表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
インフィニティ・ギア  作者: 雨乃時雨
プロローグ~第一部
25/122

第23話 魂に火を焼べ、刀に焔は宿る

旅館の一室。時間は17時。

この部屋の中心で寝ている九条春斗が意識を失ってから3時間程経った。一向に目を覚ます雰囲気は無く、ただ静かに瞼を閉じたままだった。

全身火傷だらけで傷だらけの身体、彼だったら名誉の負傷だといい笑い飛ばしていたかもしれない。だが現実は非情なものだ。彼の笑顔も、言葉も聞こえてこない。


「「「「…」」」」


そんな彼がどうしても心配なのが今九条が眠る一室の廊下に居る4人、全員項垂れている。今、包帯だらけの彼の姿を見れば罪悪感で押しつぶされそうになる。もう少し早く気づけたならと、もう少し早く助けられたらと。

今回の作戦は別に誰が悪いとか誰が戦犯だとかそういうことはない、ただAIがたきだした戦略が外道のごとく最悪過ぎた、それだけだった。


『作戦は中止、一度戻れ。状況に変化があれば再度収集する、それまで待機していろ』


旅館の庭に墜落した春斗が引き上げられ、何とか全員旅館に戻った際に御影先生に言われた言葉がこれだった。今は教員たち全員大座敷の作戦室に籠りっぱなしだ。


「私たち…は…これからどうすればいいんだ」


このお通夜のごとく静寂の間を一番最初に切り裂いたのは時雨葵。

しかし雰囲気は最悪だった。


「…今は待つしかありませんわ、私たちにはそれしか」

「…」


フレヤもレベッカも今はどうしようもなかったという結論しかなかった。今更あの時一緒に防げたならと思うがそれは正解にはならない。もう結論が出ている状態で途中式を書いているように無意味だ。


「…私は諦めない」


しかし、一人だけまだ諦めていない者が居た。銀色の髪を靡かせるアナスタシア・アガポフ。


「アナスタシア…諦めないって言っても限度が」

「確かにあの作戦は一度限りのはずだった。だが…もしもだ、もう一度アイツに挑めるとしたらお前たちはどうする」

「どういうことですの?」

「これを見ろ」


そうしてアナスタシアはビジョンシステムで何かのマップを全員に見せる。

そこには…。


「ぜ、ゼフィルス!?」

「あぁ、ここから40キロ先の無人島の空域にて停止中。どうやら私たちの攻撃は無意味ではなかったようだ」

「無意味ではない?」

「私の部隊の全員がゼフィルスの現在位置を発見したんだ。その情報によると今、ゼフィルス強制停止状態。私たちの攻撃を受けすぎたあまりエネルギーをチャージ中だ」

「…ということは、今がチャンスって事?」

「あぁ」


彼の後悔を背負う彼女たちの眼にもう一度闘志が宿る。

今こそ敵を討つタイミングであると!


「お前たちはどうする、私は戦う。私は春斗に救われた今こそが借りを返すチャンスだと思っている」

「…僕も行くよ」

「私もだ!戦って勝つ、今度こそ負けはしない!」

「私もですわ」

「なら作戦会議だ、次こそ確実に墜とすぞ」

「うん!」「あぁ!」「もちろんですわ!」


◇◇◇


「…んん?」


目を覚ます。俺は…あの後、ビットで攻撃されて、それで…。

クソ、思い出せない。てかここは何処だ?


「!!」


風が靡き、花びらが吹いていく。その方向を見ると巨大な桜の木がそこにあった。

俺の何千倍も大きな大木、そこの枝から咲く桜はとても煌びやかでとても綺麗だった。だがそれと同時に懐かしさを感じる、何故だ。

とにかく俺はその桜の方へ歩いていく。地面は花や草で覆われていてとても居心地がいい。


「夏の季節なのに桜があるなんてな」


そういえば俺の名前『春斗』の由来なんだが、誕生月は違うが俺の母さんと父さんの結婚記念日に見に行った満開の桜。その綺麗さ、優しさから取って『春斗』だってよ。

まったく、ラブラブっぷりが俺の名前にも反映されてるなんてな。


「行きたかったな、母さんと父さんが見た満開の桜を」


きっと今俺の目の前に広がっている物よりも綺麗で大きいと思う。一緒にいけるなら見に行きたかった。


「…?」


桜の木の根元まで足を進めると…そこには『刀』が突き刺さっていた。

しかもこれは、無垢だ。俺の白鉄の武器の…何故ここに?


