表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
インフィニティ・ギア  作者: 雨乃時雨
プロローグ~第一部
16/122

第14話 表裏一体

「んお…?」


ピピピと音を鳴らすアラームに拳を叩きつけ、止めた。

流石にぶっ壊してないから…。また閉じそうな瞼を無理やり開けて身体を起こす。


「ふあぁ~…今、何時だぁ…?」


時刻を確認する。


『16:28』

「…ん?」


目を擦ってもう一度目を凝らし、手に持った時計を確認する。


『16:28』

「…もう16時半か早いなぁ」


「ってはあぁぁぁぁぁ!!!??」


もう一度瞼を閉じようとしたがベッドから飛び起きる。それはもう見事なジャンプで。

マズイマズイ!15時にアラームをかけたのに起床時間を超えて寝てた!相手を待たせるわけにはいかん!

椅子にかけておいたファスナー付きのパーカーを羽織って扉から出ると…。


「あ、春斗」

「…」


アナスタシアとレベッカが居た。

アナスタシアの部屋着はグレーのタンクトップに黒色のハーフパンツ、レベッカは上下ジャージ…?でいいのかな?ちょっと意外というか何というか。


「す、すまん!待たせたか…?」

「ううん、丁度来たところ…それで大丈夫?急に大きいな声があったから何か起きたの?」

「さっきまで寝てて…今起きたところ」

「だからそんなに髪がぼさぼさなんだね」

「へ?」


外が見える窓ガラスの反射で自分の見た目を確認する。

…すると見事な寝癖が俺の髪に出来ていた。今から直そうとしても時間ないし、何より二人を待たせるのは気が引ける


「これで行くしかねぇ…」

「みんな驚きそう」

「確かにな…」



でもこのままなのもアレなのでフードを深くかぶって少しでも治ることを期待しながら廊下を三人で歩いていると…。


「春斗さん!」

「春斗!」


曲がり角の先にフレヤと葵が居た。

葵は昔と変わらず和風の寝巻、俗にいう浴衣だ。夏祭りとかに着ていくああいう派手なやつとは違うぞ。フレヤは…えっとパジャマでいいのか?何かふりふりのついた綺麗な白色の。

てかさ。


(4人とも絵になるよなぁ…)


4人とも寝巻は違えど普通に綺麗なので絵になる、それにとても似合っている。


「どうしました?」

「んいや、4人とも似合ってるし綺麗だなって思っただけ」

「「「「!!」」」」

「え?」


急に4人の目が見開き俺を凝視する。


「そ、そうですの?」

「あぁ普通に綺麗だし、似合ってる」

「…これが日本の言うところのたらしか?」

「あぁ…春斗は昔からこういうことを平気で言ってくるんだ」

「な、なるほど…」


フレヤは正面から俺と話しているが残りの三人はどうした。集まって何か話しているが聞こえないぞ。


「春斗さんもお似合いですわ」

「そうか?パーカーを羽織っているだけだけどね…」

「いつもその格好で?」

「もう少し暑くなったらパーカーは羽織らないし、冬場になったら流石に長袖長ズボンに変わるよ。死んじまう」


正直、今でもパーカーは脱ぎたいが変に脱ぐと寒いので袖をまくった状態だ。

嫌だよねぇ…着れば暑い、脱げば寒い気温。結構めんどくさいから嫌いだ。


「立ち話もアレだし早く食堂行こうぜ、てか責任者俺だし…」

「そうですね、では参りましょうか」


するっと腕を取られて密着する。何というか流石イギリス人と言える。日本人が躊躇することをこうも一瞬のうちに行動できるのも尊敬するな…もしかして日本人ってチキンになったのか?何て事を口から出そうとしたが怒られるので黙っておく。


