第10話 成長の布石
こういうのは久々だな、いじめの類か何かか?イラつく。
まぁ置き間違いってわけじゃないだろう、確実に俺に対する文言だ。
「私は貴様を認めない」
「!」
その声が聞こえ、声の方向へ目線を移すと…シルバーカラーのロングヘア、冷徹な眼つき、誰とも関わらんとする姿勢。
「アナスタシア・アガポフさん…?」
アナスタシアさんだ、てか紙の内容を知っているってことはこの人が俺に対して書いたってことか。
「何のつもりだ」
「それはこちらのセリフだ」
「何?」
「何故一般人が戦場の最前線にいる」
戦場の、最前線?
「わかっているのか?ここはAG訓練育成学校、いわば軍事基地とみても差し支えない。そして今後の未来のための軍人を生み出す場所だ」
「…」
「何故ここにいる」
「AGが使えるだけだ、だが俺は学園の中にいる。アンタの言う軍人になるための授業を受けているだけに過ぎない」
「あんな奴らと一緒にか?」
「…あんな奴ら、だと?」
「危機感を持たず、AGを何かの服だと思っているアイツらと?笑わせるな、ここは軍だ。貴様なんぞに」
「戯言も大概にしろよッ!!」
頭の中が怒りに染まり切り、自分の使っているロッカーに拳を叩きつける。
「テメェ…何様のつもりだ」
「現実を教えているに過ぎない、私はロシアの軍人だからだ」
「軍人?」
「そうだ、私は軍の中から選ばれた者だ。貴様とは違う」
「へぇ?今の若い軍人さんは自分語りが上手いようだな、自分を選ばれし者と言い、自らの発言で戦力を削ぐのか?」
「…なんだと?」
「お前の発言で挫折した人間が可哀そうだな。目指した軍に行き?訓練も積んで?守る意思があるのに?現実を教えられて辞退した人がもし居るなら可哀そうだなって思っただけだ!」
「ッ!!貴様ァ!!」
お互いにらみ合いながらの一触即発の雰囲気が更衣室中に流れる。
その時
「何してるの!」
「!」
「…」
今度はレベッカさんが更衣室に入ってきた。
「レベッカさん…?」
「落ち着いて二人とも、もう授業は終わったしみんな来るよ」
「…」
アナスタシアさんとまた睨み合う。
「…何度も言う、私は貴様を認めない」
「勝手に言ってろ」
そうしてアナスタシアさんは更衣室から去っていった。
「すまん、変なところを見せて」
「うんん、良いんだよ。それに九条君の行動も合ってたから、クラスメイトの為に怒ったんだよね」
「…聞いてたのか」
「うん、優しいね九条君は」
「優しくない、それより俺は早くここから出ないとな」
AGスーツの上に制服を着て、俺は急いで更衣室から出た。
アナスタシア・アガポフ…悪いがお前の行動は許されない、その場にいない人への侮辱、しかもクラスメイト達の。
「…だが」
棘はあるのだが…何か深い考えがあるように見えた。
レベッカさんの時と同様、アナスタシアさんにもなんか違和感あるんだよな。てか二人の転校生が俺は何を考えているんだろう。
まぁ追々でいいか、今出来ることをやろう。
「って言ってもなぁ」
訓練という名の授業は終わった。柊木先生から着替えた人から部屋に戻ったりしていいですよだってさ…今日の放課後のSHRは今日はないって話だ。確か会議があるんだとかなんとか。
とりあえず今は練習あるのみだな、元々借りてた第3アリーナを使わせていただこう。
「あ、九条君」
アリーナへ行こうとしたところをレベッカさんに話しかけられる。
「どうした?」
「今日何か予定あったりする?」
「急だな…悪い、今日は第3アリーナ借りててAGの特訓しようと思ってた」
「あ、第3借りてたの九条君だったの?」
「?」
