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インフィニティ・ギア  作者: 雨乃時雨
第二部
32/122

第30話 絶対零度の女王様

アリーナに向かっている道中はお互いに一言も言葉を交わさず、元々予約を取っていたらしい第4アリーナの中で雪華さんと見合う。


「春斗君、準備は大丈夫?」

「問題なしです」

「じゃあ始めよっか…『フロスト・クイーン』」

「白鉄、展開」


お互いにAGを展開し合い、白鉄から雪華さんの機体についての情報が流れてくる。

機体名『フロスト・クイーン』。水色の装甲に身を包み特殊武装型AGで武装は大ぶりのメイス『シャルーア』を所持する。専用アビリティはあるけど…明らかにアレだよな。

雪華さんの辺りの空気が一気に凍りつき、氷が漂っている。フロスト・クイーンの名のごとく周囲を冷却するみたいなアビリティかもしれない。


(氷を使うAGか…)


今までの戦闘の中でもかなり異質なAGだ。通常の戦略も戦い方も通用しないかもしれない。用心しないと。

そしてアリーナ内にブザー音が響き渡り決闘が開始された。

俺はまずは様子見を選択し、刀を構えながら雪華さんの様子を伺う。


『あら攻めてこないの?』

「機体データを確認した結果です」

『あん、見ちゃったの?驚かせたかったのに…ね!』


すると雪華さんがメイスを持っていない左手を俺の方に伸ばして、AGの指で指を鳴らした。

次の瞬間。


「はっ!?」


雪華さんから俺の方に向かって氷の波が押し寄せてきた。

そんな波に巻き込まれたらただでは済まないので空中に飛び出し躱す。

あまりにも現実離れした光景に一瞬驚いたが、AGの能力だからと言う事で頭の中で処理する。


『相手を見てなくて大丈夫?』

「!?」


いつのまにか俺の懐まで接近していた雪華さんはメイスを俺に振り下ろしてくる。


「くっ!」

「あら良く防げたじゃない」


振り下ろしてきたメイスを刀の腹で受け止めるが、衝撃が腕に来る…!結構パワーも強いな。刀で弾いて一旦距離を離すが雪華さんは距離が離れてもお構いなしで周囲を凍らせて出来た氷柱を俺に放ちながら再度距離を詰めてくる。


(今までのみんなとは全く違う動き…!)


フロスト・クイーンの性能やアビリティにも驚いているがそれ以上に驚くのは雪華さん自身のAGの操縦能力。こんな氷柱を瞬時に生み出しそれと共に攻撃を仕掛ける判断も凄いし…何より俺も刀で応戦するがメイスで防いだり、空気を凍らせて刀を受け止める形で氷壁を作り出したりもする。判断も何もかもが桁違いだ!


「マジかよ…!?」

『うふふっ…良い攻撃ね、でも私には届かないわ』


氷壁で斬撃が阻まれ、メイスを振りかざしてくる。今から刀じゃ防げないと判断し、右腕を構えて受ける。


(クッソ…学園最強はここまで強いのか!)


減っていくシールドエネルギーメーターを見つつ、ほんの少し勝てるわけがないと思ってしまうがそんなことはないと弱気な考えを捨てる。

こんななりでも鍛えられた人間だ、易々と降参してたまるか。

一瞬弓を構えようとするがダメだ、弓の都合上アサルトライフルやサブマシンガンのように高速連射は出来ない。どちらかと言うとスナイパーライフル寄りの武器、そして雪華さんの機体はシールドに当たるよりも先に氷壁を出してしまえばノーダメージで防げる。つまり、一発一発の攻撃はほぼ届かない。

刀で何とかあの氷壁を撃ち破るか、動きの隙を見つけるしかねぇ…!


(…集中。相手の動きをよく見ろ)


氷柱の攻撃を避け、白鉄のデータを見つつフロスト・クイーンの隙を探す。

こちらからの攻撃によるデータを確認したが、氷壁の展開時間の隙も展開量の上限も特に無さそう。全て雪華さんの判断力の高さが故か。

動きは…ダメだ、そもそものAGの動きや戦い方が読みづらい!


