第37話 赫して共に蝶は舞う
学園祭当日。
まだ始まってはいないが、朝起きてからも色々な所が盛り上がっている。
ここから見ればな。本当はあの三人に招待状を送りたかったが、俺が眠っている期間中に申請が終わっていたようで…マジですまねぇと心の中でアイツらに謝る。
「赫蝶、対象は?」
『アリーナの中心に設置されているあの籠を開くはず、しかし今は動きはありません。どうやら対象は3機のAGと話しているようです』
俺は今、管制室の屋上にて中心にある籠を見下ろしながら様子を伺っている。
話しているってことは作戦会議中か?
「…」
さて、どうやって倒すか。俺も専用機はあるが相手のAGは計4機。
俺は今まで対多人数戦闘訓練を受けたことはない。だが…AGの記憶が使えるなら多少は対応出来る。
「赫蝶」
『はい、どうしました?』
「一応聞くんだが、赫蝶ならどうやって4機倒す?」
『そうですね、春斗の知識を使うならスターダストとビットでの先制攻撃、そこから白鉄を使った戦闘ではないでしょうか?』
「良いなそれ」
先に言っておくが俺の射撃センスはあまりない、今までの弓で培った偏差撃ち程度。
だが…フレアの真似をしろと言われれば多少は当たるくらいか?
『対象動きあり、来ます』
赫蝶からの声が聞こえた瞬間、伏せながらアリーナの中心を見る。
…やはり4機か。
(識別…リバイブ4機)
白鉄のスキャンを見つつデータを確認。武装は戦いながら覚えるしかない。
「赫蝶、アイツらはこれから何を?」
『どうやら籠を持って移動し、校舎へ』
「エグいな…」
マージで無差別殺人起こすつもりかよ、しかもその場合責任を問われるのは学園になりそうだし…。
落とすか。
「やるぞ」
『はい、私が春斗をサポートします』
右手にスターダストを作り出し、構える。
スコープを覗いて狙いを定める。複製したスターダストとも言えど一撃で相手を屠ることは不可能、何せシールドとかあるしな。
そうなると狙う所は関節部分もしくは籠をもった斎条のアームだろう。
そういえば今赫蝶が放たれると俺のところに来るって赫蝶…見分け付きにくいな。まぁいいや、あの籠から出れば俺の方へ来るといっていた、しかも俺の力になると。
なら狙うは籠だな。
「!」
狙いを定め、トリガーを引く。
レーザーの放たれる音と閃光が輝き、襲撃者のアーム目掛けで進んでいき…着弾。
「白鉄、展開!」
スターダストを握りしめながら管制室屋上からアリーナに向かって飛び降りて展開、ビットを飛ばして対象以外への先制攻撃を仕掛けつつ、対象目掛けてスターダストを撃ちながら接近していく。
「ふん!」
スターダストを解除し、刀で斬りつける。
…銃のボディで防ぐのか。何かレベッカとかに見比べると何というか、お粗末というか…。
「く、九条!?何故ここに!?何故生きている!」
「それは…俺のセリフだ!」
刀で押し切り地面に叩きつける。
(複製パンツァー・カノーネ!)
左手にアナスタシアの迫撃砲パンツァーカノーネを展開し、叩きつけられた斎条を目掛けて撃つ。着弾。
「…」
残りの3機の様子を伺うとビットに結構苦戦しているようだ。ちなみにビットの操作は赫蝶に全て任せてある。
改めて思う、赫蝶の力もすごいけどマニュアル操作になれたおかげでいつもよりも動ける!
