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インフィニティ・ギア  作者: 雨乃時雨
プロローグ~第一部
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第2話 宣戦布告

宣戦布告。

それ以上でもそれ以下でもない、戦いの火蓋を切る為の言葉。


「俺と…?」

「そうですわ」

「何故です?」

「私はこの学園に一般人の男性がいることに納得いっていませんの」


なるほどな、ここはエリートの学園で噂だと医学部や法学部よりも倍率が馬鹿みたいに高く、入学はほぼ不可能、入れるのはエリート中のエリート。

そんな中に俺みたいな普通の高校生がいること自体納得できないのは分かる。

だが『男性だから』というのはどうだろう…今の社会だと男性の方が弱い立場ではある、何せこのAGを活性化出来るのは女性のみ。

AG一つで軍事兵器の大体を凌駕し、国家の最強戦力でもある。

嫌でもこんな世の中にはなってしまうが…何というか今の社会には多少は不満に思ってしまう。


「それに貴方は専用AGが作成されるらしいと聞きました」

「!」

「そしてAGが貴方の元へ送られた時、私と決闘していただきますわ」

「…で?」

「は?」

「戦うだけじゃないだろ?こんなのアンタには勝ち筋しかないんだ、絶対に決闘だけじゃないだろ」

「あら気づいていましたの?」


こんな俺に負けさせる宣戦布告の時点でおかしいと思った俺はそう聞くと、やはり別の目的があったようだ。


「そうです、私が勝ったとき…貴方には自主退学してもらいますわ!」

「自主退学…」


出来ること自体びっくりしたが自主退学か…。

一瞬、正直悪くないなとは思ったがよくよく思い出すと俺にとある研究機関が俺の生態を研究させてほしいと言われた時を思い出した。

しかもね?それがこの学園に入学してからならまだわかるんだけどね?俺がAGの武器を使えるって判明した時からしつこく俺の元に来ては申請書を無理やり書かせようともしてきた。

しかも中学の授業中ですら特攻してくる常識外れのゴミ科学者共、もちろん違法だ。

強制的に迫ること自体ほぼ脅しなのでそこを逆手に取って授業中に研究機関の連中を全員ぶん殴ったり蹴ったりもした。

ずっとそれが続いてたせいでストレスも貯まってたし何よりクラスメイトに危害を与えることが一番許せなかったからな。

結局その研究機関は違法行為がバレて解体されたけど、他にも絶対にこういう研究機関は絶対にいるはずだ、またそんな生活には戻りたくない。

それに…


「分かった」

「あら逃げないんですの?」

「まぁな、俺にも色々理由があるし」

「…今更後悔しても遅いですわよ」


そう言い残しフレヤ・アレクサンダー…フレヤさんは屋上から去っていった。


「俺は…世界を変えたAGの作成者たちの息子だ、息子として負けられない」


一番の理由はこれだ、俺はあの二人の息子。

インフィニティギアやアーマーギアを研究し世界を変えたあの二人の息子、一人っ子の俺を育ててくれたお陰で俺は今を生きてられる…。

家族として息子として一人の男として負けられない。


ーーー


屋上で少しだけひと悶着があったのち今まで通り普通に教室に戻ってくるといつの間にか俺とフレヤさんが戦うという情報が周りに回っていた。

こういうのどういう原理なんだろうな、一つの話がここまで周りに広がっていくのは。

ただ俺の自主退学の事だけは周りには回っていない、安心できるような出来ないような。


「さて次の授業は…」


AG?なんでアーマーギアとしか書かれていないんだ?と思っていると教室のドアが開き柊木先生と…誰だ?もう一人入ってきたぞ?

黒髪のロングヘアに黒色のスーツ、キリッとした瞳にスラッとした肉体、如何にも教師感があり何より。


(…この人、強い)


強者の雰囲気がある。

一応様々なスポーツとか剣道とかやってきたお陰か多少は分かる、俺はこの人のことを何も知らないが、絶対に強い。

そんな気がしてやまない。


「みなさん次はアーマーギアの実習及び技能の時間です、この時間は担任の柊木志保と副担任兼一年生のAG実習の教官である」

「『御影紗月(みかげさつき)』だ」


教室の中が静かになる。

御影紗月先生…この学園で出会った人や見かけた人もいるが圧倒的に雰囲気が違いすぎる

というかフレヤさんとも別格かもしれない。


「…」

「…?」


御影先生と目が合った、凝視しているが俺もなんというか離しちゃいけない気がしてじーっと見る

すると御影先生が俺の方に近づいてきて右手を俺に向かって伸ばしてくる。

ただ手を広げて俺に向かって伸ばしているだけなのに、それだけなのに…


(なんだこの禍々しい雰囲気は!?)


