第38話 少し変わった日常を一緒に
学園祭後夜祭も終わり普通の日常に戻った。
学園祭の雰囲気がやや消えかかっていた10月初頭、俺が今いる所は…。
「そんなわけで春斗君、生徒会副会長就任おめでとう!」
パーンとクラッカーの音が鳴り響く。
俺が今いるのは生徒会室。クラッカーの紐を引っ張ったのは荒井先輩と希更先輩。
そして今頑張ってクラッカーの紐を頑張って引っ張っている水津。
「えっと、雪華さん」
「うん、何かな」
「これは…どういうことですか?」
「え、自分の周りが美女ばっかりで居心地が悪いって」
「それもそうですけど、何故俺が副会長に?」
(((そうなんだ…)))
まずこの生徒会室にどうやってきたのかを話そう。
朝、目が覚める。今日は休みだったので静かにもう一度寝ようと思ったが身体を起こすとそこには。
「おはよう春斗君」
「お、おはよう…春斗」
「おっは~良い顔だね~」
「おはようございます、九条君」
「…?」
目を擦って再度見る。そこには雪華さん、水津、カメラを構えた荒井先輩そしてもう一人の女子生徒リボン的に二年生だ。
いや何故俺の部屋にいたのかも疑問なのだがそれ以上に気になったのはロープを持った水津と雪華さん。
「…なるほど、夢か。最近疲れたしなぁ、もう一回寝よ」
俺の頭はこれは夢だと判断し、布団を被ろうとしたが。
「こらこら夢じゃないわよ」
雪華さんに俺の布団を剥がされた。やや寒い。
「…いやロープを持った雪華さんが俺の部屋にいるわけないでしょう」
「じゃあ」
「痛い痛い…む?痛い?」
雪華さんにほっぺたを引っ張られて痛覚を感じた。つまりこれは夢じゃない。
ん?これは夢じゃないだと?と気づいたときにはもう遅い、全員一斉に俺に襲いかかってきた。
「な、何だぁ!?」
「水津ちゃん、縛ってしまいなさい!」
「春斗…抵抗しないで」
「4人に勝てるわけないでしょ!」
「馬鹿野郎、俺は1人で勝つぞお前!」
とは言ったものの流石に四対一は分が悪すぎるので逃げよう。
襲いかかってきた4人を回避して部屋のドアから出ようとするが。
「甘いわ♬」
「ぐぉっ!?」
雪華さんに投げられてベッドに叩きつけられる。
「今度こそ縛ってしまいなさい!」
「止めろ!離せ!止めろォ!」
そうして両手両足を縛られたのち、4人に担がれて何処かへ連れてかれた。
その場所が…この生徒会室。
「刺激的な朝だったでしょ?」
「刺激的でしたけど二度と体験したくないんですがそれは」
「それはいいじゃない」
良くないんですがと突っ込もうとしたがどうせ無視されるので黙っておく。
「それで何で春斗君がここに居るのか、ね。まず春斗君、争奪戦の結果は覚えてる?」
「いや…後夜祭の時は先生に呼ばれてたので聞けませんでした」
「それもそうだったわね。結果は我々生徒会の優勝。それで春斗君は変わらずクラスは1年1組。もちろん私たち生徒会が優勝したから」
「俺を副会長に…?」
「そう、だからこれは歓迎会」
なるほど…。いや納得したけど歓迎会するのに俺を縛る必要あったか!?
「とりあえず縄を解いてもらってもいいですか?」
「うーん…」
「何故悩むんです!?」
「そうね、この際春斗君に色々して面白…いえ情報を吐いてもらおうと」
「今面白いって言おうとしてましたよね!?」
「ぜーんぜん?」
「はぁ…」
そんなわけで縄は解かれて俺の歓迎会が行われたのだった。
歓迎会が終わった後、久々に俺は私室で読書に明け暮れていた。
何というかこういう1人の時間が貴重だからな。
(…ふむ?)
