第27話 白鉄に蛍火は宿る
読者様、前回ぶりですね。おはようございます、こんにちは、こんばんは。作者の雨乃時雨です。
今回の話で一応、このインフィニティ・ギアの第一部が終了します。あ、まだしばらく続きますので楽しみしている読者様はご安心を。
ではどうぞ、今回は短めです。
夏の一幕である夏祭りが終わった。
結局シャワーを浴びたのち皆の元へ駆けだしたが…待たせたという事実は塗り替えられないので4人に色々奢った。なんかしれっと先生方も居たのは流石にビビったぞ。
んで、皆で花火を見たのち門限などがあったので葵と俺以外学園へ強制帰宅。葵は電車に揺られて地元に帰り、俺も爺さんと婆さんの家に帰り夜を明かした。
それで夏祭りの次の日俺は電車に揺られて元の地元へ向かっている、何故か?
簡単だ、お墓参りと実家の掃除の為に帰っている。
「…懐かしいな」
久々に見る実家の姿、中学生になってからも時々ここに来て掃除とお墓参りもしてたし、実のところ一年ぶりか。
「ただいま~」
返す人なんて誰も居ないけど、鍵を開けて中に入る。
埃っぽくもない普通の木造住宅、日頃の掃除の成果も出ていてそこまで汚れていないし今年はそこまで掃除する必要もなさそうだ。
リビングに入るとテレビにソファー、キッチンと机そして4つある椅子の1つに腰かける。
「ふぅ…」
首にかけてあるネックレスを外して机の上に置く。
俺の父さんと母さん、二人とも科学者だったが決して俺との時間を疎かにしていたわけじゃない。どちらかというと大切にしてくれた方だ。小さい頃の記憶なんて所々薄れていて思い出せないものもあるけど、確か二人が務める研究施設にお邪魔したこともあった…らしい。まーじで記憶にねぇ…。
「さ、掃除するか」
キャリーバックから様々な掃除用品を取り出して早速掃除に取り掛かる。
だが…汚れが無い。一年ぶりに来るというのに埃1つ落ちていない、床なんかピッカピカだ。
ネットで買った胡散臭いワックスとか掃除用品がここまで役に立つとはな。今後はネットニュースとかテレビとか見ることにしよう。役に立つ品物とかありそうだ。
「しかし…暇になっちまったな」
今日はここで一泊するつもりだし、飯もこれから買いに行けばいいがあまりも時間がありすぎる。
…散歩するか、こういう時は散策に限る。とりあえずネックレスをつけて財布と携帯を持って外に出た。
「眩し」
夏らしく快晴で太陽がサンサンと照りつけてくる。さて適当に歩くか、そのあとにお墓参りに行こう。
ーーー
自由気ままに道中の自動販売機でオレンジサイダーを買って飲みながら歩き続ける。
「…あ”ー、美味い」
激熱な季節にこんなキンキンに冷えたジュースなんて飲んでしまったら、もうすごいことになるぞ。
お、丁度いいところにペットボトルのゴミ箱が。キャップとラベルを外して分けて捨てる。
「さてと…墓参り行くか」
といってもお墓はもう目の前だ、しれっと墓のある方向へ足を進めていたらしい。
本当は花を添えたりしたいが、次に来るのは一年後だしそのころには花は枯れてしまう。枯れた花をお供えし続けるのも何というか、アレだろう?
