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インフィニティ・ギア  作者: 雨乃時雨
第三部
115/122

第113話 黎蝶、その意味と責任を

IGD学園避難区画。

そこには避難民と戦闘継続不可能になってしまった生徒や教員が揃っていた。


「水津、春斗は…」

「今も橋で戦ってるけど…何だろうこれ」

「どうした?」


水津と葵が春斗のバイタルサインを確認する。

そのモニターには一定周期で振るえる波があった。

だが…定期的にノイズが走り、見えなくなる時がある。


「…何か問題が起きているのかも」

「EMPか?」

「多分…外部的問題というより…春斗自身に何かが起きてるとしか考えられない」

「!」


葵は一つの話を思い出す。


『春斗にヒビの事を聞いた際も話をはぐらかされましたし』


椿と青葉が再会していた際に椿が話した春斗の情報。

赫蝶も翠蝶も居ないはずなのに目元に自壊のようなヒビがあったということを。

消滅したという可能性があったが春斗は戻ってきた。

となれば消滅していないことは確定したが、そうなると椿の見たヒビは何なんだという話になる。


(まだ、何か隠しているのか…?)


ありえない話ではない。


「…!?御影先生!高エネルギー反応がこちらに向かって高速で接近中です!」

「何だと!?」


御影が反応したと同時に。


――ドゴォォォォォォォン!!


避難区画の壁が突き破られ。


『はぁっ…!?はぁっ…!?』


切り刻まれ、ボロボロになったエヴォリューションが姿を見せた。

幸いにも突き破られた壁の近くには人は一人としておらず、巻き込まれることはなかった。


『ま、mother!お前の自動反撃システムはどうなっている!!』

『使用中です』

『なら何故攻撃が防げない!それに…何なんだあの化け物は!!』


明らかに怯えて二人。


「何でここに…!?」

『青葉!せ、せめてもの報いだ…!青葉さえ殺せば!!』


血のつながった実の娘であることもお構いなしに、二人はエヴォリューションを操作し、青葉の元まで走り、ブレードを握りしめて突く。


――バギャアッ!!


「やっぱりズルしねぇと勝てない機体じゃねぇか!!」

「春斗ッ!?」


しかし、その攻撃は防がれる。

青葉へのブレードの突きを防いだのは…傷だらけで血を流し、ボロボロの春斗。

しかも、左腕のハイエンドの義手が青葉を防ぐために使ったせいで手のひらから二の腕まで貫かれ、義手としての機能を失ってしまった。


『い、イカれてる…!』

「それは…こっちのセリフだ!!」


あまった右腕の拳のパンチでエヴォリューションの胴を殴り飛ばし、避難区画の入口の方の壁に叩きつける。


「…流石に、キツイな」

「キツイなって言ってる場合じゃないでしょ!!私のせいで左腕が…!」

「あぁ…motherに付けられた義手が壊されちまった…クソ、貰いものだったのに」

「そっちじゃないです!春斗の腕が…!」

「そんなことはどうでもいい」

「どうでもいいって…そんなに血を流して左腕が無くなってしまったんですよ!?」


声を荒げる青葉の事も気にせず、春斗は立ち上がる。


『き、貴様…!』

「どうした?たかが5分程度戦っただけじゃないか。何故そんなに怯える?」

『…いやお前の左腕はもうない!片腕で何をする気だ!?』

「戦う」

『!?』


即答。

まるで当たり前の事に答えるかのように答えた。


「俺はお前たちから全てを奪い返す。失われた命、捨てられた人生…そして椿と青葉」

「「!」」

「何もかもを奪い返す」

『な…何なんだお前は!!』

「俺は九条春斗。お前たちが殺した九条夏樹、九条克樹の息子だ」


右腕で焔を握り、刀身を元凶二人に向ける。


(どうする…!?私たちも巻き込まれるかもしれないが最終手段を使うしかないのか!?)


エヴォリューションに乗り込む二人は最終手段に手を出すか否かを考えていた。

その最終手段を使えばこの場にいる全員が死ぬかもしれないし、二人を崇めるかもしれない。しかし、その影響をこの二人も受ける可能性がある。


(いやもういい!この際…コイツだけでも!)


