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インフィニティ・ギア  作者: 雨乃時雨
プロローグ~第一部
21/122

第19話 海への支度

次の日の朝、俺は激痛でビリビリする身体を引きずりながら教室に向かっていた。

ちなみに全身シップだらけで今クッソ寒い、貼りすぎたと心の中で後悔している。


「マジ痛い…」


他から見たら足腰は生まれたての小鹿並みにプルプルしていて、移動速度はナメクジ並みに歩くのが遅い男子生徒が壁に寄りかかりながら歩いているように見えるだろう。その想像を絶するくらいの痛みが全身に走っているからな!?


「九条、おはよ…う」

「あ、御影先生…おはようございます」

「何をしてるんだ?」

「全身筋肉痛が痛すぎてまともに歩けましぇん…」


実際そうだ。足を地面に付けるたびに電撃が足先から脊髄まで走り頭の中に痛いって叫ぶ。


「…辛そうだな、どれ運んでやろうか?」

「流石にそれは…ちょっと」

「そうか、なら頑張れ」

「はいぃ…」


そうして御影先生はコツコツとハイヒールの音を鳴らしながら教室へ向かっていった。

そういえばこの学園上履きないんだよね、ほぼ指定の靴。体育館になったらまた別のシューズになるけど。でも廊下や教室はピッカピカだ…この学園の清掃員さんに感謝だ、男性居なかったけど!

こうなったら無理やりにでも行くか!教室近いし!と思い足を思い切り前に出した。


「ミ゜ッ!!?」


その時初めて俺は自分自身ですら聞いたことのない声が口から出てきたと同時に信じられないレベルの激痛が全身を廻ったのは言うまでもない。


「ォ”ォ”ォ”ォ”ッ…!」


しかし俺は我慢して走った!教室までとにかく走った!

全身の痛みなんぞ気にせず兎に角走り、教室へ入り即座に自分の席に座った。


「は、春斗大丈夫?」

「!”@;+:・。、^~-$%>△<…!!」

「何て言ってるかわからないよ…」


机に倒れながら後ろからレベッカに心配される。現在進行形で痛みに耐えている最中だ、反動が痛すぎる。

ちなみにクラスメイト達に「何事!?」みたいな顔で見られた。解せぬ。痛みに耐えて走ってきたのに。

痛みに耐えている間に時間は経っていき、チャイムが鳴り響きSHRが始まった。


「今日は通常通りの授業だ、特に時間割変更もない。だが一応お前たちは高校生だ、赤点は取るなよ」


一応この学園にも中間、期末テストは存在する。だが英語のみ存在しない、何故か?そもそもこの学園は多国籍の学園。元々英語を使う祖国の方々からしたら今更こんなこと聞くなみたいな感じになるため英語のみ無し。ただAGの専門知識やその実技。数学、古典などなどは普通にある。ちなみにここで赤点を取るとどうなると思う?

夏休みが補修地獄と化す…らしい。上級生からの盗み聞きで知った情報だけどね。


「それと来週は郊外特別実習だ。全員きちんと準備をして忘れ物などないように、三日間学園から離れることになるから忘れ物しましたーなんてあったらとんでもないことになる。それと自由時間で羽目を外しすぎるなよ」


そう、何せもう7月の頭に差し掛かっている。

もう温かいと言う日は無くなり、暑い日が続く中での校外学習…もとい臨海学校。三日間の実習期間のうちの初日はまるまる自由時間となり、そこはもうはっちゃけ放題。ちなみに臨海学校なので海が近場にある。それを聞けば女子生徒たちがそこへ行って咲き乱れ遊び始める…既に俺のクラスメイトや他のクラスの女子たちのテンションがぶち上っているので、もうヤバいことになるのは間違いない。

だってさぁ!男は俺だけなんだよ!?しかも貸しきりらしいし、もう何対何の比率で男女別れるか分からん!