今読んでいるのはミステリー小説。読みながら読者である俺も謎を問いていくのも良いよなぁ。
…ほう、意外だ。コイツ死ぬのか。
『春斗』
「どうした?」
『もしかして犯人ってこの方では?』
「ほぉ?赫蝶はそう思うのか、何故だ?」
『124ページの3行目』
「…これか?」
『はい、思えば知りすぎではありませんか?』
「確かに…ただの整備員とはいえここまでの情報を知っているのは違和感あるな」
赫蝶のいう意見、確かに理にかなっている。だがそう簡単には分からないのがミステリー小説!そうそう当たるわけじゃ…
「マジじゃあん…」
何で正解なんだよ。俺の仮定は何処へ行った…。
『どうですか?』
「流石の一言」
『ふふん』
「…絶対ドヤ顔してるだろうなぁ」
本にしおりを挟んで本棚にしまいぐーっと身体を伸ばす。結構集中してたな。
「ん”ー!ん?」
軽くストレッチしていると扉がノックされた。
「はーい?」
「アナスタシアだ」
「え、どうぞ~」
入室してきたのはアナスタシアだ。
「俺の部屋に来るなんて珍しい、どうしたんだ?」
「う、うむ…それで用件なんだが」
やや恥ずかしそうに懐から二枚の紙切れを取り出した。
「…これは?」
「日本のテーマパークのチケットらしい」
「…何で?」
「聞きたいのは私の方だ!副隊長から急にこれが渡されたのだぞ!」
「そんなことあるか?てか期限今日までじゃねぇか!?」
現在時刻を確認すると10:32と表示されている。しかもこのテーマパークのチケット…結構有名な所のプレミアムの奴だ。これをただの紙切れにするのはさすがに勿体なさすぎないか!?
「あ、アナスタシア、これ結構レアな奴だぞ?」
「お前の反応を見る限りそのようだな」
「そのようだなって…こんな大切なものを俺に使うのか?」
「あ、あぁ…そうすればつまり…その」
「?」
何やらもじもじとしている…聞くだけ野暮か。
「えっと俺と行きたいのか?」
「うむ!」
「…なら行くか、俺と」
「あ、あぁ!早速行こう!」
「…流石に着替えろ、部屋着はマズイ」
そんなわけで学園前に集合と約束しアナスタシアは着替えに一度部屋に戻り、俺は元々この後外出するつもりだったのでこの恰好のまま御影先生の元へ走った。
何故かって?簡単だ、俺の外出届の欄にアナスタシアの名前を増やすためだ。
◇◇◇
「お、おぉぉぉぉ…!!」
「久々に来たな、ここには」
「久々…だと?」
「…前に父さんと母さんとな」
「なるほどな」
「何か一瞬鋭い空気になったがどうした?」
「な、何でもない!早く行くぞ!」
アナスタシアと合流し、列車に乗り込みテーマパークにたどり着いた。
流石休みなだけでかなりの人だらけ。有名も有名だしそりゃそうか。
んで俺の隣で目を輝かせているアナスタシア。秋っぽい格好だ、白のセーターに黒のスカート靴はショートブーツ。何か可愛いな。
「そうだな」
アナスタシアと並び、テーマパークの入口にてチケット渡し中に入る。
「春斗」
「どうした?」
「このプレミアムチケットと他のチケットには何の差があるのだ?」
「あぁ、プレミアムの方なら早くアトラクションに乗れて飲食が少し安くなるんだ」
「なるほど…どれから乗ろうか。そういえば副隊長がデートの最後は観覧車にすべきと言っていたぞ」
「デート…なのかは分からんが最後に観覧者をチョイスするのは良い趣味しているな。じゃあ最後は観覧車として、何乗るか」
近くのベンチに座りマップをスマホで開く。
「これは何だ?」
「コーヒーカップだ」
「…それは飲み物じゃないのか?」
「あー違う違う、そういう乗り物だ。ならそこに行くか」
「う、うむ!」
そんなわけで行き先が決まったのでコーヒーカップの方へ足を進める。
やはり懐かしいな。ここのテーマパークで小さいころよくはしゃいでいた。あの時とは多少なりと変化があり改装工事など合ったようでちょっと違和感がある。
まぁ…気にすることではないか。今を楽しもう、アナスタシアのお陰で来れたんだしな。
「ってこれじゃ人が多いな…アナスタシア、ちょっとごめんよ」
「なっ!?」
このままではアナスタシアとはぐれてしまうと考えたので手を握る。
「急にすまん、いやだったら言ってくれ」
「だ、大丈夫だ。は、春斗なら…」
「…よし着いたぞ、やっぱり意外と近かったな。ってアナスタシア、どうした?」
「な、何でもないぞ!?」
結構近かったので歩く距離も案外短かった。うわぁ…結構並んでる。
だが!今回は違うのだよ、アナスタシアのお陰でな!