「…」


突き刺さった刀の持ち手を握る。

…感じる、刀の鼓動を。私を抜いてくれと。

だが一向に抜ける気配がない。まるで地面に繋がっているかの如く頑丈だ。


「どうしたものか…」


靡く風に心地よさを感じながらこの突き刺さった刀をどうやって抜くか考え込んだ。


◇◇◇


桜花荘から約40キロメートル先の無人島に4機が着陸、そしてそこから300メートル先の上空に…ゼフィルスが居た。

ぱっと見空中で静止し、辺りを見回しているように見えるが首も指先もピクリとも動かしていない。今がチャンスだ。


「いいな、まずは私の先制攻撃。各々持ち場に着け」

「了解」


アナスタシアがそう言うとフレヤ、葵、レベッカはゼフィルスを囲うように飛び、アナスタシアの先制攻撃を待った。


「!」


レオンの二本の迫撃砲『パンツァー』&『カノーネ』の片方のバレルを取り外しもう片方へ装着、ダブルバレルからシングルバレル『パンツァー・カノーネ』に変更し45cmの特製爆裂弾を装填する。


「準備はいいか」

『あぁ』『いつでも大丈夫でしてよ』『こっちも!』

「では…!」


バレルの先からキィィィィンと音が鳴り響き始める。


「発射ッ!!」


轟音を鳴り響かせ、超高速で砲弾を発射し…ゼフィルス頭部に着弾。


「初弾命中確認!作戦開始!!」

「「「了解!!」」」


二機の一斉射撃、そして一機の剣技がゼフィルスを襲う。


「はぁぁぁぁっ!!」


正面からの葵の斬撃をレーザーブレードで受け止めてすぐさま反撃に出ようとしたが…それを阻止したのはスプライトとシトリン。


「舞い踊りなさい!!」

「行くよっ!」


ゼフィルスを中心に捉えた、ダブルサークルターンでの一斉射撃。葵の飛脚に当たらないように二機とも適正な距離感覚を保ちながらゼフィルスのヘルスエネルギーを削っていく。


『最優先事項変更、この空域からの脱出』

「させるか!!」


ゼフィルスがインパクトブーストで逃げようとしたところを葵が上からの二本の振り下ろしをくらいその場で回避し、離脱阻止。


「ここから先には行かせん!」

『次弾装填完了、てぇーっ!!』


アナスタシアのレオンの装填が終わり再度射撃…右ウィングに着弾し爆煙に包み込まれる。


「やったか…?」

『ーーいいえ、まだですわ!!』


爆煙を払い再度飛行を開始。脱出を諦めたゼフィルスは4機へとビットと共に攻撃を開始した。


「くっ!?」

『やらせないよ!』


レベッカのシトリンの武装がシールドになり葵とゼフィルスの間に入り込み、レーザーを防ぐ。だがそれ以上の弾幕、攻撃が襲う。


「レベッカ!」

『大丈夫!エネルギーシールドに変更』


レベッカの構えたシールドの形が変形していき、より大きなシールドがゼフィルスの前に立ちはだかった。レベッカの特殊武装エネルギーシールド、ブルーノ社お手製のシールドだが性能はお墨付き、集団戦を想定した巨大エネルギーシールド。


『二人とも!今のうちにお願い!』

「わかった!」

『お任せを!』


そのシールドの影からスターダストの射撃と村雨の斬撃砲がゼフィルスに飛んでいき、右アームで防がれるが、バキッとヒビが入った。

目の仇のようにゼフィルスは攻撃してきた三機をロックオンし、ビットとレーザーを浴びせようとするが…背後から衝撃を受ける。


『三発目、背中に着弾』


ここでアナスタシアのパンツァー・カノーネが放った弾丸が着弾。

この四人の連携は戦闘を開始する事前の動きで出来上がった物。

葵が囮と近距離戦を引き受け、フレヤがビットでの攪乱や射撃、レベッカは防御など臨機応変の立ち回り、そしてアナスタシアは常時一発で決め切るフィニッシャーとしての役割。

