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インフィニティ・ギア  作者: 雨乃時雨
第二部
45/122

第43話 駆けよ乙女、疾風のごとく!

俺が生身でAGと戦えるようになってから次の日。

学園新聞にも俺の事は記載されて、どこぞのニュースでも『世界で唯一生身でAGと戦える男』と発表された。

いやぁ…正直困る。もちろんこれで多少なりとも皆と戦えるようになれたのは良いが、それ以上に嫌なのが今俺の手元にある書類という名の『手紙』。


「AGと戦えるようになったせいで、企業の武装の稼働データ諸々の申請…何度目だ?」


眉間にしわを寄せつつ、手紙を見ながら生徒会での書類をさばいていく。


「人気者ね、春斗君」

「この人気者だけは避けたいんですけどね。如何せん企業ってなると」

「その辺、私にも分かるわ。あ、春斗君こっちの予算の計算もいいかな」

「了解です」

「助かるわ~」


予算の計算をしながら手紙をさばいていると…。


(またこれか…)


黒い封筒が入っていた。それを中身を見ることなくシュレッダーにかける。

内容は見なくてもわかる。最近知ったことなんだが…俺を保護しようとしている団体があるらしい。今の世の中は女性の方が強い、AGがあるしな。んでこの学園に唯一の男子生徒だからこそ俺が虐げられているんじゃないか?とか思っている人たちが立ち上げたものらしい。

正直…どうでもいい。

団体は信用出来ないし、俺はこの学園での生活を楽しんでいるから手放したくない。沢山の友人に囲まれている…と思ってる。

俺の気持ちも知らないで勝手に先走って迷惑のかかることをしないでくれと心から思う。


「あ、そういえば春斗君」

「どうしました?」


雪華さんから話しかけられペンを止める。


「今日って何日?」

「10月の24日ですね」

「あ、もうそんなに近づいてるんだ」

「…近づいてる?」

「もしかして聞いてない?明日、運動会だよ?」

「…はい?」


聞き間違えか…?いや、でも運動会って言ってたよな?


「す、すみません。運動会はいつ開催で?」

「明日よ、明日。ほら、今日やけに皆が忙しく動いてたじゃない」


よし、思い出そう。

今日は普通に朝登校したな。いつも通り席に座って肩をグリグリと回していて、レベッカとアナスタシア、フレヤに挨拶をしてSHRが始まって…これといった連絡もないだろうと思って軽く神去のデータを確認していたな。

それから授業が行われて昼食。昨日の試験のせいで身体の筋肉の繊維がズタボロだったからっていう建前の元、牛丼の超盛りを食べた。

…思えばあの時、みんなから凄い見られていたような気がしてきたぞ。

そして放課後。今日は御影先生は『九条、流石に今日は休め。昨日はよく頑張ったな』って言ってたし訓練はオフ。それでしばらく生徒会に言ってなかったことを思い出して生徒会室に行ったら雪華さんだけがいて忙しく書類仕事をしていたので手伝いを受けて…。

今に至る。

思えば、水津や荒川先輩に希更先輩は?


