第26話 ひと夏の4つの思い出に一つの宣言
皆様、おはようございます。こんにちは、こんばんわ。作者の雨乃時雨です
一応読者様にあった挨拶を考えた結果、全てを使うことにしました。
さて、何故いつも書かない前書きを書いているのかと言いますと皆様にご報告が二点あります、あとがきでは気づきにくいかな?と思ったので前書きで書かせていただきました。今後も何か報告や読者様に伝えたいことがあった場合は前書きで書いていこうと思います。
(もしかしたら報告もなしで書くこともあるかもしれませんが…)
早速本題に。設定資料集を見ている人のみに関係してくる話です。資料集に教員や主人公に関係する人たちについても書くことにしました。作者の方では既にエンディングまでは考えていて大雑把にも書いていますが…とんでもねぇくらいのキャラクターが出る予定です。もしかしたら…みたいなキャラもいますのでよろしければ見たことない人も時々見てほしいです。
長くなりましたがこれにて作者からのお知らせは以上となります、引き続き『インフィニティ・ギア』をお楽しみくださいませ~。
「悪い、少し遅れた」
「贅沢な悩みだろ?美女4人に囲まれて屋台を回って少し遅刻したのは」
「遅れて早々すっごい棘あるねぇ!?」
ステージの控えに行くと谷氏、たそ、はちおは既に準備完了のようで椅子に座ってバチをくるくると回していた。
「あれ、爺さんは?」
「實さんはマイクで案内や軽い俺らの紹介してるよ」
「そうそう、今回過去最高レベルで客が多いらしいし」
やっぱりかと心の中で納得する。いやね?明らかに多いと思ったよ。
「…それと金三津さん来てたぞ」
「マジで!?ぎっくり腰だろ!?」
「そうだけど、来たよ車椅子で」
「本当に正気かなって思った」
「たそは言ってることストレート過ぎない?」
たそ曰く。ぎっくり腰は幸いにも軽い物で歩けはしないものの、車椅子でここまで来たらしい。いやぁ…凄いな、流石町内会長。執念がすごい。
「さぁて、行くか」
「もうそんな時間?」
「うわ本当だ、もうすぐで始まる」
「…じゃあ今回一番上は誰が」
「「「はるちゃん」」」
「やっぱり俺ぇ…?」
祭りのステージこと『やぐら』、二段のやぐらの一番上に大太鼓が一つある。今回は大太鼓を1人で打ち、二段目で残りの三人でやぐらの下の和太鼓…んで今ここには居ないけど他の和の楽器の数々の人たちがやぐらの下で演奏と言った形態だ。
つまり、今回お客さんが歴代最高で多いらしいので一番上の大太鼓が一番目立つ。
「いや…去年も俺やったし今年は変えない?」
「尚更はるちゃんで」
「そうそう、去年もやった人がやるべきだと思う」
「それに美人連れてたし、ロリ居なかったし」
「お前らなぁ、てかはちおくんはどれだけ根に持ってるんだよ。怖ぇよ」
結局、去年と同じように俺がやぐらの頂点に乗ることになった…。
まぁ予想通りというか何というかね。
「てかさ」
「うん?」
「もう俺たち高校生じゃん」
「そうだな」
「はるちゃん、今年から脱ぐのOKになったから上半身脱いで行く?」
「行けるか!」
「でもはるちゃん部屋着は半裸じゃん」
「学園に入学してから流石に着てるわ!それにクラスメイトが居るんだぞ!?脱ぐならお前らもだろ!」
「えぇ…そういう趣味はちょっと」
「テメェら…!」
ーーー
「これか和の演奏ですのね、何と言いますか迫力が凄いですわ」
「ね、荒々しくも何処かに優雅さがあるというか…」
「うむ、やはりこうでなくては!」
「これを副隊長や部隊の皆に送ろう、より日本を知れるはずだ」
春斗がステージ裏に行ってから4人は席に座りステージの演奏に聞き、見入っていた。
するとそこに。
「あら皆さん!」
「やはりか」
「「「「御影先生に柊木先生!?」」」」
なんと会うはずもない担任、副担任が後ろにいた。御影先生は黒色を基調とした浴衣で、柊木先生は淡い水色の浴衣に身を包んでいる。他の男性からしたら目を奪われるほどの美貌。
「ど、どうしてここに?」
「まぁ九条君の活躍が気になって、それと実はここのお祭りって結構有名なんですよ?」
「そうなんですか?」