話を聞いたところによるとレベッカさんも専用機持ちで第5アリーナを借りてて良かったら一緒にトレーニングしない?というわけだった。正直、一緒にやりたい。
その、即答したい理由なんだけど、何というかね?俺のコーチというよりフレヤと葵の事になるんだが…。
『こうズバッと!バシッ!ドカッととした感覚だ!』
『分かんねぇ…』
葵は感覚も感覚型で何を言っているのか理解できないし…。
『防御や回避方向はレッグブラスターの斜角度を32度、右半身は右斜めに構えてターン。基本的にはこの角度や身体の動きですが…』
『か、角度…?』
かくいうフレヤはもう細かすぎて何を言っているか理解できなかった。
てかフレヤに至っては戦い方とか教えるの上手かったけど…AGの操作や動作になるとここまで細かくなるのはちょこっと意外だった。
葵はいい意味でも悪い意味でも変わってなかった。昔、一緒に剣道の稽古を行っていた時もこういう感覚的な教え方しかしてくれなくて葵のお父さんがめっちゃ苦笑いしていた事もあったな…。あの時は張り切ってるから話をちゃんと聞いてほしいとか言ってた、確かね。
「ならご一緒させてもらおうかな」
「いいの?」
「あぁ、俺個人じゃ伸びないし何が正解なのかもわからん。アドバイスとか一緒にやってくれる人がいると凄い助かるんだよ」
「じゃあ…あ、でもどうしようか。僕たちお互いにアリーナ取ってるし」
「ならレベッカさんの取った第5にしよう、ちょっと待ってて」
ビジョンシステムで通話アプリを展開し、職員室の柊木先生に通話をかける。
『はい、柊木です』
「お忙しい中すみません、1年1組九条春斗です」
『九条君ですね、どうしました?』
「あの元々第3アリーナを借りていたのですがレベッカ・ブルーノさんと特訓を行いたいのでキャンセルって出来ますか?」
『あー…ブルーノさんは近場にいますか?』
「あ、はい。居ます」
俺より先にレベッカさんが返答した。
『なら大丈夫です、本来アリーナを使った訓練や特訓は共同で行う場合両者の許諾が必要なんです。それと九条君の借りたアリーナは既に開けてありますので他の生徒の予約が入っていたりしたら再度使うことは出来ませんがよろしいですか?』
「はい、大丈夫です…それとすみません急にこんなことを言って」
『いいんですよ、生徒の為ですし』
いい先生だよなぁ…教え方は上手い、愛嬌もある、教師としても威厳もあるトリプル賞。
でも男子生徒の理性を削りにかかる無自覚行動は何とかしてほしいところ。
「ありがとうございます、では失礼します」
『はーい、頑張ってくださいね!』
そうして柊木先生との通信が切れた事を確認したのち、ビジョンシステムを終了。
「よし、じゃあ行くか?」
「うん…あ、でも先に行っててもらってもいい?ちょっと用事が」
「了解、じゃ先に第5アリーナ行ってるよ」
そうしてレベッカさんと別れた俺は第5アリーナへ向かっていった。
「…はい」
「えっ…ですが」
「わ…分かりました…ッ」
ーーー
「…とこんな感じで九条君がフレヤさんや時雨さんに勝ちにくいのは結構読みやすい動きだからだと思うよ」
「…」
「九条君?」
「分かりやすい…!」
「え?」
ここは第5アリーナ、急遽ここに移動した事もあり受付の人も困惑していたが柊木先生からの連絡もあり難無く通してくれた。
AGスーツに着替えて(制服を脱ぐだけ)アリーナの中に入りレベッカさんが来るまで黒鉄を展開し軽く動かしていると上級生の人から話しかけられた。一応、共同で訓練を行うつもりなので丁重にお断りさせていただいた。
それで盗み聞きで悪いが元々取っていた第3アリーナの予約のキャンセルがとんでもない量でたらしく、今第3アリーナはガランとしているらしい…何故だ?
