第20話 いざ海へと行かん
「みんな見て!海だぁっ!!」
「「おー!!」」
暗黒のトンネルを抜けた瞬間、バスの中で女子たちが声を上げ外を見る。
臨海学校初日、天候は恵まれすぎて雲一つない快晴。海は陽に照らされ反射された海面は穏やかで美しく綺麗に靡いていた。
さて、ここで男子生徒の声が聞こえていません。何故か?
「んん…ぅ…」
腕を組んで椅子にもたれかかりながら滅茶苦茶普通に寝ている。
ここで気になるいつから寝ているのか、時間は遡り二時間前のバスに乗り込み各出し物を披露しているときに起きたクイズ大会。
『ーーーこの問題に答えられる人ー!はい!九条君!!』
本当に軽い気持ちだったのだろう、九条を指名したが返ってきたのは静寂のみ。
『…あれ?九条君?』
九条の席の近くに座っていたみんなは一斉に九条の方を見ると…。
『…んん』
めっちゃ寝ている。その隣のフレヤはずっとその寝顔をチラチラと見ていた。
そう、何を言おうこの九条春斗…二時間前に寝てから一切起きていない、トイレ休憩の間もだ、ずっと同じ体勢でめっちゃ熟睡している。
ちなみにフレヤのスマホのアルバムの中には春斗の寝顔の写真が一枚、しれっと撮ってあった。
そして今に至る。女子生徒が盛り上がっている中、男一人は既に夢の海で謳歌していた。
「う…ん」
(ち、近いですわ…春斗さんの寝顔がこんなに…!)
近場の席になると春斗の隣にフレヤ、通路を挟んで反対側にレベッカにアナスタシア。なお葵は別クラスの為、バス自体違う。
レベッカとアナスタシアは羨ましそうにフレヤの事を見ている。寝顔は二人とも撮ったがやはり至近距離で見たいと思ってしまうのだろう。
「…ん」
「ふぇっ!?」
バスが左カーブに差し掛かりその方向へと身体が一瞬傾く。春斗が窓側に座っていた、つまりどうなるか?春斗の頭はフレヤの頭にのしかかる様な体勢に変わり、アニメあるあるの肩にもたれかかる…ではなく頭にもたれかかる状態へ変わり。春斗の寝顔は、より距離が近くなった。
「いいなぁ…」
「くっ!」
反対側に座っている二人の目がより険しくなった。そんなこともつゆ知らず男子生徒は幸せそうに寝ている。
(と、とても近いですわ…心臓のドキドキが止まりません!)
フレヤはとてつもなく焦っている。今までの中で一番想い人との距離が近く、男子特有の匂いとは違う制服の匂いにいつもと違った雰囲気のせいで今まで以上に心臓がバクバクしていた。そしてとても心地がいい雰囲気にフレヤは包まれていたが
「そろそろ目的地に着く、全員きちんと座り寝ている者が居れば起こせ」
幸せな時間は過ぎ去っていくもの、この状態を自らの手で断ち切れというもの。
(まだ、もう少し堪能したかったですの…あ、そうですわ)
するとフレヤは何かを思いつきスマホの電源を付けて内側のカメラを起動して、そのカメラ内にフレヤと春斗の寝顔を収め…パシャッと撮った。
(ふふっ、目的達成ですわ。さて起こしましょう)
アルバムを開き、自身の笑顔と一緒に想い人の寝顔が写った写真を確認したのち春斗の肩を小さく揺らす。
「春斗さん春斗さん、起きてくださいまし」
◇◇◇
「…んん?」
夢から目を覚ます、なんかすごく幸せな夢を見ていたような?