それと俺は今回水着は買わない。

実は中学の頃に買ったんだよ2着。一着はピッタリだったんだけど…もう一着が配送側のミスで一回り大きい水着が届いた。

んでそれを昨日の夜、変な時間に目が覚めたので着てみたら意外にもピッタリ。

そんなわけで買う必要が無くなったというわけだ。


「ではSHRを終わりにする、全員きちんと授業を受けるように」

「あの…御影先生」

「何だ?」

「柊木先生は?」


俺の隣の鷹野さんが質問する。そういえば…居ないな、どうしたんだろう。


「柊木先生なら先に校外学習の現地視察に向かっているので今日は不在だ」


確かにそれならしょうがないか…。てかいいなぁ、生徒からすると一足先に行くのって結構羨ましく感じるところもある。でも生徒の為の視察だもんな、その辺は柊木先生に感謝だ。


「それと九条」

「は、はい!」

「今日は柊木先生は居ない、もしクラスメイトが暴走したときは手伝え」

「はい…?」


クラスメイトが暴走なんてことあるのか!?

と頭の中の疑問は解決されることも無く、そのまま授業に入った。


ーーー


「オ”ワ”ッ”タ”」

「は、春斗大丈夫?」

「ウ”イ”」


授業が全て終わった放課後、何故俺はここまで声がつぶれているのか?

簡単だ、確かにクラスメイトは暴走した。いや何というか女子高のテンションというかなんというか…とにかく俺が男子だってことを自覚してほしい。

授業中は大丈夫だが、問題はその授業中の休憩時間だ。もうめっちゃストレートに自分に似合いそうな水着の写真とかを共有し合っている。何故か俺にもだ、男にとっては眼福かもしれないが俺にしては目に毒だ、何処を向けばいいのか分からなくなる。

てかなんで俺に聞くんだ…しかもさ?中にはかなりきわどいやつもあったりしたから、その都度心配はしていたんだ。んで授業の休憩時間はこれとして食堂も変わらずめっちゃ聞かれた、一年生のみで行くはずなのに上級生とかにも聞かれててんてこ舞い。

その結果、筋肉痛にさらなるダメージを加えて若干声が枯れて俺の身体はズタボロでございます。


「ん”ん”!ごめんな、変なところ見せて」

「何もすごい引っ張りだこだったね…春斗は」

「??」


話しかけてきたがほんの少し機嫌が悪そうになったレベッカ。俺が何をしたっていうんだ。


「そういえばレベッカは買い物に行かないのか?もうクラスのほとんどがショッピングモールに向かったらしいが…」


もうみんなテンション上がりすぎてなのか準備を開始している。まぁ早めの準備の方が後々楽だしそれは否定しない。でもこんなクラスが一瞬のうちにガランとすることあるか?

ちなみにフレヤとアナスタシアは…何処かへ行った。ちょっとそこまで見れてない、何せ身体が余りにも痛かったもんでな。


「そ、それなんだけどね?」


急にレベッカがもじもじしながら何かを言い淀む。


「こ、今週の日曜日って空いてるかな…?」

「俺はこれと言ってないぞ、何もなければ特訓するつもりだったし」

「そ、それなら!良かったら…良かったらで良いんだけど春斗と一緒に買い物に行きたいの」

「何を買うんだ?」

「み、水着を…」


水着を買うのか…でも何故俺を?俺以上の適任なんて山ほどいる。


「それはいいが…何故俺を?」

「…乙女には色々秘密があるんだよ」

「な、何かすまん」


一瞬レベッカの瞳の先に何かを感じて反射的に謝ってしまった。


「てか水着な…俺は前の一回り大きいサイズのやつあるし今回は買う必要ないかな」

「僕は…その、最近は買ってなかったし」

「あー…ごめん」


そういえばそうだった、危機を脱して思い出したけどブルーノ社の社長である父にほぼ拘束させられてたもんな。あ、てかあのブルーノ社ね、潰れたんだ。リバイブと言った世界に大量にある量産機兼訓練機の作成元だけど今のCEOのせいで様々な問題が起きて政府からの支援も完全に止められて生産の特許も他の会社に移行し…今日の昼に潰れたんだとよ、食堂のモニターに映ったニュースでやってた。


「なら行くか、他には誰か誘うか?」

「…むー」


おっと?急にレベッカの頬が膨らんできたぞ。これは…誰も誘っちゃダメなのか?