目の前にいる憎い二人の息子さえ殺せるのなら他の人たちは必要な生贄で殺す。

そう決断した二人は最終兵器のボタンを押そうとしたが


「あ、思い出した」


急に春斗が何かを思い出したようだ。


「そういえばキャッスルにbutterflyがあったな」

『し、知っているのか…なら話は早い!私たちの最終兵器を起動し、このままIGD学園にbutterflyを散布し、お前たちが選ばれなければ死ぬ!それにより私たちの勝』

「そんなもの」





――()()()()()()()()()()()


『…は?』

「へ?」


意味が分からないという顔をする元凶二人と青葉。


『な、何を言って…』

「だからそんなものはもう存在しないし、これから生まれることもねぇよ」

「春斗…貴方は何を言っているんですか?」

「なぁ青葉。一応確認なんだが、butterflyを投与され、適合できなかった子供をまたbutterflyに戻すことが出来るんだよな?」

「は、はい…そのはずですが」

「つまり適合した青葉と椿はbutterflyには出来ない。そういう認識でいいか?」

「はい…」


急にbutterflyの事を聞き始める春斗。


『い、いい加減話したらどうだ!何故butterflyがこの世にないと言い切れる!?』

「…気が付かなかったのか?」

『何を…?』

「お前たちの目の前に()()()()()()()がいることに。」


IGD学園避難区画が静まり返る。


「三人目の適合者…?」

「ま、待ってください!春斗!まさか!?」

「――子供たち。任せっきりになってしまったが…他のハイエンドたちは倒してくれた?」


椿の驚きの声と共にハイエンドたちが避難区画に突入してくる。

だがそのハイエンドたちはエヴォリューションではなく、春斗の方に集う。


「全機撃破か、流石だな」

『ま、待て!何故ハイエンドが…!?』

「さぁ、子供たち…いや『黎蝶れいちょう』。今こそ、俺の元へ」


その声とともに春斗の元に集まったハイエンドから大量の黒い蝶たちが飛び出す。


「く、黒い蝶!?」


青葉と椿が反応すると共に無くなってしまった春斗の左腕に集まっていく黒い蝶たち。

やがて、形を成していく。

強靭な爪に、禍々しい腕、鎧のような外殻を持つ真っ黒な腕が生まれ…。

左手に黒い蝶が集まっていき、更に何かを生み出そうとしている。

すると柄のようなものが創られ、そこから真っ黒で形が朧げな刀身が生み出される。


「アレは…!」


椿と青葉には覚えがあった。

彼女たちが体内の蝶の武装、『魔剣』。

それが…春斗のもとに作り上げられつつある。


「…!!」


ガシッと春斗はその魔剣を左手で握る。

その瞬間、形が朧気だった魔剣の刀身が綺麗な形を作り出し…春斗の魔剣が姿を見せた。

赫蝶で作られたレヴァンティンと似つかない造形。

ソードのような両刃ではなく、刀のような片刃。

鍔もない、真っ黒な刀身には『赤色』と『緑色』の模様が入っている。

そして、『魔剣』ではなく『魔刀』を握る青年は…。


「―――」


――双眸を黄色く染め、元凶を睨みつけていた。


『な、何故お前に蝶が!?』

「…そうだな、言っておくか。このまま黙ってたら椿や青葉、それに友達や家族に怒られそうだしな…」


もう、怒られることは確定していることに気が付いていない春斗。


「青葉と消される前のmotherに命令されていたことは実験施設がある医療施設の破壊及びbutterflyと子供たちの遺体の回収。だが俺はbutterflyは渡さず、子供たちの遺体のみmotherに渡した」

「…」

「まぁ…それでmotherから白夜とかを返してもらった後に…あるポンプと子供たちの遺体を発見した。そこで丁度見た、子供たちがbutterflyになった所を」

「butterflyに…」

「それでmotherから聞いた話のままであればbutterflyというものが存在し続ける限り、悲劇が生まれ続ける。勿論、破棄も考えたけど…ただ方法も分からなかったから破棄は出来ない。そこで考えた、俺は蘇生された身。普通なら存在してはいけない、おまけに化け物だ」


人間にとって禁忌ともいえる行為。

死んだ体を蘇生する。

ある意味、医療のゴールかもしれないが遺体を使うこと自体かなりタブーだ。


「なら…やることはひとつだろ?」

「春斗…貴方は…!」

「予想通りだと思うが…俺は今、この世に存在する『butterfly』を()()()()()()()

