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インフィニティ・ギア  作者: 雨乃時雨
第二部
47/122

第45話 最悪な転機

俺の誕生日は過ぎ、11月に入った。

制服は冬仕様に変わり、ほんの少しずつ冷えていく気温に若干苛立ちを覚えながら教室に向かって歩いていく。

俺は寒いのが嫌いだからな。いや、気温が下がっていくのに比例して冬の食べ物は美味しくなるし、こたつとか布団の支配力が上がっていくのも良いけど…何より寒いと指とか痛くなるし、雪とかで滑るし色々嫌だ。

もう冬の時期だけこたつで冬眠したい。

人間の機能に冬眠はないのか?無いよなぁ…。

なんて考えながら歩いているとフレヤを見つけた。


「ん、フレヤ。おはよう」

「…」

「フレヤ?」

「えっ!あぁ春斗さん、おはようございます」


驚きを隠すかのように挨拶を返すフレヤ。

思えば11月に入った瞬間からフレヤの様子がおかしい、何というか…考え込んでいるというか余所余所しいというか。


「最近どうした?何か焦っているというか考え事があるのか?」

「い、いえ…何でもありませんの」


そうして俯くフレヤ。いや…珍しい。

フレヤはかなりの自信家で基本的には前を向いて淑女らしく振舞うのだが…俯くのは始めてみた。


「…そうか、もし何か相談事があるなら遠慮なく言ってくれ」

「分かりましたわ。ありがとうございます、春斗さん」

「あぁ」


そうして一緒に教室まで歩いていると…。


「ん?」


俺らの教室の前に人だかりが出来ていた。

俺が入学してきたときもこんな感じになっていたことはあったが…今の時期に?


「どうした?」

「あ、九条君。いや…美少女が居るの」

「…この学園って結構美少女が多いと思うけど」

「あ、そうじゃなくて…見たことない生徒が中にいるの」

「は?」


そうして背伸びしてクラスの中を見ると…確かにいる、明らかに雰囲気が違うのが。

金髪のロングストレートで凛々しい横顔。何というか王子様?みたいな感じがする。


「う、嘘…!?」


でもそれに一番驚いていたのは俺ではなく俺の隣にいたフレヤだった。


「フレヤ…?」

「アイヴィーが協力を…?いえ、そんなことありえませんわ…!?」


1人で考え込み何かをぶつぶつと呟いていると…。


「おい」

「!」


俺の目の前にさっきの女子生徒が現れる。

…なるほど。目付きは鋭い、俺を見据えているな。つまり…俺の事が『嫌いなやつ』ってことか。


「アイヴィー…」

「お久しぶりです、フレヤ様」

「フレヤ、知り合いなのか?」

「え、えぇ…ですが」


フレヤの顔が青ざめている。


「貴様」

「…何だ?」

「どのような口を持ち、フレヤ様に話しかけた」

「どのようなって言われても友人だからな、話すくらいするだろ」

「!」


友人という単語に反応したのか分からないが右手を上げ、俺を叩こうとしてきた。

もちろんただでくらう俺じゃない。腕を受け止めて手のひらは俺の頬ギリギリで止まった。


「男風情が…私に触れるな!」

「じゃあ黙ってくらえと?」

「くッ!」


腕を受け止めた俺の手のひらに力を込める。

生身とはいえAGと戦える身だ、人体は他の人よりも強いはず。


「二人ともお止めくださいまし!」


するとフレヤは俺とこの人の間に入り、俺たちを静止させた。


「…」


まぁ…フレヤが止めるなら俺も止めよう。


「貴様名前は?」

「名前を聞くなら名乗ってからだろ?」

「…アイヴィー・モルドレッド」

「分かった、俺は九条春斗。仲良くは…出来なさそうだし、事務連絡だけは聞いてくれ」

「ふん」


そうして険悪な空気のまま互いの自己紹介を終え、教室に入る。

予想通り、俺とアイヴィーさんの険悪な空気に疑問を持つものがまぁまぁ居た。

んで柊木先生が入ってきてアイヴィーさんの自己紹介が始まるが、前のアナスタシアの様に冷たく、冷徹な目で俺たちを見てきて自己紹介は終了。

イギリス出身のアイヴィー・モルドレッド…フレヤの反応を見るに知り合い、もしくは何らかの関係があるのだろう。

アイヴィーさんもフレヤ『様』って呼んでたしね。

それと…


『アイヴィーが協力を…?』


さっきフレヤが言っていた言葉が疑問に残る。

協力…ってことはフレヤに何かがある。そしてその何かにアイヴィーさんが協力しているかもしれない。

最近、妙に余所余所しかった理由はそれか?


