第16話 救出作戦開始
次の日、トライ・ロワイヤル当日。いつもの学園生活から一変、昨日以上にとてつもなく忙しい日々に早変わり。第一回戦も始まる直前ですら生徒や教員、関係者たちが雑務に机上の整理、来賓のご案内や警備の強化、不審物に不審者の警戒諸々…てかブルーノ社のトラックが咎められなかったのって何でだ?やっぱりアレか?会社の物だから詳しく調べられない的な感じかな。
んで今俺がいるのは第2アリーナ前。例によりAGスーツを着用した状態で上にジャージを着ている。今日は殆どの教員、生徒たちが第1、第2、第3アリーナに集まっているので更衣室や観客席は人でいっぱいだ。そんな状況で俺が着替えられるわけないだろう…というわけで私室で既に着替えておいたというわけだ。
「…」
黒鉄が投影化した時計を見て確認する。現時刻は09:26、第1回戦が始まるのは9時半だ。さっきも言ったが殆どの生徒や教員たちは校舎には居らずほぼ全員各アリーナに居る。この状況だからこそ声を上げて『無人機が来るぞー!』とか言いたいが…言えない状況なので何とも焦れったい。
『2人とも聞こえる?』
『あぁ』
「こっちも聞こえる」
レベッカからの確認通信が入る。元々通信するタイミングは各アリーナの第1回戦が開始した瞬間、レベッカから連絡がきたということは第3アリーナの第1回戦が始まったようだ。ほんの少しだけ早いな。
『一応だ、作戦の最後のブリーフィングをしておく』
俺たちの作戦の最終確認が始まった。
今回の作戦内容は各アリーナに設置された警備用無人機『ブレイザー』の殲滅及びレベッカのお母さんである『ラウラ・ブルーノ』の救出。
本作戦は教員や生徒たちに知られてはいけない秘密裏の作戦。そして最優先事項は救出、最悪ブレイザーの殲滅は後回しでもいい。作戦を遂行した後、第3アリーナに集合期限は第5試合の始まる10:20までとする…これが俺たちの作戦だ。
『一応、我がMS部隊にも声はかけてある。バックアップや戦況の変化はリアルタイムで伝えてくれるぞ』
「最高のバックアップだな」
『…では二人とも準備は万全か?』
『いつでも大丈夫、春斗は?』
「俺も準備できてる、いつでも行けるぞ」
『よし…作戦開始!!』
『「了解!」』
通信を受け取り、走り出す。
俺はまず黒鉄を展開せずに、出来る限り徒歩でトラックまで向かう。いきなり第2アリーナ前で展開したら色々な人にバレてとんでもない事になりそうなのでね。
(…アレか)
茂みに隠れながら進んでいると3台並んでいるトラックを確認した。あの中にブレイザーが?何機いるかも分からないし、想定以上居ると仮定して戦った方がよさそうだ。覚悟を決めよう。
『こちらアナスタシア、2機撃破』
『こっちも1機撃破、このままいくよ』
おっと…どちらも、もう戦い始めているようだ。俺も続くとしよう。
そう思った矢先
「!」
トラックからプシューっと空気が抜ける音が聞こえ、コンテナが開いていく。
3機の黒い機体、あれがブレイザーか。AGとは違い全身フルアーマーの無人機、アサルトライフルとブレードを持っているな。
あと何で急に動き出したのか?恐らく俺に反応したわけではなく、戦っている2人に反応してこっちのブレイザーが動き始めたと思っている。
なら好都合!
「黒鉄、展開!」
ある程度近づけたのでトラックに向かって走り込み黒鉄を展開。そのまま不意打ちで横になぎ払い、首元を斬る!
(意外と…脆い?)
俺の近接ブレードでは切断は不可能だが、装甲の破壊やたたっ斬る事は出来る。だが一撃で装甲諸共粉砕され、停止した。弱点は分からないけど、とりあえず3機まとめて撃破できたので良しとしよう!
『こちらアナスタシア、3台のトラックに積み込まれたブレイザーの殲滅完了。だが救出目的は見つからず』
『こっちもだよ、全ての殲滅は終わったけどお母さんが居ない』
「こっちはまだ1台分しか終わってないが…明らかに脆いし、何かおかしくないか?」
『あぁ…まさかとは思うがブラフか?1度、MS部隊に連絡をつける』
「了解」
とりあえず俺は破壊を優先しよう、といっても…残りのトラック二台に乗っているブレイザーはそもそも動いていない。動き始めたのは1台のトラックにいたブレイザー3機のみだ。
何か、おかしい。
残り2台のトラックのコンテナをこじ開けてブレイザーを懇切丁寧に破壊していると…
『通達だ。今、入った情報によると校舎方面と第4アリーナに新しいトラックと装甲車が向かっている』
アナスタシアからの通達を受け取る。
増援か、でも校舎と第4アリーナ…?何故そんなところに?