上半身をぐーっと伸ばす。
「おはようございます春斗さん」
「あぁ…おはようフレヤ」
隣にいるフレヤと目が合うと、何かいいことあったのか?っていうくらい幸せそうな笑顔だ。うん、綺麗だな。
…反対側の二名の視線がぶっ刺さっているがな。
「どれくらいたった?」
「二時間ほどでもうすぐ着くらしいですの」
「け、結構寝てたな…てか出し物とかレクリエーションガン無視で寝てたのか俺」
「はい、幸せそうに寝ていましたわ。うふふっ」
フレヤと雑談を交わす中、ほどなくして目的地である旅館の前に到着。計四台のバスから一年生の女子高生たちと一人の男子生徒がわらわらと出てきて整列した。もうすっごい綺麗な整列だ。
「ではここが今日から三日間お世話になる桜花荘だ。全員、従業員や女将さんの仕事を増やさないようにしろ」
「「「「「よろしくお願いします!」」」」」
御影先生の言葉の後に一年生全員で挨拶をする。聞いた話によるとここの旅館には毎年お世話になっているらしい。
そして着物姿の女将さんが丁寧にお辞儀をした。
「こちらこそ、今年の一年生たちも元気があっていいですね。もしわからないことがあれば私や他の従業員さんに聞いてくださいね?」
「「「「はーい!」」」」
歳は…いや流石にプライベートすぎるか?見た感じ三十代くらいの女将さん。笑顔が絶えず、着物や雰囲気も相まってとても美しい。
「あら?こちらが…」
「あっ、はい九条春斗です。よろしくお願いします」
女将さんと目が合い、一歩前に進み自己紹介ののちに深々とお辞儀をした。
「あらご丁寧にどうも、この子が柊木先生の言っていた男子生徒さんでよろしいですか?」
「はい、今年は男子生徒が一人いるので浴槽分けなどで手間をかけてしまい申し訳ありません」
「いえいえ、そんな。良い男の子じゃありませんか、しっかりしてそうです」
「あ、ありがとうございます…」
気品のある喋り方や仕草が大人らしく、ちょっと年上に耐性がない俺はほんの少し緊張してしまう。許してほしい。
「ではみなさん、お部屋にどうぞ。本日は自由時間と聞いていますので海に行きたい方は別館の方で着替えられるようになっていますのでそちらでお願いしますね」
女子一同、再度はーいと返事をするとすぐさま旅館の中へ荷物を持って入っていく。まずは荷物をおいてから着替えると言った感じだろうか。
知っての通り初日は自由時間、食事は旅館の食堂で自由に取っていいとのこと。そしてメニューは海鮮をメインにした和食と…しかも蟹や鯛とかも!豪華すぎるぜ、へっへっへ…。
とりあえず俺も荷物をおいて着替えて海へ行くとするか、荷物を抱えて旅館に入ろうとしたが。
「ねぇねぇ~はるちゃん」
あぁこの呼び方は…予想通り如月さんだ。俺のクラスメイトであり…多分一番おっとりしてる女子生徒、てか俺のことを『はるちゃん』って呼ぶのはこの人しかいない。ちなみに表情は常にへにゃってしてる、そのもちもちそうなほっぺたを触ってみたいと思ったのは秘密。
「どうした?」
「はるちゃんの部屋ってどこ〜?部屋の一覧表にも書かれてなかったから教えて~」
その言葉が聞こえた瞬間、一瞬静かになった。テンションが上がっていて忘れていたが…。
「俺って何処に泊まるんだ?」
「えぇ~?」
流石に年頃の男女を同じ所に寝泊りさせるわけにはいけないという事で俺の部屋は別にあるらしいが…結局どこにあるかもわからん、何せ明確に何も言われていないからな。
「おい、九条」
「あっはい!!」
後ろから御影先生に呼ばれて振り向く。
「お前の部屋について何だが…」
「?」
何か御影先生がすっごい言いずらそうな表情をする。え、何そんなヤバい部屋に俺泊まることになるの?
「…ここに泊まることになった」
御影先生はビジョンシステムでこの旅館のマップを表示する。
その中にひときわ目立つ赤い点があった。恐らくここが俺の泊まる場所なのだろう、だがここまで言いずらい物なのか?