これらの役をきちんとこなしていく4機のコンビネーションはとても素晴らしいであることに違いはない。更に全員考えていることは同じだ。


ーーー春斗の仇を


「そこだっ!」


再度正面からのアプローチを仕掛ける葵と飛脚。

それを読んでいたかの如くゼフィルスはブレードで薙ぎ払おうとしたが。


『葵伏せて!』

「!」


レベッカに言われるがまま下に急降下した瞬間、ゼフィルスの目の前には二丁のSMGを装備したレベッカが居た。

認識したときにはもう遅く正面からの射撃を受け一気に後退。


『見逃しませんわ』


その一瞬の隙を縫うようにフレヤのスターダストの射撃が着弾し、ビットもゼフィルスに襲いかかる。その攻撃のお陰で右ウィングのジェット機構から黒い煙が出始めゼフィルスの速度と高度が下がってきた。


『いけるぞ!』

『うん!一気に行くよ!!』


4機が一斉に攻撃を仕掛けようとした瞬間、昼の作戦で見た時のようにゼフィルスの周りをビットが回り赤いレーザーを放つ。それを全機回避した瞬間。


「!」


あの時と同じように二丁のディザスターをチャージし始めた。間違いなく、また桜花荘を狙っている。


『止めるぞ!!』


四発目のパンツァー・カノーネは背中に着弾し、両方のジェットから黒煙が出始めた。


『フレヤ!僕たちは武器を狙おう!』

『かしこまりましたわ!』


レベッカが右手の武器を、フレヤが左手の武器を目掛けて射撃を開始。

葵は…。


「その翼…もらったぁぁぁ!!」


蒼刃剣に持ち替えてゼフィルスの背中のジェット目掛けて一閃。それと同時に両手に握られたディザスターは爆発し…ゼフィルスが崩れるように海へと落下していく。


『葵、シールドエネルギーは?』

「一太刀程度なら大丈夫だ、それよりゼフィルスは?」

『敵機反応…停止』


誰かがお疲れ様と労いの言葉を掛けようとした。

次の瞬間。


『待て…まだ終わってない!しかも、この反応は…!?』


ゼフィルスが海上へ水没していった場所を中心に赤い閃光が集まっていき…海上から再度ゼフィルスが姿を現す。

先程と姿は変わっていないが周りを赤い稲妻や閃光が走り、より禍々しく4機を捉えていた。


『マズい…()()()()が完了している!』


この戦闘で一番聞きたくない言葉が聞こえ、最悪な事態に陥る。

そう、ゼフィルスの初期設定が終わり本来の力が芽生えてしまった。


『来るぞ!!』


ゼフィルスは右手に破損したディザスターを装備し、レーザーを発射しながら薙ぎ払うようにフレヤの機体を襲う。


『きゃあっ!?』

「フレヤ!」


まともにレーザーを受けたフレヤとスターダストは吹きとび、海上に落下。


『アナスタシア!そっちにゼフィルスが!』

『分かっている…!ちぃっ!予想以上に早い!』


そのスピードに対して偏差撃ちでパンツァー・カノーネを放つがビットで空中で破壊され、ゼフィルスに足を捕まれ、空に放り投げられたアナスタシアはビットの連続射撃をくらい全身ズタズタにされ、無人島へ落下。

今までのとは桁違いの性能、連携もただのスペックの高さで圧倒され一機一機と海上に落下、もしくは無人島に叩きつけられる。


「私の仲間を…ッ!!」

『葵!ダメ!!』


レベッカからの静止を物ともせずに一心不乱に正面からのアプローチを再度仕掛けるがレーザーブレードの斬撃が飛んで来る。

それに気が付いた葵はアクロバットに攻撃を回避し、体勢を整えて斬撃砲と共にゼフィルスに攻撃を仕掛けるが…そこにはおらず、いつの間にか背後に回っていた。


「なっ!?」


キィィィィンと構えられたレーザーブレードからチャージ音が聞こえる。


(すまない、春斗…私はお前の仇を…討てなかった…!)


死と敗北を確信した葵はスローモーションになったブレードをじっと見つめていた。

だが。


ゴォォォォッ!!!


