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インフィニティ・ギア  作者: 雨乃時雨
第二部
43/122

第41話 条理を不条理にする力

「…はっ!?」


勢いよく身体を起こす。

ここは保健室…じゃない?


「九条!」

「御影…先生?」


俺の横に座っていたのは御影先生だ。


「ここは…?」

「医療室だ。保健室で治せない傷や大けがを負ったのもが送られるところだ」

「はぁ…」

「…右腕は大丈夫か?」

『春斗、眠っている間に治しておきました』

「大丈夫そうです、赫蝶が治してくれたようで」

「そうか」


包帯でグルグル巻きにされているが魔剣を握った時のような激痛も無く、出血も止まっている。ありがとう赫蝶、それと無理をしてすまない。


「…あっ、そういえば皆は!?」

「体育館に避難していた全員は無事だ、お前がブレイザーを灰にしたからな」

「そう…ですか」

「それと今回の襲撃作戦、どうやらこのタイミングを狙っていての犯行だったようだ」

「このタイミング?」

「どうやら九条がAGを手放すタイミングがバレていたらしい」

「え?」

「あぁ、吾郷は無関係だ。ただ何故かバレていたとのこと、首謀者は元ブルーノ社社長で依頼先がタービュランスだったようだ」

「…アイツですか」


レベッカの父親か。恐らくだけど『復讐』だろうな、俺のせいで潰されたから…。


「九条」

「は、はい!」

「すまなかった」

「えっ!?」


急に御影先生が頭を下げて謝り始めた。


「な、何で御影先生が」

「元はと言えばこの学園の警備が甘かったのが原因でお前は怪我を負った、だからこその謝罪だ」

「で、でも…」

「…それにこれは私への戒めでもある」

「え?」

「もう少し早く私がお前を守れたら、自分を犠牲にしなくてもよかったのかもしれない。だからのこその咎めだ、教員としてな」

「御影先生…」


この人は本当に教員の鑑みたいな人だな。みんなが憧れを持つのもよく分かる。


「…もう深夜だ、ゆっくり休め」

「は、はい!」

「ではな」


深夜って…まさか俺が目を覚ますまでここにいたのか!?

何というか教員の鑑とは言い切ることの出来ない教員…何だろう、教員の頂点?

ってそうだ、御影先生にお願いしたいことが!


「あ、あの御影先生!!」

「何だ」

「1つ、お願いしたいことがあります」

「お願い?」

「…はい!」


そうして先程の景色を思い出しながら御影先生にお願いした。


「御影先生の様に生身でのAGの戦い方を教えてください!」

「…」


御影先生はハリケーンに対してほぼ生身でAGの装甲を切り刻んでいた。あれは絶対に生身でのAGに対する戦い方を知っているはずだ。

そして…今の俺にはAGは無い。また襲われてもおかしくないはず、だからこそ…学ばせてほしいのだ。


「…私に教えを乞うと?」

「はい」

「先に言う、正気か?下手したら死ぬぞ」

「正気です!俺はAGを持っていない一定期間だけとはいえ皆は戦って俺だけ指を加えて見ているなんてことは出来ません」

「…なら先に自分の怪我の様子を見てからな、完全に治り切って、決意を固めてから私に連絡しろ、いいな?」

「わ、分かりました」

「もし固まらなければ連絡しなくていい」


そうして御影先生は医療室から出ていった。

ぼふんと音を鳴らしながらベッドに身体を預ける。


『春斗』

「何だ」

『無事ですか?』

「あぁ…お陰様でな。それと無理をしてすまない」

『いえ…あの時、春斗が剣を振りかざさなかったらどうなっていたか分かりません。ある意味最善の選択をしていました』

「なら、よかった」


軽く深呼吸してから天井を見る。

真っ白だ、まぁだからどうしたというわけじゃないんだけどね。


ーーー


次の日。まさかの休み、This is SYUKUZITU!!