何か後ろにいる女子たちも黙ってるし…。
「えっと、ここは?」
「私と…柊木先生の宿泊部屋だ」
「…ど、どういう事でしょうか?」
「私、柊木先生、そして九条がこの部屋の宿泊者だ」
御影先生と柊木先生と九条…まぁ俺か、この三人の部屋がそこなのか。なるほどなるほど…って
「はぁぁぁぁ!!?!??!」
自分でも驚くぐらいのバカでかい声が上がる。
「うるさいぞ」
「い、いやいやいや!男女の同室はダメって」
「確かにそれもあるが…それ以上に同年代だともっとマズイ。それに泊まる場所が他になった。その結果」
「俺が先生方と同室になった…と」
「あぁ」
そっちの方も結構問題あるんじゃないか?って突っ込もうとしたけど絶対に埒が明かないので黙っておく。
「ついてこい」
「あ、はい…」
『じゃあまた後で』と一言残して御影先生の後ろをついていく、ちなみに俺の部屋の事を聞こうとしていた如月さんを含め俺たちの話を聞いた女子たちの顔がズゥーンっと何か暗くなっていた。
ちなみに旅館の中はとても綺麗だった。歴史を感じる木造建築に最新設備がそろっており、しかも一年生全員プラス教員を泊められる規模も凄い。
てかエアコンが効いててめっちゃ涼しい、もう廊下で寝れるなぁ…。
「ここだ、入れ」
「はい…」
もうハイとしか言えない…ドアに『教員室』と書かれている。まさかここに泊まることになるなんて。
「一応、九条をここに泊める理由が他にもあるんだが…聞くか?」
「…お願いします」
「まず一つが、最悪の場合九条が襲いかかってきても大丈夫という事だ」
「俺ってそんなふうに思われてたんですか!?」
「いや私は絶対ないなと思っている」
「こんなことを聞くのはアレだと思いますが何処からその自信が…?」
ちょっと学園に対する不満が積もっていく。
「次に二つ目、これが重要だ。最初は何とかして個室にしようと思ったが、そうなると就寝時間関係なしに女子たちが押しかけて来るだろう」
「あー…納得です」
「教員の部屋ならおいそれと来れない、というわけでこうなった」
こういう時は…アレか。虎穴に入らずんば虎子を得ずってやつだな。
いやまあ良いんだけどね?俺からすると寝る時間はきちんと寝たい人だし…てかそうなると虎の威を借りる狐ならぬ、教員の威を借りる男子生徒って感じか。
ややこしいけど俺に会うためだけに教員の寝床には近づけない、てか居ないであってほしい。俺のせいで怒られるところとか見たくねぇ…。
そうして部屋の中に入り襖を開ける。中は結構広い間取りで少し懐かしいと感じる畳の部屋に外側の壁が一面窓になっていて外の景色が丸分かりだ。海や木々のコントラストがとても綺麗だ。
「お、おぉ…」
部屋の施設はトイレにバス、洗面所専用の個室もあり…至れり尽くせりだ。
「あと大浴場は九条は特定の時間のみ使用可能だ、旅のしおりに書いてあるだろう」
「17時ですよね」
「あぁ、それと深夜や今朝風呂に入りたくなったら大浴場の従業員に聞いてくれ」
「わかりました」
人生で初めてだ…教員たちと同じ部屋に泊まるなんて。いやまぁ普通、絶対あり得ないからなこんなこと。
「話しておくのはこれくらいか、さて今日は自由時間だ。荷物も置いたし好きにしろ」
「りょ、了解です!」
「それと女子を連れ込む際は一言言え」
「…絶対無いですよ」
小さめなリュックサックに水着と替えの下着にゴーグル、そしてタオルを入れ部屋を出ようとしたが。
「あぁ九条」
「ど、どうしました?」
御影先生に引き止められる。
「夜辺りに教員たちが少々羽目を外すかもしれないが役得だと思えよ?」
「は、はい?」
よく分からないことを言われよく分からないまま部屋から出て、更衣室に向かった。
さっさと着替えていざ海へと行かん!
