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インフィニティ・ギア  作者: 雨乃時雨
第三部
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第114話 沈まぬ月

エヴォリューションを避難区画の外へ蹴り飛ばし、俺は用いる全てで襲い掛かる。

戦友の武器、恩師の武器、魔刀、焔、黎蝶…そして。


「ぐう…ッ!!」


――解放する。


――子供たちの呪縛を。


――椿と青葉の鎖を。


――守って見せる。


――俺の親が守った世界を。


――俺の友人や家族を。


「がぁぁぁぁぁっ!!!」


渇望を。

右腕にヒビが入り、全身に力が溢れ出る。

俺の全てでコイツを…!!


『な、何だコイツ!?』

『目で追えない!?』


エヴォリューションのコアにmotherが入っていることはわかっている。

その影響で俺の攻撃に合わせてカウンターし、俺にダメージを与える。

だが…それがどうした?

俺は死んでねぇし、元凶も潰れてねぇ!

いくら血を流そうとも、いくら傷を負おうとも関係ない。

魔刀と焔を振り下ろす。

二刀流は慣れないが…葵の動きを思い出しつつ振るう。


『がっ!!?』

「シャルーア…!!」


刀で装甲を切り刻み、シャルーアで装甲を叩き壊す。

装甲に隙間が出来た瞬間、雫とシグルドを構えて突き刺し、横に開く。


「ひっ!?」


コックピットが露出し、二人を引きずり降ろそうとしたが。


「チィッ!!」


キャッスルからの新しい装甲や部品が勢いよく飛んできてそれに当たり体制が崩れる。


「いってぇ…!!」


普通に痛い…シールドエネルギーはない、というより0にしたしな。

防ぐ必要はない。とにかくエヴォリューションを削りつつ、俺が血を流さないと。

てかなんなら割と…視界が歪む。

貧血というよりかは黎蝶の影響もある。

赫蝶は無尽蔵のエネルギーの吸収。

翠蝶は無尽蔵のエネルギーの生成。

なら黎蝶は?

…どっちもだ。

無尽蔵のエネルギーの生成に無尽蔵のエネルギーの吸収。

つまるところ『循環』が『黎蝶』として俺の中にある。

全身から力が溢れ、激痛が走る…耐えるのも一苦労だ。

正直、こんなデメリットを背負いながら生活するなんて考えたくもない。

これが最高傑作って…ねぇ?

てかbutterflyを自分自身に試せよ。多分俺の母さんは多分乗ったぞ、これに。

丁度人間を辞めててよかったよ!


『mother!キャッスルのパーツ全部寄こせ!あの城にもう用はない!』

『承諾』


空中に浮かぶ、真っ二つに切られたキャッスルが空中分解し、分解した破片やパーツがエヴォリューションと合体していく。


「そう簡単には落ちないよな…」


更に一回り大きくなり、腕も6本に増え武装も増えた。

先程俺がこじ開けた所もまた塞がっている。

だが、やることは変わらない。

斬る、貫く、穿つ、壊す。

それをやり続けて、元凶二人を引きずり出せばいい。

…だが。


「ふぅ…」


それまでに体がもつかどうか、だな。

全身にヒビが廻っている。それに黎蝶を使い続けないと俺の左腕を維持できないし、武装もなくなる。

あと子供たちの蘇生の為にも。

出血した血の中にあるギアに思考回路を集中させながら、黎蝶を使う。

…もうすでに流れた血に一部の黎蝶を纏わせてある。

ある程度の子供たちの蘇生は今からでも可能だが、コイツが生きている限り蘇生すると狙われるに決まってる。

蘇生はコイツを再起不能にしてからだ。


『殺す…!殺してやるぞ九条春斗ォォォォ!!』


六本の腕から数多の武装が展開される。

そこまでして俺を殺したいのか。


「…言うこともない」


結局俺を殺したいのは最高傑作が無くなったという怒り、AGを全て壊し我々の方が優れているという愉悦感に浸りたいだけだろう。

世界の事を考えた…というよりかは、『自分の世界を作り出す』という欲に走っただけだ。

王の器もない。

こんな奴らの世界はどうなるかの予想が付く。


「…」


左手を見る。

真っ黒で、トゲトゲしている。

こんな世界になるだろうな。

そうさせない為にも、ここで…!