『何台居るの?』
『どちらともトラック二台、装甲車二台だ』
「なら第4は俺が行く、校舎は二人で行ってくれ。もしかしたらまだ教員か生徒がいるかもしれない」
『了解、アナスタシアと僕で校舎方面に向かう』
「任せた」
第2アリーナからインパクトブーストで第4アリーナへ向かう。
(なぜ、第4アリーナに?)
ずっと考えていた、何故第4アリーナに向かうのか。
第4アリーナは校舎から1番遠いし、何より試合会場は第1~第3アリーナまでだ。全く関係の無いアリーナに向かう必要なんてあるのか?
(居た…)
トラックと装甲車を見つけた。通達通り各2台ずつ、流石特殊部隊様といったところか。
『搭乗者九条春斗』
「!?」
『黒鉄です、よろしいですか?』
いつも俺が問いかけてから反応していた黒鉄が急に俺を呼んだ。いきなり過ぎて空中で止まっちゃったよ。
「ど、どうした?」
『サードフォーマットの進行度がもう少しで100%になりそうです、その影響で様々な機能が強化、追加されました』
「強化に追加?」
『はい、まずスキャン機能が強化され物体を透過してのスキャンが可能となります』
「ベストタイミングすぎぃ!」
物体の透過だってよ、待てよ…もしかして壁越しのスキャンとか出来ちゃうやつ?
確認のためもう一度スピードを上げてトラックと装甲車に追いつくように動く。ここでスキャン…
(おぉ?)
見える!トラック二台の中にはブレイザーが3機づつ、装甲車は片方は普通に誰かしら乗っているが…もう1台は明らかにおかしい。なんて言えばいいんだろう、でも大の字で吊るされている人が居るなんて、あるか普通。
(多分アレだな!)
一気にスピードを上げ、上空に着いた。
1台の装甲車が俺に気づき機関銃を放ってくるが…。
「遅い!」
機関銃を近接ブレードでガードしながら真下に急降下して機関銃を握っている人を左手で掴み、車両から引きずり下ろす。更にブレードを解除して前輪のホイールを無理やり掴んで外して、クラッシュさせる。前方のトラックからブレイザーが2機襲いかかってくるがお前らが脆い事は知っている!再度ブレードを展開して2機ともたたっ斬る。
拘束された人がいる装甲車は…
「マジかよ…!!」
こっちに来なかった4機が装甲車を持ち上げながらジェットで飛んでいる。
何処に行く気だよ!?ブライト機能で空を飛びその4機を追いかける、インパクトブーストを使う必要はない、そこまでスピードは出てないし余裕で追いつく。
「よし…追いがはっ!?」
急に2機が俺の方に向いて抱きつくように俺にまとわりつき、俺含め地面に落ちていく。
邪魔だ…!
「どけぇぇぇ!!」
片方のブレイザーに手刀で心臓辺りを突き刺し、もう片方は肘うちで俺から轢き剥がして左手にブレードを持ち替えて頭部を切り飛ばし、その亡骸を踏んでぶっ飛ぶ。
「あぁクッソ!距離が離され…あ?」
すると空に装甲車とブレイザー2機がおらず…第4アリーナの中心に装甲車が置かれていた。てか誰も居ないから遮断シールドは展開されていないのか。
いやでもさぁ…あれ罠だよね?明らかに怪しい。
ホラゲーの何もない空間の中心に宝箱が置いてあるくらい怪しい、大体そういうので呪いがかかったり、ミミックだったり…。
(一応、スキャン)
スキャンしてみたが…拘束された人以外誰も居ない?
壁越しでも何処にもいないぞ?さっきの2機のブレイザーは?
…いやそんな事は後でいい。罠だろうが誰も居ないと分かったならとにかく救出を。第4アリーナの中心に向かって飛び、着地。そして装甲車のトランク部分に着いた扉をこじ開けて中を見る。そこには
「…!!」
ブロンズ色のロングヘアーの傷だらけの女性がいた。すぐさま俺は駆け寄ろうとしたが中が狭く黒鉄展開状態では入れないため両腕だけ部分展開し、その人を拘束させているベルトを黒鉄のアームで引きちぎり、抱える。
「大丈夫ですか!?」
少し揺らすと、やや意識はあるようだ。良かった…。
「だ…だ、れ…ですか?」
「俺は九条春斗と言う者です、貴方の名前は?」
「らう…ら」
「ラウラ・ブルーノさん?」
「は…はい」
この人がレベッカのお母さんであるラウラブルーノさん…にしても酷い、ここまで傷だらけにさせられるなんて、許せるはずもない。
「れ…れべっ…かは?」
「無事です生きています、それよりも貴方を救出しに来ました。ここを出ましょう」
ラウラさんを抱え、外に出ようとしたが
「ま、まっ…て、あなた、くじょう…っていうの?」
「はい…そうですが」
「だ、だめ…にげて」
「?」
急に俺の肩を掴み引き剥がそうとする。
「わたしは…おとり…なの」
「!!」
その言葉を聞いた瞬間すぐさま周囲にスキャン機能を使うと、この装甲車の周りを囲うようにブレイザーが30機近く居た。こんな大群、何処から来やがった…!?