「くっ!」

『ここまで氷壁に阻まれてもよく諦めないわね。でもそうやって頑張る男の子、お姉さん結構好きよ?』


雪華さんの言葉に耳を傾ける暇もなく、刀を振り続ける。

クソ…全部のエネルギーの残量がヤバい!


「…!」


このタイミングでふと思い出す。

確か前の実戦訓練の後、レベッカが…


『やっぱり白鉄になると機動力も結構上がるんだね、しかも春斗自身も武器が刀になっただけで戦い慣れてるみたいな動きになってるし』

『その辺は全部白鉄のお陰だ、でも俺の方がなぁ…』

『ちょっと鋭くなるけど、確かに春斗の戦略上相手に読まれやすいのはしょうがないかも』

『うっ…』

『でもそんな時だからこそ相手に一撃入れられる方法があるの』

『え、あるのか?』

『うん、でも本当に一回限りのね。それはあえて自分があまりしない攻撃をしてみること』

『あえて?何故だ?』

『自分の動きを完全に読まれて攻撃も何もかもが通用しない、だからこそあまりしない行動。相手の読みを外させる攻撃。もし春斗が相手の動きを完全に読み切っていてまた同じような攻撃を仕掛けてきた時に急に予想外な攻撃が来たらどう思う?』

『まぁ…嫌だし驚くかもな』

『そうそこだよ、あえてあまりしない攻撃をしてみるのは』

『…あっ、なるほどね!流石レベッカだ』


俺があまりしない攻撃…いやこの武器の都合上どうしてもやりづらい技がある。

そう、『抜刀剣』だ。黒鉄の近接ブレードしか無かった時もなんとか出来るが…白鉄になるまで一回もやってない。無論白鉄になってからもだ、どうも鞘の無い日本刀っていうのが違和感ありまくりでね。でもこの状況なら抜刀剣が最善策になる可能性もある。


(やる価値はある…!)


「うぉぉぉぉぉ!!」

『あら、そんなに突進してきたらこうなっちゃうぞっ!』


俺は雪華さんに向かって正面からのインパクトブースト。勿論、氷柱で迎撃してくるが小さく小刻みに回避し懐に入り込んだ。そして刃を雪華さんの目の辺りを狙って振り下ろそうとする。刃を捉えるように少しずつ氷壁が出来ていく。


(…よし、予想通り)


そして氷壁が俺の刃を…いや、雪華さんの視界を覆った瞬間。

無垢のしのぎの部分を左手で握りこみ構える。


「ふぅ…ッ!!」


柄を右手で思い切り握りしめて…抜刀しようとした次の瞬間。


「?」


右目の視界のみ一瞬赤く染まったがそんなこと気にせず、抜刀!

氷壁が出来てきているが薄い状態だったので刃が氷砕いて、雪華さんに当たるはずだった。

しかし…


「うふふっ…お姉さんを出し抜こうたってそうはいかないわよ?」

「マ…ジか!?」


その氷壁の先で雪華さんは待ってましたと言わんばかりにニヤッと笑っておりメイスでガードしていた。


「これでおしまいね」


受け止めたられた刃が弾かれ、雪華さんが両手でメイスを握り絞める。すると槌の部分に冷気が集まっていく…俺がマズイと判断したときにはもう遅かった。

空中でメイスを振り下ろした瞬間、雪華さんの方から冷風と共に氷柱や氷塊などがこちらに向かって飛んできて防ぎきれず壁に激突。


「がはっ!?」


壁に叩き連れられてもなお降り注ぐ霰。その攻撃をくらい続け…俺のシールドエネルギーはゼロになり地面に落ちたがヘルスエネルギーはまだある!