「な、何をしている!!」


三人の輪から帰ってきた葵が声を荒げる。


「あら?男の方がエスコートするのはこの国でも当然のはずでは?」


まぁ、それは否定はしないが…三人が少しうらやましそうに俺のことを見てくる。めっちゃ視線がぶっ刺さるのですがそれは。


「…それならもう片方の腕は私が頂こう」


葵も躊躇なく俺のもう片方の腕に組み、密着。

…てか葵も躊躇なかったな。まさかチキンになったと思っていたのは俺だけだったのか。すまぬ、日本人の皆様。俺も日本人だけど。


「で、では行くとしよう」

「ちょっと葵さん!何をしていますの!?」

「男がエスコートするのは当然なのだろう?なら私もエスコートされるべきだ」

「ぐぬぬ…」


俺を挟んで火花を散らすな、あと歩きずらいと言おうとしたが…こういう時、こんなことを言ってしまうと『乙女心が分かっていない!』とビンタされたアニメの主人公を思い出した。ここはいうのをグッと堪えよう。それも男らしさ…かな?知らんけど。


「…私が捕まるところがないではないか」

「…三本目の腕はないぞ」


アナスタシアも羨ましそうな視線のまま何処か捕まる場所を探している。


「無いのか?日本のアニメでは腕が六本になった剣士が居たぞ」

「それはアニメの話だから、俺はそんなに腕無いよ」

「なら!」


何か思いついたように近づいてきてアナスタシアはジャンプし、俺の背中に飛び乗った。


「これなら大丈夫だ」

「おいおい…」


両腕にフレヤに葵、背中にアナスタシアか…別に重いとかそういうのはないが流石に歩きにくいぞ。


「な、なぁっ!」

「その手があったかっ!」


両腕に居る二人も驚いた表情でアナスタシアの事を見ている。

かくいうレベッカは?というと


「いいなぁ…」


こちらもまた羨ましそうに見ていた。


「流石にもう無いぞ…」

「だよね…なら今度一緒にしてもらおうかな」

「それならまぁ…」

「えへへ」

「…策士だな」

「…その手がありましたわ」

「…やるな」

「良いから行くぞ!」


色々聞こえた気がするがこの際いい、てか時間がない!

両腕に捕まっている二人の歩幅に合わせつつ食堂へ向かう。


ーーー


「あ、九条…くん?」

「柊木先生!?」

「えっと…どういう状況ですか?」

「聞かないでください」


理由を聞かれたが答えられるほどの気力は残っていないので答えなかった…今俺が言える一言があるとするならば食堂遠すぎ。寮から校舎に戻ったよ?あの距離をおんぶ&腕組×2で。ちょっと疲れた。

んで食堂前に柊木先生がいた。何故?


「何故柊木先生はここに?」

「責任者は九条君ですが監視が必要ですので…急遽私が」

「なるほど」


まぁそりゃそうだよな、変なことはしないと思うし普通な歓迎会になりそうだ。


「そういえば他のみんなは?」

「皆さん中にいますよ、九条君たちで最後です」

「げ、マジか…」


俺たちが最後とはな。元々責任者だし一番最初に来ようとしていたけど、しょうがないか。今日ばかりは許してくれ。


「おい、三人ともエスコートは終わったぞ」

「…名残惜しいですがしかたありませんわね」

「…うむ」


そうして二人はなれるが…アナスタシアだけは俺の背中から離れようとしなかった。


「…アナスタシア?」

「あぁ、あの二人はエスコートだったのだろう?私は違う」

「違うって?」

「私はイチャイチャするために背中に乗っているに過ぎない。二人とは違う!」


俺の背中の上から堂々と宣言するアナスタシア。正直お前の口からイチャイチャという単語が出てくること自体かなり意外というより驚いたが、それは腕から離れた二人もそうだった。