赫蝶のお陰で右腕は治ったがそれ以上に…。


「滅茶苦茶痛い…」


怪我は治ったがそれ以上に受けた傷の痛みは収まっていなかった。ずっとビリビリと痛みがある。何で昨日痛みがなかったんだよ。


『そうですね、昨日は戦った後ですしアドレナリンもありましたし』

「否定できない」


普通に忘れてたけど…昨日、戦ってたの完全に忘れてた。

てか右腕包帯グルグルで痛いって言ってると中二病みたいだな、ほら『俺の右手が疼く…』とかそういうの。


「…さてと」


そうして俺はビジョンシステムで通信をかける、相手はもちろん…。


『九条か』

「はい」


御影先生だ。話すことは昨日の事、AGに対する戦い方のご教示を願いたい。


『今、私は職員室にはいない。第5アリーナにいる』

「分かりました、そちらに向かいます」

『…決意が固まっていないのなら引き返せ、いいな?』

「…はい」


返答したのち通信は切れた。


『行きますか?』

「あぁ」


そうして俺は校舎から第5アリーナへ足を進めていく。

一歩ずつ進んでいくたびにこれから何が起こるかわからないプレッシャーと恐怖が身体に纏わりつくがそれを振り払って歩みを止めずに歩く。

…こんな恐怖程度に負けてたまるか。俺はこれ以上、友人が目の前で傷つく姿を見たくない。

重い足取りだったが気づけば第5アリーナの前にいたので中に入る。


(受付すらいない…?)


大体、アリーナを借りた際は受付に申し出てチェックリストに名を残してもらうのだが…そもそもの受付すらいない。

御影先生が借りているからか?


(でもここに居ないってことは…)


恐らく中心の決闘場にいる、そこで俺を待っているかもしれない。


(初めてだ。アリーナに入った瞬間から押しかかる緊張感…)


これ以上中に踏み込まないほうがいいと俺の中の何かがそう告げるが、そんなことはどうでもいい。静止を振りほどき歩く。

…アリーナの決闘場に近づくたびに鳴り響く、金属と金属がぶつかり合う音。


(この先か…)


AGが飛び出すピットとは違う人がアリーナの決闘場に入る為のドアのドアノブに手をかけ…開く。


「はぁっ!!」


その先には…前に助けてもらったときのボディースーツに身を包んだ御影先生がAGと戦っていた。相手は乗っていない、恐らく無人機だろう。

この世の固定概念として『AGはAGでしか破壊できない』というものがあるが、それを打ち砕くかのような光景が目の前に広がっている。

…正直、人間の所業なのかと疑ってしまう。


「!」


無人機の拳をブレードで受け流して、二刀のブレードを上に切り上げてアームを切り離しボディーや装甲への連続斬撃。装甲がバラバラになり、無人機の頭部に一刀のブレードを突き刺してもう一本で首を切り落とす。