「えっと…二人で行くか?」

「うん!」


おぉ一気に顔が明るくなったぞ、ほぼ圧力を受けて二人で行くか言わされた感あるけど…なんて言ったらアルタースイッチされてボディブローされそう。

そんなわけで今週末の日曜日はレベッカと買い物に行くことになった。内心少し楽しみである。何せ知らないところのショッピングモールに行くことになりそうなのでね、どんなものがあるのだろうか。


ーーー


週末の日曜日、天気は素晴らしいほどに快晴、そして少々暑い。


「見事に晴れたな…昨日とか雨凄かったのに」

「そ、そうだね!」

「…さっきからどうした?様子がおかしいけど」

「な、何でもないよ?」


今日はこのレベッカと一緒に臨海学校の買い出し、実を言うと俺も買い忘れたものが所々あった、でも今回の買い物のメインはレベッカの水着だから…俺のはついでだついで。

今はモノレールに乗りながら空を見つつレベッカと話していたんだが…何というかそそっかしい。居心地悪いのか?それともイタリアにはこういうモノレールがないとか?

…いやそもそも乗ったことが稀である可能性もあるのか。うーむ、難しい。

ちなみにレベッカの服装なんだがいつもの制服とは違い、ホワイトのショートパンツに少し袖が捲られている薄いベージュのシャツ、そしてサンダルだ。いいね、こういうさわやかな感じでとっても似合っている。やはり可愛いな。


「ならいいが、体調が悪かったりしたら直ぐに言ってくれよ?」

「う、うん…大丈夫?」

「本当か?心なしか顔が赤いように見えるが…」

「だ、大丈夫大丈夫!あ、あはは…」

「??」


ますます様子が変になっていった、本当に大丈夫か…?


「あとずっと気になっていたんだが…二回目になるけどどうして俺を?同級生とか女子はいっぱいいたしそっちに選んでもらった方が良かった気がするが」

「そ、それはその…ほら!異性の意見ていうのも必要じゃない?」

「いや臨海学校の宿泊施設の近くの一部の海はうちの貸し切りだし異性は俺しかいないぞ」

「…だから聞きたいのに」

「ん?何か言ったか?」

「ううん、なんでもないよ…」


また小さく俯き始めた、本当にどうしたんだレベッカは…てか目も合わせてくれないし。


◇◇◇


(わ、わぁぁぁ!!すっごく近いよ…ど、どうしよう勇気をふり絞って何とか二人きりになれたのに…!!)


当の本人であるレベッカというと、とてつもないくらい心臓の鼓動を奏でており、これまで以上にドキドキしていた。心から願った二人きりというシチュエーション、しかもデートにも思えてくる状況。今、レベッカは想い人である空を見上げる春斗の横顔をチラチラ見つつこれからどうすればよいのかと考え込んでいた。


(い、いつもと違う服装だからより一層…待って僕の恰好変じゃないよね!?)


今日の九条の服装は黒のスタンダードサイズのシャツで中には白のTシャツ、下は黒のジーパンにスニーカーと黒を基調としたファッション。レベッカの目には直視できないくらいぶっ刺さっていた。


(あ、でも私服で男女でショッピングモールで買い物って…もうデートだよねぇ、えへへ。て、手とかつないじゃうのかな!?)


頭の中で妄想を膨らませる、まだ高校生の立派な乙女なのである。妄想していても罰は当たらない。


「レベッカ?」

「ふえっ!?」


急に目の前に春斗の顔が現れ、変な声が出てしまったレベッカ。内心恥ずかしいと思ってしまう。


「ど、どうしたの?」

「どうしたのっていうかもう着いたぞ。ほら行こう」

「う、うん!」


そうして二人してモノレールから降りてショッピングモールへ足を進めた。


◇◇◇


「って結構多いな…日曜だし人気なショッピングモールなだけある」


駅前のショッピングモール、そこの一階入口辺りをレベッカと歩く。

交通網の中心かつ地下鉄やバス、タクシーと何でもござれ、基本的にここに来れば買えないものはないといっても過言ではないくらいの和・洋のお店の数々。もちろん飲食もだ、色々ある、和食も洋食も中華も何でもアリ。もはや某ロボットのポケットの中身レベルに店、飲食店、子供やお年寄りも遊べるレジャー施設が広がる人気ショッピングモール『レ・ゾーン』。