寺の敷地中に入り、木のカーテンを抜けて手桶に水を入れて歩く。
(あった)
墓石に『九条家』と彫られているお墓を見つけた。
すぐさま駆け寄り、一旦両手を合わせてから墓石の隣にしまわれている雑巾を取り出して墓石を拭く。
別にそこまで汚れてはいないが二人が見ているかもしれない。懇切丁寧に綺麗に磨かねば。
「…よし、こんなもんだろう」
昼の日に照らされて墓石は輝いている。うん、完璧。
手桶に貯めた綺麗な水を静かに墓石にかける。確か清める為にこういうことをすると聞いたぞ。そしてお線香に火をつけて両手を合わせて目を閉じて合掌。
いつも見守ってくれていると思うけど…ありがとう、頑張って生活しています。今、俺は…IGD学園で学校生活を謳歌しています、凄いよね?俺、男なのに女子高に居るし。
と親に向かって話すように心の中で話す。もし二人が居たならきっと驚いていたことだろうと心の中で思う。
「…これくらいか」
目を開けて改めて思う。もう、俺の親はこの世には居ないということに。
でもきっと天国から俺のことを見守っているだろうと思う、何かそんな気がする。
とりあえず即座に家に帰ろう、ちょっと水分不足でぶっ倒れそう。
そう思い雑巾を元の場所にしまおうと思っていた。
「…うん?」
岩で出来た倉庫みたいな場所の中を見ると…。
「何だこれ」
一枚の写真と何かの機器?
何故この中に入っているんだ…?それに誰が入れた?でもこれを開けるなんて関係者くらいしか…。
ダメだ、ここで考えても埒が開かない。一旦これを調べるか。
古びて焼き焦げた写真だけど、俺と父さんと母さんが写っている。家にある物とは別で確かこれは父さんが持っていた写真だったような…。
んでこれは…?中心にあるスイッチをカチッと押す。
「うぉっ!?」
ブォンという音と共にプロジェクターが空中に浮かび上がった。
パスワード『0304122410310524』…?
何だこれ、クッソ長いぞ。でも何のパスワードなんだこれ?入力する所なんて見当もつかな…。
「…いや、待てよ」
1つ心当たりがあった。その場所に向かって一目散に走って行く。
もちろん付いた場所は俺の家の中。手を洗って拭いて階段を登って父親の部屋の中に入る。
その父さんの部屋の中には一台のパソコンと鍵のかかった金庫があった。
もしパスワードを入力するならこのパソコンか金庫になるが金庫は8ケタの暗証番号式の金庫。でもこのパスワードは16ケタ、金庫のロックではない。となると消去法でパソコンになる。パソコンの電源を付けて父親のアカウントに先程のパスワードを入力すると。
「入れた…!」
予想通りあのパスワードは父さんのパソコンのパスワードだった。
色んなファイルと父さんと母さんのツーショットのホーム画面が写った。ここでもラブラブっぷりを見せるかと心の中で父さんにツッコむ。
でも何故パスワードをお墓の雑巾の仕舞う場所にあったんだろう?
適当にパソコンの中を調べるがこれと言って情報もなく、ごく普通のPCだ。
(何か違うのか?)
今度はファイルの中を見ようとファイルを立ち上げると夥しい量のファイルが記録されていた。つい『うげっ』っと声が出てしまった。
仕方がない、それっぽい何かを探そう。
写真に動画、文末にメールの履歴に…うん?
「黒鉄…」
ファイルに『黒鉄』と書かれている。
いや…今思えばおかしいな。黒鉄は俺の専用機で最近できたものだと聞いた。でも父さんや母さんが亡くなったのは大体6年前、そしてAGの開発には大体2,3年かかると聞いた。
そうなると完成時期とデータの日付が合わない。それに何故今俺が乗っている機体の名前がファイル名に?
…まさか、作成者って。
パソコンを操作して『黒鉄』のファイルを展開してデータを見ると。
「設計図!?」
ビンゴ、作成者の黒塗りの部分は俺の父さんと母さんで間違いない。てか、あれだ。俺が初めて学園に来て柊木先生から渡されたデータとまんま同じだ。
…つまりこの白鉄も?
設計図やデータをスライドしてみていると柊木先生から貰ったデータと殆ど同じだが、一番下に興味深い物が書いてあった。
ーー元にした機体名『篝』、試作機体『■■』
どうやらこの黒鉄兼白鉄のオリジナル機体があるらしい。それが篝という機体みたいだ。
しかも、その操縦者は『九条夏樹』俺の母さんの専用機だそうだ。
それと試作機体の名前が黒く塗りつぶされている、また不明機体か。
でも少し白鉄の事は知れたし何も得られなかったわけではない、収穫はあった。
(…うん?)