「あの三人は明日の運動会の必要物品の買い出しに行ってるの」

「しれっと人の心を読まないでください…」

「それで何か思い出したかな?」

「…多分、対AG訓練に集中しすぎて忘れていました」

「でしょうね。でも安心して、春斗君は基本的には裏方で競技には出ないから」

「どうしてですか?」

「対AG訓練を受けた生徒に他の生徒が競技で勝てると思う?」

「あー…」


そりゃそうか…専用機持ちだけではなく俺は生身でAGと戦えるようになった。

身体能力は他の生徒よりもかなり突出していると言えるだろう。


「それと運動会で優勝したチームには春斗君とのフォークダンスを踊ってもらう権利が譲渡されるからよろしく~」

「そういうことは言ってくださいよ!?」

「だって春斗君生徒会来ないし~」

「うっ!?」

「それに聞こうとしても放課後何処かに行ってたし~」

「ぐあっ!?」

「まぁどちらにせよ聞くタイミングが無かっただけなんだけどね」

「そ、それはすみません…」

「大丈夫、言わないほうが楽しくなりそうって思ってたから」

「ちょっと!?」


怒りたくても怒れない状況なので行き場のない握りこぶしを机にコツンと叩きつけて座り直し、書類仕事を手伝っていった…。


ーーー


翌日、遂に始まってしまった運動会。


「それでは、これよりIGD学園大運動会を開催します!」


校庭の壇上の上でマイクを握りしめながら雪華さんの開催宣言に生徒たちがワァァァ!と歓声を上げる。

改めて思うけど、凄い生徒の数だ。

まぁ1年生から4年生までいるからそれもそうか。


「選手宣誓、九条春斗君!」

「え、俺!?」


ビシッと俺の事を指をさしてくる雪華さん。

いきなりの予告なしの選手宣誓に驚きを隠せない内に雪華さんが俺の腕を握り絞めて走り出し、壇上に登らされる。


「え、えっと…」


俺の目の前には女子生徒たちがズラリ。

…というか、何でこの学園は体操着がブルマなんだよ!流石に俺は短パンだけど、目に毒だ…!

じゃなくて!選手宣誓だ、今やれと言われたことをやらないと!


「せ、選手宣誓ッ!」


腹から思い切り声を出す。


「えっと…俺たちは!正々堂々と力の限り競い合うことを誓いますッ!」


その宣言ののち全学年の女子からの大きな歓声が上がった。よ、良かった…。

壇上から降りて、ふぅっと息を吐く。


「お疲れ様春斗君」

「…」

「ちょっとそんな目でお姉さんを見ないでよ」

「予め言ってくださいよ…!」

「てへ」

「全く…」


一応、念のためにプログラムを確認する。

今年は1年生の専用機持ちが多く、クラスにも偏りがあるためくじ引きで組み分けすることになったらしい。


(…まぁ、ひときわ目立つ圧を出しているのが居るしな)


やや遠くを見ると葵、フレヤ、レベッカ、アナスタシア、水津から圧というか熱を感じる。

流石に運動会ともなれば本気か。


◇◇◇


紅組1年生代表『フレヤ・アレクサンダー』


「エレガントに、パーフェクトに、勝利を魅せてあげますわ」


蒼組1年生代表『時雨葵』


「私は誰にも負けない!」


橙組1年生代表『レベッカ・ブルーノ』


「僕は強敵だよ?」


緑組1年生代表『アナスタシア・アガポフ』


「軍人の恐ろしさ…その身に刻み込んでやろう!」


水組1年生代表『桐ケ谷水津』


「水組…色じゃ蒼と被っちゃうからしょうがない…でも色なのかな…」


闘志を燃やす5人。もちろん考えていることは一致している。


(勝って…春斗と一緒に…!)


思い人と両手を繋ぎ、距離を近づけ一緒に踊る。

全員AGのライバルでもあり恋仲のライバル。ここで一歩リードを考えている5人。

そして狙われている当の本人はというと…。


「ん”んー!」


のんびりと身体を伸ばしていた。


◇◇◇


運動会が始まり第一種目50メートル走。

パァンッ!とピストルが煙を吐く。初陣を切って躍り出たのはアナスタシア。

銀髪のロングヘアーを靡かせながら一位でゴール。


「先制点は緑組!」


俺の横で実況しているのは希更先輩。

いつも丁寧な敬語を使っているが何故か知らんが今日は滅茶苦茶生き生きとしている。


「さて、九条君!ご感想を」

「か、感想ですか!?」


急にマイクを向けられて戸惑う。


「そ、そうですね。凄いと思います」

「もう一声欲しいです」

「えっと…とても綺麗でした」

「なっ!?」


ゴールして実況席に近かったアナスタシアが声を上げる。


「す、すまん!いきなりとんでもないことを…」

「は、春斗!」

「は、はい!」

「き…」

「き?」

「綺麗…だったのか?」

「あ、あぁ…とても綺麗だった」

「そうか…!」


するとアナスタシアはルンルンで各組の選手待機席に戻っていった。


「なら次は私が出よう!」

「私もですわ!」

「ぼ、僕も!」

「私も…!」


急に整列した順番を無視して4人が躍り出る。


「あー、葵さん褒められようとしてるでしょ」

「なっ!?ち、違うぞ!?わ、私は点差を広げさせないために…!」

「またまた」


躍り出た葵は友人からにやいのやいのといじられているが、その横で念入りにストレッチをするフレヤ。

何というか…フレヤが運動できることに少し意外という感想を持っている。

偏見かもしれないがお嬢様って運動できない気がしてな…。


「私が勝利の華を魅せましょう」

「僕だって負けないよ!」


先程の俺と同じようにぐぅーっと背を伸ばすレベッカ。

ふぅっと息を吐いたところでそっていた胸が少し揺れる。


「レベッカさんはお色気作戦ですか、少々うらやましいですね」

「えっ!?ち、違うよ!?」


慌てて胸を隠すような仕草をしながら何故か俺を見るレベッカ。

安心してほしい。何かいやな予感がしたから目を背けてあった。セーフ!