「潰すッ!!」


◇◇◇


IGD学園避難区画。

そこにあるモニターには弾幕をはるエヴォリューションとそれを切り裂きながら突撃する春斗が映っていた。


「春斗!」

「む、無茶苦茶な戦い方だ!アレではAG以上に操縦者の肉体が持たないぞ!?」

「…いや、多分…これで良いんだと思う」


アナスタシアが春斗の心配をするが水津が意見を出す。


「白夜の性能は全てのAGを凌駕する。スペックも…パワーも」

「だが春斗が」

「春斗はもう、自分自身を人間じゃないって言ってた…」

「!」

「…それにここにいる皆が予想してると思う。春斗は…自分が死のうがどうでもいいって考えてることに」


水津の声にIGD学園の殆どの生徒と教員が黙り込む。

自分自身を存在してはいけない、おまけに化け物と言っていた。

IGD学園の全員はその行動に見覚えしかなかった。

かつて、春斗はIGD学園を危険にさらさないために学園を去り、秘密裏に学園を守り、あまつさえ自分の命を蔑ろにした無茶をしでかした。

だが…今回は違う。

本気で彼はここで死ぬ気だ。

助かる気がない様に見える。


「…やっぱり指切りげんまんじゃ足らなかったわね。契約書を書かせればよかったわ」

「正直、契約書でも従うかどうか怪しくありませんこと?」

「それもそうね…とにかく今は春斗君を信じましょう。それで…帰ってこなかったのなら…労いの言葉をかけて、感謝して…本気で怒りましょう」

「うん…」


とにかく今は春斗を信じるしかなかった。

彼に帰ってくる気がなくても、帰ってこれる場所はある。

彼が守った場所に彼の居場所が無いなんてことはない。

常に守った場所に人間をやめた化け物を迎え入れる準備は万端だった。

それ相応の行動を残したのだから。


「…ねぇお姉ちゃん」

「なに?」

「春斗っていつもこんなことを?」


青葉は椿に問う。

元々、椿は春斗に宿っていたもの。

この場にいる誰よりも彼の事を知っていると踏んで質問した。


「いつもこんな感じね。自分のことは考えず、人の為だけに身を粉にして戦う…優しいというより優しすぎる人」

「…」

「でも…今の私たちには春斗っていう存在がなければこうはならなかった」

「?」

「受け入れられなければ…私と青葉は巡り合っていないし、そこにいる水津、アイヴィー、雪華さん、フレヤさんを含めた専用機持ち全員、春斗に救われたような物なの。多分青葉もわかるでしょ?」

「うん…」

「親身になって聞いて、同じ立場になって動いて、悩みも悲しみも何もかもを食い尽くし、己の手で潰す。そんな…優しい人間」


椿はそういってモニターに写る、自分の為に一心不乱に戦い続ける優しい人間を見る。


(昔から無茶の連続ですが…無茶のお陰で私が救われたところもありますから変に怒れないんですよね…)


今まで春斗と共に歩んできた道や戦場を見てきた椿にとって春斗は、もう一人の家族のようだった。


(叶わぬ願いかもしれませんが…絶対に帰ってきてください)


心の中で願う。

心優しき人間を止めた化け物の帰りを。


「…アレ?」


すると水津が素っ頓狂な声を上げた。


「どうした?」

「は、春斗の無線がオープンになってる…!?」

「へ?」


春斗の無線がオープンになっている、ということは今の春斗がどんな状況で何と言っているのか聞き取れる。

しかも、本人はそれに気が付いていない。

もしかしたら先程の話に合った帰ってくるのか否かの答えが得られる可能性があるという事。


「今すぐに九条の回線をつなげ!」

「は、はい!」


御影の指示に従い、春斗との通信を繋ぐ水津。


『邪魔だ…!!』


春斗の声が聞こえてきた。

映像を見る限り、弾幕を交わしつつ、切り裂きながら進んでいる。


「九条!聞こえるか!?」

『…』


春斗からの返答はない。

恐らく音声は拾えるが春斗への声は届かない。


「指示は出せず…か」


ドカッと椅子に座る御影。


(本当に信じることしかできないのがもどかしいな)


今、生徒や教員たちに出来ることはただ一つ。

青年を信じることのみ。

戦いに勝利すること、無事に帰ってくることを。

誤字脱字、語彙力がほぼ皆無に等しいのでミス等がありましたらご報告お願いします


感想も待っていますので気軽にどうぞ!


超絶不定期更新ですがご了承ください…

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