「…私は仕方なくだ」
「いいじゃないですか、教え子の頑張る姿が見えるんですよ?」
「ふん…」
凄くにこやかに笑う柊木先生と何か不満そうな顔をしている御影先生。ちなみに御影先生の左手にはかき氷が握られているので完全に楽しんで居ないわけでは無さそう。
そして先生二人は丁度空いていたフレヤの横の席に座りステージを眺め始めた。
『それでは本日のメインイベントでもある和太鼓、それの演奏となります。活気あふれ漢気に満ちた4人組の登板です』
そのアナウンスが聞こえた瞬間、会場が一瞬静かになりやぐらに4人の男が登ってきた。
もちろん椅子に座っている4人はその中の1人、春斗の事しか見ていない。
『…結局俺?』
『うん』
『はぁ…了解』
そんな声がアナウンスから聞こえたと同時に春斗はやぐらに立てかけられたはしごを登り一番上の大太鼓の所まで登ってバチを構えた。
「さぁーーー!!春斗、やれぇぇぇぇ!!」
「はぁぁぁぁぁ!!!魂の打ち込みだあぁぁぁぁ!!!」
次の瞬間、春斗が和太鼓を叩きドオォォォン!と音が鳴り響き、会場が静まる。
彼らは一心不乱に打ち込み続ける。少しずつ太鼓の音が大きくなっていき威圧感や荒々しさが芽生え始め、その芽生えに衰えることは知らず。強く、カッコよく、そして荒々しく。音を天へと響かせる。
(す、凄い…!)
春斗の和太鼓を打ち込む姿を見たいと思っていた4人は、てっぺんで打ち続ける春斗を見続ける。訓練や学校生活では見られない彼の楽しみながら打ち込み続けるその姿を。
そしてその太鼓の音色、あの4人の鼓動が最高潮に達したとき。会場の盛り上がりは最高潮にまで到達する。
(あれが春斗さん…とても素敵ですわ)
(お、おぉ…あの小学生の頃の春斗がここまでカッコよく…)
(ど、どうしよう…凛々しくて直視できない!)
(す、凄いな…あんなに楽しそうに)
助けられた時とはまた別の意味で心を奪われつつある4人。
「凄いですね九条君」
「あぁ」
音色が完全にこの会場の全てを包み込んだ。今度はリズムが徐々に早くなっていき動きも忙しくなっていく。それでもやぐらに乗っている4人の音色は乱れず、より一層一体感を醸し出す。
「行くぞぉぉぉぉ!!!」
春斗たちの雄たけびが再度会場に響き、熱気に包まれていく。
「「「「やあぁぁぁぁぁっ!!!」」」」
そして4人同時に雄たけびが上がり…太鼓の演奏は止まった。
次の瞬間、会場は拍手と歓声で包み込まれる。
無論、彼女らも拍手を送っていた。
『素晴らしい演奏でした、では…』
『ちょっと待った』
アナウンスが次の演奏に行こうとした瞬間、蜂が割って入りその移行を止める。
『俺たちから会場の皆様に聞きます、熱くなりました?』
そのアナウンスに殆どの人が声を上げる。
『ありがとうございます、でも…この中でまだその滾りを終わらせたくないという人がいます!この…頂点に!!』
そうしててっぺんにいる春斗を指さす。
『なぁ春斗!まだ行けるだろォ!!』
「…あぁ!!こっからよぉ!!!」
すると春斗は上の衣装を脱ぎ捨て、頂上のやぐらから飛び降りて着地し下にあった太鼓を身体に抱える。
『お前たちが言ったんだ、付き合ってくれよ?』
『あー…やばいスイッチ押した?』
『うん』
『じゃあしょうがないか!』
残りの谷氏、那由多、蜂も太鼓を抱える。
『さぁさぁ!もっと盛り上がろうか!』
春斗の声がアナウンスから聞こえた瞬間、4人はばらばらに別の方向へ走っていく。
ちなみに春斗は出来る限りフレヤ、葵、レベッカ、アナスタシアの元まで行き太鼓を構える。
『…では4人の男たちの熱と共に次の演奏の方々お願いします』
そしてやぐらの上にまた別の和の楽器を持った人たちが登った。
『春斗!掛け声を!』
「しゃあぁぁぁぁ!!もう一回行くぞぉぉ!!」
春斗はバチを天高く伸ばし太鼓を打ち込む。
「お客様方!俺たちと一緒に盛り上がりましょう!!」
太鼓を叩きながらパフォーマンスしつつ観客全員を楽しませようという春斗の意志に比例するかのように会場全体が更に盛り上がっていく。
春斗、谷氏、那由多、蜂の太鼓の音が四方から鳴り響き、中心のステージで演奏している人たちに協調するかの如く音が調和する。