もうすごい。正直、圧巻だ。俺の地元のショッピングモールと全然違う。

天と地…いや月とすっぽんくらい違う。


「す、凄いな…俺の地元と違う過ぎる」

「そんなに違うの?」

「地元の方はここまで店はないぞ、ってはぐれちまうな」

「そ、そうだね…ここまで人が多いと」

「…ちょっとごめんよ」

「え?」


本当に人が多すぎてこのままじゃはぐれそうだなと思いレベッカの手を握る。

握った手はとても小さくて俺のゴツゴツした手とは違う感覚、これが女子の手なんだなと少し思ってしまう。


(手をつなぐ…)


ほんの少し、昔の『元カノ』を思い出す。

アイツは今元気にしてるんだろうか…って女々しいな、俺。もう思い出したくねぇ。


「は、春斗?」

「あぁすまん、じゃあ早速水着売り場に行くか?」

「う、うん!えっとここからどっちに?」

「スマホのマップを見る感じ、二階みたいだエスカレーターから行くか」

「うん!い、行こっ!」


…なんか近くね?とは思ったが実際これくらいの近さでいないとはぐれてしまいそうだ。

そんなわけで手をつなぎながら二人で二階の水着売り場へと向かう。


ーーー


「「「…」」」


二階へ向かっていく春斗とレベッカ。その姿を見つめている三人の影。

二人がエスカレーターから二階に上がっていくのを確認した瞬間、近くのベンチに座り見つめる。一人目は金髪のロングヘア、二人目は黒髪のポニーテール、三人目は銀髪のロングヘア。

ご存じの通りフレヤ、葵、アナスタシアだ。


「…なぁ」

「…どうしましたの?」

「…あれは何だ?」

「…デートと言うやつではないか?」

「…そうですわね」

「…しかも手を握っているぞ」


もう明らかに三人の瞳のハイライトは何処かへ消えていき、ヤンデレのようなハイライトオフ状態で二人を見ている。フレヤは明らかに目が笑っていない笑顔のままペットボトルを握りつぶし、葵は先陣を切るサムライかのごとく殺気を放ち恨めしそうに二人を見つめ、アナスタシアは手首を回し骨を鳴らしていた。


「…殺すか」

「…いいですわね、いいレクイエムが奏でられそうですわ。ふふっうふふふふふふふふっ」

「…刀の錆にしてくれよう」


彼女らの十代の乙女の純情(殺意)が武器となりそうだ、明らかにショッピングモールの中でひと際ドス黒い雰囲気が出ている。


「…まずは追跡ののち言い分を聞きましょう、話はそれからでも遅くないですわ」

「…あぁ、そうだな言い訳くらい聞いてやろう」

「…」


アナスタシアに至ってはもう何も言っていない。いつナイフを抜いてもおかしくないレベルに殺意マシマシ。

さて、何故彼女らがここにいるのか?それは四日前の三者戦闘の次の日の放課後。

フレヤ、葵、アナスタシア、レベッカの思考回路は一致していて春斗に水着を選んでもらいデートをしようと思っていた。そこで授業が終わった際に春斗に話しかけようと思った居たのだがフレヤは同クラスの女子たちに連れられて先にショッピングモールへ行き、アナスタシアは御影先生に呼ばれ、葵は二組の担任の先生に呼ばれてしまい誘えず、先に誘えたのはレベッカのみ。それでその日の夜、三人そろって春斗を誘ってみたところ…。