(複製村雨、白露)
無垢を解除し、葵の二刀を構える。
剣先に赫蝶を纏わせて、斬撃波を撃つ。
「くっ…ただのガキが」
「弱い」
「…あ?」
「聞こえなかったか?弱いって言ったんだ。納得したぜ、水津にハンデを付けて戦ったのが。お前、弱すぎてハンデを付けたってことが」
(複製、薙刀)
二刀を解除し、薙刀を構える。
「ハンデを付けてもらわなかったら負けたのはお前の方だったな、いや負けてくれていた方が良かったと俺は思うぞ。お前にも水津にも…」
「ガキが!!調子づくなぁぁぁっ!!」
一心不乱に怒りのまま俺に向かって突っ込んでくる。アレはパイルバンカーか。
そんなパイルバンカーじゃ俺には当たらん。
薙刀の柄で杭を受け流し、石突で溝辺りを突き穂を振り下ろす。
「ぐあっ!?」
「…噛ませ、いや小物か」
あの時の怒りが収まっていき、『呆れ』と言う感情が出てくる。こんな『雑魚』風情に怒っていた自分に呆れる。
いやまぁ怒るけどね。あんなことを教員が生徒にしてたら。
「クソガァァァ!!」
「…」
諦めず俺に向かって突撃してくる。確かこういう時は少し違うこともしてくる可能性がある、効かないと思った手を二回連続でやるほど馬鹿じゃないだろこいつも。
だから、俺も変える。
柄で受け流す前に薙刀を振り払いライトアームで防いだことを確認した瞬間、逆方向へブーストし再度薙ぎ払う。今度は防がれる前に攻撃が通じた。
(いくらなんでも弱すぎねぇか?)
コイツ…本当にIGD学園の元教師か?
「やぁっ!」
「!」
ビットの攻撃を潜り抜けた一機が俺に向かって射撃しながら突撃してくる。まだこっちの敵の方が良い動きしてる気がしてきた。
(複製シールド)
レベッカのシールドを展開し、俺に向かって飛んでくる弾丸を斜めに受け流す。
距離が近づいてきた瞬間。
(複製シャルーア)
雪華さんのメイスを展開し振り下ろして地面に叩きつける。
「終わりだ」
シールドとメイスを解除し、スターダストを構えてビットと共に一機落とす。
(複製ショットガン)
スターダストを解除したのち両手にショットガンを構えながら残り二機を正確に撃っていき、ビットでトドメ。
「ば…化け物が…!」
「…」
「がっ…がはっ!?」
地面に叩き落とされた二機の首を掴み、残りのエネルギーを吸収する。
『白鉄』というより『赫蝶』のアビリティだな。この赫蝶で作られた武器、あるいは赫蝶を纏わせた状態で他のAGに触れるとシールド、ヘルス、パワーエネルギーを吸収することが出来る。
このアビリティのお陰で俺の攻撃で相手のエネルギーを『減らす』のではなく『吸収』出来るようになった。
結論、ずっと俺が攻撃を当て続ければ俺のエネルギーは回復し相手は一方的に減り続ける。
いわばドレインだな。
「よし、全快」
一回も被弾してはいないが流石にパワーエネルギーは減るので敵で回復。
…一体どういう原理で吸収しているのだろうか。
まぁいい後は斎条のみ。
「っておい!」
アイツ、仲間を置いて逃げやがった!!
籠を握りしめながら校舎に向かって飛んでいこうとしている。
『春斗!』
「分かってる!!」
残り三機の操縦者を気絶させて、斎条の後を追う。
(絶対に放つ気だ…いくら俺の元に来るとは言え放たれれば、学園祭に影響が…!)
◇◇◇
「いらっしゃいませ、お嬢様」
場所は変わり1年1組の教室。出し物はメイド喫茶で、この学年の中で一番の盛り上がりを叩きだしていた。
もちろん、客たちが求めているのは九条春斗の執事服。
何処から撮ったか分からない九条の執事服の写真が学園新聞に張り出されていて元々興味があった人たちは狂喜乱舞。心をわくわくさせて九条の姿を拝みに来たのだが…。
「えっと九条君は?」
「…それが、居ないんです」
急遽お手伝いとしてメイド服で接客している柊木先生に皆が九条の行方を聞くが…返答は居ない。
クラスメイトの皆は九条の私室を含めて様々な場所を探したが彼の姿は何処にもなく、開店の時間となり苦肉の策で始めたはいいものの誰もが求めた彼が居ないとなればクレームも多いようで。
「春、どこ行ったんだろう」
「全くだ、このまま行けば一位は厳しくなるぞ」
「ですわよね…」
「三人とも…大丈夫か?」
メイド服のまま話し合うフレヤ、レベッカ、アナスタシア。そして九条を求めた客の一人葵が席に座って話していた。
「でもおかしいよね、春が居なくなるのも。誰か昨日や今日の朝見たりした?」
「私は…」
「こちらもだ」
「一体どこへ…」
次の瞬間
ーードガァァァァン!!