「位置について…よーい!」


パァンッ!とピストルの音が鳴り一斉に走り始めた。

先頭に躍り出たのは葵、フレヤ、レベッカ。お互いに先を譲らないデッドヒート。

その後ろを追いかけようとしている水津。だが、脚がもつれてしまったのか盛大に転んでしまう。


「ちょ、ちょっと行ってきます!」

「はい、いってらっしゃいませ」


実況席から立ち上がり転んでしまった水津の元へ駆け寄る。


「水津、大丈夫か?」

「え、えっと…」

「傷があるかどうか分からないけど、とりあえず救護テントに運ぶ。いいな?」

「う、うん…わっ!?」

「よっと」


どのように運べばいいのか分からなくなった俺は水津の両ひざ裏に左腕を通して背中を右腕で持ち上げる。つまるところ、お姫様だっこで持ち上げて救護テントへ向かう。


「は、春斗…?」

「うん?」

「重くない…?」

「全然?」

「そ、そっか…」


俺の首辺りに回されている水津の腕に軽く力が入る。


「私が1位だったというのに…」

「許せませんわ…」

「春斗の浮気者…」


理不尽極まりない3人からの視線を背中で受け止めながら水津を救護テントに運んだ。


「じゃあ水津、俺は実況席に戻る。お大事にな」

「う、うん…ありがとう…!」

「お安い御用だ」


ーーー


『続きまして障害走になります!』


実況席は変わり雪華さんが担当している。

ちなみに今俺は何処にいるのかというと…コースの最終地点で軽く準備体操をしている。対AG用強化スーツに身を包みながら。


『春斗君、準備はどう?』

「何で俺ここにいるんですかー!」

『…準備が出来たようなので説明しましょう!』

「聞けー!」


俺の質問を無視した雪華さんが説明を続ける。


『最初の障害はネットくぐり、ありきたりだけど意外とこういうのも楽しいのよね。次の障害は平均台を渡ってこのそり立つ壁を登った先には…最終障害!春斗君が強化スーツに身を包んでいます、彼を躱してゴールテープを潜り抜けた人が一位となります』


だから強化スーツを着なさいって雪華さんに言われたのか…。


『そしてこの競技に一年副担任の御影先生も参戦しています!』

「はぁっ!?」

『何でも弟子の成長を見たいそうですので、許可を出しました!』

「…」


先頭でブルマ姿の御影先生が俺を見ている…いや凝視している。

もう障害走とか関係なしに俺の事狙いに来てないこの人!?

そして俺が驚いている間もなくピストルの音が無残にも鳴り響いてしまった。

無論先頭は御影先生。あのそり立つ壁を登り、飛び降りてきて俺を見据え正面から歩いてくる。

いや俺を躱すという話は何処へ!?


「九条」

「…はい」

「いいな?」

「ちょっと…良くないかもしれません」

「そうか、ではいくぞ!」


俺の質問の答えを聞かず正面から走ってくる御影先生。

その両手を握りしめお互いが押し合うような形に変わる。


「ぐうっ!!」

「成長しているようだな…九条!」

「ありがとう…ございます!!」


とは言っているがお互いに微動だにしていない状況が続く。AGスーツ対生身のはずなんだけどなぁ…。


「御影先生!」

「構うな、先に行け!」

「は、はい!」


そうして他の生徒が俺の横を通り過ぎていく。なるほど…これが狙いだったのか。


「御影先生は俺を抑え込んで…ほかの生徒をゴールさせるために?」

「お互いに力は拮抗しているから仕方なくだ」

「やっぱり先生も優しいんですね」

「…ふん!」


次の瞬間、俺の視界は空を向いていた。


「へ」


否、身体が浮いているのだ。頭が飛ばされたことを認識しようとしている内に身体を落下をはじめ地面に叩きつけられたと同時に両足を御影先生に捕まえられてぐるんぐるん回される。


「弟子もいうようになったな。どれ、気持ち多めに回してやろう」

「あーーーーー!!!ごめんなさいごめんなさい!」


と競技中にも関わらず弟子をいびる師匠の図が校庭のみんなの目の前に晒された。

何とか御影先生に止めてもらい、元の競技に戻った。

目の前から走ってくる生徒を止めようとするが…。


「…えっと」

「どうぞ!」


止めにかかろうとした女子生徒の殆どが両手を広げて静止するのだ。

何故だ?