んで、レベッカさんが来て一緒に特訓をしていてアドバイスが欲しく俺の前の戦闘動画を見せたところ分かりやすく的確なアドバイスを頂いていて今に至る。
「すっげぇ分かりやすい、てか読みやすい動きなんだな俺」
「それはしょうがないと思う、だって九条君の機体って専用アビリティーは無くて武装はその近接ブレードだけなんだよね」
「そうなんだよな…この黒鉄に詰まれている戦闘効率強化AIによると次のフェイズで何かしらの武装が解禁されるらしいが」
「何が来るか分からないと」
「そう、正解」
「うーん…でも近距離型になると僕もアドバイスしずらいかも」
改めてレベッカさんの専用AGを見る。
機体名『シトリン』
柊木先生の使う『リバイバル』と同様、中距離型の機体でそのリバイバルの改良機らしく武装のカスタマイズの幅がより広がった機体らしく、原型はあのリバイバルとほぼ同じだがオレンジ色と白色の装甲や所々の造形や武装はかなり違う。
「リバイバルの改良機、か」
「そうだね、柊木先生の使うリバイバルの武装のカスタマイズの幅は10に対してこっちは20」
「20って倍か…なんかその機体だけで軽い重戦車になれるな」
「かもね、あと九条君に聞きたかったんだけどその黒鉄の世代っていくつ?」
「世代?」
「え、知らないの?」
「すまん、何のことを言っているのか分からん」
そうしてレベッカ先生のありがたい授業が始まった。
専用機や訓練機には作成された時代、もとい世代があり現代化学の限界の最新機体であれば第5世代、訓練機の黒金やリバイブは第2世代、柊木先生のリバイバルは第3。
そしてレベッカさんのは第4世代と言うわけで最新の一個前の機体。ちなみに最新機体の専用機はフレヤ、葵、そしてアナスタシアらしい。
かという俺は…。
「書かれてない…」
そう、今黒鉄のデータを見てみたが所々塗りつぶされている部分に製作日時などが入っていていつの世代なのか不明。
「ま、まぁそれならしょうがないよ」
「すまんな…質問に答えられなくて」
「うんん、気にしないで。それでアドバイスなんだけど九条君の動きなら…」
「ふむふむ」
ビジョンシステムで展開された映像を見つつアドバイスを頂く。
「それでここ。直線攻撃は遠距離型だと結構狙いやすいから、左右に避けるのが得策なんだけど…ここでインパクトブーストしていたからそこまで大きく避けなくてもいいかもね」
「大きく?」
「思いっ切り身体を使って避けちゃうとその分の負荷が機体と操縦者にかかちゃうの。そうすると骨折とか機体が損傷する可能性も上がる、でも逆に言えば大きく避けず」
「細かく左右に弾を避ければ」
「当たりづらくなるし、次の攻撃にも移行しやすいでしょ?」
「なるほど…!分かりやすいな、流石レベッカさん」
そういう避け方もあるのか…流石だな。
「…あんなに分かりやすく教えていたというのに」
「私のきちんとした理論、完璧なる操作の説明に何の不満が…」
俺の後ろでコーチたちが愚痴っておられる。すまん…正直レベッカさんの説明があまりにも上手すぎるのが悪い。いやそれだと人のせいにしている感あるな。
「てかレベッカさんに言いたかったんだけど」
「何かな九条君?」
「俺のことは呼び捨てで大丈夫だ。クラスメイトなんだし」
「なら僕のことも呼び捨てでいいよ、改めてよろしくね春斗」
「あぁよろしくな、レベッカ」
これでちょこっと仲良くなれた気がするな。
「な、何を仲よさそうに…!」
「そうですわ…!それにそこまで近づく必要も無いはずです…!」
俺の背中に鋭い視線がぶっ刺さる。
「…それにしても専用アビリティの無い機体なんて珍しいね」
「珍しいのか?」
「うん、訓練機は量産性に長けているから専用アビリティが無いのは分かるんだけど、専用機に無いのは見たことが無いかも」
「その分の戦闘効率強化AIなのか…?」
「確かにありえるかも」
「あ、レベッカのシトリンの専用アビリティって?」
「装甲削除。実はこの装甲の一部がパージ出来るの」
「パージってことは防御力が下がるんじゃ…」
「その分、速度が上がるよ」
「あー、なるほど。諸刃の剣ってやつか」
てか武装を大量に積めるならパージ用の武装も搭載されてそう…実質アドバンテージになるのか。え、強くね?
