第33話 成長の軌跡を知り、新たな絆は芽生える
学園長からの報告があった日の放課後。
今日は雪華さんにお願いして『ちょっと今日は練習に行けません、水津さんの拡張武装のお手伝いに行ってきます』と連絡した。
ちなみに返答が『はーい、でも休んだ分の練習は明日一気にやるから覚悟しなさいね♡』と返ってきた。明日が来てほしくないと心の底から思ったがこの後に『それと水津ちゃんの事、ありがと』と来た。まぁ…やり方はアレだったけど、雪華さんのお願いはやり遂げることが出来たようで良かった。
んで今は整備室で水津さんの拡張武装の手伝いをしに来たんだが…。
「こ、これが…?」
「う、うん…私の専用機の拡張武装」
あまりの大きさに驚きすぎて俺の動きが固まった。
AGよりも一回り大きなサイズ、機動力やバランス性を安定化させるためで機体を支える逆関節のレッグ、備え付けられたチェーンソー、パイルバンカー、大型エネルギーシールドそしてガトリングガンといった高火力かつ武装のデカさ。しかも背面には水蒸気爆破型多段ミサイルとか名称だけでもとんでもねえ事が起きると分かるミサイルが大量に発射される機構があるらしい。
これで襲われたりしたら考えるだけでも悍ましい。てか火力高すぎてAG諸共粉砕出来るんじゃ…?
「何というか生で見るとより迫力を感じる、それで今どれくらい進んでるんだ?」
「えっと、外装と装甲は作成と装着は完了してるけど…武装に内部システムの調整、フレームの安定性などはまだ…」
「内部か…俺、力になるのか?」
「うん…なる」
「そっか。ならこき使ってくれ」
そんなわけで拡張武装の製作が始まった。
内部システムやフレームの安定化、武装の調整等々は水津さんが操作するアームなどで行い、その他の力仕事は全部俺が引き受けた。
改めて思うけどこれを水津さん1人で作り上げているのも凄い。
「そういえば水津さん」
「な、何?」
「水津さんの専用AGの海神…だっけ。良かったら何だけどさ俺たちと一緒に訓練しない?」
「九条君たちと?」
「あぁ。雪華さんたちと一緒にね、もしかしたら海神の初期設定も終わるかもしれないだろ?」
「…参加する」
「良かった。なら一緒に…うおっ!?」
丁度よそ見をしていたらコードに足を引っ掛けて転んだ。
「だ、大丈夫…?」
「いてぇ…だ、大丈夫」
普通に痛かった。足元にも気を付けないとな、コードやらなんやら色々あるしね。
「あ…九条君」
「どうした?」
「レフトレッグの制御力を…変えてもらってもいい?」
「いいけど…俺、変え方がわからないぞ?」
「これ…」
そうしてデータが送られてくる。これはマニュアルか、てかめっちゃわかりやすいな!?技能が全くない俺でも簡単に出来そうだ。
言われるがままレフトレッグの装甲を展開してマニュアルを見ながら直接いじる。
これはこうで?こっちがこうか。
「水津さーん!これでどう?」
「ばっちり…」
「良かった、よっと」
装甲を閉じて一度離れたのち水津さんの元へ戻った。
本当、こういう調整とか結構重労働なのがキツイところだ、内部とかはコンソールでいじったりすればいいし。
「これでどれくらい進んだんだ?」
「もう少し…あとは海神とのリンク率の確認してエネルギー出力の反応とか…」
「あとは実戦での調整か、早速行くか?」
「う、うん…第2アリーナの予約…取ってあるから」
「了解、それじゃあ行くか!」
そうして水津さんは海神の拡張武装を粒子化させた。アタッシュケースのような形に変わり、それを手に持って二人でアリーナへ歩き出した。
ーーー
「じゃあやるか」
「うん、海神展開」
アリーナの中心でお互いにAGを展開する。
機体名『海神』武装は薙刀のみ。なんか前の黒鉄を見ている気がしてきてちょっと懐かしく思えてきた。専用アビリティも現状は無し、か。
「拡張武装展開…!」
そしてアタッシュケースが粒子化して海神を包んでいく…そして拡張武装の展開が完了した。
「お、おぉ…」
白鉄を装着している俺よりもデカいぞ…?