と何かが物凄い勢いで落ちた音が鳴り響き、風圧が彼女たちを襲う。
「な、何だ!?」
この1年1組の教室に何かが投げ込まれたようだ。
中にいるメイドことクラスメイト、お客の全員その籠から離れる。
すると、籠の中から『赤い蝶』こと赫蝶が飛び出した。
教室中がパニックになるが…蝶たちはその場で止まっている。
そこへ。
「…」
白鉄に身を包んだ春斗が現れた。
「は、春?」
「?」
「いや…違う。両目が赤くない、まさか春斗?」
「あぁ、そうだな」
今まで通りの春斗が帰ってきた。そのことに彼女たちは喜ぶが…それ以上に何故春斗が白鉄を装着しているのか気になっている。
「な、何故襲わない!?」
次にベランダから現れたのはAGに身を包んだこの学園の裏切者、斎条だった。
「…そうだな、それとありがとな斎条」
「何?」
「俺というバグが居る限り赫蝶を放って襲わせようとしても…」
春斗は止まっている赫蝶にライトアームを部分解除し手を伸ばすとそれに反応した赫蝶達は右手に吸収されて行き…塵となって消えた。
「主である俺の元へ来る、力を貸しにな」
「ば、馬鹿な!?」
「馬鹿じゃねぇ現実だ」
「…」
「それと…私は貴方に感謝しています」
「!」
口調と一人称が変わり春斗の両目が真っ赤に染まった。
「貴方がこの学園に赫蝶を放ってくれたおかげで私はこの青年に出会うことが出来た、そしてこの青年の優しさのお陰で人間を知ることが出来た。そのことには感謝しています、しかし貴方の行動は人間として許されざる行為。その行為に対して私と春斗は清算を下すことにしました」
「ふん、今更こんなガキ風情に」
「…では春斗、決め台詞を」
◇◇◇
(え、えぇぇぇぇ!?)
急に言ってんだ!?しかもいつの間にか肉体が切り替わっていたし…てかき、決め台詞!?えっと、うんと…。
あっそうだ。アニメのセリフになるけど…
『「遊びは終わりだ」』
そして赫蝶達が俺の白鉄に纏っていく。
『春斗、赫蝶がより集まったおかげで貴方のAGと同期することが出来ました。そして貴方のAGの力として共に戦います。名を『羅刹』』
(羅刹…)
『その状態になると常時全てのエネルギーが消費続けますが、その代償に驚異的加速、火力、そして吸収力が上がります』
(永続諸刃の剣か?…この戦いを終わらせたら葵から蒼刃剣の話を聞こう)
『では、敵を倒しましょう』
「あぁ。来い、羅刹!」
その名を呼んだ瞬間、赫蝶達が一斉に白鉄の装甲へ入っていく。
所々白かった部分は黒に近い赤色へ変色すると共にカシュッと鳴り響き変形していく白鉄の装甲とジェット機構。
『白鉄と完全同期、武装解除』
頭の中に聞こえてくる赫蝶の声と共に俺の拳と脚の装甲が変形し…レーザークローとレッグダガーが現れた。
『この武装は貴方の近距離戦闘及び格闘能力を知ったからこその武装です、どちらともに私で作られた武装なのでこれで攻撃すれば吸収も可能です』
「凄いな、赫蝶」
『ありがとうございます、あと内心もしかすると白鉄が変形してて大丈夫なのかと心配していると思いますがご安心ください。どうやらこの白鉄いつでも変形できるように装甲や内部システムが設定されていました』
(一番安心したよそれ!!羅刹になって変形したから滅茶苦茶焦ったからな!!)
俺が内心滅茶苦茶焦っていたことを安心させることを教えてくれてホッとする。
「じゃあ…行くか!」
俺の声と共にキィィィィンと鳴り響く装甲たち、そして力が溢れる。
これなら…負ける気がしねぇ!!
「くっ!?」
(は、早い!?)
