第115話 日進月歩
「邪魔…くせぇ!!」
放たれるミサイルや弾丸、レーザーを魔刀で切り裂きながら突き進む。
所々俺の身体に掠り、傷が付くが知ったことか。
『止まれ…!止まれよ!!何故その体で突き進む!?』
「お前にはわからないだろうな!俺が突き進む意味を!」
再度放たれるミサイルの雨を掻い潜り、キャッスルの装甲に魔刀を変形させパイルバンカーに換装。そして…!
――ズガアァァァンッ!!
『くっ!?』
「俺は…止まらんッ!」
パイルバンカーの杭がエヴォリューションの装甲を貫くが、掻い潜りながら接近したせいで狙いがズレた。
だが、いいところもあった。
エヴォリューションの装甲は確かに分厚い。
そう簡単に内部の装甲まで切り裂くことはできないが…ただ分厚いだけだ。
貫通させれば内部まで貫けるし、切り裂いて装甲を剥がし続ければ内部までたどり着く。
更に!こいつ等にはもう替えの装甲はない!
『クソ!!』
「!」
腕に付けられたブレードが二本、俺に振り下ろされるが。
「ふん!」
蹴りで弾き返しながら両腕にレーザーダガーを構え、切り裂きながら離脱。
そして、スターダストに切り替え、サークルターンをしつつ狙いを定め射撃。
『くっ!?』
またミサイルと弾丸が放たれる。
再度突っ込むのもありだが…出来る限り遠距離攻撃で鎧を壊せ、そこから斬り裂けばダメージにも期待できる。
「…」
頭をフル回転させろ。
何もかもを生み出せ。敵の武装も、味方の武装も何もかもを!
「…ッ…?」
頭に一瞬痛みが走ると同時に理解できた。
右目から血涙していることに。
…知るか!
「全部…使う…!俺の全てでお前を潰す!!はぁぁぁぁぁっ!!!」
全身から更に大量の黎蝶が飛び出す。
『そ、そんなに大量に!?実験結果では人間一人に1万匹のはずだ!それは椿と青葉が』
「分かっていないのか?」
『…』
「俺の中には…お前たちに食いつぶされた子供たち全員が居るんだ。1万で終わらず、10億体以上の黎蝶が俺に宿ってんだよッ!!」
『なっ!?』
「俺の中にいる黎蝶たちこそ、お前たちのせいで犠牲になった子供たちだ!」
生成したのは大量のティターニアのビットやアジダハーカの龍の頭に椿と青葉の魔剣。
「子供たちの無念を、悲しみを、怒りを…!」
焔を抜刀し、刃を空に向ける。
炎が集中していき、黒い刀身は熱せられていき白い刃となった。
「その身に…刻み込めッ!」
刀身を下に振り下ろし、エヴォリューションに正面から突撃する。
それと同時に大量の魔剣はミサイルや弾丸を弾き、レーザーは龍の炎が焼き尽くし、ビットたちがエヴォリューションの装甲を貫いていく。
『が、ガキどもがぁぁぁ!!』
「はぁっ!!」
白熱化した刀身をエヴォリューションの胴体を火花を散らしながら斜めに切り裂く。
『大ダメージを確認、回避不能回避不能』
『クソ…せめて…!!』
魔剣やビットを狙っていた弾幕がまた一斉に俺に向く。
「―――ふぅ…!」
深呼吸。
俺は止まらない、この程度の弾幕でも俺は死なない。
お前たちの野望を打ちこわし、親が守った今ある世界を守り、蝶となってしまった子供たちを輝く未来へと連れていき、友人たちや家族が笑って歩けるような…そんな平和な世界へと!