ーーー
「おぉぉぉぉ…!!」
更衣室で水着に着替えてまず目に入ったのは…空の青と海の青の境目に見える地平線。
やはり美しいと一歩進めるが。
「あっち…!」
やはりというかなんというか砂浜の砂はとてつもなく熱かった。軽く足の裏を焼かれる。
でもこれも何というか懐かしいし、海らしいと言えるだろう。つま先立ちしながら波打ち際へ足を進めていく。あと俺の装備品は黒と白色のサーフパンツに黒のラッシュガード。
時より肌寒くなる時が嫌なので水着用の上着であるラッシュガードも着ておくスタイルだ。
「あ、九条君!」
「秋川さんにみんな、もういたのか」
「ふふん、やっぱり海は一番乗りで楽しまないと」
「元気だな」
「それにしても似合ってるね水着、それと何でラッシュガード?」
「時より起こる肌寒いのが嫌すぎて」
「あー…分かるかも」
歩いていると話しかけられるものだな、全員同学年のクラスメイトだけどね。
とはいえまだ少ない方だ。準備運動して海に飛び込むとしよう!
「ういしょ…」
ぐっぐっと脹脛やアキレス腱をメインに伸ばしていき、腕や背筋を伸ばしていく。
…こんなもんでいいだろ、よし!!ずっとやりたかったことをするか!
助走を付けて海にジャーンプ!
(…あぁ心地いい)
少し口の中に入り、海特有の塩っぽい味と共に海水は程よく冷たい。ゴーグルを付けてもう少し奥へ行ってみよう。おぉ、透き通っている!貝やら魚やら色々居る、クソ防水袋に入れたスマホ持ってくればよかったぜ。
さて、これくらいで海の温度になれたし沖に上がるか。
「はぁ…!」
水中から地上にあがり目いっぱい息を吸う。やはりこういった暑い日の海は最高だ。
顔や目についた海水を手で拭い、一度沖に戻る。あの短時間だけ泳いだだけで女子生徒が一気に増えてきたな。
「春斗さん!」
「フレヤか」
俺の正面に立っていたのはフレヤ。
「ど、どうしましたの?」
「いや初めて会った時も言ったがホント綺麗だな」
「えっ」
「似合ってるよ」
あのスプライトの赤い装甲のせいでフレヤ=赤色っていうイメージがあったが、華やかな青色のビキニに腰に巻かれた…えっと何だっけ…あぁそうだ、パレオだ。元々結構優雅なイメージがあったが水着の優雅さも相まって凄い。
…ただ水着に強調された胸のふくらみが少し目に入るがすぐに視線を逸らす。
「そ、そうですの…春斗さんもお似合いですわ」
「ありがとな…ってか結構大荷物だな、パラソルにシートか?」
「は、はい。実は…その春斗さんにサンオイルを塗ってほしくて」
「さ、さんおいる?」
やばいその辺疎くて分からん…なんだそれ。
ビジョンシステムを立ち上げて検索する。なるほど、日焼け止めとは違い肌を焼くほうなのか。
てか焼く方か…。
「フレヤって小麦色の肌とかにしたいのか?」
「焼きませんわ、というより日焼け止めの方です」
「…ふむ」
様々な種類があるんだな…今後の為にそういった知識も少し勉強しておくか。
「んで何処に塗るんだ?」
「せ、背中のような手の届かないところをお願いしたいですの」
「ま、待ってくれ…それは他の女子に頼んだ方がいいんじゃないか?男の俺が素肌に触れることになるんだぞ!?」
「そ、それでもいいんですの…そ、それに前の約束を忘れたとは言わせませんわよ!」
「うっ!?」
そう、この『約束』。実は前のレベッカと二人きりで行ったショッピングモールの際、あの時の三人の埋め合わせとして『一度だけなら出来る限り願いを叶える』と約束をした。それで何とかなったのだが…まさかここであの約束が使われるとは…!