『はぁっ!?』

「子供たちの悲鳴、悲願、懇願…そしてこれ以上の犠牲を出さないためにも」


春斗の行動に驚く面々。

特に青葉と椿はbutterflyという恐ろしさを知っている。故に…この世の全てのbutterflyを取り入れた春斗の痛みが理解できない。


「まぁこれでこの世にはbutterflyが存在しないかつ適合しなかった奴も居ない…つまりこれ以上butterflyが生まれることもない」

『き、貴様!』

「どうした?最高傑作なんだろう?」

『わ、私たちの最高傑作に何てことを』

「子供たちになんてことしてんだよゴミ共がッ!!」

『!!?』


声を荒げる春斗。


「お前らのくだらねぇ計画に何人の子供が死んだ?何人の罪のない子供が巻き込まれた?自分が天才だと?甘ったれんな!!お前たち以上の天才が既にこの世に名を刻んでんだよ!」

『だ、誰がだ!』

「俺の親だ」


淡々と告げる。


『それはお前が息子だから』

「実の娘すら実験の道具にしたんだろ?俺はされなかったが?」

『…ッ』

「この時点で親として負けている。そして名を残したのは俺の親の方だ…だからはっきり言う。お前たちは科学者としても家族としても俺の親には敵わない」 

『何だと!?』

「…何故を理解できていない時点でお前たちは天才ではなく、凡人…いや神を自称していたから愚者か」


言葉の鋭いナイフを一方的に突き刺し続ける春斗。


「…お前たちが勝てないのは世界の為に何を思って『物』を作り、何を思って『子』と過ごしてきたかだ」

『何を思ってだと?ふん、私たちは世界の為に』

「違う」

『あ?』

「お前たちは今の世界を壊して新しい世界を作ろうとした。じゃあ聞くが、そのせいで何人死んだ?」

『…』

「それに対して俺の親はインフィニティでの事故や死亡者を出さないために『インフィニティ・ギア』を作り、ギアでの犯罪率を出来る限り抑えるために『アーマー・ギア』を作ったんだ…お前たちはそれを『ゴミ』と言ったんだぞ?お前たちのような兵器で人をぶっ殺す『ゴミ』人間に?」

『ゴミ…ゴミだと!?私たちの最高傑作を』

「最高傑作じゃねぇよ!!結局、今ある世界を見殺しにして勝手に世界を作ろうとしただけじゃねぇか!それにお前たちの最高傑作のせいで何人泣いた!?何人死んだ!実の娘たちすら…泣いたのにお前たちは何一つ行動しようとしない!何が親だ!俺の家族の方があったけぇし、幸せだった!」

『…』

「…忙しい身であっても俺と一緒にいてくれたんだ。泣いたときも笑った時も…!」


春斗が家族思いである証拠。

それは今、葵が付けているネックレスにあった。 

克樹と夏樹が春斗の為に作り上げたオーダーメイドのネックレス。

それをキャッスルで死ぬ時までずっと春斗は付け続けていた。

もし春斗が…二人の事を嫌いならネックレスを付け続けるなんてことはしない。


「お前は…俺の家族を奪った…!俺の家族の発明品を侮辱し、世界を巻き込み…家族も友人も…危険にさらした…ッ!」


春斗は左手に握りしめる魔刀と右手に持つ焔に力を籠め…白夜に黎蝶を纏わせる。

白夜の純白の装甲に黎蝶がつき、黒色のグラデーションがついていく。

そして黎蝶たちは…春斗の友人や恩師たちの武装を作り出す。

スターダスト、アクセラレータ、村雨、白露、蒼刃剣、パンツァー、カノーネ、アサルトライフル、サブマシンガン、ショットガン、シャルーア、雫、エクスカリバー、シグルド。

そして…姉妹の魔剣。

それらが春斗の背に蝶の模様のように鎮座し、白夜の炎が『白』から『黒』に変わる。


「お前たちだけは…絶対に許さないッ!!」


双眸の黄色い目から閃光が靡く。

彼が二人の息子であるが故の責任とこれ以上友人や家族を傷つけられたくないという一心に怒りと言う牧をくべて燃え上る。

沈まぬ太陽は、沈まぬ月へと変わる。

『白夜』から『極夜』へと。

誤字脱字、語彙力がほぼ皆無に等しいのでミス等がありましたらご報告お願いします


感想も待っていますので気軽にどうぞ!


超絶不定期更新ですがご了承ください…

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