その間を『劫火』が横切った。


「な…に?」


ゼフィルスと葵はお互いに距離を取り、レベッカと合流する。


『葵!大丈夫!?』

「あ、あぁ…だが今のは?」


この中に炎を扱うAGは居ない、つまり普通に考えればこの海上の上で劫火が横切ること自体おかしいのだ。


『ううっ…?』

『アナスタシア!!』


葵は海上に水没したフレヤを引き上げ、レベッカは意識を取り戻したアナスタシアの元まで飛んでいった。


「フレヤ、大丈夫か?」

「ごほっごほっ…お見苦しい姿を見せてしまいましたわ」

「気にするな。レベッカ、アナスタシアは?」

「大丈夫みたい、それよりあの炎は?」


ゼフィルスは無人島に着陸した葵たちを見もせずに劫火が放たれた方向を見る。


「…な、何!?」


急にアナスタシアが身体を起こす。


「アナスタシア、傷が広がっちゃう…」

「あ、あり得ない…!」

「どうしたんだ?」


アナスタシアは海上の様子を見せるマップを立ち上げ、全員に見せると…。

『何か』超高速でゼフィルスを含めた葵たちに向かって飛んできているAGがいる。識別名は…。


「は、白鉄(はくてつ)!?」


◇◇◇


風に吹かれながらもこの刀を抜く方法を探すがテコの原理とかそういうのが使えないことを確認して若干心が折れた。しかもAGの武器だ、俺よりも大きいし某ゲームの勇者のように引き抜くってことは出来ない。


「困ったな…」


どうしようもなくて頭をポリポリとかいているといきなりビューッっと強い風が吹き、目を瞑る。再度目を開くが特に変化はない、何だったんだと思いもう一度刀に手を掛けようとしたが。


「力を欲しますか?」

「!?」


俺の真後ろに炎を纏った、女性が立っていた。白い袴だが所々燃えている。

俺の事を興味深そうに見ているが、炎のせいで目元が見えない。


「力を欲しますか?」

「あ、あぁ…力が欲しい」


その質問に受け答えすると質問の内容が変わった。


「では、貴方はその力を何のために使いますか?」

「その…力を」


優しい風が吹く。


「俺はその力を…守るために使いたい」

「守るために…?」

「あぁ…俺は過去に俺の周りが傷ついた事があった。二度と起こさせはしない、俺が全部守りたい。友達も仲間も家族も、全部!」


俺の過去。というより元カノに関係したことなんだが…。中学生時代の俺の彼女。相手から告白を受けて了承しカレカノの関係になったのだが、それをよく思わなかった奴が居たんだ。それが俺のクラスメイトの女子のグループ。後から聞いた話によれば俺を狙っていたんだとよ。んで付き合った瞬間、彼女の事をいじめたり傷つけたり…もちろん俺も我慢の限界でそのグループのリーダーを殴り飛ばした、ふざけるなってな。

そうしたときに事件が起きた。隣の学校のやつらにに俺の彼女が誘拐された、何なら結構素行が悪めの生徒が多いと有名の。

主犯は殴り飛ばしたリーダーで、アイツと別れて私と付き合えば解放すると言われた。その時俺は何をしたと思う?

簡単だ。授業中にも関わらず単独でその学校の校舎に乗り込み、関わった全員を()()()

サッカー部は二度とボールを蹴れないように足を破壊し、バスケ部なら二度とドリブルできないように腕を破壊し…大体、50人くらい?やっている部活にあった部位を任意で壊した。

だって…()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

あの時は俺はそう思っていた、怒りに支配されてたしな。

それで彼女を救い母校に帰ってきたが…俺は彼女に別れを切り出した。


『俺のせいで…お前に迷惑がかかってしまった。だから別れよう、そうすれば…お前は救われるから…ごめん』


もうこれ以上俺のせいで俺の周りが傷つくことが許せなかった。

元カノと同じようにみんなには傷ついてほしくない。


「守るためにその力を振るうのですね」

「…あぁ」

「ならその刀を抜きなさい、そして守りなさい」


ーー貴方の仲間を。


炎に纏った白袴の女性は塵になっていくように消えていった。

すると、俺の右手に突き刺さっているはずの無垢が握られていた…聞こえる。抜け、抜刀しろと。


「…ッ!」


正面に構えて鞘を左手で握りしめる。


「はぁぁぁぁっ!!」


鞘と刃をお互い逆方向へ引っ張っていく。

鞘と刃の隙間から焔が燃えあがる。


ーーー(たぎ)らせろ、俺の(たましい)を。(いのち)()