「俺も遠距離武器とかあればなぁ…戦略というか戦い方が増えるかもしれないし」
「次解放されるかもしれない武装次第であり得るんじゃないかな」
「確かに、頼む~俺に遠距離武器を~」
「あははっ、それ今願うの?」
「あれだよ、備えあれば憂いなしってやつだ」
「…それ準備とかじゃないの?」
「うーむ…確かに」
やっぱり日本人の俺より日本語使うのが上手いんだよ、俺が今でも上手く使えないのが悪いんだけどねぇ!!
「…」
「レベッカ?」
「ふと気になったんだけど、フレヤさんとの戦闘も含めて何だけど戦っている時に徐々に動きが良くなってるのは何かあるの?」
「あー、それか?いやなんというかさ…俺、人の動きを見て覚えるのが得意なんだよ」
「人の動きが?」
「うん、あの時は戦いながらフレヤとかの動きを見てコツとか動き方とかを学んでその知識を活かして攻め手を見つけてるんだ。それで隙を見つけて戦ったって感じ。」
「…それ結構凄いことしてない?」
「そうか?」
実際のところこれを使えた機会はこの学園に来てからの戦闘と中学時代の部活動だけだ。
例としてバスケの試合の時に相手の癖や動きを見て、覚えてそれを攻め手に使う…でもチームメイトや顧問には言わなかった。信じてもらえないと思ってたしね。
「ってもう時間だね、そろそろ上がろっか」
「え、マジか…でもすっごいタメになる時間だった!本当に助かったよ」
「…良かったら明日もどう?実は連続で予約が取れてて」
「い、いいのか!?」
「う、うん」
「っしゃ!」
「…そ、そんなにうれしいの?」
「当たり前だろ?教え方は上手いし、俺の気づかなかった事を指摘してくれたしね」
「…」
よしよし…このまま行けばもっと強くなれる!あ、でもレベッカの時間を奪うのもなんかアレだしなぁ。
「なんか時間を奪い続けるのもアレだし…何かしてほしいことがあれば何でも言ってくれ」
「いいの?」
「あぁ、教えてくれるお礼ってやつ。それでチャラにしてくれるか?」
「…うん、そうだね」
「…」
まただ、またあの暗い顔。やっぱり何かを抱えているのか?
「なぁレベッカ」
「え、えっとどうしたの?」
「何か悩みがあるのか?考え込んでいるように見えるけど」
「なんでもないよ、ごめんね?」
いや何でもないじゃないだろその顔は。しかし、今触れるべきではない…今は踏み込みすぎるのは少しデリカシーがないと思われそうだ。
「まぁ俺も変なことを聞きすぎた、すまんな。じゃあ先に上がる、また明日な」
「うん…また明日」
そうして黒鉄でゲートまで戻り解除して端に置いておいた制服を着て、寮へ足を運ぶ。
(『私は貴様を認めない』、か)
今日だけで色々な事が起きた。
何かを抱え込んでいそうな転校生二人。柊木先生との戦闘訓練。
考え込みながら自分の部屋に戻りシャワーを浴びたのちAGスーツを洗濯&乾燥、そして勉強をしたのだが一向に手が付けられなかった。どうしてもあの二人の顔が浮かぶ。
(俺は一体何を感じ取ったんだ…?)