「!」
ふと春斗と目が合う4人。それに対して春斗は笑顔を返すがいつもの優しい笑顔ではなく、完全に楽しんでいる笑顔。
額を汗で濡らし、高校生と言えど鍛えあがった上半身には筋肉がたくましく夕日が照らしている。
それだけでも彼女たちの目を奪うのは容易かった。
(す、凄いですわ…演奏もですが肉体も…)
(何だかいつもに比べて荒々しく見えるせいで…)
(より格好よく…)
(見えるな…)
ドキドキと弾む心の音色さえも、今では彼に支配されている。
「しゃあぁぁぁぁ!!」
再度日本のバチを天高く伸ばし、太鼓に叩きつけ演奏は終了した。
「はぁ…はぁ…」
次に聞こえたのは先程以上の拍手と喝采、そして歓声。
「ありがとうございましたー!」
汗だくのまま笑顔でお辞儀し、春斗はステージ裏へ走っていった。
◇◇◇
「あ”あ”疲れた…」
「マジで無理した…てか、はるちゃん結局脱いだじゃん」
「死ぬほど暑かったから…しょうがないじゃん」
「正直…分かる、俺も脱ぎたかった」
ステージ裏の椅子で4人そろってドカッと座り込む。
本当に疲れた。和太鼓や祭りの熱狂に乗ったのもあるけどね、でも楽しかったのも事実だし。
「スポドリある?」
「クーラーボックスには?」
「…お、あった。何か飲みたいものは?」
「もう何でもいいからくれ」
何でもいいといったので俺と同じスポドリを3人に投げ渡す。
そして全員一斉にペットボトルの口をあけて勢いよく口の中へ流し込む。多少零れても気にしない。
「んぐっんぐっ…ぷはぁ!あ”ー、生き返る~!」
「身体に染みわたるな…」
「ね」
「さてと、こっからどうする?」
「明日は俺らの演奏ないし、今日はもうないよね?」
「…無いな、プログラムみてもこれと言ってなさそう」
「そうか、なら俺は一足先に上がる」
疲れた体を無理やり動かし、席から立ち上がる。
「どこ行くんだ?」
「いったん家でシャワー浴びてくる、あと今年は一緒に回れない」
「そうだよな、お前は美女に囲まれてるもんな!」
「だから何でたその言葉には棘があるんだよ!」
そうして控えで色々ふざけて言いあったりしてこのままだと俺が言い負けてしまうので早々に控えから出ていき、一度家に帰る報告をする為に皆の元へ歩いていこうとそう思っていた矢先。
「…!」
「や、春斗」
黒髪のショートカットに、少しにこやかに俺のことを呼びながら微笑む女性。
「明奈…」
「覚えてたんだ」
明奈、『渡辺明奈』。俺の…元カノだ。
「よかったよ、和太鼓」
「そう…か」
先程の和太鼓について褒めてくれた。いやそれ自体は嬉しいが、正直俺は今すぐこの場を離れたかった。過去を思い出す。
俺のせいで明奈は人生に傷を付けられかけた、俺が付き合ったせいで明奈が傷ついた。
また俺のせいで…。
「…もしかしてまだ引っ張ってる?」
「何をだ」
「あの時の事、別れてからも言ったけど春斗のせいじゃないって」
「わかってる…!でも」
握りこぶしを作った右手を見る。
今はただの肌色の拳が見えるだけだが…あの時の俺はこの拳を血で濡らした。
「はぁ…少し一緒に歩こう」
「いや…俺は」
「いいから、どうせ一度家に帰るんでしょ?付き添いで、ね?」
「…分かった」
このままだとまた俺が言い負かされるので仕方なく付き添いを許可した。
屋台を抜けて路上を歩きながら考える。
何故俺に近づくような行為をしたのか、何故俺に話しかけたのかなど様々な疑問を頭の中で処理しようとするがそれ以上の疑問が生まれ、結論は出なかった。
「…なぁ、明奈」
「うん?」
「その、元気だったか?」
「多少はね。高校に入ってからは友人もできたし、告白もされるようになった」
「そうか…」
「でもね?」
すると明奈は足を止める。
「私は君以外の彼氏なんていらない、私はまだ春斗の事が好きだし」
「…」
正面からの告白。中学校の頃に比べたら明らかに綺麗になった明奈、そんな彼女からの告白に靡かない男はいないだろう。俺を除いて。
「俺は…止めとけ」
「どうして?」
「どうしてって…それは」
「俺に近づいたら危ないぞって事?」