その技術には、目を見張るものがあった。


「…来ていたのか」


御影先生が俺の存在に気づき、無人機の頭に突き刺さっているブレードを引き抜きこちらに歩いてくる。


「…その無人機は?」

「安心しろ別に侵入者というわけではない、ただの訓練機だ」

「そうですか…」

「…では九条。ここに来たということは、そういう事か?」

「はい…!」

「そうか…」


すると御影先生は片方のブレードを地面に突き刺し、一歩下がった。


「対AGの戦闘訓練は普通の訓練とはかけ離れた物だ、下手したら死ぬ」

「…私は何度も対AGの戦いを知る訓練者を何度も見てきたが、結局誰も完遂出来ず誰もが挫折し帰ってくることはなかった。そんな地獄の日々をここで過ごすことになる」

「もし、お前にこの地獄に踏み入れる決意があるならば」


「このブレードを引き抜け」


「…」

「決意がなければこのまま去ると良い、これは私と九条の秘密だ。誰にも言う事はない」

「…分かりました」


俺は深く深呼吸をして…一歩前に足を出す。

地面に突き刺さったブレードに近づくたびに恐怖心が『進むな』と言いながら俺の足を掴んで来るが…これから指を加えてみてろという生殺しに比べたら安い物だ。

そして地面に突き刺さったブレードを両手で握りこみ


ーー引き抜いた。


「…良いんだな」

「はい!」

「お前には驚かされてばかりだ、あの時の言葉はただの酔狂ではなく本気の言葉だったとはな」

「…」

「いいだろう、みっちり鍛えてやる。覚悟しておけよ」

「…はいッ!」


そうして俺は地獄へ足を踏み入れた。


ーーー


次の日、朝の05:30。

今、俺がいるのは…というより走っているのはIGD学園の外周。この学園は改めて滅茶苦茶広いんだなと確認しながら走る。


「はぁ…はぁ…!!」


前のトレースシステム事件での俺に課せられた罰のグラウンド40周。アレが大体ハーフマラソンくらいの距離だが…IGD学園の外周は一周もしないうちに越える。

この学園は海の上に作られた学園、外周を走るとなると海風がとても気持ちがいいが…障害物もかなりあるので結構疲れた。

これが朝のトレーニング、これを朝のSHRが始まるまでに10周。

それから普通に授業を行い、放課後。第5アリーナにて御影先生と訓練だ。


「はあっ!!」

「甘い!もっと踏み込め!!」

「はい!」


初日はAGの弱点部分の話や対AGの武装を使った打ち込み。

両腕が悲鳴を上げそうになるがそれを無理やり押し込み習った戦い方をしながらダミーを斬る。

打ち込みが終わったら筋トレ、全体的にとにかく鍛える。

AGに生身で立ち向かうならそれ相応の身体能力が必要だ、あと筋トレしつつ御影先生が装着していた対AGボディースーツ。アレの効果で多少身体が動きやすくなり、普通の人間では出来ないくらいの動きが出来るらしいがそれに耐えうる身体でなければ宝の持ち腐れとなってしまう。

筋トレが終わったら軽くストレッチを行いつつ今日学んだことの復習。

戦い方、振り方、弱点部位。それを念入りに頭に叩き込む。

そして今日の訓練は終了した。


「ありがとう…ございました…!」

「初日にしては上々だ。だが明日からもこれが続くぞ、三日坊主にならないようにな」

「はい…!!」


疲れた体を引きずり部屋に戻ってきたらまず風呂だ。明日、筋肉痛にならない様に解しながら入浴する。


「あ”ぁぁぁぁ…」


疲れた体に染みわたる…気持ちがいい。


『春斗、大丈夫ですか?』

「大丈夫…とは言えないな、正直に言うと結構キツイ」


今日の半分以上を勉学と訓練で費やしたからなこれが毎日か…。

まぁこれから逃げたら生殺し確定だしな、逃げるわけにはいかない。

それなら…!


「なぁ…赫蝶」

『はい?』

「…魔剣を出してもいいか?」

『な、何故ですか!?』

「慣れたい」

『え…?』

「慣れたいんだ、現状、魔剣は俺の最終手段でずっと一振りしかできず振った瞬間右腕が爆発する。この最終手段を繰り返しまくったら学園にも、そして赫蝶にも迷惑がかかる。だからこそ慣れたい」

『…』

「ダメか?」

『分かりました、ですが危ないと判断した瞬間即座に解除します。それでもいいですね』

「あぁ」


許諾を得たので湯船から右腕を出して…魔剣を右手で握る。


「くっ…!?」


やはりというか何というか、痛い。

重みとかはないがとにかく右腕に激痛が走る。


『解除します、今の春斗の身体では酷かと』


赫蝶の静止が入り…魔剣は塵となって消えた。


「…慣れていくしかないよな」


湯船から出した右手を見ながらそう思った。


◇◇◇


それから一週間が経った。地獄のような訓練、激痛の走る魔剣慣らしには意外と慣れてきたもので多少なりともこれが日常となった。


(人間、直ぐ慣れる物だというけど…本当に慣れるものだなぁ)


御影先生曰く、俺の身体は元々かなり鍛えられている方でこの学園に来てからも鍛錬を積んでいたことが幸いして普通よりも早めに対AG戦闘が出来るようになるかもしれないとのこと。