…虎の威を借りる狐ってこういうことだよな、はぁ…。
「プレミアムパスを拝見しても?」
「はい、ほらアナスタシアも」
「う、うむ!」
「ではこちらへどうぞ」
通常の並び列とは違いプレミアムパス用の並び列がある。こっちはガラガラですぐ乗れそうだ。
「おぉぉぉ…これがコーヒーカップ!」
「あぁ、飲み物としては間違っていないんだが大きいカップに乗って高速回転!みたいな感じだ」
「早く乗ってみたいぞ!」
(すっげぇ目を輝かせているな…)
思えばアナスタシアは元軍人。学園に来なければこのような機会は無かったからこそ新鮮味があるのだろう。
「ではお待ちの二名様、こちらに」
「はーい」
アナスタシアを連れてコーヒーカップに乗り込む。
「む?この円盤は何だ?」
「これを回すと回る速度が上がる、限度はあるけどな」
「そうなのか、なら全力で回すべきか?」
「…酔うなよとは言っておく」
そう会話しているとブザーが鳴り響きコーヒーカップが動き始め、先程の宣言同様アナスタシアは全力で回し始めた。
思った以上に速いな!?
「は、早いっ!?」
「春斗、これは面白いぞ!」
「お気に召したようでぇぇぇ!!?」
遠心力で身体が外側に飛んでいきそうだ。てか、あまり酔わなくなったな。AG訓練の賜物かもな、酔うのも醍醐味っちゃ醍醐味だけどね。
『はーい!コーヒーカップへようこそ~!』
ここは変わっていないんだな。店員…でいいのか?このコーヒーカップの店員さんは今乗っている人たちに楽しんでいるのかどうかみたいな質問を飛ばしたり、誕生日の人が居れば祝ってくれたりする。
耳傾けられるような状態じゃないけどね!!
『さて、そこで彼女さんが全力で回しているそこのカップルさーん!』
「なっ!?」
『楽しんでますか~!』
どうやら質問の矛先が俺らに向いたらしい、カップルではないが…。
「あ、アナスタシア俺らにらしいぞ…!」
「た、楽しんでいる!!」
『それは良かった!引き続き全力で回してより楽しんでくださいね~!』
「うむ、確かに!ではもっと回そう!」
「普通に死ぬぅぅ!!?」
その後アナスタシアはもうギュルンギュルンと円盤が鳴るほど回しまくった。
「うぅ…げほっごほっ」
「情けないぞ春斗」
「いや…流石にここまで回すのは…ヤバいって」
「そ、そうか。すまん」
「大丈夫…だ!さて次は何処に行くか」
身体を起こしてまた歩いていく。そういえば昼が過ぎてからこっちに来たけど何も食べてないな。
「アナスタシアは昼食べたのか?」
「いやまだだ」
「なら何か食べるか、丁度飲食店も近いしな」
「で、では…手をつないでもいいか?」
「あ、あぁ良いぞ?」
アナスタシアが手をつなごうと提案してくるのも驚きだったが、これでつながない方がおかしいだろう。
俺はアナスタシアの手を握って歩く。
「アナスタシア」
「な、何だ?」
「どうだったコーヒーカップ」
「楽しかったぞ!訓練の時とは違い、見た目も良かったしな」
「それは良かった」
まぁあそこまで回して楽しんでなかったらただの拷問だろうな。
次のアトラクションに行く前に軽く腹ごしらえだ。メニューを見て考えると、流石テーマパークというくらいのボリュームで少し値が張るが今回はプレミアムのお陰で少し安くなっている。
「アナスタシアは決まったか?」
「中々決められない…春斗は?」
「俺はデミグラスハンバーグ」
「なら私もそれにしよう」
「了解」
そうして注文し、食事が届いた。
うん、いいにおいで食欲をそそってくる。