「ってアレ?俺の筆箱どこ行った?」
勉強を始めようと思いバックから教科書とノート、筆箱を出そうとしたが俺の筆箱がバックの中に入ってなかった。もしかして教室に置いてきたかアリーナで落としたか?。
コンコン
そう思っていた時、急に俺の部屋の扉からノック音が聞こえた。
「はーい?」
「レベッカブルーノです」
「え、レベッカ!?」
椅子から立ち上がり扉を開けると制服姿のレベッカが居た。
「どうした?」
「これ、忘れ物だよ」
「あ、俺の筆箱…何処にあったんだ?」
「実はアリーナのゲート辺りに落ちててね、本当は明日渡そうかなって思ってたんだけどもしかしたらって思って」
「すまん…ありがとう助かる。丁度困ってたんだ」
「良かった…じゃあ明日。第5アリーナで」
「あぁ、また明日」
そして筆箱を受け取り、扉を閉めた。
(…見逃さなかった)
扉を閉めるギリギリの所で一瞬見えたものがある。
あれはIDカード、しかもレベッカの学生証ではない。というより証明写真の無いIDカードだった。
普通持てるのかアレって、転校生だからか?
てか今日だけでも不審な行動も多かったな。本当に何かある、それと恐らく俺関係の。
(少し、警戒はするか)
とりあえず今日の勉強は止めだ。今の状態じゃ勉強に手が付かない。
制服をハンガーにかけて、タンクトップとバスケットパンツに着替えてベッドに入り込む。
「さっさと寝よう」
ーーー
「…こんな感じかな」
「ふむふむ」
午前中はAGの訓練があったがそれが終わり今は放課後。
放課後判定なのか?毎週土曜日にも授業はあるが、午前中だけの授業。今は約束通りレベッカとの特訓中、今日の第5アリーナは人だらけだ…所々見たことある人が数名こちらを見てくるが気のせいだ。
「フレヤの言ってた通り遠距離型には距離を詰めたほうが強いのか、でも柊木先生みたいにショットガンを持った機体になると厳しいと…」
「そうだね、柊木先生との戦闘は見てたけどやっぱりそこかな。でもサークルターンを一瞬で気づけたのは凄いよ」
「サークルターン?」
「遠距離型AGの空中戦の基本的な戦い方。敵を軸として周りを飛び回りながら射撃するっていう」
「アレか…」
「柊木先生は通常のサークルターンよりも圧倒的に早い、多分偏差撃ちとかが上手いからあの速度で回れると思う」
「なるほどね」
柊木先生、やっぱりすごいんだな。てか偏差撃ちで思ったけど機体の速度が出る分弾の狙いとかも多少はずれるのか。
「やっぱりレベッカも偏差撃ちの精度は?」
「僕はそこまで、基本的にサブマシンガンとかアサルトライフルとかを使うから…あんな一発一発を偏差で当てるなんて無理だよ。それに視界の先を呼んで逆からパイルバンカーとか」
「あれなぁ…初めてみた時消えたかと思った」
「初めてみるとそうなるよ」
あれどうやってやってるんだろうな…そう考えこんでいた。
次の瞬間
『警告!警告!ロックオンされています!』
「春斗伏せて!!」
「えっ!?」
唐突な警告音と共に急に声を荒げて俺の後ろに立ち、シールドで何かを弾いた。
「一体何が…!?」
大型の弾丸が飛んできた方向を見ると…深緑色の装甲、両肩に搭載された迫撃砲がこちらに向いていた。
そして操縦者は…。
「アナスタシア・アガポフ!?」
ゲートの上から俺を見下ろしている。
『九条春斗』
オープンチャンネルから一方的に通信が送られてくる、唐突に何なんだ…?