その為にも…俺は。
「ここで死んでも…倒す!!」
『消えろぉぉぉぉぉッ!!』
全ての弾幕が俺に向き、エヴォリューションが後ろに引きながら俺に向かって極大のレーザーが放たれる。
それを見て、俺は…レーザーに向かって突き進み焔を構え、叫ぶ。
――親の技を。
「焔舞ィッ!!」
『焔舞だと!?』
◇◇◇
左、右とミサイルを切り裂き。
上に弾丸を切り上げつつ、回転し一部の弾丸をかわし、右斜め上、左斜め上とレーザーを切り上げる。
「ぐっ!?」
弾丸やレーザーが春斗の身体に着弾し、皮膚が焼けるような感覚に襲われるが彼は止まらない。
右に一閃し、残りのミサイルを切り裂きながら目の前まで迫ってきたレーザーに向かってインパクトブーストしながら突きをして突撃。
「はぁぁぁぁっ!!」
レーザーを切り裂きながら突き進んでいく。
(足りねぇ…!!もっともっとだ!!)
右手で焔を握りしめていたが、左手も添えて突き進む。
シールドエネルギーのない彼にとってこのレーザーの通路は地獄そのものだった。
身体を焼き尽くそうとするレーザーの温度と激痛。
彼の一部の皮膚が変色していく。
だが、その程度で逃げるほど彼は…落ちていない。
「退けぇぇぇぇッ!!」
春斗はレーザーを突きで突破。
身体の一部が燃え焦げていても彼の双眸は敵を見逃さない。
「はぁっ…!!」
『く、来るなァァァ!!』
萎羅と枯葉は一心不乱にブレードが握られた腕を操作し、二人にとって怨念の権化に見える春斗を何が何でも殺さなければと思い振り回す。
しかし、春斗は自身に向けられた刃を見ても焦りもせず落ち着いた様子でそのまま横に切り裂く。
白熱化した焔の刃の温度は豪熱。
世界を壊さんとする者たちの刃を熱で真っ二つに斬る。
『あ、ありえない!!』
『化け物か!?』
二人はこのタイミングで理解した。
適合化したbutterflyの恐ろしさを。
そして理解させられた。
自分自身が浪費していった子供たちの命や殺してきた人々の恨みを。
この少年が恨みや怒り、今の世界の全てを背負って刃を向けてきていることに。
「…!!」
切り裂かれたブレードを投げ捨て、エボリューションの腕が春斗に向かっていく。
だが。
――キィィィィィン…!
無残に切られる。
『ひぃぃぃっ?!』
二本の腕が残ったが、その他には何も残っていないエヴォリューションは元凶と共に一心不乱に春斗から逃げようとする。
しかし。
――ギャリリリリッ!
『く、鎖が…!?』
放たれた鎖がエヴォリューションを巻きつけ逃がさんとする。
「これで…逃げれないだろ…!ゲホッ!?ゴホッ!?」
一方的に攻めている春斗だが、この戦いが始まってからのダメージやbutterflyの影響で起きた激痛は確実に積み重なっていた。
口や目から血が流れる。
「はぁっ…はぁっ…!?」
人としてはいつ倒れてもおかしくはないが春斗は何が何でも自分の意識をつなぎとめる。
(この元凶を潰すまでは…!)