「な、な…!?」

「なんだと…!?」


パクパクと餌を待つ鯉のように口を開けて驚いている。

…もう待たせるのもアレだし食堂に入るか。アナスタシアを背負いながら食堂の扉を開ける。


「九条君遅い…って何それ羨ましい!」

「背中に花かしら…だとしてもずるい」

「いいなぁ…私も…」


アナスタシアの事をみんな見ているが、とりあえず謝罪が先か。


「すまん、遅れた」

「遅れたことよりもその状況の方が気になるんだけど…」

「これは…イチャイチャするために乗っているんだ」

「その宣言をここでするなよ!?余計ややこしく…!」


案の定、その宣言が氾濫を呼び一気に騒がしくなるが『いいから歓迎会するぞ!!』と全力で声を出して何とかその場を鎮めた。ちなみにアナスタシアは降ろした、これ以上この場を混沌に導くわけにはいかない…。


「じゃあ各々好きな飲み物は持った?」

「「「はーい!」」」

「では、レベッカとアナスタシアの歓迎会を始める!全員カンパーイ!」

「「「かんぱーい!」」」


そうして歓迎会は始まった。ちなみに俺の持っている飲み物はオレンジソーダ。別にこれが好きってわけじゃないけど俺は炭酸が好きだな。当たり前かもしれないが、このしゅわしゅるする感覚がまた良い。

それとお菓子も色々あるな、スティックの菓子やポテチ、グミにマシュマロと様々だ。


「マジで色々あるな…」


ポテチを食べながら周りを見る。

レベッカはクラスメイトと談話していて、アナスタシアは何か混乱しているように見える。


「アナスタシア?どうした?」

「これは何だ?しゃくしゃくした食感に甘さを感じる」

「ん?あぁ金平糖か、懐かしい」

「こんぺいとう?」

「そう金平糖、砂糖と下味のついた水で作られるお菓子だ」

「なるほど…これは美味い」

「…」


なんかさ、アナスタシアって結構背が小さい部類に入るんだけど…金平糖を頬張っている姿を見ると少しかわいい。ハムスターみたいだ。


「どうした?」

「何でもないよ」

「あ!アナスタシアさん!こっちきてー!一緒に写真撮ろうよ~」

「い、いいのか?」

「もちろん!」

「行ってきな、歓迎会なんだし楽しまないと」

「ふ、ふむ…」


そうしてやや恥ずかしそうに呼ばれたグループに向かった。写真を取った後色々話しているし笑顔だ。前まであの笑顔が無かったしな。


(…結構いい笑顔するな)


持っていたスマホを持ってクラスメイト達の写真を撮る。

これも一種の思い出だし、きちんと保管しないとね。


「ふふっ…」


クラスメイトたちに感謝だな、こんな最高の場を作ってくれてありがとうって。


「九条君?」


スマホで撮った写真を眺めていると柊木先生から声をかけられた


「あ、柊木先生」

「どうですか?」

「みんな楽しそうです、クラスメイト達に感謝です」

「まるでお父さん見たいな反応ですね」

「それを先生に言われるのもびっくりなんですけど!?」

「そ、そうですね…」


教員からお父さんみたいって言われるのって…もしかして俺って意外と爺臭いのか?


「こんにちは~」

「ん?」


すると俺たちの方へ別の生徒がやってきた。よく見るとネクタイの色が違う、上の学年の生徒か?


「放送部兼新聞部の『荒井真登香』です~」


ほんの少し茶髪が混じったポニーテールの人がカメラを持ってこちらに来ていた。てか俺の方に向かってきている。


「君が九条春斗君?」

「え?あ、はい…そうですが」

「一枚良いかな?新聞の見出しに使わせてほしいんだけどね」


許諾を取る前に一枚写真を取られた、何のための質問なんだよ…と心の中でツッコむ。


「あと色々聞いてもいいかな?」

「は、はい」

「ぶっちゃけ女子高に入学してきた訳だけど、どう?」

「どうって言われましても…」

「こう『ぐへへ』とか『ひゃっほい!』とかないの?」

「そんなわけないでしょう!?」


何を考えてるんだこの人は…そんな考えでこの学園に強制入学されたわけじゃないし、てかそんなふうに思われてたの俺!?


