第11話 早朝の激闘
朝日に黒色の装甲が照らされる中、空を見上げる。
ここは第3アリーナ。昨日のメール通りの場所に時間通りつき黒鉄を展開して待っていると反対側のゲートから差出人が現れた。
『逃げずによく来れたな、一般人としてはいい勇気を持っている』
「そりゃどうも」
ブレードを握りしめながらゲートの上へ目線を向けると深緑色の装甲、二本の迫撃砲が照らされていた。ある意味出てきたのがアナスタシアさんで良かった、これで違う人が出てきたら困る。
「…それで早朝一発目に授業か?このあと緊急の全校集会だろ。アリーナの許諾も取ったのか?受付誰も居なかったが」
『ふん、知ったことか』
ということは無許可のアリーナ及びAGの展開か、俺も含めてな。
これは…バレたら俺含め結構な罰を受けそうだな。いや今はいい、気にせずに戦おう。
どうせ戦いの中なら関係ないってなりそうだしね。
『…知るがいい、戦場の残酷さを』
『敵AG戦闘形態に移行』
「!」
迫撃砲が俺に向いて、轟音と共に大型の弾丸が向かってくる。それをブレードの腹で受け止める、衝撃は今までの中で一番強いが…もろに正面から受けなかったおかげでシールドエネルギーが減ることはなかった。
フレヤと時々戦ってたお陰だな、反応速度が少し上がってる気がする。
『ほぉ、受け止めたか伊達に授業を受けているだけある』
「まあな」
ブレードで爆発で巻きあがった砂埃を振り払う。その先には二本のエネルギーナイフを持ち、ゲートから降りていたアナスタシアさんと睨み合う。
アナスタシアさんの機体、名前は『レオン』
第5世代の最新機、深緑色の装甲に浮遊している二本の45cmの大型弾を発射する迫撃砲とジェット機構に両手に握られた二本のエネルギーナイフ。てか45cmの弾丸発射するとか実質戦車のバレルが二本肩についているみたいなもんか。そしてやはり専用アビリティ持ち…
(ん…?)
何か今一瞬専用アビリティの枠に何かバグっていうか画面がおかしくなった気が…?
『何処を見ている!』
「!」
いつの間にか懐にまで踏み込んできたアナスタシアさん。エネルギーナイフを振りかざしてくるがブレードで振り払い距離を取りつつ様子を見る。迫撃砲はロングレンジかもしれないがナイフを装備しているから近距離も行けるのか、しかも今のエネルギーナイフの振り方。アニメやゲームなどで見たあの振り方、普通じゃ見ることの出来ないナイフの戦闘スタイル…流石軍人と言うべきか。
(恐らく戦闘も技能も俺よりも上…いや多分この学年の中で一番強いまであるかもしれない)
ブレードを握り直し、アナスタシアさんを見る。
『さっさと終わらせてやる』
(来る…!)
また一気に詰め寄り、ナイフの斬撃。ブレードで弾きながら相手の動きを読みつつ隙を探す…だが決定的な隙もないし、結構読みづらい動きをしているな。縦横無尽に俺を倒す為だけのナイフの刃先が常に俺に向かってくる。ブレードで弾くだけで精一杯だ。ガキンガキンと火花を散らしながら剣とナイフの弾き合う音が木霊する。
『消えろ』
ナイフでブレードを弾くと同時に斜め後ろ方向へバックステップ。そして迫撃砲を空中でこちらに向けてくる。
『警告!警告!ロックオンされています』
「大丈夫!」
右側にステップ回避し、アナスタシアさんに向かってインパクトブースト。
『正面からだと?愚策だな』
あぁ愚策だろうよ…それは策が無かった時の俺だったらな!
『それでここ。直線攻撃は遠距離型だと結構狙いやすいから、左右に避けるのが得策なんだけど…ここでインパクトブーストしていたからそこまで大きく避けなくてもいいかもね』
『大きく?』
『思いっ切り身体を使って避けちゃうとその分の負荷が機体と操縦者にかかっちゃうの。そうすると骨折とか機体が損傷する可能性も上がる、でも逆を言えば』
『細かく左右に弾を避ければ』
『当たりづらくなるし、次の攻撃にも移行しやすいでしょ?』
レベッカからの教えを思い出す。
アナスタシアさんのレオンは二本の迫撃砲は単発式のリボルバー型、連発は出来ない分一発一発の威力が高い。でもそれは当たらなければどうということもないと言う事!