『春斗』

「びっくりした…どうした?」

『恐らくハグを求めているのかと』

「…マジ?」

『マジ』


赫蝶が俺の疑問に答えてくれるが…流石にそれは無理だ。

そうして止めにかかるがギリギリ止められないといった状況が続く中、1つハプニングが起きた。


「春斗ッ!」

「ぐおっ!?」


目の前から走ってきたのはアナスタシア。勿論止めにかかろうとしたが…アナスタシアは減速せず俺に飛びかかり…フェイスハガーの様に俺の顔面に飛びついてきた。


「もご!?もががじが!?」

特別意訳:『ちょ!?アナスタシア!?』


俺の視界が真っ黒になり息ができない…!

少し息を吸うとアナスタシアの女の子っぽい匂いが!?


『あーっとアナスタシアちゃん!自分を犠牲にするためか春斗君の顔面に飛びついたぁ!』

「そう…私が犠牲になれば他の皆はゴールできる!だから…みんな、行け!」

「アナスタシアさん…」


横辺りにフレヤの声が聞こえてきた。いやお前たち敵同士…。


「なんていうと思いましたの!?ずるいですわ!」

「ぐっ!?」


今度は俺の横腹に衝撃を受ける。

視界は真っ暗のままだがある程度は予想できる。多分フレヤが俺に抱きついてきた。


(み、身動きが…息が…!?)


何とか二人を剥がそうとするが…。


「ず、ずるい僕も!」

「わ、私も行くぞ!」


声的にレベッカと葵だろう。俺に二つの衝撃と四つの柔らかい感触が襲い、より一層動けなくなり、酸欠になってきた。


「す、隙間がない…」

「もががががぐげぇ!」

特別意訳:『いや助けてくれぇ!』


水津のおどおどした声が後ろから聞こえてくるがそれ以上に…!


(こ、呼吸が出来なくて意識が…!?)


呼吸がしづらく徐々に意識が刈り取られそうになり…あっけなく。

本当に俺の目の前は真っ暗になった。


ーーー


「はぁっ!?」


あ、悪夢だった…無数の大蛇に身体中を締め付けられてゆっくりと食われていく夢を見た。


「お目覚め?」


身体を起こすと俺の真横に雪華さんがいた。


「えっとここは?」

「救護テントよ、流石に急に春斗君が倒れちゃったから私が運んで来たわ」

「そうですか…」

「えぇ、それとごめんね?私がきちんとしていれば良かったのに…」

「いえ大丈夫です。それと今どうなってますか?」

「あ、それ聞いちゃう?」

「え?」


そんなわけで雪華さんから今の運動会の状態を聞いてみた。

俺が酸欠でぶっ倒れてからパン食い競争や騎馬戦などを含めた全ての種目が終わり、得点を計算した結果。


ーー全チーム一律で同点らしい


「そんなことあるんですか?」

「…うん。得点は一発逆転も狙えるように頑張って配点したんだけど、何故かみんな同点になっちゃった」


雪華さんが嘘を突くとは思えない、ということはマジなのか…。


「えっとそれでこれからどうするんです?」

「…最終手段よ」

「最終手段?」

「えぇ。封印されていた種目を使って最終決戦とするわ。もちろん春斗君も出てね」

「また妨害役ですか?」

「いえ、『選手側』でよ」


◇◇◇


そうして全て一律で並んでしまった運動会の禁忌の最終種目が今幕を開けようとしている。

レーンに並んでいるのは葵、フレヤ、レベッカ、アナスタシア、水津そして俺。


「何故春斗がここに?それよりすまなかったな…」

「きにすんな、でも何でだろうな」

「雪華さんは何か言いましたの?」

「いや…選手として出てほしいとは言われたけど、この状態で俺を出すのはちょっとよく分からないけどな」


そうこうしているうちに…。


『はーい!みんな、待たせたわね!これより封印していた禁忌の種目…名付けて『コスプレ早着替え走』!』


…名前からして嫌な予感しかしねぇ。


『今ならんでいる各チームの代表者が各々くじを引いて、着替えゾーンにて引き当てたものに着替えて貰います。そして数々の障害を潜り抜けて一番になった人の優勝となります』


その言葉に歓声が上がる。最終決戦にしては良いのか?