「あ、大丈夫大丈夫。そんなふうに思ってないから」

「考えを読まないでください!てかそれはそれで安心しました!」

「それでどう?」

「…まぁ正直最初はクラスに溶け込めるか分かりませんでしたし、緊張とか恐怖とか色々ありましたけど、色々あって今みたいに溶け込むことが出来たのでよかったです」

「真面目だねぇ、でもいいね」


メモ帳にペンを走らせている、本物の記者みたいだ。


「だそうですが担任の柊木先生」

「は、はい!」

「唯一男子生徒を担任に持っている教員ですが今のお気持ちは?」

「え、えっと…」


何か焦った様子を見せる柊木先生。まぁ教員らしい良いコメントを残してくれるだろう


「…ふ」

「ふ?」

「く、九条君に…不純異性交遊をさせないように頑張ります!」

「ブフッ!!?」


思いっ切りジュースを吹き出す。


「ゴホッゴホッ!!?何言ってるんですか!?」

「え、だってその…男子生徒ですしやっぱりこんな環境だと色々あるかなって思って、もしかしたら変な気を起こして」

「柊木先生ストップストップ!ヤバいこと言ってますって!」

「ふむふむ…なるほどねぇ」


うわぁ悪い笑いしてるよこの人、絶対ろくなこと書かれない!


「じゃあ特ダネも手に入ったしこの辺で失礼~」

「ちょ、ちょっと荒井先輩!?」

「アデュ~!」


一瞬のうちに走って去っていき、俺が追いつく前に食堂の外へ走っていった。

あぁ明日が怖くなってきた…。


「…今のうちに遺書、書くか」

「えぇっ!?」


ーーー


そうして歓迎会も後半戦に差し掛かった。

ほんの少しだけど、眠くなってきた。色々やったしな…くじ引きに王様ゲーム(無傷)、ビンゴ大会と、結構カロリー使ったな。


「ふぁぁ~…あ?」


そういえばこの歓迎会の主役のアナスタシアとレベッカの二人がいない?

どこに行ったんだ?


「…?」


プライベートメッセージ?誰から?


(アナスタシアから…?)