「頂きます」
「頂こう」
ナイフで切り口の中に一口。
やはり美味い、何というかテーマパークで食べるご飯ってちょっと贅沢だよね。
アナスタシアも目を光らせて食べている。
「美味いな、学園の食堂にも負けず劣らずだ」
(…改めて思うけど、これで学園側の料理って無料なんだよな。本当凄いよ)
それっぽく注文すれば、もしかしてこれに似た料理を無料で食えるかもな。
「ってアナスタシア、ソースが頬についてるぞ」
「何?何処だ?」
「俺がとるから、じっとしてて」
アナスタシアに腕を伸ばして、ほほについたソースを指でとる。
「す、すまない…」
「大丈夫だ、それくらい美味しいしテーマパークを楽しんでいるという事だろう。それに何かお茶目で可愛いと思うぞ」
「な、何!?」
「?」
「わ、私が…可愛いのか?」
「あぁ、可愛いと思うぞ」
「そ、そうか…!」
少し赤らめながら微笑むアナスタシア。何というか幸せそうだな。
軽く雑談しながら食べ進めていき、食器は空になった。
「ごちそうさまでした」
「ご馳走様でした。さて腹ごしらえもしたし何処に行くか」
「そうだ、ジェットコースターというのを乗ってみたい」
「ジェットコースターか。この辺は無いし少し遠いが大丈夫か?」
「無論、軍人を舐めないでもらおうか」
「そうだな、じゃあ行くか」
「うむ!」
昼食を食べ終え、お金を払ったのち二人で手をつないでジェットコースターまで歩いていく。その道中もアナスタシアは全ての光景や建築物、様々なアトラクションに目を輝かせていた、てかずっと輝いてんな。アナスタシアの目からビーム…。
止めよう、単純に失礼すぎる。
「む、アレか?」
「そう、アレ」
アナスタシアが何かを見つけたようで指をさす。その先には天に伸びるレールが見えた。
「あれがジェットコースターか…ふん、あのような高所で驚くとはな」
「…確かにAG使ってればアレくらいは飛べるよな」
「しかし、楽しまなければ!行くぞ春斗!」
「って急がなくてもアトラクションは逃げないぞ!?」
俺の手を引っ張りながら走るアナスタシア。
その光景を見て少し思う。元は学園で俺に軍人とは学園とは何たるべきかを俺に教えてたんだよな。思えば俺たちの居る位置はほぼ最前線、何故こんなことを何て言われたら言い返せないかもしれない。でもアナスタシアも学生だ、学園にいる中の夢見る乙女。
たまには息抜きも必要だ、特にこういうのが。
恐らくアナスタシアの副隊長は休憩してほしいからとかでプレゼントしたと思う。
「…良し!乗るぞ春斗!」
「…そうだな」
俺が勝手に思うけど、良い部下を持ったな、アナスタシア。
ーーー
「うっ…まさか…私が」
「アナスタシア大丈夫か?ほら、水」
「すまない…」
なんと意外も意外。アナスタシアは…ジェットコースターで腰が抜けたらしい。
理由を聞いたんだが、AGは自分の意識で上昇降下が出来るが…ジェットコースターだと自分の意識で上昇と降下が出来ない。つまり心構えが出来ないのだ。たとえ降下したくない、上昇したくない、そんなふうに願ってもジェットコースターはガタガタと音を鳴らしながら進んでいく。所謂逃げられない恐怖。
その結果、腰が抜けたと。
「私にこんな恐怖があったとは、不覚」
「何か染まってきたな」
「春斗は大丈夫なのか?」
「多少は耐性があるくらいだ。でも絶叫系は苦手だよ」
「絶叫系?」
「あぁ、ジェットコースターやフリーフォールとか色々あるぞ」
「な、何だと…!?」