右手からおぞましい程の気迫が飛んできており…俺はその伸ばされた手を掴んで止めた。


「…!」


俺に伸ばしてきた手から危険信号が頭の中から鳴ったから止めたが…この止めた手をどうすればいいんだ?


「え、えっと御影先生?」

「あぁすまない、お前が唯一AGを活性化出来る男子生徒か」

「…はい」

「ふむ…なるほど」


柊木先生が御影先生の行動を疑問に思いそこで止めた。

そう言うと伸ばされた右腕は止まり俺は手を離したが、目はあったままだ。


「驚かすような真似をしてすまない、だが…そうか」

「?」

「いや何でもない」


直ぐに教卓に戻り黒板という名の電子プロジェクターに御影紗月と名前が表示される。


「先程言った通り私の名前は御影紗月、教官および副担任だ、諸君らにはAGの基礎知識や技能を学び、実習し操作や性能、戦闘能力を叩き込む!いいな」


おぉう…強そう、これが俗に言う鬼教官ってやつなのかな。

クラスの女子の一部が震えあがり一部はなんというか目をキラキラさせている、有名なのかこの人は?あとで調べよう。


「早速だがAGの基礎知識の抜き打ちテストを行う」

「「えぇぇぇぇ!?」」


クラスから悲鳴のような声がこだまする。


「当たり前だ、試験を受け合格しその喜びにうぬぼれた腑抜けた奴が居るかいないのかを確認するためでありもう一つの意味として各クラスの授業速度を合わせる為の試験だ」


AGの基本知識か…どうだろう。

父さんと母さんのお陰や自分で学んだ程度くらいだけど大丈夫だろうか…。


「全員の机の端末にテストの情報を送った、心に決めたものから始めろ」


クラス全員が端末に送られたデータを開き、この抜き打ちテストに臨んだ。


(…ここの回答はこれで、あってるな)


かくいう俺はというと意外にも解けている、基本知識はある程度は分かってて良かったと安堵しつつ次の問題へ。


(アーマー・ギアの制約、インフィニティ・ギアの制約を書けか…)


アーマーギアの制約は訓練機が破損や破壊された際は各国家の認定された製造会社や機関の許諾、そして国の許可証を受け取ったのち修繕、再製造が可能となるがアーマーギアのギア部分が完全に修繕不可になった場合は国に連絡を入れ、破損届を出す…というのが訓練機の一連の流れだが専用機は違う。

残されたインフィニティギアをアーマーギアに搭載し作成、AGの作成は各国の技術者が頑張ってくれたおかげで作成が出来るようになったが…如何せん開発者である父さんと母さんは居ないしこれ以上インフィニティギアが作れる方法が現状無いから破壊された瞬間終わりとかもあり得る。

んで基本的には破損や修繕は専用機が作られた国の技術者に依頼みたいな感じだ。

作成はかなり色々書類やら特許やら何やら色々ある、普通じゃ専用機なんて作られることは無い、何せ世界には個数が限られたインフィニティギアがあるし作成しても…みたいなこともある。

まぁ俺みたいなイレギュラーが居れば話が変わってくるかもだけど。

んでインフィニティギアの制約は単純明快、元の鉱石であるインフィニティの採掘、採取は禁止、もちろんインフィニティギアの作成も完全に禁止だ。

世界各国で結んだ平和条約に近く、インフィニティを廻った戦争を起こさないためとインフィニティの暴走による被害を引き起こさないようにするためだ。

というか、もうインフィニティギアは作れないしね…。


(こんなもんか、さて次は…げっ!?)


構造や装甲…だと!?

構造と装甲ってほぼ同じようなものじゃないのか!?いやでも昨日の夜に頑張って構造の勉強はしたが、結局何一つ理解できなかった奴だ、しかも追加で装甲かよ!絶対わからん!