急だな、歓迎会中なのに…。


『マズイことになった』

『どうした?』

『今日、レベッカブルーノが言っていた作戦が決行される』

『どんな作戦なんだ?』


チャットしながら軽くジュースを飲んだ。


『九条春斗の殺害および黒鉄の強奪だ』

「!!」


驚きのあまり持っていたジュースを落としてしまった。


「春斗さんどうしました?」

「す、すまん…手が滑って落ちた。ちょっとタオル取ってくる!」


食堂のキッチン付近に向かいタオルや拭くものを探しながらさっきの作戦の内容が頭の中で木霊する。

俺の…殺害。あまりにも実感がなくて、こう変な気分になる。


「…どうすりゃいいんだよ」


キッチンペーパーを見つけてさっきこぼしたジュースを拭く。

対策も思いつかない…標的にされていること自体初めてなのに、何をすればいいんだ。


「…」

「春斗さん?どうしました?」

「あぁ…何でもない、少し眠くなっちゃってな」

「あらそうですの?なら送っていきましょうか?」

「い、いや大丈夫だ…」


ジュースを拭き直し、ゴミ箱へジュースを吸ったキッチンペーパーを捨てる。

…俺は。


「春斗」

「!」


考え込んでいるとアナスタシアが話しかけてきた。


「潮時だ、早急に作戦会議をしないと」

「分かってる…!でもここでするのもマズイ」

「確かに…」

「ちょっと待ってて」


そうして俺はアナスタシアを連れて柊木先生の元へ行く。


「柊木先生」

「はい、どうしました?」

「ちょっと体調が悪くて部屋に戻ってもいいですか…?」

「そうですか、なら付き添いを誰かに…」

「それなら私が行きます」


アナスタシアが俺の嘘に乗ってくれた。


「わかりました、私から予め皆さんに言っておきます。九条君もお大事に」

「すみません…」


そして二人で食堂から出た瞬間、俺の部屋までダッシュで駆け抜けた。

この時間にもなれば生徒たちは愚か、先生方も職員室に居るはずだから走っていても俺たちを咎める人もいない。とにかく今は走り抜けろ。


「はぁ…はぁ…!」


息を切らしながら何とか俺の部屋に戻り、アナスタシアと共に入る。


「春斗、大丈夫か?」

「正直…やばいかも…」

「当たり前だ、春斗は元とはいえ一般人だ。精神はそう簡単に成長する物じゃない」

「だよな…!」


今、俺は軽いパニック状態に陥っている。過呼吸気味で頭の中は真っ白で何も考えられない。ずっと恐怖がある…あの戦いの時とはまた別の恐怖が。


「落ち着け、深呼吸だ」

「すぅ…ふぅ…」


呼吸を整えろ…剣道とか弓道とかAGの戦いのときもそうだろう?焦った時や精神を研ぎ澄ますときは深呼吸だ。心を静かに、落ち着かせろ…。


「ふぅ…よし、ある程度は落ち着いた」

「よし、それで作戦なのだが」

「待ってくれ」

「どうした?」

「…まず聞かせてほしい、その作戦は」

「…そうだな事実確認は必要だな」


俺にプライベートチャンネルで音声付きのメッセージファイルが送られてきたので、確認する。


『どういうことですか!』


『今日中に殺害し黒鉄を持ってこいなんて無理に決まってます…』


『それに殺す必要も…!』


『…分かりましたッ』


『…!』


最後に…何かを叩きつける音と同時に音声が終わった。


「アナスタシア、もしかして」

「あぁ…レベッカブルーノは『何か』をやらされている」


時々悲しい表情や曇った表情をする理由はこれか…レベッカは誰かにこの仕事をやらされている。そしてその仕事は俺の殺害と黒鉄の強奪。

…あぁクソ、イラついてきた。


「…春斗?」

「もうパニックはしてないがイラついてきた。何処の誰か知らんが…同級生を道具みたいに使うとは…万死に値する」

「落ち着けパニックよりもマズイ方向に感情が行っているぞ」

「…すまん」


ここで怒ったところで何も変わらない。とにかく作戦会議だ、今は…レベッカに殺されるわけにはいかない。むしろ殺されちゃダメだ、きちんと向き合って話を聞きたい。


「正面から止めるのはどうだ?」

「…恐らく無理だろう」

「というと?」

「レベッカの耳についていた装飾品は知っているか?」

「あぁ、あの転校生の紹介の時に見たからわかるが…それがどうした?」

「アレが通信端末だ」

「アレが!?」


あんなに小さい物が通信端末だと…?現代科学の進歩に驚くがそれ以上に最悪な奴らに使われてるなと開発者たちに同情する。


「でも通信端末を剥がせば」

「そう簡単にいくと思うか?」

「!!」

「私の予想になるがそれだけじゃないだろう、ただの通信端末ごときでここまでレベッカブルーノが動かせているのだぞ」

「…何か追加でついているのか、もしくは単純に弱みを握られているのか」


どちらにせよ、腹立たしいことこの上ない。


「ちょっと待っていろ」

「どうした?」

「私の部下に連絡をかける」


作戦会議中、アナスタシアはビジョンシステムとは違い、別の携帯電話…スマートフォン?っぽい物で何処かに連絡をかける。


「特殊部隊MS隊副隊長『アンセル』!聞こえるか!」


MS隊副隊長アンセル?誰だそれは…。


「す、すまん…アナスタシア誰だそれ」

「…私の部隊の部下たちだ」


アナスタシアの部隊?あぁそうだ、軍人だもんなアナスタシアは。さっきの歓迎会の笑顔やらなんやらのせいで若干薄れてた。


「そうだ、それで少し頼みたいことがある…あぁ、レベッカ・ブルーノというIGD学園の生徒について細かく調べてほしい。何分かかる?…流石だ、ではその情報をこちらに送信。のちに報酬を送る、何がいい?…日本の漫画か?了解した。つてはいる、任せておけ」