ーーー()()がれ、(みな)(まも)るための心火(しんか)


◇◇◇


「は、春斗!?」


到着した、彼女たちの想い人が。痛々しい包帯やひび割れた装甲から炎が漏れている。

だがそれ以上に気になったのは…彼が手にしている刀。

訓練で見てきた黒い刃の刀ではなく『赤い刀身で焔を帯びている刀』を握りしめている。


『…ぁぁぁ』


だが春斗の様子がおかしい。


『あぁぁぁぁっ!!』


劫火をゼフィルスに向かって放ちながら刀を振り続ける。


「春斗!!」

『がぁぁぁぁ!!』


私たちの声も届いていない、春斗に…一体何が。


『つながった!貴方たち!!』

「ひ、柊木先生!?」

『命令違反の行動!無断でのAGの起動や作戦実行なんて普通許されません!』


柊木先生からのお叱りの声が聞こえてくる。


『…まぁお前たちが何故無断で戦ったのかは分かっている、今回は反省文の提出と懲罰用の特別強化メニューで許してやる』

「あ、ありがとうございます…」

『それよりも、だ。九条はどうなっている』

「それが…」


御影先生から多少の温情を頂き、もう一度春斗を見るが私たちに眼もくれず劫火を放ちながら距離を詰めてゼフィルスに対して一方的に攻め立てる。


「私たちの声は届いていませんが、ゼフィルス相手に一方的に攻めています」

『…どうなってるんだ、エネルギーも装甲も回復しきっていないはず。何より九条自身の傷が』

「…!」


春斗と戦いながらゼフィルスが私たちを認識した瞬間、こちらに向かってレーザーを放ってくる。レベッカが私たちの前に立ちレーザーを防ごうとしたが、防いだのは…。


「うぅっ…!」


春斗だった。レーザーを縦に切り裂き私たちに当たらないようにした。


「春斗…?」

「…これ以上…仲間を傷つけさせて…たまるかぁァァァ!!!」


春斗は焔の宿る刀を構える。ゼフィルスを見据え、インパクトブーストしながらゼフィルスに接近するが、その攻撃をただでもらうほどゼフィルスは弱くない。


『攻撃対象最優先、危険レベル:A』


ゼフィルスはレーザーやビットで春斗を迎撃するが全て回避され、懐に入り込まれた。


焔舞(ほむらまい)ィッ!!」


左、右と斬り、上へ切り上げて回転し右斜め上、左斜め上へと切り上げ首元へ右に一閃。右へ振りぬいた刀を春斗自身の身体に近づけてゼフィルスの心臓辺りを突いて一気に吹き飛し、追いかけるように再度インパクトブースト。


『す、凄い…!』

『…焔舞だと』


アナスタシア、フレヤの機体の復旧が終わりゼフィルスと春斗の後ろを追いかけていくが…早すぎて追いつけない、むしろドンドン距離が離れていく。


『くっ…!ゼフィルスもそうだが春斗はどんな速度で刀を振るっているんだ!?』

『早すぎて追いつけませんわ!』

『それに…も、もうすぐで桜花荘の近くのビーチに!』


中継画面で様子を確認すると吹き飛ばしたゼフィルスに春斗が追いついていて、防ぐ隙を与えず刀を振り下ろし、そのまま上に切り上げてゼフィルスをより上に斬り飛ばし…。


『おぉぉぉぉ!!!』


刀を逆手に持ち替えてゼフィルスの心臓辺りに突き刺しながら砂浜の方へ向かって飛んでいき、地面に叩きつけた。


「春斗っ!」


モニターを見ると刀はゼフィルスの両手に握られギリギリ刃が届いておらず、全身にレーザー攻撃をくらいながらも突き立てることを止めず、雄たけびを上げながら両手の静止など諸共せずに心臓辺りに刀を突き刺そうとしている。