『あー…すまん、日曜日は予定があるんだ』


そう断られ…三人そろって先を越されたと絶望し、誘った張本人がレベッカだと知ると抜け駆けさせないぞと言わんばかりに付けていた。


「…では行きましょうか」

「…あぁ」

「…了解」


そうして三人は歩き始めた…彼らの元へ。


ーーー


「ここかぁ…結構デカいな」

「男女どちらともに沢山の水着があるんだって」

「へぇ、それはすごい」


水着売り場にやってきたのだが…思った以上に、いや想像を超えた大きさだった。

夏が近い影響で様々な水着が売られている。


「えっと春斗は買わないの?」

「あぁ既にあるしな、それに今回の買い物のメインはレベッカの水着だろう?」

「そ、そうだけど…春斗って僕の水着見てみたい?」


唐突に変な質問が来たな、見てみたいか…。


「それはそうだな。見てみたいし、一緒に泳ぎたいな。俺も海は久々だしね」

「そ、そうなんだ…」


そうして二人して女性の水着売り場に来た。所々男性は居るが殆ど女性だ、まぁ当たり前か。てか種類凄いな…棚から棚まで水着でびっしり。


「僕に合いそうなのは…あ、これはどう?」


そういってハンガーから一つの水着を取り出した。


「…」


何というか俺は無言だった、何故か?急にみせられたときにどのような反応をしたらいいのか分からなくなっていた。大体こういうのは『似合ってるよ』の一言を添えればいいんだが…正直レベッカならどれでも似合いそうだなと思う。


「春斗?」

「あぁすまん…何というかさ、俺からしたらレベッカは何でも似合いそうだし何も言えない」

「え、ええっ!?」

「驚かれても…事実だしな」

「そ、そうなんだ…えへへ」


驚いた声を上げたと同時に少しずつ俯いていきもじもじとし始めた。しまった言葉を間違えたか?


「…!」


一応、レベッカに似合いそうな水着はーっと周囲を見回し、探していると…一つ、目に入り手に取る。

セパレートとワンピースの間くらいの水着、色はイエローでなんかこう似合いそうな感じを感じ取った。


「これとかいいんじゃないか?」

「!」

「何というか俺の勝手なイメージだけど、黄色とか似合いそうな気がする」

「そ、そうかな…?」

「…マズかったか?」

「い、いや!ちょっとびっくりしただけだよ、じゃあ試着してみようかな」


そうしてそれも試着室の近くまで連れていかれた。


「じゃあ着てみるね」

「あぁ、椅子で座って待ってる」


試着室のカーテンの前にあった椅子に座りレベッカが着替え終わるのを待つ。

スマホを見て軽く時間の確認と連絡がないかのチェック。


「…?」


すると一つ目に入った光景が見えた。

レベッカの隣じゃないんだが…別の更衣室に男性が三名入っていくのが見える。同じ更衣室に三人も入ることがあるのか?と一瞬気になった。


(…一応撮っとくか)


そのままスマホの動画で三人を撮影する。


「は、春斗…どうかな?」

「!」


撮影しているとレベッカが水着に着替えていた。

正直な俺の感想は…


「めっちゃ似合ってる、可愛い」

「え?」


とても似合っていた。凄く可愛いし綺麗だ。


「そ、そうだよね。僕も着た時に思った以上に似合っててびっくりしたの」

「よかった…女性の水着選びとか初めてだしちょっと緊張したんだよな」

「は、初めてなんだ…」


急にレベッカの表情がへにゃっとなりすっごい笑顔になった。

な、なんだ…また何か間違えたか?いやでも笑ってるし…むしろ正解なのか?

こういう女性とのお出かけは選択をミスればとんでもないことになると聞いたことあるしな。


「さてと、他にも見るか?」

「うんん、これでいい」

「そ、それでいいのか?俺が選んだ奴だし、他にも色々あるぞ?」

「これでいいの、気に入ったしね」


な、なんだかんだ言って俺の選んだ水着はレベッカに気に入られたようだ、めっちゃ安心。

そうしてレベッカはまた試着室のカーテンをしめて着替え始めたのだろう。


(…)