(…後で聞くべきだ)


流石に今は無理だ。アイヴィーさんも居るし話しかけたらどんなことされるか分からん。

話しかけるなら放課後か…。


『春斗』

「…うん?」


SHRをしている柊木先生の声に耳を傾けつつ、赫蝶の話を聞く。


『アイヴィー・モルドレッドについて調べました』

「…どうやって?」

『実は最近何処からか脱出してきた私の身体の一部が春斗の部屋に来ていたんです』

「最近?」

『目が覚めたら肌寒いとかありませんでした?』

「まぁ…てか窓が勝手に空いてたりしてた」

『それは私がやりました。窓の外にいた赫蝶を部屋の中に入れるために』


それは予め一言俺に言ってほしかったぞ?毎回目が覚める時寒くて嫌になってたからな。


「それと調べた方法に何の関係が?」

『春斗の体内の赫蝶が増えたおかげで様々なことが出来るようになりました』

「たとえば?」

『データコンソールに入り込むことが出来るようになりました』

「…?」


データコンソールに入り込む…?


『データコンソールに侵入し、中身のデータを抜き取ることが出来るようになりました。なお物理的に入りますのでファイヤーウォールなど関係なしです』

「ハッキングよりやってることヤバいな」


お手軽にデータを抜き取れるようになったってことか。うーん…とんでもない方向へ赫蝶が進化していっている気がする。

止められないけどね…。


「それで何が分かったんだ?」

『事細かなことは分かりませんでしたが…何かと繋がっていることは確かです』

「その確証は?」

『何者かと連絡していました、そしてその連絡先はこの学園内ではなく学園外です』

「…」


また外部からの奴か…。めんどくさいことこの上ない。


『それ以外は…特に分かりませんでした』

「分かった、ありがとう」


赫蝶からの情報と今の俺の考えをまとめよう。

現在フレヤは俺に対して何かを隠していて、アイヴィーさんと知り合い。

でもフレヤの何かにアイヴィーさんが協力している可能性が高く、それを知らない。

んでアイヴィーさんは何者かと連絡を取っていたらしい。

…仮にフレヤが狙われているなら知り合いを寄こす意味が分からない。だってフレヤ様って呼ぶくらい慕っているアイヴィーさんを連れてきたのはおかしい。

逆にフレヤがこの計画を知った上で驚いているのか…?


(ダメだな…全く分からん)


正直お手上げだ。やっぱりご本人から聞くしかないか。


「では今月の半ばにお待ちかねの『演劇祭』がありますので、準備を進めましょう」


演劇祭。

今回は予め雪華さんに聞いていたから分かる。各学年、各クラスが決められたお題で演劇をする、だけ。

こういうのは戦闘関係の鍛錬とは違い、学生らしい思い出作りの為だろう。

演劇か…一応演劇部に所属していたしほんの少し楽しみだ。

んで今回も学園祭と同じように招待状がある。さすがにアイツらを招待することにした。

爺さんと婆さんは保護者枠で来れるので大丈夫だ。

ただ…。


(言えるわけないよな…)