怒りや殺意を目に込めて睨みつける。
『や、止めろ!!近づくな!』
『い、いいのか!?今の世界の天才の発明をつぶしても!?』
悪役らしい命乞い。
それに対して春斗は
「…そんな発明…必要ない…!」
『な』
必要ないと言い切り、鎖に巻き付けられたエヴォリューションを空へ投げ飛ばす。
「ふぅ…」
春斗は焔を納刀し、魔刀を左手に生成し構える。
(…これが自分に合う『舞』か)
このタイミングで春斗は…刀の軌跡が見えた。
まるでこう振るえと言っているかのように。
「『九条流』詩の舞…!」
上へ飛びあがり、エヴォリューションに接近。
一つ、二つと右上に切り上げ左斜め下に斬り下ろす。
「!」
頭部が下に向いたと同時に、抜刀しながら背後に回って右から左へ一閃。
振り向いてきた瞬間、魔刀を身体に近づけ突きをしながら焔を納刀し、そして右下から左上に切り上げる。
『がっ!?』
体制が完全に崩れ、のけぞった瞬間。
上に向かってインパクトブーストし、空へと飛びあがり魔刀を構え、左の肩を狙って縦に斬り抜く。
『ぐうっ!?』
片方だけに斬撃をもらい、よろけたエヴォリューション。
態勢を整え、切り抜いていった春斗の方へ見ると
「―――」
『――あ。』
そこには双眸を黄色に染め、敵をロックオンし、焔の柄に手を握りしめ、抜刀の構えをしていた。
母のような連撃と自分の持ち味である抜刀術を組み合わせた九条春斗の詩の舞。
それこそ
「『桜舞』」
焔を抜刀し、白熱化した刃が一瞬のうちにエヴォリューションの胴体を通過する。
それはもう見事に。
敵が切られた事に気が付かず、隙だらけになった春斗の背中に向けて拳を振り下ろそうとするが。
――キィィィィィン…。
『あ…?』
春斗が納刀したと同時にエボリューションの胴体に切れ込みが入り、上半身と下半身がズレる。
エボリューションの足と背中に付けられたジェット機構の向きも変わり、上半身と下半身は乖離し、下半身は彼方へと飛び去り爆散。
上半身のみで飛び上がるエボリューション。
『そ、装甲を一撃で…?』
『ま、マズイ!?ダメージとコントロールの制御が!?』
萎羅と枯葉の声が聞こえたと同時に上半身だけになったエボリューションは下へと落ちていく。
早朝から始まった最終決戦。
時間は過ぎ、様々な事もあったが夕焼けに照らされる沈まぬ太陽と沈まぬ月を具現化した鎧に身を包み、子供たち、友人、家族。
そして世界の為に戦った青年の勝利で…幕を、閉じた。
「――終わった…か」
「ゴホッゴホッ!?ガハッ!!?」
◇◇◇
「エボリューションの信号停止!ですが春斗のバイタルサインに異変!!これって…!?」
IGD学園のモニターに映る勝者。
だが…勝者の命の灯ももう消えかけていた。
彼は戦いが始まってから様々な戦場を経験し、ダメージが確実に蓄積されていた。
もはや限界に近かった。
「専用機持ちや職員!AGの起動は!?」
「…ダメです!未だAGの起動は強制的に止められています!」
「私のHAGも同様に…!」
「クソ!アイツを助ける手段が…!」
空中に浮かぶ、春斗。
バイタルサインは確実に弱くなっている。
すると
『これで…救われるな、子供たちよ』
春斗が弱弱しい声で呟き始めた。
『戦いは終わった…ようやく君たちは呪縛から解放され、家族のもとに帰れる』
「何を言ってるんだ…?」
『…俺の…人工血液にあるギアをコアに君たちを蘇生する…それからは家族とともに新しい人生を歩むといい…ゴホッ!?』
「…!」
その春斗の呟きを聞いた瞬間、真っ先に理解したのは…椿だった。
「そういうこと…!?」
「お姉ちゃん、何かわかったの?」
「春斗は自分自身の人工血液にあるギアをコアに蘇生すると言いました…それは私と同じ手法のはず!となれば黎蝶は子供たち…黎蝶と自分自身の血液を糧にし、蘇生する気です!ですが…それをすれば春斗は…死んでしまいます」
「なに!?」
「な、何故春斗が死ぬんだ!?」