何かよく分からない会話が交わされたのち通信端末をしまい、今度はビジョンシステムを立ち上げて何かのデータを受け取っている。


「…そうか、なるほどな」

「何かわかったのか?」

「これほど単純な作戦だとはな」

「単純?てか色々聞きたいことがあるんだが…」

「まぁ私の知り合いのおかげで色々知れたと思うといい、それよりこれを見ろ」


なんか腑に落ちず言われるがままビジョンシステムで投影化されたデータを確認する。


「読めねぇ…何語だこれ」

「すまん、送ってもらう言語の指定を忘れた。こちらで翻訳する」

「って事はロシア語?」

「そうだ」


英語とは違うスペルで書かれた文に若干困惑したが、これがロシア語なのか。多国籍の学園だし英語以外にも勉強するか…と心の中で思った。


「それで何が単純なんだ?」

「まずレベッカブルーノの通信ログをハッキングしてもらった」

「…はい?」

「ん?だからハッキングだぞ、わからないか?」

「分かるよ?分かるんだけどさ?え、なにハッキングしてるじゃなくてした?」

「あぁ、私の部下を舐めてもらっては困る」

「いや仕事早すぎないか!?あの会話のいつハッキングしていつ終わったんだよ!?」

「あそこまでザルなファイヤーウォールなら二秒とかからないだろう」

「えぇ…」


これが特殊部隊MS隊?化け物だらけ過ぎないか?ハッキングに二秒もかからない?

まさか…あのトレースシステムからレオンを奪還する時もハッキングの技術を!?

もしかしてアナスタシアって結構凄い奴なんじゃ…。


「それでログの解析の結果、今レベッカブルーノは弱み…というより人質がいる」

「人質が?」

「あぁしかも、その人質もログで分かった。それは…レベッカブルーノの『母親』だ」

「ま、マジか!?」

「あぁ…母親が人質にされている。それでその相手なのだがそこまでは分からなかったようだ。通信元のセキュリティーが厚く解析までとなると厳しいらしい、余程の手練れだな」

「いやここまでわかっただけでも十分だろ、とにかく今レベッカは母親を人質に取られていて仕事をやらされている」

「そしてあの通信端末にはどうやら盗聴機能も付けられているようだ、アレを破壊しないときちんと話せない」

「アレの破壊とどうやって話を聞いてもらうか…だな」

「あぁ」


難しいな…恐らくあのナイフで俺の事を殺しに来るはずだ。しかもその間の会話は相手に聞かれている。正面から二人で無力化すればいいがそれは『相手の作戦は既に分かっている』となり人質であるレベッカの母親が殺される事になるかもしれない。バレずにあの通信端末を破壊して、どうやってレベッカに意志を伝えるか…。


(…!)


一つ案が浮かんだ、いやこれしかないだろう。


「アナスタシア、俺に考えがある」

「?」

「ーーー」

「…確かに作戦としては良いが失敗すれば」

「分かってる、でもこれしかないだろう?」

「…あぁ、なら一応不祥事に備えて私はクローゼットの中に隠れておこう」

「決まりだな。よし、準備するぞ」


そうして俺は紙に色々と文字を書いて、鍋の中に氷を大量に入れ、蓋をして表面を濡れたキッチンペーパーで包んで冷蔵後に入れた。


(あとは…)


電気を消して、ベッドに仰向けになり目を瞑る。


(待つだけだ)


寝たふりをしながら待つ。寝ちゃうんじゃないの?なんて思ったが俺狙われてるんだぞ!?嫌でも目が覚めるわ!