『この程度で俺を…倒せると思うなァァァ!!!』


春斗の全身の包帯が燃えていき、突き刺そうとしている刀の焔はより一層燃え上がる。


『堕ちろォォォォォ!!』


刃を握るゼフィルスの両手のアームにヒビが入ってきている。このまま行けば春斗の刀が装甲を貫けるかもしれないが…春斗自身と白鉄が耐えられるかどうかわからない。


『射程圏内!撃ちますわ!!』


フレヤが高速移動しながらスターダストを構え、撃つ。そのレーザーは…ゼフィルスの片腕を貫いた。


『やぁぁぁぁぁっ!!』


それを春斗は見逃さず、再度刀を逆手で突き刺し…心臓部を貫いた。


『ゼフィルス…機能停止!作戦、成功です!!』


柊木先生が作戦の成功を全員にオープンチャットで伝えた瞬間、春斗が纏っていた焔は消えていき…白鉄と共に砂浜で倒れてしまった。


ーーー


「…んん?」


目を覚ます。全身馬鹿みたいに痛い…筋肉痛以上の痛みが身体中に張り巡らされている。


「おぉぉ…!?い、痛ぇ…!」


全身を抱きしめるように包むが痛い。

一度体を無理やり起こして現時刻を確認しようとするが…この部屋に時計がないせいで今が何時か分からない。だが外を見ると満月が空に写っていた。


「夜か、てかこの部屋何処?」


教員室じゃないし、何も荷物は置かれていない。代わりに置かれているのは医療器具や病院で見るような器具や機器ばかり。とりあえずここを出るか。


「いてて…って全身包帯だらけじゃん」


ドアを開けて廊下に出る。所々電気はついてるし壁にたてかけられた時計を確認すると今の時間は18時50分、記憶の中のしおりを思い出すと確か飯だったような気がする。お腹すいた。


(…あの時のアレは何だったんだろう)


あの刀を抜いた後の記憶が朧げだ。布団から飛び起き、白鉄を展開して…そこから先が靄がかかっているように思い出せない。ただゼフィルスを倒したことだけは分かる。その手ごたえが両手にあったからな。


「…お?」


いいにおいが鼻をくすぐる…あっちか。

すんすんとにおいを嗅ぐ動作をしながら匂いの元へ足を進める。匂いの元との距離が近づくにつれてざわざわと声が聞こえてきた。


「…ねぇねぇ教えてよ~、何が起きたの?」

「教えられないよ、機密だしね」


レベッカと…他の女子の声が聞こえる。そういえばあの作戦って秘密裏に行われた奴だもんね。他には言えないのは当たり前か。


「こ…こんばんわ~…」


襖を開けて俺が入室するとざわざわしていた座敷はすん…と一気に静かになった。


「…」


何かすっごいじーっと見られてるんだけど、何だ?怖いぞ。


「春斗っ!!」


一番最初に動き出したのは葵、そのまま俺に抱きついてくる。


「あお…痛い痛い!?」

「す、すまん…その大丈夫か?」

「いてて…急にどうしたんだ?抱きつくなんてらしくないし、何かあったのか?」

「…は?」

「えっ」


あ、やべ。何かとんでもない地雷踏んだ気がする。葵の瞳のハイライトがログアウトした。


「私たちがどれだけ心配したと思っているんだ!!」

「は、はい!?」


反射でぴしっと気を付けの姿勢を取る。


「皆を守るためにレーザーを受け止めるのは良い…だがその心配を『何かあったのか?』だと…?私たちがどんな思いでお前を待っていたのか知らないのか!?」

「い、いや…ほら!名誉の負傷…」

「予想通りの言葉を言うな!!また言うがお前は自分の命を何だと思っているんだ!!それに先生も無茶はするなと言っていただろう!!」

「言っていいだろ!てかあの時はしょうがないだろ!?」

「言い訳無用だ!!」

「そうですわ!私たちがどんな気持ちで待っていたのかご存じですの!?」

「また目の前で仲間を失ってしまったと思ってしまった私の気持ちが貴様に分かるのか!?」

「僕もだよ!!」

「さ、三人まで…!?」


いつの間にか葵の横に三人プラスで並び囲まれた。


「「「「…」」」」

「ぴ、ぴぇっ…」


無言のまま壁際まで詰められてしまう。何かデジャブを感じるな。


「い、いやぁ~…ほら今回はしょうがないじゃん?前はシールドエネルギーが無かっただけで今回はさきちんと守るために怪我を負っただけだし、そこまで大きな怪我じゃないし!それに何処かのマッドサイエンティストが言ってた、『死ぬ以外は掠り傷』だって…だからさ、今回は見逃して…え、なんでもっと目線が鋭くなるの!?待って!?何か言って!?フレヤと葵は前に怒られたから分かるけどレベッカとアナスタシアのその覇気は何!?」