現状は…その言葉を信じるしかないか。


『春斗』

「ん”ん”ー!!どうした?」

『魔剣には慣れてきましたか?』

「…急だな。まだ何とも言えない、痛みには多少は慣れたけど、アレを振るってなると流石に怖い」

『ですよね。ただ御影先生としている訓練の影響により多少なりとも肉体が出来上がってきているようです。もしかすると振れるようになっているかもしれません』

「そうか…でもとりあえずは対AGの戦闘を学んでから魔剣にしよう。このまま魔剣振って怪我しましたとかなったら怒られる」

『そうですね。ではアリーナに向かいましょう』

「あぁ」


そんなわけでやや早歩きでアリーナに向かう。

後ろから付いてくる6人の影に気が付かずに…。


◇◇◇


「…見つけたぞ」


早歩きで何処かへ向かう春斗の後ろをつける葵、フレヤ、レベッカ、アナスタシア、水津、雪華。

理由は単純明快、ここ最近春斗は放課後になると何処かへ消える、その理由を知るためにつけていたのだ。


(最近妙にそそっかしい、幼馴染として知るべきだと思うのだ…他意はないぞ)

(折角放課後に二人っきりになるタイミングが何回もありましたのに、肝心の春斗さんがいないんですもの。絶対に何かありますわ…)

(春斗が隠し事するのは珍しくないけど…今回のは特に知りたい!も、もし女の子と会ってたりしたら…)

(あの襲撃以来春斗の様子がおかしい…副隊長にも聞いたがこれといった情報も得られず…まさか!タービュランスに脅されているのか!?)

(ミストバスターを使っても守り切れなかった…だからこそ今の春斗の状況を知るべき。もし他の女子と会っていたら…)

(みんな心配という建前で春斗君が他の女子と会っていないのか心配なのかな?でも、お姉さんも気になるのよね、特訓が出来ないって言われてから連絡がないし春斗君が何をしてるのか)


と各員、個人的な考えを持っているが春斗が放課後になると消えるという利害の一致が出来ているため今現在進行形でつけている。


(校舎から出て…あっちはアリーナ?)


先頭にいる葵が春斗の行く先を見ていると方向的にもアリーナだ。

まさか、他の女子と共に訓練を?と全員の頭の中にそんな考えがよぎる。

…そして嫉妬心が燃え上っていく。


「…行くぞ」

「…ええ。うふふふ、うふふふふふふふ」

「…うん」

「…あぁ」

「…浮気者」

「流石にお姉さんも見過ごせないかなー?」


◇◇◇


「…む?九条か、早いな」

「ちょっと早歩きで来ました」

「真面目だな、練習時間の15分前にここに来るとは」

「…それは御影先生もでは?」

「私は良いんだ、先生だからな」


ちょっとした暴論を聞いた気がするぞ…。


「まぁ早く来る心掛けが出来ているだけいい、今日は早めに始めて早めに終わりにしよう」

「了解です」

「とりあえず準備体操しつつ弱点部位についての復習だ」

「分かりました!」


体操着に着替えていたのでそのまま御影先生と共に準備体操。

身体中の筋肉を解しつつ、御影先生の質問に答えていく。


「九条、質問だ。対AG戦闘においてどの部位を破壊した際に有利を取れるようになる?」

「脚…というよりレッグの関節部分やジェット機構がついている部位です」

「正解。では次だ、対AGでの戦闘で最も早く操縦者を無力化できる方法は?」

「操縦者がこちらを認識する前に気絶させればいい為、ワイヤーやロープなどで首を絞める事です」

「そうだな。だがそれが通じない場合は?」

「AGの特性上、装甲や操縦者に対するダメージをシールドエネルギーで防ぐため的確に攻撃しシールドを消耗させ、操縦者の生身を狙います」

「正解だ。なるほど、意外にも復習を積んでいるのか?」

「いえ…何というか時々俺も忘れますけど元一般人ですので普通効かない単語ばかりで」

「覚えてしまうというという事か?まぁきちんと話を聞いている辺り良い生徒だろう、それに三日坊主にはならず一週間もこの訓練を続けた。中々見どころがあるぞ」

「そう…ですか…ん”んー!!」


軽く体操も終わったのでこれから今日の訓練が始まる。


「今日の訓練だが、これらを使う」


そうして御影先生が持ってきたのは大量の黒い箱。

何というか明らかに『開けるな』って思わせてくる。


「これは?」

「対AG用武装が詰まった箱だ」

「対AG武装…?」

「本来、生身の人間ではAGに敵うわけがない。それは普通の人間ならな。これは私専用の特注品だ、生産元は吾郷技研」

「吾郷技研って黒鉄の生産元の?」

「あぁ。言ってなかったがあの吾郷と私は同級生だ」

「そ、そうなんですか!?」

「その腐れ縁でな…まさかこんなに作るとは思わなかったぞ」


御影先生が黒い箱を全て展開すると無数の武具たちが現れた。

ブレードにパルチザン、鎖鎌にチェーンソー…何か見たことのない武器もあるぞ?