ここからが本番と思った矢先、アリーナからブザーが鳴り響いた。


「残念だけど私の勝ちね」

「ま、待ってくれ!まだシールドエネルギーは…」

「アレ知らないの?」

「?」

「今日の授業が終わった後全校生徒へ緊急メールが送られたのよ」


そんな馬鹿なと思い急いでメールボックスを開くと『緊急』と書かれたメールがあった、勿論未読だ。中身を開いて確認すると


『今後のAGを使った訓練や実戦形式のトーナメントのルール変更について

最近の訓練やトーナメントでシールドエネルギーが切れた後、ヘルスエネルギーで戦い続け装甲の破損や人体への負傷が目立つのでこのメールが送信された時を持って勝敗結果をシールドエネルギーが無くなったほうが敗者という形へ変更する。

なお、このルールはWGCSにも適用される』


「し、知らなかった…」

「まぁ何処かの生徒がシールドがないのに決闘したり皆の為に戦ったりしたからかな~」

「うっ…」


原因、俺かよ…何も言えねぇ。AGを解除して地面に着地する。


「だけど、勝ったのはわ・た・し」

「…」

「…春斗君?」

「…くッ!!」


負けた…みんなに鍛えてもらったのに…俺は…俺はッ!!

怒りのまま拳を地面に叩きつける。


「ちょっと、何してるの!?」

「…すみません、自分に対する戒めを」

「はぁ…春斗君は優しすぎるわね」

「優しくないですよ、俺は」

「ううん、優しいよ。君が地面に拳を叩きつけたのはみんなに鍛えてもらったのに勝てなかったから、でしょ?」

「な、何で分かるんむぐっ」

「お姉さんは最強だからよ」


人差し指を俺の唇に置いてその理由を話す。果たしてそれがきちんとした理由になるのか?とは思ったがそれを聞いても多分答えてくれないだろう。

…素直に負けを認めたほうがよさそうだ。


「さて、賭けに乗っ取り私が君の専属コーチになるからね」

「はい…わかりました」

「うん、素直でよろしい。明日から特訓を始めるからきっちりと身体を休めてね~それじゃあ」


そうして雪華さんはアリーナから出ていった。

…1人になったアリーナのど真ん中で俺はぶっ倒れて空を見る。


「何で俺、弱いんだろう」


1人でボソッと呟く。大きな声で話しても別に誰にも届かないのに。


「はぁ…」


空へ伸ばした右手で握りこぶしを作る。何にも掴んでないけど。

でも1つ気になったことがあった。戦闘中に起きた俺の右目の視界だけが真っ赤に染まった変な現象。

何か悪いもの食べたか?と思ったがここ最近は食堂にお世話になっているので絶対にないな。病気か何かかなとは思ったが、それ以上に負けた悔しさと不甲斐なさが目立ってため息が出てしまう。


「…」


それ以上に強くならないと、みんなのために教えてもらった好意も無駄になってしまうし何より…あの大きな桜の木の下で抜刀したときの決意もある。

みんなを守れるように強くなりたい。


「さて…頑張らねぇとな!」


ーーー


「ど、どういうことだ!生徒会長が専属コーチだと!?」

「春斗さん!詳しい説明を要求しますわ!!」

「僕も気になるなぁ、ねぇ春斗?」

「何故そうなったのか言え、長くは待たんぞ…!」


いつもよりも身体を休めて普通に寝た後の次の日の放課後。

俺のコーチたち総員で教え子である俺に迫っていた。うん、怖い。


「い、いやさっき説明した通りで…」

「何故勝負した!」

「そ、それは言えない」

「ねぇ春斗?隠すのは君の為にならないよぉ?」

「れ、レベッカ?目が笑ってないんだが?」

「…」

「アナスタシアとフレヤは無言のままスターダストとパンツァー・カノーネを向けるの止めてくれませんかねぇ!?」


と借りたアリーナの端っこで今、俺の命は危険にさらされていた。

すると俺の目の前に氷壁が出来上がり


「こらこら、みんな一斉に春斗君を攻めないの」

「せ、雪華さん!?」

「ごめんね~生徒会の仕事が長引いちゃった」


俺の上からフロスト・クイーンに身を包んだ雪華さんが降ってきた。


「せ、生徒会長!?」

「どうしてここに…!」

「まぁまぁそう邪険にしないで。春斗君にも言えない事情があるんだよね」

「まぁ…はい」

「私が無自覚だったのが悪いけどみんなをちょっと侮辱しちゃってそれで怒った春斗君が戦いを受けた何て言わないから安心しなさい!」

「ねえ全部言ったんだけどこの人!!」


俺の言えなかった理由どこ行った!何も包み隠さず全て言ったぞ、この人!