「スラスター出力…オールクリア」
俺が反応するより先に水津さんはコンソールを立ち上げて操作し始める。
「どうだ?動かせそうか?」
「う、うん…でも武装のデータも取りたい…」
「なら的を出すか、ちょっと待っててくれ」
アリーナ専用のコンソールを立ち上げてビジョンシステムで的を展開する。軽く20枚くらいでいいか。
「これでどうだ?」
「ありがとう…やってみる…!」
拡張武装の両アームにガトリングガンを装備し、的を目掛けて一斉射撃。
う、うわぁ…えぐい。的の得点とか見たくなったが的が塵となったので得点とかそんなもんは消えていった。何というか水津さんの性格とは反している機体性能か?と思ったがナチュラルに失礼なので黙っておく。
「す、凄いな…って水津さん?」
「…おかしい」
「おかしいって何が?」
性能と出力データの確認をしている水津さんがボソッと言う。水津さん曰く何かがおかしいようだ。
「出力値とリンク率が予想よりも低い…?」
「そこまでか?」
「拡張武装には…異常が無いのに…どうして」
…もしかして!
「なぁ水津さん」
「?」
「一旦拡張武装を閉じて海神の確認は?」
「あっ…」
何かに気が付いた水津さんが言われた通り拡張武装を閉じて海神の確認に入る。
「やっぱり…海神自身のリンク率が低い…でも」
「でも、どうしたんだ?」
「初期設定…待機状態になってる」
「は?」
水津さんに接近し俺もデータを確認すると…本当だ、初期設定待機状態になっている。
てことは、初期設定は既に終わっているのに待機状態にされているのか。
「つまりこれを完了すれば」
「…まって!」
「え、どうした!?」
急に声を上げる水津さん。
「これ…」
よく見ると初期設定完了のマークにロックボタンが付いてる。どうやらパスワードが必要なようだ。でも製作元は雪華さんの言っていたことが本当であれば桐ケ谷家こと水津さんのご家族のはず、パスワードくらいでどうこう騒ぐはずがない。
「…これ、あとから付けられたみたい」
「何!?」
あとからだと!?でも付けるような人なんて居なくないか?
…いや待て、1人居る。
「アイツか…!!」
雪華さんが付けるわけでもないしクラスメイトも付けるとは思えない。消去法で斎条だ。
あのクソ女が…!!あの時とどめを刺せば!
「…ッ!」
「く、九条君?」
「…すまん、ここで怒っても関係ないか」
「でもパスワードだけじゃないみたい」
「え?」
「特定の条件下での初期化完了はまだ…ロックされてない」
「特定条件下?」
「うん…操縦者の精神状況や特定の行動で初期設定が完了する方法があるの…」
「それで初期設定が完了すれば、拡張武装も完成するかも知れないのか」
「う、うん…!」
よし、それならまだ希望はある。明日から早速水津さんも交えて訓練すればきっと海神も含めて拡張武装も完成するはずだ。
俺の事じゃないけど燃えてきたぜ…!
「…でももう借りれる時間過ぎちゃうから…今日はここまで」
「そうか。あ、ならさ一緒に食堂行かないか?」
「え?」
「実は昼飯を満足した量食えてなくてな、良かったら一緒にどうだ?」
「う、うん…行く」
「よし、じゃあ行こうか水津さん」
「…でいい」
「?」
一度ピットに戻ろうとしたところで水津さんが何か言っていた。丁度、白鉄のジェットの音でその言葉が聞こえなかったので一度止まる。
「すまん、何か」
「水津でいい…!」
「わ、わかった。なら俺のことは春斗でいいぞ、同級生なんだしな」
「う、うん!」
水津さん…いや水津からちょっと大きい声が聞こえて少し驚くが彼女なりに俺へ踏み込んでくれたのだろう。心を開いてくれたのかな〜と思い少し嬉しい。
ーーー
「今日はどうしようかな…最近、運動多いし何かガッツリ食いたいな」
「私は…これ」
「おぉうどんか。いいねぇ」
二人でプロジェクターに表示されたメニューを確認する。
水津は既に決まっていたようで、すぐさまうどんのボタンを押してサブで卵にかき揚げ、ちくわの天ぷらを付けた。何というか割と意外な付け合わせか?と思ってしまう。
てか俺どうしようかな…お、目に入った焼肉丼定食とかよさそうだな。
「焼肉丼?」
「あぁ、目に入ったしな」
「…春斗ってお店とかで新しい物とかに挑戦する人…?」
「そうだな…店によるけどとりあえずは目に入った物を頼んで食う。んで美味かったら今度来た時に別のあるいは同じのを食べるみたいな感じだ」
「結構…チャレンジャー…?」
「かもな、俺は美味いが食えればそれでいい人だし」
なんて話をしているとうどんと焼肉丼定食を受け取り近場の席に向かい合う形で座った。