「わ、わかったわかった…改めて聞くがいいんだな?」
「はい♬」
天女レベルに綺麗な笑顔を見せたのち砂浜にパラソルとシートを敷くと…フレヤはしゅるりとパラオを脱いでいく、何というかその動き、仕草が色っぽくて目をそらす。
「再度聞くが…背中だけだよな?」
「春斗さんがしたいなら前も結構ですわよ?」
「まっ!?せ、背中だけで頼む…」
「ではお願いしますわ」
シーツにうつ伏せで寝っ転がり首の後ろで結んでいたブラの紐を解き、水着の上から胸で押さえる。
「さぁどうぞ」
「…わ、わかった」
紐を解かれた水着はシートとフレヤの身体に挟まれているだけの状態で、無防備な姿を俺に晒し身体で潰され形をゆがめた乳房が脇の下から見えてしまっている。
しかもパレオのお陰でもありそのせいでもあったが下の水着自体の露出度が高く、フレヤのすらりと伸びた脚線が綺麗で…すっごいセクシーだ。
本来であればここで逃げ出したいところだが約束は約束だ、遂行せねば!
サンオイルの容器から左手にオイルを出し、両手に一度馴染ませた。
「じゃ、じゃあ…塗るぞ」
「ど、どうぞ?」
俺は覚悟を決めてフレヤの背中に塗っていった。
…肌、すべすべだな。っていかんいかん!変なことを考えるな俺!!
心頭滅却し、やることを遂行せよ…!
「んん…気持ちいいですわ、春斗さん」
「ふえっ!?あ、ありがとう…」
フレヤの口から妙に色っぽく甘い声が時々漏れているせいで、なんかもう何にも考えられなくなってきた。
よ、よし…塗り終わった。あぁ何かどっと疲れた気がする。
「フレヤ…背中は塗り終わったぞ?」
「…」
「フレヤ?」
返答が返ってこない?
「どうした?」
「その…春斗さん?」
「お、おう!?」
「せっかくですし、私の手の届かない所は全てお願いしてもいいですか?」
「手の届かない所って…!?」
「脚や…お、お尻などを」
いやいやいや!?きゅ、急に何とんでもないこと言っておられるか!?
口調が武士になっちゃったけど、流石にサンオイルを塗るためだけとはいえお尻に触るのはマズいだろ!?
「ふ、フレヤ!流石にそれは」
「何をしている」
「うぉっ!?」
次は俺の背中から別の感触が。
「あ、アナスタシア!?」
「水着を褒めてもらおうとしていたが何をしているんだ」
「えっとその…てか近い!」
現在の状況だがサンオイルが両手についていて変に動けない俺、シートに寝っ転がっているフレヤ、そして俺の背中から抱きついているアナスタシア。
いやもう近いししっちゃかめっちゃかで何から考えたほうがいいのか分からなくなってきた。
「な、何をしていらっしゃいますの!?」
「当たり前だろう、イチャイチャするためだ。男女はこういうことをすると副隊長から教えてもらったぞ。そ、それにおすすめの水着を着てきたのだ…」
「…!!」
背中から抱きついているアナスタシアの方を見ると…白色のスク水のように見えたが若干形状が違う。横っ腹といった所々の箇所が露出していて所々黒色の模様や付属品が付けられていて、いつも銀髪のロングヘアーは束ねられていて葵のようなポニーテールではなくツインテール。
「…可愛いな」
「なっ!?」
「え、あっ!?す、すまん…」
「あ、謝る必要はない!可愛いなら…も、もっとみろ!」
「ばっ馬鹿!近ぇ!」
もう目と鼻の先にアナスタシアの顔と水着が映る。両手はサンオイルで抵抗が出来ない。
「も、もううっ!私を無視して何をイチャイチャ…と?」
怒って体を起こすフレヤ。そうするとどうなるのか、簡単だ。
サンオイルを塗っているときは水着をシートとフレヤの胸で押さえつけていた、つまり体を起こしたことによりシートという押さえは無くなったため、体から離れていた水着はそのまま下に落ちて…
「きゃあぁっ!?」
間一髪、大事なところは見えなかったものの、フレヤは耳を真っ赤に染めて蹲った。
「は、春斗さん…み、見ましたの?」
「見てない見てない!!」
両目を瞑りながら首をぶんぶんと横に振る。
「…ふむ、なぁ春斗」
「ど、どうし…!?」
振り返り目を少し開けてアナスタシアを見ると…肩にかかっていた水着の部分を外側に向かって動かしていく…何が起きるのか一瞬で理解した俺は急いでその両手を押さえた。