「そ、そうでしたの?」

「はぁ…そうだよ」

「ま、まぁそれくらいなら」

「いや私は認めんぞ!」


アナスタシアのパンツァーカノーネのバレルが雪華さんに向けられる。


「あら私に挑むつもり?受けて立つわよ」

「!」

「ストップストップ!!」


白鉄を展開して二人の間に入る。


「止めるな春斗!お前の仇は私が」

「取らなくていいッ!!」

「!」

「取らなくて…良いんだ。負けた俺が、弱い俺が悪いんだ。だから頼む」

「…わかった」


自分でも驚くほどに声を荒げ、アナスタシアを止めたのち白鉄を解除した。


「うーん…そこまで考え込んでいたんだね」

「こちらにも、色々あるので」

「なら...そうだ!みんなにも手伝ってもらっていい?」

「はい?」


みんなっていうのは俺以外の葵、フレヤ、レベッカ、アナスタシアの事だ。


「早速だけどレベッカちゃんとフレヤちゃん、マニュアル操作型サークルターンお願いできる?」

「だ、大丈夫ですけど…」

「それは遠距離型や射撃武器を持ったAGの戦法では?」

「もちろんそうよ、でもまずはマニュアル操作でのAGの動きを見せてあげて」

「桐ケ谷先輩が言うなら…」

「雪華でいいよ」


そういうとレベッカはシトリンを、フレヤはスプライトを展開して俺たちから距離を離して空へと向かう。


「雪華さん、マニュアル操作って?」

「その説明をする前にまずは二人の動きを見てて、早速二人とも始めていいよ」

『わかりましたわ、レベッカさん準備はよろしくて?』

『こっちも大丈夫、いくよフレヤ!』


空中でお互いに回りながら撃ち合う。俺もサークルターンは柊木先生で知ったしある程度分かるが…いくらなんでも縦横無尽にターンしすぎじゃないかってくらい早く動いている。

しかもそんな高速で動いている状態で撃ち合うことが出来る二人の技能も凄い。


「お、おぉ…」

「春斗君、みてどう思う?」

「いつもよりも早く見えますし、何か縦横無尽に動いているっていうか」

「そうね。ある程度合っているし、マニュアル操作についての説明を。白鉄の内部データを展開してもらっていい?」

「は、はい」


言われた通り左手のブレスレットからビジョンシステムで内部データを展開して雪華さんに見せる。


「ほらここ、春斗君の機体は半オート操作で動いてるの」

「半オート操作ですか?」

「そう、半オート操作は操縦者の動きを安定化させるために一部の動きが操作不要で出来るの。ただどうしてもマニュアル操作に比べると事細かな操作は出来ないし、少し読みやすい動きになるの。お姉さんと戦ったときのようにね」


なるほどね…俺自身の操作の動きも読みやすいし更に半オート操作の影響も出てて動きが読みやすかったのか。

でも根本は俺のせいだろう。


「だからこそ春斗君にはマニュアル操作をマスターしてほしいの。もちろんその操作を完璧にこなせば今まで以上に強くなれるし今まで以上に白鉄の事を知れる。とても魅力的な案だと思わない?」