皆、慣れてはいるがはっきり言うと俺の赫蝶という存在ははっきり言って異質。

これを簡単には打ち明けることは出来ない。化け物として軽蔑されるかもしれない。

それだけは…嫌だ。


ーーー


放課後、今アリーナに来ている。

今だにAGは帰ってきていない。吾郷さん曰く『思ったより最終チェックに時間がかかってるからまだ返せそうにない』とのこと。

んで、今日アリーナに来た理由は赫蝶の試したいことを試すためだ。


「赫蝶、アリーナに着いたぞ」

『ありがとうございます』

「それで試したいことって?」

『はい、ではアリーナの中心に立ってもらっていいですか?』

「分かった」


言われるがままアリーナの中心に立つ。


『では魔剣を展開してください』

「いいのか?」

『はい、そのあとにやりたいことがありますので』


右腕に集中して魔剣を作り出す。この辺も慣れたので生成に1秒もかからない。


「出したぞ」

『次にその魔剣を全身に纏うようにイメージしてください』

「全身に?」

『はい、春斗の魔剣状態ではエネルギーが一点に集中してしまい右腕が自壊してしまいました。であるならば、全身にそのエネルギーを巡らせることが出来れば』

「使えるようになるかもしれないってことか?」

『その通りです』


なるほどね…理に適ってる。それに何故アリーナでやりたいのかもわかった。

万が一に備えてのアリーナというわけだったのか。納得。

魔剣を全身に纏うイメージか…なんかいいイメージ。


(あるじゃん、丁度いいのが)


AGを纏うイメージだ。展開して装着するまでのイメージを頭の中に巡らせる。

すると魔剣は蝶に変わって俺の身体を包むように動き出す。


『…成功です。今、春斗の全身にエネルギーが行き渡りました』

「そうなのか?これと言って力とかもわかないが…」

『試してみましょう』

「あぁ」


目の前に的を展開する。何をしてみようか、とりあえずまずは動くか。

軽く走ると…。


「うぉっ!?」


対AG用の強化スーツよりも動ける。圧倒的に肉体の動きやすさが違う。


『赫蝶のエネルギーで身体能力が向上していますね』

「す、凄いな」

『強化スーツと併用することでより強くなれると思います』

「そうだな。さて…本題に入ろうか」


身体能力の向上はよく分かったので、今度は魔剣だ。

右手を伸ばす…そして魔剣を生成する。


「作り出せた…だが」

『そうですね』


魔剣は作り出すことが出来たが問題は俺の身体の方に起きていた。

魔剣を握る俺の手は形を変え、指先に鋭利な指と爪に外殻で覆われ、鎖で魔剣と繋がれていた。


「…何か、凄い疲れるんだが?」

『恐らく、赫蝶のエネルギーを使い続けているからです。前にも言った通り私は白鉄のエネルギーや春斗の肉体の活力を貰って動いており、白鉄がないので間接的に春斗の活力をメインに使ってこの魔剣を作り出しています』

「なるほどな…」


そりゃあ疲れるか…なら動ける間にさっさとやろう。

魔剣を両手で握りしめて振り下ろす!


ーードォォォン!!


「威力は少し下がってるけど、十分過ぎるな」

『そうですね、軽くブレイザーといった軽い兵器程度なら破壊できると思います』


慣れた自分が怖いと思うけど…振り下ろした剣はアリーナの地を裂き、的を塵に返した。

あのハリケーンに放った時よりも威力は控えめ、でも破壊は容易にできるし魔剣を握る両手は自壊していない。これなら使える。

俺の対AG戦の最終兵器はこの魔剣だ。名前…安直だけど『レーヴァテイン』としよう。


「てかこの鎖は?」

『…何なのでしょう?』


次に気になったことは俺と魔剣を繋ぐ鎖と枷。ちなみに外せないし、鍵穴みたいなものは見当たらない。

となれば気にしなくていいな。それよりも…


「はぁ…っ!」


肉体の活力がとんでもない勢いで魔剣に吸われていく。


『だ、大丈夫ですか?』

「ちょっとマズイ…解除させてくれ」

『分かりました』


全身の赫蝶と魔剣を解除してアリーナにぶっ倒れる。

確かに強い力なのは確かだけど代償がまぁまぁデカい。命じゃないだけまだましだ。

一撃限りの魔剣か…。


「赫蝶、今日は切り上げるか?」

『そうしましょう、春斗の肉体の疲労も心配ですし』

「分かった…」


身体を起こしてゲートに向かう。

その時。


「…?」


俺の携帯にメッセージが届いていることに気が付いた。

時間は丁度5分前、相手は…『フレヤ・アレクサンダー』


『春斗さん、突然な連絡申し訳ありません』

『本日の深夜、私に部屋に来てくれませんか?』

『どうしても話したいことがあります』


要件は単純明快、俺に用事があるようだ。

だが…深夜?