「へぇ…?前はシールドエネルギーが無かったんだぁ…僕、その辺の聞きたいなぁ…」

「私もだ…貴様の無謀さには心労が耐えん。一度『教育』が必要かもしれんな…」

「きょ、教育って…?」

「…」

「なんか言ってくれよ!?」

「何か」

「そういうわけじゃ…!?」

「「「「…」」」」

「えっと、そのぉ…お、お腹すいたなぁ…なんて」


「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!??」


この後滅茶苦茶怒られた。

何とか俺も飯にありつける事が出来た。また刺身だけど美味い。

ただ、怪我の都合上どうしても利き手が使えなかった。ちょっと痛くてね…それをあの4人にバレたらマズイなと思った俺は何とか頑張って食べていたが一瞬でバレた。


「はい、あーん」

「…」

「あーん」

「その、レベッカ?俺は自分で食え」

「 あ ー ん 」

「あ、あーん…うん、美味い」

「よかった」


俺の左に座っていたレベッカに食べさせられていた。自分で食えるってことをアピールしたら目が笑ってない笑顔を向けられたまま刺身を差し出してくれたのできちんと食べた。


「は、春斗!これも食べろ!」

「あ、葵…俺は自分で」

「何 か 言 っ た か ?」

「ナンデモナイデス、ハイ。」

「そ、そうか…あ、あーん」

「むぐっ…うん美味しい」

「そ、そうかそうか…!」


一瞬、武士(もののふ)が葵の後ろに見えた。もし戦場であったら『きえぇぇぇぇぇ!!』とか声を上げながら突っ込んできそうな武士が。いやバーサーカーか?


「むー、私もあーんをしてみたいですわ」

「昨日の運が良すぎたあまりこうなるとはな」


昨日隣だった二人は今日は大人しくテーブル席で食べている。やはり正座には慣れなかったらしい。それと個人的に聞いたことなんだが俺が倒れた後4人は重大な違反を犯したので30分ほど正座で説教されたらしい。葵は分かる、同じ日本人だし正座には慣れてるしな。ただ残りの三人の顔はめっちゃ青ざめていたとか。ちょっと見てみたいと一瞬思ってしまったのは秘密だ。


(俺は…守れたのかな)


包帯で包まれた右手を見る。傷は…この際どうでもいいや。俺からしたらみんなの方が心配だ。俺が守れなかったせいで怪我とかあったらたまったもんじゃない。


「…春斗?」

「えっ?」

「何か複雑そうな顔してたけどどうしたの?」


考え込んでいたらレベッカに声を掛けられた。


「…いや、あの作戦で負傷者は俺だけだったのかって。もし俺がレーザーを防ぎきれてなくて他の人に攻撃が」

「僕にもその辺は分からない、今先生たちは作戦成功の報告書とか始末書を書いてるしね。でも」

「?」

「春斗以外に怪我人は居なかったことは事実だよ、医務室や安全確認のため他の従業員や生徒たちに安否の確認をして巻き込まれた人は誰も居なかった。負傷者は春斗だけだった」

「そうか…よかった」

「よかったって…はぁ、春斗はもう少し自分のことを大切にしなよ」

「あぁ、レベッカのいう通りだ。手遅れになると…その、私たちが困るからな」

「困るのか?」

「う、うん…」


何故俺が傷ついてそっちが困るんだ?と疑問が浮かんだが指摘は止めよう。また怒られそうだ。

すると。


「九条」

「あ、御影先せ…いてて…」

「無理に動かすな、そのままでいい」

「す、すみません」


襖が開き御影先生が入ってきた。


「フレヤ、時雨、ブルーノ、アガポフ…そして九条。来てくれ」

「は、はい!」

「九条はゆっくり来い、流石にその姿で走らせるほど私は鬼じゃないぞ」

「お、お手数をおかけします…」


そんなわけで俺たちが呼ばれたので座布団から立ち上がり先生の後をついていく。

ちなみに予想通りというか…みんなに比べたら明らかに俺の方が歩くスピードは遅かった。

全身痛くて歩くのもしんどい。

誤字脱字、語彙力がほぼ皆無に等しいのでミス等がありましたらご報告お願いします


感想も待っていますので気軽にどうぞ!


超絶不定期更新ですがご了承ください…

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