「頂きます」
「い、いただきます…」
たくあんに味噌汁、そしてメインの焼肉丼。うーん、焼いた肉の空腹をそそるにおい…最高だ。
「やっぱりうめぇ…」
「こっちも…」
「なるほど、そうやって食べるのか」
ふと気になった水津のうどんの食べ方。どうやら先に生卵を混ぜてうどんに輪を描くようにかけてからかき揚げを中心に浸し、ちくわのてんぷらはかき揚げに添えるように置いている。
それも中々美味そうだ。
「結構うどんが好きなのか?」
「ううん…その…かき揚げが好きで」
「へぇー。かき揚げ好きか、いいな」
「は、春斗は…?」
「俺か?肉を食っている状態で言うのもアレだが甘い物だな、スイーツかそういうの」
「い…意外…」
「それ、クラスメイトにも言われた」
そこまで意外なのか?と思いつつも肉と米を頬張る。
うん、美味い…俺の背中にぶっ刺さっている4人の視線以外はな。
「「「「…」」」」
「うふふっ」
背後を見なくてもわかる。4本の視線の矢と1人の微笑み声の正体は絶対葵、フレヤ、レベッカ、アナスタシアそして雪華さん。
「春斗、どうしたの?」
「いや…何でもないぞ、うん」
再度肉を頬張り、何とかして背中に刺さっている視線の矢を紛らわしたいなと心の底から思った食事だった。
◇◇◇
「「「「…」」」」
(ど…どうしてこんな状況に…)
九条君…じゃなくて、春斗が食事中に先生に呼び出されて席から離れたときに4人の女子生徒とお姉ちゃんが座ってきた。
それまでは席が空いていなかったのかななんて思ったけど…周りの席は空いているし4人の目線は鋭いし、お姉ちゃんは「春斗君は罪な男ねぇ」と言いながらずっと微笑んでいる。
「…それで、貴方はどちらさまですの?」
金髪でロングヘアーの如何にもお嬢様のような身振りの人が口を開く。
「えっと…桐ケ谷水津…です」
「そう、私の大切な妹~よーしよしよし!」
「あ、あっ…お姉ちゃん止めて…」
空気にそぐわないお姉ちゃんの行動にやや困惑しながら4人を見ると少し驚いた表情をするがすぐさままた鋭い目付きに変わる。
「私たちが聞いているのは名前ではない」
「え、えっとだな…は、春斗とだな…!」
「つ、付き合っていますの!?」
付き合っている…?春斗と…?
(えっ…!?)
急にとんでもないことを言われてしまい頭の中がボンッと熱くなる。
私は春斗が好き…なのかな。
「…それで?実際どうなのかなぁ?」
「えっと…その…春斗と私はそういうのじゃ…」
「では、何なのだ!発言次第では…!!」
「まぁまぁ皆落ち着いて、ね」
ヒートアップしてきた4人の感情をなだめるかのように言うお姉ちゃん。
いっそのことどうしてこの状況になったのか教えてほしい…。
「その…春斗に助けられて…拡張武装の作成に手伝ってくれるって言ってくれて…」
「…」
「えっと…その付き合ってないけど…そういう願望が無いわけじゃなくて…」
何とかして言葉を口から出していると…急に雰囲気が柔らかくなった。
「あ、その…桐ケ谷さん?」
「み、水津で…大丈夫…」
「すまないな、急にこんな言い迫ったような事をしてしまって」
「お、驚いたけど…大丈夫」
私と同じ日本人のような黒髪のポニーテールの人がそういう。
「…そういえば私たち自己紹介は」
「してなかったね…ごめん、水津。僕はレベッカブルーノ」
「ううん、大丈夫…ブルーノさん」
「レベッカでいいよ」
それから4人から自己紹介された。それを聞きながらもさっきの会話を思い出す。
私と春斗が付き合ってるって勘違いしてた…お姉ちゃんは春斗のことを罪な男って言ってたし…。
もしかして…。
「あの…」
「どうしましたの?」
「…私の…ライバル?」
「あぁ、そうなるな」
アナスタシアが言う。
やっぱり…春斗っていうヒーローは私以外にも色んなところで人を救ってその気持ちを盗んでいるんだ。ほんのちょっぴりむすっとした気持ちになる。
「ライバルでも仲間だし同級生だしね、これからもよろしく水津」
「う、うん…こちらこそ…」
「うんうん♬仲良くなったようで何よりね~」
春斗が助けてくれたおかげで傷つく必要がある日も無くなって、こうやって色んな人と一緒に笑って話せる。本当にありがとう、春斗。
ーーこうして、水津と春斗と付き合っているのか問題は解決し、新しい友人兼ライバルが1人増えて、新しい絆が増えたのだった。
誤字脱字、語彙力がほぼ皆無に等しいのでミス等がありましたらご報告お願いします
感想も待っていますので気軽にどうぞ!
超絶不定期更新ですがご了承ください…