『春斗!校舎に向かったのは装甲車、トラックはブラフだ!何も…乗ってない!』
アナスタシアの罵声と共に理解する。やっぱり罠でラウラさんを餌にして全戦力を俺の方に注ぎ込んだか…!!
だが、立ち止まるわけにはいかない!
「いいえ、置いていきません」
「で…も」
「いいんです、それより貴方の娘に…レベッカ・ブルーノに会ってほしいんです」
「!」
「だから貴方を見捨てるわけにはいかない」
しかし、ここからどうするか。
まともに正面から飛び出せばハチの巣になることは間違いないし、機体数で押し切られそうだ。そして何より…!
(時刻は…10時をまわったか!)
思った以上に時間を食いすぎた!試合が始まるまで残り18分、時間も考えるとこのまま飛んで行けば余裕で間に合うが…問題はブレイザーと殲滅とラウラさんの防衛。
インパクトブーストでアリーナまで飛べば間に合うし、俺も無傷で行けるかもしれないが…ラウラさんがインパクトブーストの負荷に耐えられない。更にラウラさんは傷だらけだ、変に動かせば命に関わる可能性もある…。
(ブレイザーたちが動く気配がない、今は応急処置を)
近場にあった医療器具と布切れでラウラさんを治療する。中学校で学んだ救急救命講習や保健の授業がここで役に立つとはな、中学の先生に感謝だ。しながらで悪いが一応報告しよう。
「アナスタシア、レベッカ。ラウラさんを見つけた」
『ッ!!今どこに!!』
「第4アリーナで応急処置中だが俺の周りにブレイザーが30機くらい居る」
『なら助けに…!』
『ダメだ…時間がない、それに召集の連絡も来てしまった』
「…」
万事休すとはこの事か、マジでやばいぞこの状況は!
最悪、このトラックを運転して連れて行くって言う手もあるが…俺は免許なんて持てる年齢じゃないし、ラウらさんもとてもじゃないが運転出来る状態じゃない。
どうすれば…。
(…ん?)
1つ、疑問が浮かんだ。その疑問を確定させるためにアナスタシアに連絡する。
「なぁ、アナスタシア」
『なんだ?』
「そっちのトラックや装甲車には誰も居なかったのか?」
『さっきも言った通り誰も…』
「運転手もか?」
『…どういう事だ』
もし、誰も乗ってないのに動いていたのならそれは自動運転がついている車両なんじゃないか?ほら、その機能がついていなければ運転手がいなければ車両は動かないし、今の技術の進歩なら装甲車にもあるだろ、多分。
「それで、居たのか?」
『運転手も、ブレイザーも居なかったぞ』
「了解、なら自動運転付きの車か」
『何をするつもりだ?』
「周りにバレるかもしれないが…自動運転でラウラさんを第3アリーナに連れて行く。その間は俺が守る。もう、それしかない」
『…わかった、こちらは先に戻らないといけない。なんとか時間は伸ばせるよう努力はするが無理はするなよ』
「それはちょっと約束できないかなぁ…」
『何か言ったか?』
「何でもないよ」
そうして通信を切って、運転席に移動する。
どれが自動運転だ?色々スイッチがあり過ぎて分からん、変に押したら爆発とかしそうで怖い。
「黒鉄?」
『はい、どうしました?』
「…なんかスムーズに話せるようになったな。えっとこの車の自動運転ってどうやってやるんだ?」
『大丈夫です、追加された機能でこちらが対処します』
「そういえば聞いてなかったな、何が追加されたんだ?」
質問した瞬間、装甲車がブルンとエンジンがかかり始めてモニターに色々表示され始めた。
何でいきなりついたんだ!?まさか誰か乗っていたのか?だがここは運転席のはず、ここじゃなければエンジンは…まさか!?