『ちなみに着替えゾーンは定期的にライトアップされるので周囲から身体のラインが見える仕掛けがありま~す!』


ぐっと力を入れていう雪華さんの言葉に『良い』と思った考えを即座に前言撤回し、何でそんな機能つけたと心の中で突っ込む。どうせ言っても聞かないだろうし…。


『ちなみに春斗君』

「は、はい!!」


急に名指しで呼ばれたので声を上げる。


『君はどこのチームにも所属していないのでこのまま1位でゴールしても何もないので、生徒会で君へのご褒美を考えました!』

「私…知らない」

「まぁそんな気はした」


俺の横で聞いていないと反応する水津を置いて雪華さんは俺へのご褒美の内容を発表した。


『勝ったら駅前の人気店『ラ・フレッシュ』の超人気の限定ショートケーキをプレゼントしましょう!』

「!」


駅前の…ラ・フレッシュの限定ショートケーキ…だと?

俺の最近の行きつけのスイーツ店だ。あそこのケーキはマジでうまい。

そんな店の限定ショートケーキだと?


「いいねぇ…燃えてきた…!!」


俺の闘志がメラメラと燃えてきたぜ…!やってやらぁ!!

そうして俺は有無も言わずにレーンに並ぶ。


「すまんな、ケーキの為に本気で走る」


俺は予め宣言する。


「わ、私だって負けない。勝って…春斗と」

「わたくしも!」

「僕だって!」

「春斗にも軍人の恐怖を刻み込んでやる」

「…負けない」


その宣言と共に全員がレーンに並ぶ。


「では…位置について、よーい、ドン!」


ブルマ姿の柊木先生がピストルで空を撃ちぬき、レースが始まった。


『さぁ、いきなり先頭に立つのは九条春斗君!実は結構甘い物好きな可愛い一面もあります!』


そんな実況に耳を傾けず、くじを引こうとしたが…。

レーンに置いてあるくじとは別で『春斗君専用♡』と書かれた大きなボックスがあった。

ここから引けと…?

これがいい、アレがいいと考えてから引くのは流石にダメだ。というか箱が加工されてて中身が見えないようになってる。もう、勘でいいや!


(これで!)


一枚取り出してぺらッとめくり、中身を確認する。


(…軍服?)


としか書かれていなかった。

まぁ…どういう軍服なのかは分からないけどとりあえず良さそうだ。

くじを持って着替えゾーンに飛び込むと、どういう原理か分からないけど黒い軍服が畳まれていた。要はとにかく着替えろってことか。

体操着を脱ぎ、軍服を着ていく。


(思った以上に…着るのが大変かもな!)


結構分厚い。袖を通すのも一苦労だ。

それと俺の横の更衣室から声が聞こえ始めたのだが…


「お、おい!この『チアコスミニ』って何なんなのだ!」

「『巫女服』…日本のシスターの服装ですの?」

「まさかまた『メイド服』を着るなんて、でも何かスカートが短いような?」

「ど、『ドレス』だと!?」

「…『パジャマ』?」


何の共通性も見当たらないピックアップだな。

って他の人の事を気にしてる場合じゃない、早く着替えないと!


『さぁ一番最初に着替えゾーンから出てきたのはお姉さんの妹の水津ちゃん!ピンク色でもこもこのパジャマが可愛いらしいわ!一番目指して頑張って!』


もう着替えたのか!?てかパジャマだからそれはそうか。てか実況が身内贔屓してるじゃん!


『ドンドン着替えゾーンから出てきました。ちなみに基本的のコスプレのスカートは短めになっております!』


またしてもグッと力を入れて実況する雪華さん。

いやグッ!じゃないけどね?俺、スカート系引かなくて心の底から安心したよ。

…よし、軍帽を被って着替え完了!

着替えゾーンのカーテンから飛び出して走る。


『春斗君が黒い軍服に着替えた状態で最後に着替えゾーンから出てきました!…な、中々に似合ってるわね』


最後の小声にちょっと疑問を持つが気にせず走る。

全てはケーキの為に!

次の障害は跳び箱…スカートを短くしてるのに跳び箱があるって、もう絶対故意でやってる。

だが俺はズボンだ、気にすることはない!