あとで柊木先生か御影先生に聞こう…。

そうして臨んだテストははっきり言うと半々くらいだった、ここは正解と確信したものもあれば頭の細胞たちをフル活用しても全く思い出せなかったり分からないものがあった。


「よし、全員提出したな。ではこれが採点結果だ」


俺の目の前にプロジェクターが広がり若干ビクッとする。

100点中72点か…半分以上は出来てたし喜ぶべきなのか、もしくはもっと上を目指せたと悔しい思いをすればいいのか。


「ふーむ…」

「ではこれらの結果を他クラスと示し合わせ、授業や課題などのレベルを調整する」


そうか、他のクラスもだよな…。

もしかしたら、いや確実に俺の存在で平均点が下がっている気がする、何というか申し訳ないな。

これからも少しずつ努力して平均点を越えられるようにしよう。


「それと九条」

「え、あっはい!?」


急に御影先生に名前を呼ばれて、反射で机から立ち上がる


「お前は…本当に一般人か?」

「…へ?」

「抜き打ちとはいえ得点は割と高く、順位も上の方だ。とても元一般人とは思えないが何かしていたのか?」

「えっと…私は周りの生徒に比べたら自分はただの凡人なので、少しでも近づけるために勉強しました」

「いつからだ?」

「いつからと言われましても…入学手続きされてからです」

「なるほどな、いい心構えだ」

「あ、ありがとうございます…」

「これからも精進しろ、いいな」

「は、はい」


俺は静かに座った。

これは、褒められたのか…?何というか生きた心地がしない。

でも事実を述べただけだしな、御影先生に言われた通りこれからも頑張っていこう。


「では、今後の授業体形について説明していく。まずは…」


抜き打ちテストが終わり、そのあとはガイダンスになった。

時間割を見ると今日(水曜日)の五時間目にAGとあり金曜も五時間目にAG、土曜日には1~4時間目までAGとなっていて…。

水曜で知識、金曜で技能と実技、そして土曜日に操作や訓練となっている。

…いや土曜日に四時間も訓練すんの!?死ぬぞ俺が!?

これは…本格的にヤバい気がしてきた、てか曜日感覚忘れてて思い出したけど、あとフレヤさんとの決闘は実質明日じゃねぇか!?

三日後に俺のAGが完成される…らしいが時間が無さすぎる!

知識やらなんやらじゃどうしようもないぞこれ…ガチで退学の可能性がありすぎる。

とずっと考え込んでいたら、授業終了のチャイムが鳴った


「終了か、では予習や復習を忘れないように」


そうして柊木先生と御影先生は教室から出て行った。


「ふぅ…」


何故か毎週水曜は五時間目までなのでこれから放課後、他の人は入ってみたい部活に見学しに行く者や、駅前のスイーツ?を食べに行く者や、AGの練習をしに行く者など様々。

かくいう俺は椅子に座って少し考え込んでいた、この調子だと、フレヤさんにはまともに戦える気がしない。

一応中学時代は色々やっていたから忍耐力とかには自信はあるけど剣道や弓道を戦闘に役立てる気がしない、何せどんな武具が搭載されているのかすら分かっていないからだ。

もし仮に槍とか来てみろ…無理だぞ?構えとか振り方とか分からないし。


「てかAGの戦闘を見たいな…」


AGの戦闘はどういう戦いなのか見たことがないわけじゃないけど、一度見ておきたい…。


「ちょっとアリーナ行ってみるか」


動きとか見たいし教室から出てアリーナへ向かう。


「…」


廊下には別の女子生徒はいるが基本視界に入れないようにする、これで目が合ってバトルとかあったら怖い。

でも本当に綺麗だよな、廊下もそうだけど教室や他の場所も…流石、国立。


ーーー


そんなわけでアリーナの観客席に着きました。


「よいしょ」


近くの椅子に座りアリーナの中央を見ると、AGを装着してる生徒達が剣の素振りをしていた。

確かアレが黒金だよな?汎用型訓練機『黒金』、俺の黒鉄の開発元である日本特別研究機関とアーマーギア開発研究機関により作成されたAG。

見た目はグレー色の装甲で、左側に鞘がある。あそこにみんなが素振りしている刀がしまわれているのだろう、今は抜刀しているから鞘しかないけどね。

てかAGって意外と大きいんだな、あれを装着して戦うのも凄いけど。

しかし…AGを装着するためのスーツ。あれはあれでいいのか?その、ぴっちりとしたスーツで身体のラインが出ているというか何というか…パット見女子のスク水に見える。

まさか俺のAGのスーツも女子系のスク水なのか!?それはマズくないか!?