「別に強制的に乗せるとかそんなことはしないよ」
ほっと安心したような雰囲気になる。まぁ…わかるよアナスタシア。
すると
「ううっ…パパ、ママ…どこぉ…うぇぇぇぇぇん」
俺らの目の前に泣いている少年が横切った。
「迷子か。少年大丈夫か?」
「えっ…お兄ちゃん…は?」
「お父さんとお母さんは?」
「えぐっ…その見当たらなくて…」
「どのへんでかな」
「あっち…」
「分かった。よし、お兄ちゃんも一緒に探すから泣かないでくれ、な?」
「う、うん」
「アナスタシア、行くぞ」
「あぁ」
そうして俺とアナスタシアは少年と手を繋ぎながら指を刺した方向へ歩いていった。
なるほど、こっちにはお土産や洋服といった売店がある。特に今の時間は帰りに買っていくという人が多い、それではぐれてしまったのだろうな。
「これじゃ難しいな、ちょっと捕まってくれ!」
俺が少年を肩車し、遠くまで見えるようにする。
「これならお父さんとお母さんが見えるか?」
「えっと…あっ!」
肩車して視界を確保したと同時に少年が声を上げて指を刺した方向から男性と女性が駆け寄ってきた。
この人たちが親なのだろう、若干汗ばんでいるし両親も探していたんだろうな。
「本当にありがとうございます…!なんとお礼を言えばいいのか」
「いいですよ、少年もよかったな」
「うん!ありがとう!お兄ちゃんとお姉ちゃん」
「う、うむ…」
「じゃあこの辺りで、それでは」
少年とハイタッチして俺たちは離れた。それと日も沈み結構良い時間なのでそろそろ観覧車に乗ろうかと思い、アナスタシアと共に乗り込んだ。
「見つかってよかったな」
「…」
「アナスタシア?」
そういえば歩いている時から今乗るまでアナスタシアから一言も声を聞いていないことに気が付いた。
「どうした?」
「…なぁ春斗、『家族』というのは何なんだ?」
「…」
「私は…」
「覚えてるさ、あの時言われたことは」
俺がアナスタシアの烙印を払拭した時。トレースシステムによって俺はアナスタシアの過去や生まれを知ってしまった。人工合成の遺伝子から作られ誕生した事を。アナスタシアには親というものが存在しない、あの少年のような家族が分からないのだろう。
「そうだな…言われても難しい物があるけど俺は『心の支え』だと思ってるよ」
「心の…支え?」
「あぁ今の俺が存在する心の支えであり、最後の縁。父さんと母さんは居なくなってしまったからな。でもその家族の支えのお陰で俺は皆の為に戦い、今みたいにアナスタシアと会話できていることに感謝している」
「だが…私の心の支えは」
「別に親だけが心の支えってわけじゃないさ、アナスタシアには皆がいるだろう?」
「皆?」
「副隊長やその部下。学園のアナスタシアの友達だってそうだし俺もそうだ、アナスタシアの心を支える柱になれる」
「!」
「って何か痛々しい事言って悪い。改めて家族って言われると少し難しいな」
「そう…か」
観覧車で見えるテーマパークを見る。
暗くなっていって昼頃とは違う。とても輝いていて何処か寂しさを感じる。
『灯火消えんとして光る』と言えるだろう。
でもここで終わったわけではない、最後の心の支えは俺の中で生きている。これが最後の繋がりであり忘れてはいけない縁。
もちろんそれが無い物だっている。でもそれは新たな縁を見つけるチャンスとなりえるかもしれない。
家族になれるような人と、ね。
「春斗」
「うん?」
「ありがとう」
「な、何かお礼されることなんかしたか?」
「…あぁ、した」
「??」