「自分をもっと大切にしろッ!!」
「副隊長は大抵の男はこれで悩殺できると言っていたぞ」
「そんな意見を鵜呑みにするな!!すまん!頭冷やしてくる!!」
「は、春斗!?」
「春斗さん!?」
「うわぁぁぁぁぁぁ!!」
真っ白になった頭で導き出した最適解はもう一度海に飛び込み頭を冷やすことだった。
あぁ…海の心地よさに少しずつ落ち着いてきた。よし、そろそろいいだろうと思い陸に上がろうとしたら、両肩辺りを何かに触られる感触が。
「!?」
「やぁ春斗」
「れ、レベッカ!?てか近い…!」
「いいでしょこれくらい」
驚きで両肩の感触しかわかっていなかったが背中にも柔らかい感触が二つ…いやいや変なことは考えるな。
「泳いでいたら春斗を見つけれたし、少しラッキーかもね」
「それはどういう意味だ…?」
「何でもないよ、それよりどうかな?」
「どうって…」
「春斗に選んでもらった水着、改めてみると思うけど似合ってる?」
「あ、あぁ…とても似合ってるよ」
「ふふっ、よかった」
「ぴぃっ!?」
もうほぼ抱きつくような体勢になる、何!?何なの!?今時の子ってここまで距離が近い物なのか!?俺も今時の子だけど流石にここまでは…。
てか、このままだとマズイ!絶対にマズイ!!一度離れねば!
「ちょ、丁度陸に戻ろうとしてたんだけど…」
「なら僕も上がるよ」
そんな訳で二人で陸に戻る、なお距離は変わらずほぼくっついている状態で。
(離れ…られないよねぇ)
ーーー
海で遊んでいるはずなのに海以外で疲れている気がする…。
何というか…今日、全体的にみんなの距離が近い。本当に近い!ほぼくっついているような距離だろっていうレベルだ。
「はぁ…」
「は、春斗?」
「ん?」
すると目の前に葵がいた。
「大丈夫か?疲れているように見えるが」
「まぁ…な、少し疲れているかも、てか水着じゃないのか?」
「う、うむ…」
今、気づいたが葵は水着じゃない、制服だ。確か泳ぎは結構得意なはずだし、泳ぐものだと思っていたんだが…。
「泳がないのか?確か二日目と三日目はほぼ訓練で自由時間はほぼないぞ?」
「いいんだ…ちょっと色々理由があるんだ」
「ふうん?ならしょうがないか」
葵にもそれ相応の理由があるんだろう、変に聞くのもアレだしね。
しかし海に来てから結構遊んでいるつもりだけど…もうちょっと泳ぐとかじゃないアクティビティ的な事をしたいな。
「それっ!」
「あいた」
ポカッと後頭部にダメージ、だがそこまで痛くはなかった。
ぶつかった物を見ると…これはビーチボールか?
「九条君!」
「私たちとビーチバレーしない?」
「おぉ!いいなそれ、ぜひ混ぜてもらおうか!」
投げたのは誰かわからんが…秋川さん、鷹野さん、それとそのお友達かな?クラスメイトじゃないし他クラスの人かも。
「じゃあ葵、ちょっと行ってくる」
「えっ、あ…行ってらっしゃい」
一言残して三人の後についていくと、見事なコートがあった二本の木が突き刺さっていてその間にはネットが。元々あったのかなこれ。
「てか結構人いるな」
「今の対戦を見れば納得できると思うよ?」
「へぇ?」
そう思い今の対戦を見ると、何と『アナスタシア&レベッカ』対『柊木先生&御影先生』だった…意外も意外。
てか結構大人っぽい水着を着用している先生ペア容赦ねぇな!?何点マッチか分からないけど得点は8対4…レベッカとアナスタシアの方が負けてるのか。
「…む?」
「げっ」
ふと御影先生と目が合った。
「丁度いい、おい九条レベッカとアナスタシアの方に入れ」
「えぇ…」
「お遊びルールと言えど賭け事があるしな、フェアじゃないと納得できないだろう」
「賭け?」
「いいから入れ」
「うっす…」
結局何のことなのか分からないまま俺はレベッカとアナスタシアの方のチームに入った。
「…えっと二人とも?」
「春斗、協力して。この戦い絶対に勝たないと」
「あぁそうだ、頼むぞ春斗」
トライ・ロワイヤルの前の救出作戦並みの緊張感…この二人、本気だ。
何をそこまで二人を滾らせるのだろうか、御影先生の言っていた『賭け』ってやつか?