そうでないことを祈りながら視線を戻す。


「…飛んでる」


今度は脹脛や足裏の装甲につけられたスラスターやブースターを使ってアリーナの外周を飛んで回っている。

低空飛行ではあるが早い、実際はこのスピードで戦うのか…マジで判断を誤ったらとんでもないことになりそう、戦闘面でも事故的な方でも。


「…む?」


一度スピードに慣れさせたのか中央に集まった女子生徒のうち一人と目が合った、一応軽く会釈。

すると俺の目の前にディスプレイビジョンが浮かび応答ボタンと拒否ボタンがあった。

まぁとりあえず応答を押す。


『あ、もしもし…九条君だよね?』

「はい」

『えっとどうしてここに?』

「AGの戦いとか訓練が見たくて近かったアリーナに来たんですけど…ダメでしたか?」

『いやそういうわけじゃないよ!?居たからびっくりしただけだから…』


そうして通話は切れた。

てかこのディスプレイビジョン良いよね、何にも機器はつけてないけど画面が目の前に表示されるの。

寝ながらアニメとか映画見るのに丁度いい…なーんて思いながらアリーナへ視線を戻す。

すると一対一で戦っていた。


「あんなに宙を舞って戦うのか…」


中学校に襲撃してきたやつはあんなに高くは飛んでないし、どちらかというとスラスターやブースターを使った地上で俺たちを殺そうとしていたのか…それもそうか、学校は嫌でも室内だし空を飛んでもほぼ狙えない、そうやって地上戦と空中戦を使い分けるのか、納得。


「動きを見ているのか?」

「ッ!?」


急に後ろから声をかけられ、振り向くと


「み、御影先生?」


御影先生が立っていた、しかも仁王立ちで。


「まだまだ動きに指摘したい部分はあるが、良い動きではある」

「…」

「聞いたぞ、フレヤ・アレクサンダーと戦うらしいじゃないか」

「はい…」

「そのためか?」

「それもそうですが…訓練や戦闘を見てみたいと思っていました」

「そうか」


御影先生と俺で戦闘を見る。

あの授業の時も思ったがこの先生は強い、きっとこの目の前で起きている戦いよりももっと凄い戦いをしてきたんだろう。


「それと九条」

「はい?」

「明日の6時半に職員室に来てくれ」

「明日の朝ですか?」

「そうだ、黒鉄が完成し今こちらに輸送されている。到着時間は不明だが、専用ギアを持つことによる書類や事前講義があるからその時間でやらせてもらう」

「わかりました」

「くれぐれも寝坊しないように」


そういって御影先生は去っていった。


「御影紗月先生…」


思えば御影先生が何者なのか調べてもいないし、聞いてもいない。

今、調べてみるか…えっと御影紗月?


「え、ある…」


まさかのデータがあった、何々?世界最強の…AG操縦者!?

ま、マジか…世界最強の?

他にも詳しく書かれている、世界のAGの戦闘訓練及び世界各国にAGの性能を見せる大会『ワールドギアチャンピオンシップス』通称『WGCS』において決勝まで進み、決勝戦の相手である『九条夏樹』が辞退したため不戦勝で優勝となり世界最強になった…って


「母さんの名前が何で!?」


母さんも戦っていたのか…そこまで詳しくは知らなかった、しかも御影先生の決勝戦の相手が母さん。

そうなると結構強かったんだな、俺の母さんは。

しかし不戦勝か、何かあったのだろうかと思うが聞く方法もない。


「…尚更負けられない、か」


俺の中で背負うものが増えたことを自覚しながら俺はアリーナから自分の部屋に戻った。

誤字脱字、語彙力がほぼ皆無に等しいのでミス等がありましたらご報告お願いします


感想も待っていますので気軽にどうぞ!


超絶不定期更新ですがご了承ください…

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