「春斗の人工血液の量は彼の全ての血液の半分です!ずっと攻撃を防がなかったのは血を流す為だと思います…今の状態の春斗が血液を半分失えば…大量出血のような状態になり…」
「…ッ!」
その場にいる人たちは理解した。
彼は…帰ってくる気はない。自分自身を糧にして子供たちを蘇生する気だ。
元凶に言い放った通り『奪われたものを全て奪い返そう』としている。
『これで』
次の瞬間。
『九条春斗ォォォォ!!!』
満身創痍な春斗が何かに捕まれ、空高く飛び上がっていく。
掴んだ者は…。
「え、エヴォリューション!?そんな…まさか、再起動…!?信号は失われたはずなのに…!」
何処までも救いようがない。
敗者はカーテンコールを受けてもなお、勝者を地面に引きずり降ろそうとする。
「―――」
それに対して春斗は何も抵抗しない。
もはや抵抗するほどの意識や体力がないのかもしれない。
そんな状態のまま春斗はエヴォリューションに空へと連れていかれる。
「春斗ッ!」
◇◇◇
「―――」
『貴様のせいで何もかもが台無しだ…!お前の親も…常に私たちの足を引っ張ってきた!』
『このまま逃げられないのなら…死なば諸共でお前も地獄に引きずり降ろしてやる!』
…地獄、か。
当たり前だ。俺は地獄に行くべき存在。
化け物だし、人間じゃねぇし。
『この世界はもう救えない!新たな道を捨てた理解力が足らない猿共め!だが…お前さえ殺せば変わる!お前のような英雄がいなくなればIGD学園の奴らもお前と関わってきたやつらは二度とたち上がらなくなり、私たちの同胞がトドメを刺すだろう!』
「英…雄…?」
『そうだ!』
「…馬鹿言うな、俺は英雄なんかじゃ…ねぇ…」
英雄じゃない。
俺は…前の自分と決別する。
皆を、守れるように。
だが…守れたと思う。
俺と一緒にこの元凶が死ぬなら、どちらにせよ世界の脅威は消え去る。
子供たちも新しい人生を歩む。
家族や友人たちも、輝かしい明日へと進むことが出来る。
それに…椿や青葉もそうだ。
今まで虐げられた分、これからは幸せな毎日が続くはずだろう。
その礎になれるのなら。
「アイツらの為に…死ねるなら…本望だ…!」
『!!』
それに俺がキャッスルで死んでもみんなは立ち上がった。
そう簡単に負ける人たちじゃないっていうのは俺が一番知ってる。
「どうした…?早く俺を地獄に送れよ…」
『き、貴様!狂っているのか!?何故そこまで死にたがる!!』
「死にたがる…?違うな」
『違う…だと?』
俺は親に…心の底から憧れ、尊敬している。
「俺の親は…世界の為にギアを作り出し…俺の為に俺の書類を燃やしつくし、自分たちの命を散らした…親バカだ…」
『…』
「でも…俺にとっては感謝しかない…家族のお陰で大切な仲間たちと出会い…世界を救うことが出来る…それで…守れなかった俺は満足だ」
『貴様…!』
「世界を見捨て…身勝手な世界を作り出そうとしたゴミのような神共に比べたら…俺の親の方が…神様に近い…だろうよ」
『貴様ァァァァァッ!!!』
あぁ…これで終わりか。
歩んだ道はとても長かった。
IGD学園で過ごした日々を思い出す…本当に色々な事があったけど毎日が楽しくて、思い出すだけで笑みがこぼれる。
…なぁ葵。
お前の告白は…地獄に持ってく。
気持ちや感謝を込めて大切にする。
ありがとう。
目を、閉じる。
『mother!!自爆プログラムを!』
『sssssしょu諾』
「…mother…?」
motherという単語を聞き目を開く。
そうだ…まだ奪い返せてないものがあるじゃないか。
しかも、二つも。
…すまん、子供たち。
自爆すると同時に蘇生しようと思ったが、もう少しだけ力を貸してほしい。
(これが最期のお仕事だ)
誤字脱字、語彙力がほぼ皆無に等しいのでミス等がありましたらご報告お願いします
感想も待っていますので気軽にどうぞ!
超絶不定期更新ですがご了承ください…