ーーー


深夜になった。

僕はクラスメイトが帰ってきていないことにも気にせずバッグの中からタクティカルナイフを取り出してジャージの中にしまい込み、部屋から出て春斗の元へ向かう。

友達として…ならどれほどよかったか。


「…」


時々足を止めるが…あの優しいお母さんが殺されてしまうのも嫌だ。

僕の中で二つの事を天秤にかけ、僕は…『母親を取った』

そのためにも…九条春斗を殺さないといけない。


僕はただの家庭に生まれた。

物心ついたころには父はおらず、お母さんが僕のことを育ててくれた。今でも感謝しきれない程の恩がある。でもきっと僕が人を殺せば…絶交されるかもしれない、僕を娘だと思ってくれないのかもしれない。

…それでも僕はやらないといけない、もっと生きていて欲しい。僕のせいで死んでほしくない。


「…ふぅ」


僕の今の顔はどうなっているんだろう。視界はゆがんでるし…呼吸もままならない。

今でもあの父が許せなくてたまらない。13歳の時、平和な一日だったのにお母さんが誘拐されたと同時に私も黒いスーツに身を包んだ人たちに車の中に押し込まれて何処かへ連れていかれた。連れていかれた場所はイタリアのAG開発会社『ブルーノ』社。

その時初めて知ったことは…僕の父親はこのブルーノ社の社長。AGの適性が僕にあっただけで僕たちを攫い、AGの開発に携わらせた。あの時は断りたかった、こんなことしたくない、今まで通りにお母さんと暮らしたいと思った、でも僕が断るたびにお母さんが痛めつけられ僕は…嫌でも命令を聞かないといけなくなった。

そんな時、日本で現れた唯一AGを活性化できる男子『九条春斗』。各国が彼のデータを欲しがり各会社の最新機体や最新武装でデータを取ろうとしていたけどブルーノ社は量産型の開発が主流。例としてリバイブがあげられる。開発する時間もなければ資金もない。遂にはイタリアの他の会社に技術力で負け、量産型しか開発できないと支援していた政府にそう考えられ資金を大幅にカットされてしまい営業困難に陥った。


ピピッカチャッ


そして…今、任された仕事になる。

営業困難に陥った原因であり、何より最高のデータ材料となる…九条春斗の殺害及び黒鉄の強奪。

本当なら僕だってこんなことしたくない。

もし九条春斗って人が父と同じようにとんでもないクズなら難無く行けたかもしれない…でも


『もちろん、でも俺もレベッカさんのことを知りたいから色々教えてくれ』


『俺のことは呼び捨てで大丈夫だ』


クラスメイトたちの為に怒り、守り、ましては僕のことも気にしてくれた。

…彼は心の底から優しかった。

アナスタシアさんに狙われた時も感情的に守ってしまったのも…きっと僕が春斗の事を意識してしまったのだろう。ここまで優しい彼を。


「…!」


ジャージからナイフを取り出し、握る。


「はぁ…!はぁ…!」


呼吸できない…手が震える…涙がこぼれる…

寝息を立てて寝ている春斗の上に乗りナイフを構える。心臓にさせば抵抗されても…大量出血で死に至る。

でも殺したくない…!僕に優しくしてくれた人を…僕に微笑んでくれた彼を…!

彼の着ているタンクトップに僕の涙が零れる。


「嫌だ…嫌だ…!」


頭の中が真っ白になる。でもお母さんを失いたくない…!!


「ごめん…ごめん…ね、春斗」


「本当に…ごめんね」


「僕が…生まれてこなければ…良かったんだ!」


僕は…決意して…


ナイフを、突き刺した。


ガシッ!


「えっ…?」

「何、してるんだ。レベッカ…いやレベッカ・ブルーノ!」

誤字脱字、語彙力がほぼ皆無に等しいのでミス等がありましたらご報告お願いします


感想も待っていますので気軽にどうぞ!


超絶不定期更新ですがご了承ください…

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