パソコンを閉じようと思っていた時、黒鉄の下にあったファイルが目に入った。
ファイル名は『九条春斗』、俺の名前だ。
どうせ俺の写真がびっしりあるんだろうと思って軽い気持ちで開いた。いや開いてしまった。
「動画?」
ファイル内には動画が1つだけ、文字とかの文言は無し。
気になったので動画を再生する。その動画の内容は…
『う、嘘…ギアが活性化してる』
『どうなってるんだ…は、春斗?』
『きゃっきゃっ!!』
小さな赤子がギアを活性化している瞬間だった。
恐らく撮影者は写っていない父さん。母さんは驚きながら赤子の俺を見ていた。
…俺は、赤子の時からギアを活性化できたのか?いや、驚きはするが…でもそれと言ってどうということもないのもまた事実。
そして動画の最後に
『もしこの動画を春斗が見ているならこの番号を入力してくれ、番号は私たち家族の誕生日の日数を結婚記念日で引いた数だ』
「誕生日と結婚記念日ね」
そう映った。
父さんは3月4日で母さんは12月24日、俺は10月31日。
で、結婚記念日は5月24日。
つまり
(2035だ、よし)
出した番号を金庫に入れると、ガチャッと開きその中には…橙色の何かのパーツと、何かの紙の書類があった。
書類の内容は…何だこれ?AGの設計図のみ書かれてある。機体名やアビリティ、スペックなど様々な事が書かれていない。果たしてこれは書類と言えるのだろうか。
「これは?」
パーツを右手で取る。せんべいくらいの大きさで平べったい…てかせんべいとか考えたせいでせんべいに見えてきたんだが。
突起が付いているし何かにくっつくのか?と思っていたら。
『操縦者』
「うおびっくりした」
急に白鉄から声が聞こえてきた。
『私のソフトウェアの中にその拡張パーツをインストールしろとの命令がありました、よってその拡張パーツをインストールします』
「お、おう…?」
色々言いたいことがあったが俺が反応するより先に俺が握っていた何かのパーツが粒子化し、白鉄の待機状態のブレスレットに吸い込まれて行った。
『拡張パーツインストール中…完了』
「なぁ白鉄」
『何でしょうか?』
「その拡張パーツの中身というか効果は?」
『不明、変更点は特にありません』
「無いのか…」
『しかし』
「うん?」
白鉄は最後に気になる一言を放った。
『1つの機体のデータがこの白鉄に完全にインストールされました、今後の戦闘で反映されるかもしれません』
◇◇◇
「これが九条春斗君の報告兼情報…ね」
月明かりに照らされた校舎の屋上でビジョンシステムでデータを見る1人の女性、その声は誰にも届いてないが透き通り、澄み渡っている。
「うーん、過去はアレだけどこの学園生活や最近のデータで彼の優しい部分が目に見えて分かるわ。それはいいんだけど…それ以上に苦情や苦言が多いわね」
本年度の新入生の専用機持ちの多さや異質なイレギュラー、男性なのにAGを活性化できる『九条春斗』の存在。その本格的な対応を求められているようだ。
「…やっぱり、そろそろお姉さんが動くべきね」
ビジョンシステムを解除して、立ち上がり満月をバックに少し微笑む。
その笑顔は魅惑的で獲物を見つけた肉食獣…いやコレクションを見つけた氷の女王のような笑顔だった。標的を取って食わんばかりの。
「さて、私も頑張らなくちゃね」
満月の夜、微笑む彼女の周りの空気は夏とは思えない冷気へと化けていった。
誤字脱字、語彙力がほぼ皆無に等しいのでミス等がありましたらご報告お願いします
感想も待っていますので気軽にどうぞ!
超絶不定期更新ですがご了承ください…