レーザークローを振りかざそうとしたが、思った以上に接近していて若干拳の位置がズレる。
俺の白鉄よりも…いやそれよりも圧倒的に早い!それに拳の威力もだ、若干ズレたとは言え斎条のAGを少し吹き飛ばす。
しかもエネルギーの吸収率もさっきのアリーナの時の戦闘に比べても羅刹の方が圧倒的にいい、もう全快だ。
「これなら一方的に倒せるな、流石赫蝶」
『こちらも…ありがとうございます』
「何に対してのありがとうなんだ?」
『いえ、気にせず。それより倒しましょう』
「あぁ!!」
想像以上に早いのならその速度に慣れればいい。
再度接近し、拳と蹴りを組み合わせた攻撃をし続ける。
「クソっ!」
いつの間にか切り替わっていたショットガンを左足で蹴り上げて吹き飛ばし、右脚で首元を狙って蹴る。レフトアームで防御されるが俺の方が威力が高い。
その結果、吹き飛び校庭に叩きつけることが出来た。
「赫蝶、この状態でも皆の武装は使えたりするか」
『可能です。ただその際、白鉄もその武装にあった様に変形するので少々出力など切り替わってしまいます』
「完全に切り替わるのか、了解」
(複製化海神)
薙刀を作り出し構えたと同時にまた装甲が変形しだして少し海神に近い形に変形した。
「彼女たちの恨みつらみを代行者として貴様に振りかざそう!」
薙刀に構えなおしこちらから仕掛ける。まだ空に飛びきっていない斎条に対し薙刀を振り下ろすが大地を割ったのみ。だが攻撃の手は緩めない。
空に飛ばせないように翼をへし折り、二度と攻撃に転じさせないように心をへし折る。
とにかく一方的に攻撃を仕掛ける。
「こんな…ガキ風情に!何故…私が!」
「お前だからさ」
「何!?」
「お前だからガキ風情に負けるんだよ」
「がはっ!?」
薙刀を切り上げ、装甲にヒビが入った。
「くっ!!」
「うぉっ!?」
苦虫を嚙み潰したような顔をして薙刀の斬撃をくらいながら空に飛び出し、武装を構える。
アレは…ロケットランチャー!?
(しかも、狙いは俺じゃねぇ…!!)
あのバレルを向けた先には俺のクラスが!
「死ねぇぇぇぇ!!!」
(複製シールド!)
レベッカのシトリンのような装甲へ変形し、クラスとバレルの間に入りシールドを構え防ぐ…はずだった。
「えっ」
俺のシールドの先には水の膜が貼られていて、そこにロケットランチャーの弾頭が収まり爆発。
爆風は俺にも校舎にも届かなかった。
「春斗…!」
「み、水津!?そのAGは!」
「海神の…初期設定が完了した状態…!」
俺の真後ろで海神を展開していた水津が水の膜で防いでくれたようだ。
しかも初期設定が終了したってことは…これが本来の海神か。
装甲は淡い水色で雪華さんのフロストクイーンのような見た目。だが一風変わって違うのは水のドレスのように水が海神と水津に纏われている。凄く綺麗だ。
「水津ゥゥ…!!」
「水津、行けるか?」
「うん…その…春斗となら」
「ん?今何か…」
「な、なんでもない…!」
シールドと複製化を解除して通常の羅刹状態に戻る。結構長い時間戦ったけどエネルギーはまだまだあるぞ。
それにこっちには水津がいる。元々100%の勝率が300%になった。
「行くぞ水津!」
「うん!」
俺が拳を構え、水津が薙刀を構えた。
次の瞬間。
ーー何処から放たれたか分からないレーザーが斎条のAGのジェット機構を正確に貫いた
「えっ!?」
「え…?」
そのレーザーの先を見ると何も居ない。しかし空中に縫いつけられたかのように電気を帯びている何かが浮いている。あれは透明化してるのか…?
『こんにちは、九条春斗君』
「だ、誰だ!?」
急に俺のプライベートチャンネルから強制的に通信がつながる。
『…そうね、『テンペスタ』。そう名乗っておきましょう』
「テンペスタ…?」
大人な色気を持つ声、だがこの学園の教員の声ではない。
テンペスタ…とは誰だ?
『それと、斎条康子…だったかしら聞こえてる?』
『な、何故私を…撃った!?』
『簡単よ。貴方には価値がない。それ以上に価値のあるものを見つけてしまったから貴方は破棄するだけよ』
『貴様…貴様ァァァ!!!』
すると斎条は俺と水津ではなく電気を帯びている何かに向かって攻撃を仕掛けるが弾丸は空を切り裂き飛んでいっただけ。
『はぁ…『ハリケーン』やりなさい』
『りょ~かい♡』
今度は少女っぽい声が聞こえたと共に再度斎条はレーザーに貫かれ、地に落ちていく。
『破棄はそっちに任せるわ。煮るなり焼くなり勝手にしないさいな』
「待て!お前は…いやお前たちは何なんだ!?」
『私たちは『タービュランス』。九条春斗、貴方と私たちには何かしらの縁がある、だからこそ紹介するわ。それとハリケーン、いつまでも見とれてないで帰ってきなさい』
『え~もうちょっと…』
『IGD学園の増援が来てるの、それにまた九条春斗と会うかもしれないでしょ?』
『それじゃあ帰る!またね、ダーリン!』
ハリケーンと呼ばれるよく分からないテンションの少女とテンペスタという女性…。
そしてタービュランス…クソ、何がどうなってんだ?