(集中しろ、あの機体の全ての動きに目を配れ…!)
スキャン機能を迫撃砲に常時向けておき、アナスタシアさんに向かって飛びながら機体の動きに集中する。
来た、迫撃砲のバレルが完全に俺を捉えた。そして撃ってきたところを右に回避しもう一発の迫撃砲は左に回避!
(もう撃てないだろ!!)
ブレードを構えて斜めに振り上げる。ガキンと音が鳴りナイフで防がれた、だがそれで良い。接近も出来たしあの迫撃砲の次弾までの時間のスキャンも終わった、このデータも活かして戦おう。
「ッ!」
お互いに二本のナイフと一本のブレードで鍔迫り合う。目の前で火花を散らしながら見合った。
『…くだらないな、終わらせてやる』
「…?」
『ふん!』
アナスタシアさんは急に鍔迫り合いを止めて一気に後退、そして
『知るがいい、我がロシアを霧を』
「!?」
レオンの機体から出てきた白い煙が一気に広がる、機械の故障の煙ではない。これは…?
(さっきロシアの霧って言ってたよな…)
まさか霧か!?人工的に霧を出すのがあの機体なのか?だがなんの為に…
『後ろだ』
今の通信が入った瞬間、真後ろから斬撃を貰った。
そうか、これが狙いか…!後ろを振り向きブレードを振るが、居ない。
(なるほど…こういう機体か)
葵と戦った時の戦法と少し似ている。煙で視界を塞ぎ周囲から弾を打つのではなく、アナスタシアさんの場合はナイフで切りにかかってくる。それに霧の中の俺の事を完全に追っている為それ専用のセンサー付きだろう。
(不利だな…何とか霧から抜け出さないと)
『もし霧の中から出ようとしているなら諦めた方がいい』
「!」
俺の考えを見透かしたようにアナスタシアさんは言う。
『私の霧はこのレオンから常に出ている。遠く離れようが上に行こうが私は常に貴様の後ろに居る、霧から逃れられることは出来ない』
あの機体からずっと出ているのか、ずっとこの視界不良のまま戦うのか…正直不利すぎてヤバい。
圧倒的にアナスタシアさんの方が有利だ。
(まずいぞこれは…!)
ーーー
(遅い…)
現時刻は07:00、場所は変わり体育館。
本来、今日は授業はなく休みなのだが緊急集会のためかなり早い時間からの集会。
そんな中、1年1組が中々来ない事に私は疑問を感じていた。
クラス委員長である春斗が遅刻をした事はほぼない、故に時間通りもしくは時間より早くここに着くはずなのだが1年1組全員が居ないのは異常だろうと思っている。
その時
「せ、先生…!!」
息を切らしているフレヤを筆頭に1年1組全員が体育館に入ってきた。
「遅い!何をやっていたんだ!」
御影先生は1年1組の全員に理由を聞く。
そして私は気がついた…春斗が居ない。
「…春斗さんが居ないんですの!」
「何?」
「1年1組全員で各階の教室や、春斗さんの自室にも入りましたが…何処にも」
何処にも春斗が居ない…?少しずつ体育館にざわざわと騒がしくなっていき私の心の中も騒がしくなっていく。
「全員静かにしろ!柊木先生、九条は?」
「監視カメラの映像を見ていますが何処を見ても…え?」
1年1組の担任の柊木先生が何かを見つけたように声を出す。
「どうした?」
「だ、第3アリーナに煙が舞っています!そしてその中にアナスタシアさんと九条君のAGの反応も!」
「展開されているのか?」
「2人とも展開状態で戦闘中です!」
戦闘中だと…?
確か昨日、噂で春斗と1組のアナスタシアと言うが喧嘩をしていると聞いた。
まさか…今、戦っているのか!?
(春斗…!)
「柊木先生、2人に連絡して私闘の中止を」
「それが…第3アリーナにのみ電磁パルスが貼られていて通信が届きません!」
「電磁パルスだと!?」
ーーー
クソ…何処からともなくナイフの斬撃や砲撃が飛んでくるせいで防ぎようも無い!
てかマジで見えない!