「先行かせてもらう!」


跳び箱の前で葛藤していたであろう葵を置いて先へ行く。

…チアコスミニだもんな、布地の面積がちょっときわどい。流石に凝視出来ない。

次は平均台。まともに渡っていられないので…。


「よいしょっ!!」


足をかけたと同時に前に向かって飛んで平均台を渡らずに飛び越える。


「ちょっ!?春斗ずるいよぉ!!」

「くっ…屈辱だ…!」


平均台を慎重に進んでいるのはレベッカとアナスタシア。

レベッカもメイド服なのだが前の学園祭の時に着たものよりも特にスカートが短くなっている。何というか…太ももの露出がやばい。

そしてアナスタシアは白のドレス。だが、胸辺りのサイズがだぼだぼで脱げそうになっている。その二人を追い抜かし…最後の障害は。


「何これ?」


水津とフレヤはその未知に足を進めようとせず、止まっていた。

ブルーシートがひかれていて太陽に照らされてテカっている。何かが塗りたくられているのか?


「フレヤと水津、これは…?」

「それが…雪華さんは何も言ってくれないんですの」

「でも…絶対にロクな事にならない」

「妹がそれを言うか…?」


とりあえず足を進めよう。

その未知に足を踏み入れ走ろうとした次の瞬間。


「おわっ!?」


俺の足がツルっと滑り、転んだ。

何だこれ!?すっごい足元がぬるぬるしてる…。


『では春斗君が最終障害に足を踏み入れたので説明を!最後の障害はローションロードです!とんでもない量のローションを塗りたくりまともに歩けないほど滑るようになっていますのでご注意を!それと、春斗君?このローションは少し特殊だからね?』

「特殊…?」


そして気が付いた。今、俺の軍服からシューッと何かが溶ける音が聞こえる。

ま、まさかこれは!?


「服が…溶けてる!?」


俺の軍服を見ると所々が溶け始めている。


『そう!これは服だけを溶かす特殊なローション!長くその場にいるとあられもない姿を皆にみられちゃうわよ?』

「流石に外道過ぎませんか!?」

『だよねぇ…多分禁止になった理由でこれだし』

「なら最終障害だけ消せばよかったじゃないですか!」


何てツッコミつつも両手、両足を使いながらゴールに向かって進む。

てか残りのゴールまでの道のり全部これなのヤバすぎる!


「わ、私も…負けませんわ!」


後ろを見ると巫女服に身を包んだフレヤがこのある意味デスロードに足を踏み入れて進むが。


「きゃあっ!?」

「フレヤ!うおっ!?」


俺の方に向かってスリップし、俺が何とか受け止めようとするが地面が滑るせいで二人をまともに受け止めることが出来ず、背中に衝撃が入る。


「いってて…大丈夫か?」

「え、えぇ…大丈夫ですけど」

「ですけどって何処か怪我を?」

「そ、そうではなくて…んっ、手をどけてくれると」

「?」


さっきフレヤに伸ばした手を見る。

左手はフレヤの背中に回されていて、右手はというと…。


ーーふにんと柔らかい感触と共に、フレアの胸に添えられていた。


「わぁぁぁぁっ!?す、すまん!」

「だ、大丈夫ですわよ?その…春斗さんなら」

「…神去!!」

「え」

「待ってろフレヤ、今から俺の右手を切り落とすッ!!」

「ちょ、ちょっと待ってくださいまし!一体何をしているのですの!?」

「介錯はいらん!ぬおぉぉぉぉぉ!!」


俺は急いで手を放し神去の入ったアタッシュケースを引き寄せ、展開し抜刀。そして刃を右手に向ける。

刃を右手に振り下ろそうとするがフレヤが止めにかかってきた。


「ええい!離せ!人の胸を無許可で触った手なんぞ必要ない!この場で切り落とし、献上するまでよ!」

「こちらの話を聞いてくださいませ!それに春斗さんの切り落とされた手なんて受け取りたくありませんわ!」

「なら…俺の命を!」

「それだけは本ッ当に止めてくださいし!」


と、ひと悶着のせいで禁忌の最終種目は強制的に終了となり、運動会は終了。

結果として全組が総合優勝となり景品は無しになった。

なお、俺は救護テントに送られて御仏先生にメンタルチェックを受けさせられた。


「九条君」

「…はい」

「あれは事故だよね」

「…はい」

「だとしても右手を切り落とすのはやめよう…こっちも心臓が持たないから」

「…はい、すみません」

誤字脱字、語彙力がほぼ皆無に等しいのでミス等がありましたらご報告お願いします


感想も待っていますので気軽にどうぞ!


超絶不定期更新ですがご了承ください…

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