「…あぁ。お前は分かってるだろ?俺と付き合ったらどうなるか」
俺は…『恋人』なんていらない。あの時のせいで俺は異性からの想いに答えたくない。
怖いんだ、俺と恋人になった相手を失いかけるのは。もう、嫌なんだ。
「春斗はもう少し過去を捨てることを覚えたほうがいいんじゃない?」
「捨てられるなら…捨ててるよ」
「だよね。春斗は優しいし、一途だし、なんだかんだ言って他人の事を気にするし…」
「…」
「ねぇ春斗」
「何だ」
「知らないと思うけど、私たちを巻き込んだあの女と隣の学校の生徒たちどうなったと思う?」
気にならないと言えば嘘になるな。そういえばこっちに来てから一回も会ってないし見かけてもいない、絶対に俺に対して恨みつらみだらけだと思う。
「実は…消えたんだよ」
「消えた?」
「そう。まぁ本当にパッと消えたわけじゃない、結論で言うと何処かに行った」
「引っ越したってことか?」
「うーん…そうとも言えないんだよね」
「?」
「ほら、そこの家」
そういって明奈は指をさす。その先には普通に家がある、確かリーダーの奴の家だったが…住んでいる人が違うな。
「もう居ないのか?」
「あくまで噂だけど夜逃げしたんじゃないかって」
「…全員?」
「そこは噂だから分からないよ、でも春斗が殴った全員はここにはいない」
「俺のせい…か」
「いいや、実際のところ春斗の行動は地元の皆には良いことをしたと思われているよ」
「何故だ?」
聞いた話によると、あの学校の生徒や俺の母校のリーダーを含めて商店街や電車、バスなどで様々な迷惑行為を繰り返し、学校に連絡しても改善されずうんざりしてたんだと。
んで学校に地域の代表者全員で突撃しようとしたところで俺が生徒たちを壊した結果、突撃する必要もなく、地域の迷惑は消え全てハッピー。
…とはならず、俺の手を煩わせる?言い方はあれだけど俺の手を汚させたのは痛かったと聞いたらしい。
「運が良かっただけか」
「だとしても、春斗は私を守ろうとして学校に突撃してきたんでしょ?」
「…あぁ」
「それだけでも嬉しいよ、ありがとう」
そうしてまた俺と一緒に家まで歩く、先程よりも距離が近い。
「近いんだが」
「いいでしょ?元カノとはいえ春斗の事が好きなんだし」
「俺が嫌いだったらどうするんだ」
「絶対ないね、断言するよ」
「何処からそんな自信が?」
「春斗は人の思いを無下にしない、でも今は無下にしないために気づいていないフリをしてるんだよね?」
「…ノーコメントで」
なんて色々話している内に俺の家についた。
「やっぱり早いね、好きな人と話していると」
「…お前は口説き癖が付いたのか?」
「いいや?春斗だけにだよ」
「その言葉を出来れば俺以外に言ってほしい」
「絶対に嫌だね」
「はぁ…まぁいいや、それじゃあな」
そうして明奈に背を向けて家の敷地内に入ろうとした。
その時。
「!?」
急に右手を捕まれてぐいっと後ろから引っ張られ、明奈と向き合う形になる。
そして…。
「んっ!?」
いきなり、唇を奪われた。
余りにも唐突な出来事過ぎて身体が動かず、頭が認識しない。
そしてハッとなり、明奈を引き剥がす。
「お、お前!?何して!」
「私は諦めないよ」
「!」
引き剥がした俺の手を恋人つなぎで握り、俺は住む家の塀に押さえつけられ宣言される。
「私は春斗が好き、心の底から。あの時の守ってくれる前からも皆の為に動いて、いつも笑って、皆に優しい春斗が」
「…止めろ、俺は」
「だからいつの日か認めさせてやる」
俺を押さえつけた手を離して、一歩下がっていく。
「じゃあね、また会えたら」
そうして…また祭り会場の方へ歩いていった。
「…変わりすぎだろ」
明奈が見ていないことを確認し、塀に背を預けながらその場で座り込む。
中学校時代の時もあんな感じで自信たっぷりだったが、ここまで積極的になるなんてな。
まるで王子様じゃねぇか…。
「クソ…さっさとシャワーを浴びて皆のところに行くか」
誤字脱字、語彙力がほぼ皆無に等しいのでミス等がありましたらご報告お願いします
感想も待っていますので気軽にどうぞ!
超絶不定期更新ですがご了承ください…