「ぐっ!?」
『シールドエネルギー減少、残り158』
もうシールドエネルギーは尽きそうだし、あとが無くなってきた。
『…これが現実だ』
「!」
『大人しく…この戦場から去れ』
口調が違う…?さっきまでの荒々しい口調とは打って変わって何かおかしいぞ。
だが口調が違うだけで何処からともなく攻撃が飛んでくる。一旦ここは回避に専念だ。
アリーナの外周を回る。
「!」
その時、一瞬見えたものがある。
(空間が歪んだような…)
あの一瞬、見えた場所の霧だけ少し歪んで見えた。普通の霧が歪むこと事態おかしい。
何故、歪んだ?
『解析完了しました』
黒鉄が何かの解析を終えたようだ、一体なんの…。
『機体名レオン、専用アビリティ『クリスタル』。専用アビリティの効果は光学迷彩の様です、霧や光の屈折を利用し、それによって生じる透明化。それがあの機体のアビリティです』
光学迷彩!?だから俺は姿を追えてないのか。霧や光の屈折を透明化に使うのか、あのレオンっていう機体。
しかし、それを知ってもどうしようもないのもまた事実。霧を出し続け透明化のまま俺に攻撃を仕掛ければ一方的に勝つのはアナスタシアさんの方だ。
「クソッ!!」
当たるとは思ってないが思いっ切りブレードを横に振った。
『力任せの一撃、当たるわけないだろう』
…いや、ある!
今の力任せの一撃で起きた風でほんの少しだけ霧が動いた。ただ立ち込めた霧に風を与えたところで何も起きないのが普通。だが…今、霧が動いた方向にハッキリと歪みと影が見えた!
機体を透明化しても、急に差し込んだ光や機体に付く霧の水滴には透明化は作用しない!
(これしか無い!)
今までアナスタシアさんは透明化していて動きを見て学ぶなんて事は出来てないし、癖も分からない。それならば自分で見つけた隙を付く。外周を回るのを止めて、中心に向かってインパクトブーストし、両足で着地。
「ふぅ…」
ブレードを両手で構えて目をこらす。
葵と違って、周囲に拾える音はゼロに等しい。でも勝ち筋は自分の目で見つけるのみ。
ヒューッ
「!」
幸運だ。ほんの一瞬、小さなそよ風が吹いた。
その小さなそよ風のお陰で見つけた、歪みを!勝ち筋を!
「オラァァァァァ!!!」
全力で左斜め上方向にブレードを振り上げる!
霧は一気に動き、光が差し込み始めた。
そして…!!
「そこだァァァァ!!」
『なっ!?』
歪みに向かってインパクトブースト!振り上げたブレードをそのまま振り下ろし、レオンの浮遊している片方の迫撃砲に俺の斬撃が当たり爆煙が起きた。
『くっ!』
何かが爆発し、霧が少し薄くなっていく。
どうやら霧を出していたのは浮遊している二本の迫撃砲の根元にある装置だったようだ。
少しずつレオンの透明化が意味をなさなくなっていく。
『この…死に損ないがァァ!』
ナイフを構えてこちらに向かって来る。それをブレードで受け止める。
動きを見ろ、癖を見抜け、突破口を見つけ出せ!
「!」
今、アナスタシアさんは一心不乱に俺を見続け、ナイフを振ったり刺したりしてくる。つまり焦っている!ただの一般人でも軍人でも人間は人間だ。焦れば焦るほどミスが起きやすくなる!
片方のナイフの突き刺しを受け流し、もう片方のナイフをブレードで上に弾く。
(明らかに同じ動きを繰り返している…!)
ここまで来ると分かりやすい、これなら隙は付ける!
そろそろ…ここだ!二回目の振り下ろしをもう一度上に弾き、そのまま切り下ろす!
『なっ!?』
アナスタシアさんが後ろに下がろうとしたところを一気に踏み込みブレードの突きで奥へ押し飛ばす!
『がはっ!?』
そのまま壁に叩きつけもう一度、斬撃を…!!
「くっ!?」
二本のナイフに受け止められた!?いや押し切れる…このまま振り下ろせぇぇぇぇ!!
「うぉぉぉぉ!!」
『私は…負けられないんだ』
「!」
『私は…』
キューン…
「は?何で止まる…!?」
シールドエネルギーとヘルスはまだあるはずなのにアナスタシアさんのレオンが急に動きを止めた。いや違う、完全に停止した。
『レオン制御不可、緊急停止しました』
「な、何故だレオン!?私はまだ…!」
『…そこない』
「え?」
俺の方に通信が入る。アナスタシアさんの声だが…アナスタシアさんの口とセリフが合っていない、となると一体誰が。
『出来損ない』
「ごほっ!?」
その通信が聞こえたと同時にレオンはいきなり再起動し始めて俺のことを蹴とばした。
「何しやが…ッ!?」
次に見た景色に俺は言葉を失った。
『や、やめろ…!私は、私は!?くっ!?』
レオンが操縦者であるアナスタシアさんのことを二本のエネルギーナイフで攻撃し始めている。な、何故AGが操縦者を攻撃する!?