初めて見る顔。その顔は一番優しく、一番嬉しそうで、一番泣きそうな顔をしていた。
「…アナスタシア?」
「私は副隊長からこのチケットを貰ったとき、何故私にとは思った。でもみんな私を支えてくれたのか」
「そうだろうな」
「そうか…似合わないかもしれないが、もし願いが通じるならまだ居たい。春斗と」
「俺とか?」
「…私にとっても春斗は支えなんだ。あの時、烙印を払拭してくれなければ私はこのようにレベッカや皆と一緒に笑って過ごせなかった。まだ…私は」
「…」
「覚めたく…ない。まだ春斗と一緒に…私の支えと一緒に…」
「まるで今生の別れの様に言うな。俺は一緒に居るよ、アナスタシアと。例え学園が戦場の最前線だとしてもな」
「お前は…欲張りだな、みんなを守って私と一緒に居ると」
「あぁ。俺は欲張りで強欲だ、目の前に映るみんなを助けたくてしょうがない」
「お前…らしい」
アナスタシアの両目が涙目に変わっていく。
「なぁアナスタシア」
「何…だ?」
「俺は守る。強くなってみんなを守る、勿論アナスタシアも。アナスタシアが笑顔でみんなと過ごせる場所を」
「…ぐすっ」
「だから今くらいは泣いていいんだ、それが今俺が出来ることだからな」
例え親が居なくても、仲間を失っても、元軍人でも、烙印が押されたことがあってもアナスタシアは乙女だ。まだ幸せな夢から覚めたくないのだろう。
俺は強欲だ。その夢すら守って見せよう。
「…すまん、胸を借りるぞ」
「あぁ、良いぞ。アナスタシア、俺は支えになるからな」
「う、うぅぅっ…」
そうして俺は抱きついてきたアナスタシアに胸を貸して、ただ頭を撫でた。
これからも笑顔で過ごせるようにと…。
ーーー
「…まさかこのまま寝るなんてな」
俺の胸の中で眠ってしまったアナスタシアを背負い、観覧車から降りて一緒に帰りのゲートへ歩いていく。
「帰りに何か買っていくか…」
その道中、少し客が減った売店に入る。
結構色々あるな。お菓子にアクセサリー、キーホルダーに食器など…。
「うん?」
目に入った物を見る。これは白いウサギと黒いウサギのキーホルダーか。
これいいかもな、何というかアナスタシアに黒いウサギが少し合う気がする。
そのキーホルダーを持ってレジまで行きお金を払ってバックの中にしまって歩く。
ーーアナスタシアが笑って過ごす事ができる場所へと
ーーー
後日。
「ふぁ~…おはよう」
「おはよう春斗」
「おはようございます春斗さん」
「ん~…」
本日は普通に授業だと思って登校したが今日は祝日だったようだ。
まだ寝れたのに…と悔しがる。
「おはよう春斗」
「アナスタシアもおはよう」
「う、うむ…それと」
するとアナスタシアがバックから携帯電話を取り出すとその携帯には『黒いウサギ』のキーホルダーが付けられていた。
「あ、ありがとう」
「お安い御用だ」
そうして俺の横を通り過ぎて食堂に向かうアナスタシア。
大切そうに俺が渡したキーホルダーを見つめていた。
「…」
俺の携帯にも白いウサギのキーホルダーが付いているけどね。
「ぺ、ペアルック…!?」
「は、春斗どういうこと!?」
「…アナスタシアが」
「「?」」
「アナスタシアが笑顔で過ごせる様に」
居るかも分からない神に祈りながら俺は今日も強くなるために決意した。
ーーみんなを、守れますように。
誤字脱字、語彙力がほぼ皆無に等しいのでミス等がありましたらご報告お願いします
感想も待っていますので気軽にどうぞ!
超絶不定期更新ですがご了承ください…