ざっと見たところ何百と武装がある。


「私が使うのは対AG用近接ブレードと十文字槍のみなんだがな」

「槍…ですか?」

「あぁ、私の得意武器だ。二槍の十文字槍」

「に、二槍!?」


二刀流ならぬ二槍流!?どんな技があったらそんなことできるんだよ!?

これが…世界最強のAG操縦者。普通じゃ考え付かないことをやってのけるのか。


「でだ、今日は九条の得意武器を探す。いわゆる『相棒』をな」

「俺の相棒…」

「…とはいうものの大体は見当はついている。お前は絶対に日本刀だろう」


御影先生から一本の日本刀を受け取った。

あの和風な日本刀というよりかはサイバーパンクな見た目で刀身が日本刀に比べてやや厚く、キィィィィンと音が聞こえる。


「お、おぉ…」

「高周波(ブレード)だ。周波による振動で装甲やシールドにダメージが与えやすくなる」

「なるほど…」

「軽く振ってみろ。ほれ、ダミーを展開しておく」


そうして俺の目の前にダミーのAGが現れた。もちろんダミーだから攻撃してくることはない、ただ少し怖いな。

高周波刀を抜刀し、構え…両膝裏の関節部分を狙って斬る。


(振りやすい!?)


思った以上に軽く、切れやすい。ダミーの膝裏の関節部分を見ると軽く斬り跡が付いていた。

これが…対AGの武装か、生身の人間用とは言えここまでダメージを与えることが出来ることに驚く。


「どうだ?」

「軽くて、振りやすいです」

「そうか、なら次は抜刀術でやってみろ」

「抜刀でですか?」

「あぁ。お前のAGの戦闘でもその構えが時々見られる、だからこそやるべきだ」

「了解です」


今度は浮遊しているジェット機構を狙って刀を収めながら狙いをつける。

その部分に集中し、鞘に左手を添えて狙った場所へ跳ぶ。そして柄を握りしめて一閃。

…スパッと斬れた。

どんな切れ味してんだこれ!?


「どうだ?」

「ど、どんな切れ味してるんですかこれ!?」

「まぁ…驚くだろうな」

「AGの装甲を真っ二つに出来る切れ味が恐ろしいんですが…」

「…最悪、納刀した際に指が斬れるかもな」

「怖いこと言わないでください!!」


肘をまげて自分の腕で血を拭くように動かし、手に気を付けつつ納刀する。

…何で知っているかというと習ったからな、納刀も。


「…納刀も完璧だな」

「多少なりと習っていたので」

「そうか。だが戦い方を考えるなら九条は刀が一番いいかもしれない」

「そうですか?他には」

「いやお前に他は必要ない」

「な、何故ですか!?」


唐突に否定され、質問するが…


「お前は一本の道を極めたほうが強い」


そう、返された。


「確かにお前の相手を動きを見て真似る力も素晴らしいが、お前は刀の道が一番似合う…というよりそれが一番強くなれる」

「…」

「無限の数よりも究極の1を持った方がお前は強くなれるはずだ」

「分かりました」

「このままいけばお前は世界でAGに立ち向かう唯一の男性にもなれる。ちなみに吾郷には既に話を通してあるからな」

「は、早いですね…」

「早い理由はお前のせいだぞ、九条」

「???」


よく分からないまま、御影先生と刀を使った訓練や鍛錬が始まった。


「早速打ち込みだ、やるぞ!」

「はい!!」


借りた高周波刀を握りしめてダミーを見る。

攻撃してこないAGとはいえ、圧力は微かに感じるものだ。


「はぁっ!!」


抜刀での攻撃や刀を構えた状態での剣技を繰り返す。

…すると、御影先生の動きが止まった。


「…すまん、九条。このまま打ち込みを続けていてくれ」

「どうしました?」

「いやなに…ねずみが入り込んだようだ」

「…?」


次の瞬間、御影先生は槍を構えて投げる。

投げた先には何も居ないが、ピット真横の壁に突き刺さった。そして悲鳴が聞こえた。

だ、誰かいるのか!?