「…何だ」
気は進まない、でも無視をするのもあんまりだろうと思い一応返事をする。
『戦え、私と』
宣戦布告、またか。何でこう俺に対して宣戦布告してくるヤツって多いんだ。
「断る。今戦う理由は俺にはない。それに他の生徒たちは訓練中だ。ここで戦ったりなんてしたら他に危険が及ぶ」
『そうか、だが戦う理由は私にはある』
「そうかい、んでその理由は?」
『貴様はここに必要ない』
「…」
『昨日話したがここは新しい軍人を生み出すだけの施設だ、その中に貴様のような弱者は要らない。元居た場所に帰ったらどうだ一般人』
俺の感情が怒りに包まれていく中、俺の真横からダダッと弾丸を発射する音が。
「れ、レベッカ!?」
「へぇ?教員でも何でもないただの生徒の君がよく勝手にずけずけと学園の事を言えたものだね」
初めてみたこんな口調の強いレベッカを。まだ会ってやっと一日が経ったくらいだがあんなに優しそうな人間が割って入り、ここまで怒りの感情を表に出すなんて。
『イタリア製のアンティークが私の前に立ちふさがるとはな』
「ロシア製のルーキーには劣らないと思うけどね、むしろそれ以上に動ける気がするけど?」
『…』
目には目、歯には歯、煽りには煽りを返すレベッカ。
お互いに二本の迫撃砲と二丁のサブマシンガンを向け合いながら涼しい顔のままにらみ合う。
『そこの専用機持ち何をしている!!』
俺たちのオープンチャンネル及びアリーナの放送から教師の怒号が聞こえてくる。
『…ふん、興冷めだ。今日は引き上げることにする』
戦闘状態を解除したアナスタシアの専用機が粒子化し、アナスタシアと共にゲートに消えていった。あの性格だ、このあと教師たちに捕まっても無視して終わりだろう。
「レベッカ…」
「春斗大丈夫?怪我とかは」
「大丈夫だ、ありがとう守ってくれて」
「…当たり前だよ、クラスメイトなんだし」
さっきまでの鋭い目つきは無くなり、優しい瞳に戻っている。
「春斗さん!」
「春斗!」
と同時に葵とフレヤがこちらに向かってきている。
「何事でしたの!?」
「す、すまん…ちょっとひと悶着あってな」
「ちょっとどころの騒ぎでは無いぞ…あの人と何が?」
「…」
「ま、まぁまぁ二人とも落ち着いて。春斗もきっと疲れてるから」
「…そうですわね、変に聞きこみすぎるのもアレですし」
「…うむ」
レベッカのお陰で二人からの質問はそれ以上飛んでくることはなかった。
「それにしても何なんですの!あの方の態度、気に入りませんわ」
「あぁ、春斗に対してもそうだが何を勝手に…春斗?」
「なぁフレヤ、葵、レベッカ。少し俺の独り言を聞いてくれないか?」
「春斗の独り言?」
「…あの人の言葉使いは知らないが、何か引っ掛かるんだ」
「引っ掛かる?」
「あぁ」
そうして話した、更衣室で起きたひと悶着と俺の感じた違和感の事を。
「棘はあるのにその真意が見えない、ということですわね」
「あぁ…発言といい、俺に対する態度は明らかに悪い。だが何故俺にこだわるのかが分からないんだ」
「…先ほど言った一般人だからじゃないかな?」
さっきまで考え込んでいたレベッカが口を開く。
「一般人だから?」
「確かに俺はIGD学園の唯一の男子生徒で試験も受けてない。それを除けばただの一般人だしな」
「でも一般人に対していきなり迫撃砲を撃つのか?」
「…そういわれるとな」
アナスタシア・アガポフ…何が狙いなんだ?
そんなことを考えているとプライベートチャンネルに一件のメッセージが送られてきた。
「…!」
「春斗?」
「すまん、今日はもう上がる」
「え?どうしたの急に…」
「ごめんなレベッカ、俺の為に時間を割いてくれたのに」
俺は一方的にフライトでゲートまで戻り黒鉄を解除して、制服に着替え一足先に寮へ戻った。
そして寝る前にやるAGスーツの洗濯&乾燥をしておき軽く料理を作った。ここの寮にある売店には弁当や飲み物は勿論、生ものもあるので料理の素材は買いやすい。
んで料理を作り少し早い夕飯を食べたのち、俺はメールの内容の中にある指定時間とその場所の確認をした。
『九条春斗。一般人とも差し支えない貴様に戦場の厳しさを教えてやる。その教えの元にこの学園を去るがいい。場所、第3アリーナ 時間、06:30』
誤字脱字、語彙力がほぼ皆無に等しいのでミス等がありましたらご報告お願いします
感想も待っていますので気軽にどうぞ!
超絶不定期更新ですがご了承ください…