『行先は第3アリーナでよろしいですか?』
「あ、あぁ…それと黒鉄?」
『はい』
「…もしかしてこれはハッキング?」
『はい、追加アビリティにハッキングが追加されましたがそこまで大きなハッキングはできません』
「だとしても十分すぎるわ!」
黒鉄が何処に向かって進化しているのか分からないが、とりあえず何とかなりそうなのでよし。今のAIは凄いなぁ…。
『では発進します』
「了解!」
装甲車が動き始めたと同時に俺は黒鉄を展開し、インパクトブーストで外へ飛び出す。
案の定、大量の弾幕が俺に向かって撃たれるが、インパクトブーストをしたお陰で着弾地点は俺の後ろだった、装甲車には当たってない。
『搭乗者九条春斗』
「どうした?」
『このままでは第4アリーナから出ることが出来ません』
そうか、ブレイザーはこの装甲車を持ち上げて上から入れたんだもんな…じゃあ俺がしたから持ち上げて外に出すしかない。
ブレイザーの弾幕を回避した瞬間、装甲車に向かって飛び込み両手のアームで抱えて第4アリーナを空から脱出し、通路に装甲車を着地させると…走り始めた。
『指示通り、このまま第3アリーナに向かわせます』
「よし…ここからは俺の仕事だ」
ブレードを展開して、こちらに向かってくるブレイザーたちを見る。
いくら大量にいようがアイツらの機体としての質は悪い、むしろ駄作とまで言えるだろう。一撃でも決めれば破壊は狙える…。
「俺の後ろには1機足りとも行かせはしない!来いよ…鉄屑に変えてやる!!」
ーーー
「…春斗は?」
『来てない…マズイぞ』
あの後、僕たちは何とか召集に間に合い、アリーナの中で待機しているが一向に春斗が来ない。もう予定時刻も過ぎて教員たちが探そうとしているが、この第3アリーナには電磁パルスが張られている。実は昨日の夜、アナスタシアと解除しようとしたんだけど…警備が張られてて解除できなかった。ここからじゃ通信は届かない、僕とアナスタシアも春斗に必死に呼びかけるが応答もしないしそもそも繋がらなかった。
(どうしよう…)
僕のお母さんが見つかったことも気になるし、春斗が無事なのかも気になる。
『予定時刻を過ぎました、このまま九条春斗が来なければ彼を辞退としてみなし敗北とします』
アナウンスも鳴り響き会場がざわついてきた。
『どうする?』
「どうしようもないよ…僕たちもここで変に動くこともできないし」
それに…あの来賓の席には、僕の父がいる。あれのせいで僕は動くことが出来ない…。
『繰り返します…予定時刻…を…sぎましttt』
『「!?」』
急にアナウンスからジジッと不調の音が聞こえ始める。
『…ハッキング完了及び電磁パルスの無効化完了』
アナウンスから聞いたことがない声が聞こえ始め、会場が更にざわつく。
次の瞬間、アリーナのゲートにブルーノ社の装甲車が現れた。僕はサブマシンガンを装甲車に向ける。何をしてきてもいいように、そう思っていた。
「…れ…べっか?」
「!!!」
その装甲車の助手席に座っていたのは…まぎれもない。僕のお母さんだ!
すぐさまインパクトブーストでお母さんの元まで寄りAGを解除して扉を開けてぎゅっと抱きしめる。
「お母さん…」
「ごめんね…迷惑…かけて」
「いいの…!元は僕のせいで…」
あぁ優しい匂い、安心する温もり。ずっとこうしてたかった、夢にまで思ってしまった光景が今実現した…。
涙が零れる、こうすぐ泣いちゃう僕は昔も変わらないみたい。
「怪我は?」
「くじょう…って人が応急処置してくれたの」
「春斗…あ、そうだ!お母さん春斗は今…」
『皆様、お初にお目にかかります。私は黒鉄。搭乗者九条春斗の戦闘効率強化AIです』
「春斗のAG!?」
『喋れるのか…?』
春斗のAGが喋り始めた…?
『まず九条春斗は今の状況ではこの場に来ることは出来ません、ただいま彼はブルーノ社の警備用無人機『ブレイザー』30機と戦闘中です』
「30機も!?」
会場がざわつくと同時に僕の心もざわついてきて、恐怖の感情に支配される。
今すぐにでも助けに行かないと、でもまだ怪我が治り切っていないお母さんも置いていくのは…。
『レベッカ!私が行く、ラウラ・ブルーノは任せた!』
その通信が聞こえた瞬間、アナウンスが空へ飛びアリーナの外へ行こうとしたが…
『アナスタシア・アガポフ。九条春斗の元へ行かないでください』
何と搭乗者のAGがアナスタシアを止めた。
『何故だ!貴様の搭乗者でもある春斗を…』
『いいえ、助ける必要はありません』
『何だと…手遅れなったらどうするつもりだ!』
『…貴方はいつ九条春斗が負けると思ったのですか?』
「!」
『現在、九条春斗は単機ではありますが既に10機のブレイザーを破壊しています、このまま戦えば彼は勝つことでしょう』
『それと…アリーナに全生徒及び、教員そして各企業の皆様、研究者などに聞いてほしいことがあります』
誤字脱字、語彙力がほぼ皆無に等しいのでミス等がありましたらご報告お願いします
感想も待っていますので気軽にどうぞ!
超絶不定期更新ですがご了承ください…