そのレベッカと会話をしていた間もスマホの撮影は止めてなかった。その試着室の男性3人は更衣室から出ていき、撮影を止めて動画を確認する。

マジで何してたんだ?様子は少しニヤッと笑ってるけど。


「お待たせ~、ってどうしたの?」

「…いや何でもない」

「ふーん?」


そうして二人して更衣室から出ようとするが…。


「…あー、そういう事ね」

「どうしたの?」


さっきの男性三人が入っていた更衣室の中をチラッと見て確信した。

更衣室の隅に小さな穴が空いた箱があった、十中八九、爆弾かカメラだろう。

ちょうどそこに入ろうとした女子高生二人組が居たのだが…


「ごめんなさい、ちょっといいですか?」

「え、あっはい?」


静止し俺が先に更衣室に入り、端に置いてあった箱を持ち中身を確認する。

…やっぱりか。


「春斗、どうしたの?」

「あぁ実はさっきレベッカが着替えてる時にここの更衣室に三人の男性が入っていったのを見たんだ、ほら」

「…本当だ、でもどうしてその箱を?」

「これ、カメラ入ってる」

「えっ!?」


レベッカに動画を見せたのち箱を開くと…小型カメラが入っていた。


「本当だ…!」

「はぁ…同じ男として少し恥ずかしいよ」


そしてそのまま更衣室前にいた店員さんに事の顛末を話した。

すぐさま警備員が駆け付け俺の動画のデータや証拠であるカメラの入った箱を渡し、そこの更衣室や隣接した更衣室が使用禁止になった。

店員からしたらいい迷惑だろう、ほぼ業務執行妨害だ。


「まぁ残りは警備員達に任せて俺たちは会計するか」

「うん…ってちょっと!?」


会計するかと言いながらレベッカの握るハンガーにかかった水着諸共を奪い取る。


「んじゃちょっと行ってくる」

「え、流石に僕が…」

「いいよ別に、ここはひとつ男として俺が払うよ」

「え、えぇぇ…!?」


止められるより先にレジに向かい、さっさと会計した。

多少高かったがまぁいい、俺はあまりお金は使わない人だし一応IGD学園は軍に所属しているわけじゃないけど給付金があるからそれで買った。

そしてそのまま店から出てレベッカを探していると…


「君可愛いねぇ今一人?」

「人を待っていますので…」

「でも今は一人じゃん、ねぇ今から俺たちと遊ばない?」


ナンパされてた。まぁだよねぇ…正直レベッカって結構綺麗だし話しかける男子もそりゃいるか。でも今回は俺の連れだし止めよう。


「すみません、俺の連れに何か用ですか?」

「は、春斗!?」

「は?あんた誰だよ」

「コイツの連れです、それ以上でもそれ以下でもない」


…ん?てかこの三人何処かで見たことあるような?