「春斗?」
「あぁすまん、どうした?」
「何か話していたけど…誰と?」
「…誰なんだろうな」
ーーー
とりあえず、今朝の襲撃者たちの身柄は確保されてAG行動隊および警察に明け渡された。
今後何かしらの情報を手に入れ次第、IGD学園に連絡すると言っていた。俺にじゃないけど。
それで俺は事情聴取を受けていた。
柊木先生、御影先生…というより殆どの教員に凝視されながら職員室でAG行動隊隊長にね。
「…それで戦ったと」
「はい」
「にわかに信じられないけど事実のようだ。ありがとう」
「は、はい…お役に立てれば」
俺は全て話した。先程の通信と赫蝶の事も含めて全部。
「それにしてもタービュランスか…」
「御影先生、知ってるんですか?」
「事細かには言えないが簡単に言うとAGの略奪など行う謎の集団としか分からん」
「…」
「だが何故お前に話しかけたかは分からないがな」
「とにかく事情聴取は終わり、お疲れ様。学園祭を楽しんでおいで」
「は、はい!」
事情聴取が終わり戻っていいと言われたのでクラスに戻っていく。現在時刻は13:28。
結局、斎条がどうやってこの学園に侵入してきたのかの分からないし、どうしてタービュランスが俺に話しかけてきたことも不明のまま。
でも前者は警察や行動隊が何とかしてくれるだろう。そう期待する。
「赫蝶」
『はい、どうしました?』
「…いや何でもない。戻ろうか」
『そうですね、クラスメイト及びお客様方がカンカンのようです』
「戻らなくていい?」
『諦めましょう』
「…うっす」
そうして用意した燕尾服に着替えてクラスに戻ると…。
「「「「春斗!!」」」」
「…はい」
「どこに行ったかと思っていれば…一体何をしていたんですの!?」
「そうだよ!また春斗は1人で!」
「貴様は自分の存在がどれほど重いのか知らないのか!?」
「私たちの心労も考えろ!!」
「本当にすみませんでした…」
戻って早々みんなに説教されたのち、接客に戻ったのは良いが疲れた身体に鞭を撃つかの如く馬車馬のように働いた。
てか俺が知らないメニューも追加されているんだが!?謀ったな…誰か!!
「…むむむ」
「…」
それで今はお客様兼お嬢様とポーカーをしている。
どうやらこの勝負で俺に勝てば俺とツーショットを撮れるらしい、なお初耳。
メニューを見た瞬間一番驚いたのは俺だ。
「九条君!これで勝負するわ!」
「どうぞお嬢様」
「フルハウス!!」
「…」
「ろ、ロイヤルストレートフラッシュ!?」
「…では私の勝ちでございますね」
今のところ本当に申し訳ないのだが…この勝負関連は今のところ無敗なんだよな、俺。
幾千もの女子たちを相手にしたが、全て目の前で散っていく皆の顔が凄く申し訳ない。
「そ、そんなぁ…」
こういう時、情けで何かしてあげたいが他のクラスメイトに止められているのでどうしようもない。
理由としては『反乱がおこるから』らしい…意味が分からんぞ。
「執事さーんこっち!」
「はー…って雪華さんと水津!?」
「あらあら?執事がお嬢様を呼び捨てにするのかな~?」
「ぬぐっ…いえ、失礼しました。お嬢様」
「苦しゅうない♬」
「も、もう…お姉ちゃんってば…」
凄く調子のよさそうな雪華さんと少し恥ずかしそうになだめる水津。
「それではご注文を」
「『執事と対戦セット二つ』」
「…こちらのケーキセットなどおすすめですが」
「『執事と対戦セット二つ』」
「…お戯れをお嬢様」
「春斗君?」
「…わ、分かりました。では何で対戦しますか?」
「こ、これ…!」
水津がこれを選ぶこと自体珍しい…というよりほぼ雪華さんに無理やり的な感じだろう。
そして見せてきたのは