…まさかタービュランス!?


「赫蝶!」

「待て九条、お前が思ったような相手ではない」

「…え?」

「おい、ピットから見ていた女子生徒たち。姿を見せろ」

 


すると姿を現したのは葵、フレヤ、レベッカ、アナスタシア、水津、雪華さんだ。

な、何でここに?


「何でここに!?」

『そ、それは…』

「大方九条が放課後になると姿をくらませていたからだろう」

「え、えぇ…?」


それだけなのか?てか俺言ってなかったっけ…。


『こほん。それより春斗さん、今何をしていましたの?』

「御影先生と一緒に訓練してた。ちょっと俺の個人的な理由でな」

『個人的な理由?』

「あぁ、えっと」

『春斗、理由は言わないでください』

「?」


急に赫蝶が声を荒げる。珍しいな…。


『本当のことを話せば、確実に止めに来ます。止められれば魔剣慣れもまともに出来なくなる可能性も』

「…了解。すまん、ちょっと理由は言えない」

『い、言ってくれないの!?』

「そこまで声を荒げるのか…?でも、放課後になると俺が消えていた理由は御影先生と訓練していたからだ」

『…ふーん』


…雪華さんが何か分かったかのように声を出す。


『そうね、だったら私たちは戻りましょうか』

「う、うん…」


コツコツと遠くから離れていく足音が耳に入るが、1つ少ない。

と気が付いたと同時に雪華さんがピットから飛び降りてきて俺と御影先生の前に着地した。


「…」


そして無言のまま距離を詰めてくる。

…謎の圧も感じつつ。


「それで…春斗君、何をしていたのかな?」

「御影先生と訓練です」

「そうじゃない。何の訓練をしていたの?」

「…」

『ここは正直に答えましょう、身のためです。もしかすると強制的に止められる可能性もあります』

「…対AG用の戦闘訓練です」

「やっぱり…ね」


赫蝶に言われた通り正直に答えるとやや驚いた表情をするが、今度は少し悩んだ表情に変わった。


「この対AG用の訓練は春斗君からお願いしたの?それとも御影先生から?」

「俺からです」

「…それはどうして?」

「一定期間だけとはいえ皆は戦って俺だけ指を加えて見ていろなんてことは出来ません」

「それは皆が信用できないから?みんなが春斗君がいないと負けると思ったから?」

「いえ、そういうわけではないです…雪華さんがどれほど知っているかわかりませんが、俺は…目の前で友人や大切な人が傷つくのが嫌なんです」

「…」

「それが負けるや勝つことに関係なしに…傷つく姿を…これ以上見たくない」


刀を握りしめる音が鳴る。


「どうして…そこまで考えるようになったの?」

「…言えません。こればかりは」

「そっか…君も君なりに頑張りたいんだね」

「…はい」

「わかった。本当は止めようと思ったけど春斗君の決意を崩すことは至難の業って事くらい知ってるし、今回は心を鬼にして目をつむってあげる。でもこれだけは覚えておいて」

「?」

「君が思っている以上に、春斗君の存在はこの学園での大切な物になってるの。君の身体や精神が傷つけば傷つくほど周りの人間の心が傷ついてしまう。もしこれが虚言に聞こえるなら、お姉さんは春斗君の頭をメイスでかち割っちゃうかもね」


やや真剣な表情をしながら俺にいう雪華さん。

俺がみんなの為だったら身体も命も危険にさらしてもいいという自己犠牲の精神を分かっていて言った物だろう。

だが…俺にはこれしかできない。暴力を知り、恋人を危険に晒した俺のような愚者には命を張ることしかできない。むしろこれしかないんだ。


「…春斗君」

「はい」

「…さっきの言葉、覚えておいてね」

「…」


俺は…『はい』と言う事が出来なかった。

誤字脱字、語彙力がほぼ皆無に等しいのでミス等がありましたらご報告お願いします


感想も待っていますので気軽にどうぞ!


超絶不定期更新ですがご了承ください…

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