「アンタには聞いてねぇ!」


いや聞いたろ、誰だよって。

あっ、待って?何か見たことあるなーって思い、先程撮った動画を確認する。

…まんまじゃねぇか。服装とかそのままだし、顔も似てる気がする。


「なぁ」

「あ?」

「ここにいていいのか?」


そうして俺が先程とった動画を三人に見せると二人はみるみるうちに顔を青ざめていき、一人は顔を赤くしていった。


「テメェ…!!」


どうやら図星のようだ。犯人は現場に戻ってくるとよく聞くが実際に起きるものなんだな。

てか怒りで真っ赤になっていったのか、失敬恥ずかしくて真っ赤にしたのかと思った。


「怒ったところでどうにもならんぞ、自業自得だ」

「クソガァァァ!!」

「!」


怒りのまま俺に向かって拳を振ってくると思ったが、狙いはレベッカだったようで…俺はその拳を受け止めた。


「はっ!?」

「…自分自身の罪を理解しようとせず女に手を出すのか?アンタ最ッ高にダセェなぁ!!」

「えっ」

「ふん!」

「がはっ!?」


拳を弾いてみぞおちに膝蹴りし、悶絶したのを確認して胸倉を掴んで立ち上がらせた。


「何座ってんだ…?」

「ひ、ひぃぃ!?」

「おい、テメェら」

「は、はい!」

「店の中に来い。お前たちを警備員に渡す、いいな?」

「えっと…」

「なんか言ったか?」

「な、なんでもないです!!」


一人は無理やり、二人は諦めたのかとぼとぼついてきて…更衣室にカメラが設置された事件は5分足らずで解決した。


「余計な手間かけさせやがって」

「ご、ごめんね春斗?僕がちゃんと断ればよかったのに…」

「レベッカは悪くないし気にすんな、それと…はい」


そうして買った水着を渡した。


「ありがとうね…本当は自分の物だから僕が払うべきなのに」

「だから気にすんなって、レベッカは真面目だな」


さてと、水着は買い終わったし…別のところに向かうか、てかそろそろお昼だし飯行くのもありだな。


「九条」

「ぴっ!?」


と急に後ろから声をかけられ変な声が出てしまう、てか今九条って…。


「こんにちは九条君」

「ひ、柊木先生に御影先生!?」

「…ふん」


俺より先にレベッカが反応して俺の真後ろに居る人を教えてくれた。柊木先生と御影先生だ


「あー、びっくりした…ってどうして先生方がここに?」

「もうすぐ臨海学校ですので私たちも水着を買いに来たんです。あ、それと今は学校でも職務中でもないので先生は付けなくてもいいですよ?」

「付けますよ…」


これでいきなり柊木さんとか御影さんとか言ってもより一層違和感が増すだけだろうに。

てか先生たちも私服…とはいかないんだな、御影先生は変わらずスーツだ、ぴしっとしている。柊木先生はワンピースでいいのか?大人らしい綺麗さがある。


「先生たちはもう水着を買ったんですか?」

「はい!それと見てましたよ九条君」

「な、何をでしょうか?」

「とぼけるな、ナンパを撃退し事件を解決したじゃないか」


思った以上にがっつり見られてたぁァァァ!!?てかいつから見てた!?


「かっこよかったですよ?」

「まぁよかったんじゃないか?男としてもいい行動をしていたしな、ただ膝蹴りはやりすぎだ」

「す、すみません…」

「それにお前が助けた女子高生二人が私たちが担任と知った瞬間お前の事を聞きたがっていたぞ」

「…ふーん」

「痛い痛い…」


レベッカの機嫌がまた少し悪くなり俺の横っ腹をつねる。普通に痛いので止めてほしい。


「それと後ろの三人はどうした?」

「後ろ?」


御影先生が指をさした方向へ目を向けると…。


「…隠しきれてないぞー」


全く隠れ切れていないフレヤ、葵、アナスタシアの変装姿(サングラスのみ装着)で俺の後ろにいた。


「…出るタイミングを図っていましたの」

「てか居るなら連絡くれ…痛い痛い!!」

「…僕は二人っきりがよかったのに」

「ちょ、ちょっと待ってレベッカ痛い!」


レベッカのつねる威力が上がりもはや俺の横っ腹を引きちぎろうと言わんばかりにつねってくる。


「も、元はと言えば春斗が私たち三人の誘いを受けなかったのが悪い!」

「そうだ!更には二人きりでデートなど…おい、春斗!私ともしろ!」

「ずるいですわ!春斗さん、これから二人でショッピングモールを回りませんこと?」

「待ってよ!元々は僕たち二人でのショッピングなのに!」

「あ、あんまり騒ぐなよ!?」


4人をなだめながら何とかしようとするが、一向に決まるはずもないので妥協案で5人で行こうと提案して許諾された。

ちなみに『優柔不断(へたれ)』と言われた、解せぬ…というか、ここで二人きりを選ぶと俺が処される未来しか見えないんだよ。


「青春ですね~」

「まぁ、楽しそうではあるな」

「はい!では私たちも買い物の続きをしましょうか」

「…あぁ」

誤字脱字、語彙力がほぼ皆無に等しいのでミス等がありましたらご報告お願いします


感想も待っていますので気軽にどうぞ!


超絶不定期更新ですがご了承ください…

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 拳を弾いて 溝辺りに膝蹴りし、悶絶した… → みぞおち(鳩尾)では? 警備員に 明け渡す → 引き渡すでは? 確か、あけわたすのは「部屋」や「家」だと…
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