『今からはダメなのか?』


そう返信したら一瞬のうちに返信が返ってきた。


『申し訳ありません。どうしても深夜でお願いしますわ』


どうやら深夜じゃないといけない理由があるらしい。

…思った以上に重い相談かもな。


『分かった、深夜になったらフレヤの部屋に行く。部屋番号は?』

『3309です。それと気を付けてくださいまし』

「…?」


フレヤの部屋番号は分かったが…気をつけろとは?

一体何なのかは知らんが、とにかく深夜だ。一度部屋に戻り身体を休めて時間になった時に向かおう。


『春斗』

「どうした?」

『フレヤさんの気をつけろといった意味が分かったかもしれません』

「…それは?」

『恐らくその相談事を周りにバラしたくないのでしょう、特に』

「アイヴィーさんにか!」

『そういうことかと』

「…了解」


部屋に戻り、シャワーを浴びて汗だくの身体を洗っていき部屋着に着替えてベッドに飛び込む。

少し寝よう。思った以上に赫蝶での肉体の活力の消費量が尋常じゃない。

多分、使いすぎたらぶっ倒れる…どころじゃすまなそうだな。

アラームを23時丁度にかけて、俺は眠った。


ーーー


深夜、目を覚ましベッドから起きて部屋から出る。

もう一個、気を付けないといけない点があった。今日は御影先生が巡回してる…見つかったらとんでもないことになりそうだ。

息をひそめつつ、暗闇の先の視界を確保しながら上に上がっていく。

ちなみに俺は一階に住んでいるがフレヤは3階だ。とりあえず階段で上に向かおう、エレベーターを使ったらバレる。


「赫蝶、どう?」

『…周囲を見渡していますが特に人影もありません』

「OK」


赫蝶を一匹飛ばしてその視界の情報を俺に共有しつつ進んでいく。

階段を登って3階にたどり着いた。しかし


『待ってください、来てます』

「!」


来ていますと聞こえ、一個上の階へ上がる。


「誰が来てたんだ…?」

『…アイヴィーです』

「マジ…?」

『はい、3階を念入りに歩いています』


えぇ…あまりにも行動が怪しすぎないか?てかこのことはフレヤ知ってるのか?

一度連絡しよう、携帯でフレヤに電話を掛けながら周囲を警戒する。


『春斗さん?どうしましたの?』

「あぁ、すまん。どうやら3階をアイヴィーが練り歩いているようだ」

『…やはり』

「何か言ったか?」

『いえ、何でもありませんわ。ですがそうなると厳しいですわよね…』

「…いや、待って」

『何か策がありますの?』

「めっちゃ無理やりだけどさ、フレヤの部屋の窓って海側?」

『は、はい…そうですが』

「俺は窓から入る、廊下から入れないならこうするしかない」

『わ、分かりましたわ。あと分かりやすいようにベランダに居ます』

「了解」


そうして電話を切って歩き出す。


「赫蝶、フレヤのベランダに近い窓って周囲に無いか?」

『…見つけました、4階の倉庫からなら行けるかもしれません』

「分かった、丁度見つけたし入るぞ」

『周囲の警戒は任せてください』


倉庫の中に入り、一応扉を閉める。

…この窓か。開けて下を見るとフレヤが居た。


(あそこだな…よし)


俺は窓にまたがり、フレヤのベランダを目掛けて飛び降り…着地。


「…うし、危なかった」

「は、春斗さん大丈夫ですの?」

「平気だ、これといった怪我もないし」

「それは何よりですわ…とにかく中へ」

「あぁ」


フレヤに言われるがままに部屋に入る。

…何というか水津の部屋に比べて少し大人っぽい匂いがしてドキドキしてしまう。


「おかけになってくださいまし」

「お、おう」


言われた通りフレヤに向き合う形で椅子に座る。

フレヤの顔は…無理やり笑顔を作っている感じが否めない。


「それで…話したいことって?」

「…この話は他言無用でお願いします」

「あぁ、分かった。約束は破らないから安心しろ」

「それでその話したいことなのですが…」


ゴクリと唾をのむ。そして驚きの一言を告げられた。


「私、この学園から出ていくことになりましたの」

誤字脱字、語彙力がほぼ皆無に等しいのでミス等がありましたらご報告お願いします


感想も待っていますので気軽にどうぞ!


超絶不定期更新ですがご了承ください…

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