「…はい」

「それと葵ちゃん、アナスタシアちゃんは何でこれを教えなかったと思う?」

「え、それは…」

「簡単だよ、マニュアル操作は難しいのもそうだけど一番の理由はその仮定で操縦者が怪我を負う可能性が上がるからね」

「なるほど…」


なんというか特訓だけでもなく、俺の身体の心配までされていたのか。

心配しなくていいよと言いたいが…今までの俺の行動のせいではいどうぞと了承できないのだろう。すまんな、怪我ばっかしていて。


「おい、春斗」

「ん?」


雪華さんとマニュアルの事を説明されつつ、空でマニュアル操作型のサークルターンをしている二人を見ているとアナスタシアが声を上げた。


「どうした?」

「何故そこまでくっつく必要がある、離れろ」

「…あ、すみません」

「えー、もう少し近くても私は良いのにな~」

「ちょっ!?」

「なっ!?」


アナスタシアに距離が近いことを指摘されたので雪華さんから離れようとしたら、腕を組まされより接近した状態になってしまう。


『な、春斗さん!』

『何してるの!』


天から罵声が飛んでくる。あ、まってあのまま二人とも動いたら…。


「二人ともぶつかるぞ!!」

『へ』

『あ』


俺の声が届くより先に二人とも衝突し、そのまま地面に落下。

…マニュアル操作がないせいか真っ逆さまに落ちて地面に激突した。見た情報によると操縦者保護機能により多少衝撃を押さえられているらしいが。


『『春斗さん!!』』


ぐわっと立ち上がり俺に距離を詰めてくるフレヤとレベッカ。なお、武器を握りっぱなし。

はっきり言おう。嫌な予感がする。


「ふ、二人とも…?」

「どうして私とレベッカさんが真面目に頑張っていましたのに!」

「なんで雪華さんとくっついてるのさ!」

「い、いや、くっつかれたというか」

「「言い訳しない!」」

「はい…」


その場で俺は二人の圧に負けてちょっと縮こまった。


「じゃあ春斗君、マニュアルでやってみようか」

「は、はい!」


白鉄の内部データで半オート操作からマニュアル操作に変えたのち白鉄を展開して装着。

すると


「!」


すぐさま違和感が出てきた。一体感とかその辺は今もまだあるが、それ以上に解放感…?がある。


「春斗君、どう?」

「解放感?がある気がします」

「おっとその感想は予想外、これは成長の見込みがあるかもね。フレヤちゃん、春斗君とマニュアル型サークルターンを」

「分かりましたわ」


フレヤの後をついていくように空へと飛んでいき、見合うような形で空中で静止。


『じゃあ二人ともサークルターン開始』

「!」


そうして弓を構えた状態でのサークルターンを始めたが…。


(こ、これは…かなり難しいぞ!!)


半オートのお陰でどれくらいの操作が省かれていたのかが分かる。事細かな操作は全て自分で動かさないといけない、しかもその複雑な操作をしながらもサークルターンをしつつ射撃…難易度が今までのとは比べ物にならない!


「ぐぉっ!?」


フレヤとのサークルターン中操作の方へ集中しすぎた俺はスターダストの射撃に気づかず左肩に着弾。いつもなら姿勢制御しつつ反撃に出るが今回は違う。

半オートで行っていた姿勢制御も自分自身の操作でないといけない。その結果、衝撃を流すことが出来ず姿勢制御も不完全になってしまったため、衝撃をもろに受けたまま地面に落下していく。


(ここまで違うのか…!)


真っ逆さまに落ちていきながら何とかして姿勢を直してまた空中にいかないと…と考えているうちに地面と衝突し、操縦者保護機能で多少の衝撃はなかったが流石にいてぇ。


「ぐっ…」

「大丈夫ですか春斗さん!」

「大丈夫だ…すまん、フレヤ。もう少し付き合ってくれ」

「は、春斗さんが言うなら…」


そういって休憩もせずに再度空へ飛んでいきサークルターンを開始する。


(何か、何か掴めそうなんだ…!)


フレヤの攻撃に集中しつつ、全身の操作にも集中していく。

空中での姿勢制御は多少慣れてきたがそれ以上に問題なのが弓が当たらないのと、引き切ることが出来ないことだ。弓道のスタイルで撃っているため右手で弦を引いているがサークルターンをしながら弦を引き切るのはかなり難しい、方向によるが風圧で腕がぶれる。ゼフィルスの時とは違って事細かな操作も手動だ。まともに当てることも出来なければ弦を引き切ることも出来ない。


「!?」


またスターダストが俺に着弾する。その瞬間、一気に姿勢がぶれてまた落下しそうになるが…。


(まだだ!)