「こ、これって!」
「う、うん…最新作の格闘ゲーム」
「…へぇ?」
水津が見せたのは今の流行ゲームの1つの格ゲー。しかも俺にこれで挑戦するなんてな。
「良いんだな、水津」
「う、うん…」
「久しぶりに燃えてきたぜ」
手首をぐりぐりと回して指を動かす。
そうしている間に水津がクラスの電子黒板にゲーム機器をつないで画面を出力しゲームを準備する。
「頑張って水津ちゃん!」
「う、うん…!」
アーケードコントローラーを構える俺と水津。てか執事姿でアーケードコントローラーを構えるって凄い違和感あるな。
そして対戦が始まり…
『K.O.!!』
「う、嘘…負けた…!?」
3-0で俺が勝った。
「水津、お前の前にいる執事はランクマッチ最高到達点の高みに位置する者ぞ」
「さ、最高ランクに春斗が…?」
「水津は知らないと思うけど俺って結構ゲームしてるぞ、ましては格ゲーとか好きだしね」
「負けたことは悔しい…けど春斗を知れたから満足」
「そ、そうか?なら良いけど」
水津が負けたけどそこまで残念そうな顔はせず、むしろ嬉しそうな顔をした。
「じゃあ水津ちゃんの仇をお姉さんが取ろうかな?」
「雪華さん…じゃなくてお嬢様は何で対戦を?」
「腕相撲」
「…へ?」
「聞こえなかった?う・で・ず・も・う♬」
次の対戦相手である雪華さんとの対戦は腕相撲になった。
…何というか意外だ。そうして肘を机について雪華さんの手を握る。
…柔らかい、女性の手だ。って何考えてんだ俺は!
「じゃあ行きますよ」
「えぇ遠慮なく来なさい」
「レディ…ゴー…!」
水津の合図が聞こえた瞬間、腕に思いっ切り力を込めて雪華さんの手を机に付けようとする。
(つ、強い…!!)
少しずつ進んでいるが力の差はほぼ互角。雪華さんのこの細い腕の何処にこんな力が…!?
「ぐぉぉぉぉぉ!!!」
「こ、これは…お姉さんも負けちゃうかもね…!」
いや行ける!!このまま行けば、勝てる!
AGじゃ勝てなくてもせめて…腕相撲なら!!
「そ、そういえば春斗君。貴方というよりメニューに書いておくべきだったわね」
「何を…ですかっ!」
「対戦は『一対一で行うこと』ってね♬」
雪華さんの顔がにやりと微笑む顔になった。
「水津ちゃん!」
「ごめんね、春斗」
「えっ…くっあはははっ!?」
水津の手が俺のわき腹をくすぐる。
「み、水津!?やめっあははははっ!?」
「弱点…見っけ」
「そ、そこはははははっ!?」
水津のくすぐりによって腕の力はドンドンと抜けていき、俺の手の甲が机に叩きつけられた。
「はーい、お姉さんの勝ちね」
「ひーっ…ひーっ…」
「ご、ごめんね春斗…やりすぎちゃった」
「だ、大丈夫…」
笑いすぎて過呼吸になってしまったが何とか呼吸を整える。
「じゃあ負けてしまった執事さんには一緒に写真を撮ってもらいましょうか」
「わ、分かりました」
そうして雪華さんからスマホをお借りして自撮りで撮る。
「もちろん水津ちゃんも一緒にね」
「えっ…でも」
「噂ではツーショットって言われてるけどメニューにはそう書かれていないしね」
「…本当、抜け目ないですね」
「もちろんよ。相手の隙をついてこそ生徒会長なのだから」
そんなわけで俺、雪華さん、水津で撮った。
この後、この雪華さんの作戦を真似しようと思ったお嬢様方。しかしクラスメイトによってメニュー表を回収されて新たに書き直されて場は阿鼻叫喚。
なお、このメイド喫茶こと学園祭が終わるまで俺は一度たりとも負けることは無かった。
誤字脱字、語彙力がほぼ皆無に等しいのでミス等がありましたらご報告お願いします
感想も待っていますので気軽にどうぞ!
超絶不定期更新ですがご了承ください…




