。フレヤをどうする気だ」
「九条春斗」
「あぁ、どうした?」
「今、お前にはAGが無いのだろう?」
「それが?」
「まだわからないのか?」
そうして目の前に居る男が指を鳴らすと無人機のAGが4機現れた。
「この人数相手に何ができる?」
「そうだな、馬鹿なお前にもいいことを教えてやる」
「何?」
「俺は敵が4人、100人、1000人居ようが逃げる理由にはならないし、負けるつもりもない。そして答えろ、フレヤをどうする気だ?」
「ふん…簡単だろう」
「欲を満たすのに丁度いいから貰うだけだ」
…コイツ今何て言った?
「あれほどまでに良いルックスや身体を持つのに戦場で失くすのは勿体ない。だからこそ僕の家で匿えばいいだけだ」
「…」
「あぁ、安心しろ。殺すこともない。そこにいるアイヴィーと一緒に地下で仲良く暮らしてもらうだけ。まぁ…僕たちに『奉仕』してもらうが」
「…」
『春斗、コイツはダメです。明らかに異常です。今すぐに対処を』
「…」
『…春斗?』
ーー壊セ。
俺の中に怒りの感情が湧き上がる。
ーー捻ジ伏セロ。
俺を鎖にヒビが入る。
ーー破壊シロ。
もう、考える必要はない。
ーー殺セ。
俺の中の鎖が砕け散り…。
何かが俺を覆いつくした。
資料集更新
追加内容:アイヴィー・モルドレッド 『ランスロット』
誤字脱字、語彙力がほぼ皆無に等しいのでミス等がありましたらご報告お願いします
感想も待っていますので気軽にどうぞ!
超絶不定期更新ですがご了承ください…