「黒鉄どうなってる!?」
『警告、レオン暴走状態。制御不能』
「マジかよ…!」
しかも見たところによるとシールドエネルギーや操縦者生命保護機能が全く作用していない。本来、AGにはシールドエネルギーがきれた後、人体に影響が余りでないように一部の身体の場所に装甲が装着されていたりする。アナスタシアさんの場合まだお腹辺りにも装甲があるが…その場所がナイフに何度も何度も刺されているせいで装甲にヒビが入っている。
(本当にマズイ…!)
蹴られた腹を抑え込みながらレオンに向かって突撃し、アナスタシアさんに抱きつきエネルギーナイフを背中に受ける。
「いってぇ!」
「なっ!?き、貴様!?」
「アナスタシアさん!無理やりだけど、レオンを解除出来ないか!?」
「何故か待機状態に出来ない…!」
マジもんの暴走かよ!?どうなってる!AGに強制的に暴走するのもおかしいし、操縦者を自動的に攻撃するのも聞いたことがない。そう内心焦っていると。
『警告!警告!未確認の何かがレオンに発動中!』
「は!?」
黒鉄の警告通りにレオンを見るとライトアームから黒色のスライムのようなものがアナスタシアさんの方へ伸びて行っている。
「な、何故…!?」
「装着が外れてる!?」
ライトアームがアナスタシアさんから離れている…装着状態なら外す事は出来ないはず、部分的に外すならその部分だけを待機状態にすれば良いのだが、待機状態になってもいない状態で外すことは出来ないはず!
「すまん…無理やりだが、剥がすぞ!」
アナスタシアさんが謎の黒いスライムに飲み込まれる間に抱え込み、インパクトブーストで強制的にレオンから剥がして距離を取る。
「っぶねぇ!何だよアレ…」
「わ、私はッ!?」
「え?」
「私は…!ぐっ!?」
アナスタシアさんの様子が明らかにおかしい。さっきまで戦っていたとは思えないほど怯えてる、一体何に?
そして、レオンを見ると…真っ黒のアナスタシアさんが居た。
「な、なっ!?」
瓜二つだ、肌の色は全く違うが表情や背丈、AGスーツも完全に一致している。一体何がどうなって…。
するとジジッと通信にノイズが走る。
『私は…出来損ないだ。私は…守れなかった』
さっきからアレは何を言ってるんだ?
『私は守れなかったッ!!』
「うぉっ!?」
ナイフを捨ててレオンがこちらに殴りかかってきた。予兆が一瞬分かったお陰でその一瞬の内にアナスタシアさんを抱え一緒に回避できた。
「アナスタシアさん!どうなってるんだ!」
「…」
「アナスタシアさん?」
「わたし…は」
いやダメだ、さっきから何かに怯えて話が通じてない。
だが今のレオンに乗っているアナスタシアさんの発言も気になる、出来損ない?守れなかった?
(今考え込んでても何の解決にもなりゃしない!一旦、柊木先生か御影先生に連絡を!)
そうして通信しようとするが、繋がらない。というよりコール音も鳴らず唯々真っ黒の画面が広がっている。
「黒鉄、どうなってる?」
『解析結果、この第3アリーナに電磁パルスが張られており通信が出来ない状態です。そしてあのレオンに搭乗している物体は『トレースシステム』であることが確定しました』
「トレースシステム?」
『操縦者や戦闘者の技術や思考回路を学びそれを複製し、自動的に動くことが出来ます。しかしその分の危険性が失くせていないため現在は開発、研究、生産は完全に禁止となっています』
そんなシステムが、何であのレオンに…!?
「今は…!」
アナスタシアさんを左腕に抱え、右手でブレードを拾い構える。
「俺が、守らないと」
人間なのか、生物なのか、機械なのか分からない。
ただ敵であることは確かだ、それだけ分かれば良い。
誤字脱字、語彙力がほぼ皆無に等しいのでミス等がありましたらご報告お願いします
感想も待っていますので気軽にどうぞ!
超絶不定期更新ですがご了承ください…