でもまぁ勝負だしな、ここは俺も本気でやらないと!
「行きますよ~」
柊木先生のジャンピングサーブ…って早っ!?さっきの口調とは裏腹にスピードも角度も申し分ない!だが、腕が使えないなら足を使えばいいじゃない!
「ふん!」
正直早すぎて反応が出来なかったので脚でいっただけなんだけどね。
「レベッカ!」
「わかった!」
俺が蹴ったボールをレベッカがアナスタシアに向かってトスをした瞬間、アナスタシアのスパイク。これは見事なコンビネーション!一点取れたろ!
「甘い!」
「あれ取るのかよ!?」
なんと御影先生が動き、あの華麗なコンビネーションのスパイクを正面から受け止めた。いやどうなってんだよ…。
「来るぞ春斗!構えろ!」
「構えろって…?」
前を見た瞬間、御影先生のスパイクを認識したその刹那。一瞬のうちに目の前に広がるボール。
(しまっ)
動こうとしたときにはもう遅く…顔面に衝撃が入る。
「ぶっ!?」
衝撃をくらったと認識したが、意識が揺らぎ足腰に力が入らなくなっていき…俺は砂浜の上で倒れ意識を失った。
(これが俗にいうK.O.か…!)
…俺が目を覚ましたのは自由時間が終わった丁度、そのまま全員で夕飯となった。
ちなみに夕飯はお刺身にお味噌汁といったザ・和食。この時ちょっと面白い?事が起きたんだが…俺の両隣に座ったアナスタシアとフレヤの反応なんだが…。
『お、お魚を生で食べますの!?』
『あぁ美味いぞ、それに日本のお刺身とかお寿司とかだって生だしな』
『しょ、正気ですの…?』
『そこまで言われるか!?』
これがフレヤの反応だ。やはり他国からしたら生で食材を食べるのは珍しいのだろうか?TKGもそうだし、あと生じゃないけど納豆とか?アレだって発酵食品だしね。
『お、アナスタシアは普通に食べているな』
『この程度で死なない、安心しろ。私はジャングルや他の場所の訓練で生の食材に対する耐性は持っているからな』
『流石に死なないぞ…いや一部怪しいのはいるが』
『それは副隊長から聞いたぞ!日本には生死を伴うロシアンルーレットのような白い食べ物があると!』
『…?あ、餅か』
うーん…何というか、なんか違うんだよな…。
いや日本の知識としてはあっているといえばあっているんだが根本が違いすぎる、お餅を生死を伴うロシアンルーレットのような食べ物っていうのは初めて聞いた。
確かに餅は死にかけるけど…。
あとレベッカは日本文化にめっちゃ馴染んでいた。ちなみに対面。
『はむ…うん、美味しい。これがお刺身なんだね』
『おぉ美味さが分かるか、てかレベッカはフォークなんだな』
『ちょっとお箸が苦手で…』
『それはしょうがない』
こういう外国人用に箸の他にフォークやスプーンもある。この辺の気遣いは流石というべきか。
「ふぅ…あぁさっぱり、あんな広々と使える露天風呂は初めてだったぜ」
今俺は風呂上がりだ。女子生徒たちが入り終わりガランとした露天風呂を一人で有意義に使った、景色も絶景だったしね。
しかもあんなおいしい刺身の後に温泉とか贅沢にもほどがあるなと呑気に過ごしていた
誤字脱字、語彙力がほぼ皆無に等しいのでミス等がありましたらご報告お願いします
感想も待っていますので気軽にどうぞ!
超絶不定期更新ですがご了承ください…