土壇場で思いついたスラスターの方向を変更する操作。左回転しながら姿勢がぶれていったので無理やり右回転方向へブーストし、姿勢を直してそのまままたサークルターンに入る。

しかもその方法でもう一つ思いついた。

サークルターンしている時にわざとスターダストの攻撃を肩に受ける。今度は弦を引いていた右肩に着弾し姿勢が左側から崩れていく。そしてさっきと同じような感じで左側へ強制的にブーストし、姿勢を直そうとしながら…衝撃を受けて弦を引き切った右手を離す。


「!」


今までの中での最高速度の矢が穿たれたがフレヤの飛んでいるところとは全然違う所へ飛んでいった。でも良い思いつきだぞ、これは。

しかし。


「うっ!?」


そこでスターダストが顔面に直撃して背面から地面へ落ちていく。左右のブーストじゃ姿勢は戻せない…!


「ぐえっ!?」


結局姿勢を元に戻せないまま地面に衝突し、転がっていって壁に激突した。

二回連続の衝撃が身体に走る。


「いってぇ…」


痛みに耐えながら身体を起こす。


「春斗大丈夫?」

「春斗さん、お怪我は?」

「いい…大丈夫だ」


壁に手を添えて立ち上がる。俺がやったあの衝撃を使ったカウンターみたいな動き、悪くないと思ったんだが…正面から受けるとどうしようもないのか。

いやもしかしたら何とかなるかもしれないけど今の俺の技量じゃ無理だな。


「春斗君」

「は、はい!」

「凄いじゃない」

「へ?」

「初めてのマニュアル操作に慣れ始めるのが流石に早すぎるわ、お姉さん驚きよ」

「それは…どうも」

「この調子ならすぐにでも強くなれそうね、今後も励むように」

「わかりました!」

「でも1つアドバイスをするなら相手依存の攻撃は止めておきなさい」

「うっ」


確かに。俺のさっきのカウンターは右側か左側のどちらかで受けないと出来ない。相手がもし俺の頭部や正面からの攻撃しかしないならこのカウンターの技は腐ってしまう。


「まあその発想が出た時点で及第点ね、じゃあまた明日~」


そうして手を振りながら雪華さんはアリーナから去っていった。

…今後の俺のトレーニングの内容は白鉄と共に戦闘訓練を積むのではなく、俺自身の操作の器用さ正確さといった操縦者の技量を伸ばす方向へ変えるべきだと思った。

俺が強くなるために。白鉄が俺を理解するのと一緒に、俺が白鉄を理解できるように。


ーーー


「どうだった、桐ケ谷」

「はい…はっきり言うといくらなんでも異常です」


学園の地下にある極秘会議室。

その薄暗い明かりには二人の女性が照らされていた。二人の名前は御影紗月、そして桐ケ谷雪華。二人が話しているのは『九条春斗』についてだ。


「一般人とは思えない短期間での訓練による平均レベル以上の吸収力と専用AGとの活性化率。流石にこんな前例も聞いたこともないです」

「やはり、夏樹と克樹が関係するのか…?」

「その辺りはまだ分かりません、ですがそれ以上に彼はこの学園の大切な生徒の1人であり今後の緊急時の際、重要な戦力にもなります」

「…そうだな」


そうして二人は意見は合致し現状は要観察という結論に至った。

しかしそこにいる二人も、彼を想う人たちもこの時はまだ知らない。

彼の身体に。異常が出来てきていることを。

そして彼自身も知らない。あの刀を振ったとき、右目の眼が。


ーー深紅の色へ変貌したことを

資料集更新

追加内容:桐ケ谷雪華 『フロスト・クイーン』

誤字脱字、語彙力がほぼ皆無に等しいのでミス等がありましたらご報告お願いします


感想も待っていますので気軽にどうぞ!


超絶不定期更新ですがご了承ください…

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