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インフィニティ・ギア  作者: 雨乃時雨
第三部
113/122

第111話 無謀で愚かで優しい守護者

『があっ!?』


エヴォリューション対11機のAGの戦いは10分以上経過していた。

最初はお互いの攻めるタイミング、守るタイミングを交互に切り替え戦っていたが、今は違う。


「はぁっ!」

「貰いましてよ!!」

『くっ…!!mother』

『イエス。マスター』

「そんな隙が!」

「あるのかな!!」

『ガキどもが…!!ぐっ!?』


一方的にエヴォリューションが攻め立てられている。

忘れてはいけないが所詮小娘と言っても、その辺にいるAG行動隊や前線で戦う者たちに以上の場を見て、戦ってきた。

何度も戦いを経験してきた。

それを、戦闘の『せ』の字も知らないような科学者に負けるわけがない。


「吹き飛べ…!!」

「氷像にしてあげるわ…!!」

「聖剣よ、相手を浄化せよ!!」


場数、キャリア、慣れ。

戦場に置いて必要な技量に達していない者に彼女たちが負けるわけがない。


「そこだ!」

「大当たりです!!」


世界最強と秒殺の女王も居るのだ。

何もかもが劣っている殲滅兵器に負けるわけがない。


「青葉!」

「うん!!」

「「はぁぁぁぁぁぁっ!!」」


これ以上の悲劇を生まないために姉妹は戦う。

このふざけた計画を終わらせるために。


『がはっ!!?』


エヴォリューションは何度も倒れ、何度も立ち上がる。

まるで馬車馬のごとく。

その姿に少女たちは一人の青年を思い出す。

何度も立ち上がり、何度も立ち向かい、何度も救った、無謀で愚かで優しい守護者を。

彼とエヴォリューションでは戦いの重さと、立ち上がる意味の大きさがあまりにも違いすぎる。


「今だ、押し切れ!!」

 

御影の指示に従い11機のAGが一斉にエヴォリューションを攻め立てる。

切り刻み、撃ち抜き、穿つ。

エヴォリューションから電気が散り始める。


『クソ…!オイ!アレはまだか!』

『現在98%チャージ中』

『も、もう少しだ…!もう少しで俺たちの勝利が確定する!』

「何うわごと行っているのかしら!」


エヴォリューションに乗り込む元凶二人の操作ポッドの強化ガラスにヒビが入る。


『99%』

『…!!』


火花を散らし続けるエヴォリューションが急に立ち上がり、四本の腕を振り回し、AGを周囲から退け、バックステップし距離を取る。


「逃がすか!!」

『は…ははっ!』


御影が距離を詰めると同時に、枯葉が笑い出す。


『お前たちは終わりだァァァ!!!』

「!?」

『100%チャージ完了。波動最大、全AG強制シャットアウト起動』


四本の腕を一か所に集め、紫色の球体を作り出したと同時に周囲に波動として電波する。


「ぐっ!?なんだ!?」

『きゃあっ!?』 


波動を受けた専用機持ち全員。


「くっ!?」

「えっ!?」


教員。そしてIGD学園で戦っていた戦闘員全員のAGが強制的に停止し、待機状態にさせられてしまった。


「何だと…!?」

『はははっ!!どうだ!!これがAG強制シャットアウト!』

『御影!何が起きた!!学園内の全てのAGが止まったよ!?』

「どうもこうもあるか…!!」


戦っていた乙女たちの鎧や武具が強制的にはがされてしまった。


「貴様何をした!!」

『何って?AGを強制停止させる波動さ!これを常に貼り続ければお前たちのようなAGに縋りつく小娘どもを一方的に蹂躙できるって寸法さ!!』

「何だと…!?」


卑怯者。

その言葉が一番しっくりくるだろう。

正々堂々と戦わず、ずるをしてでも勝とうとするその心意気。


『さぁ…こっちの番だ!』

「がはっ!!」

「御影先生!!」


生身になってしまった御影先生がエヴォリューションに殴り飛ばされる。


『よくもやってくれたな…青葉!!』

「がっ!?」

「青葉ッ!!」

『退けっ!!』

「ぐっ!??」

「椿ッ!!」


御影先生の丁度後ろにいた青葉の首を掴み、持ち上げるエヴォリューション。

それに対抗しようとした椿が止めにかかるが蹴り飛ばされてしまう。


『よくも、裏切ってくれたな?』

「がはっ…ごほっごほっ!」

『何だ?翠蝶を使う気か?やればいい。自爆覚悟で使ったところでお前がただ一人で死ぬだけだ』

「ぐぅっ…!!」

『あぁ、予め言っておこう。今更HAGを起動しようなんて思わないことだ…私たちがどれほどの恨みを背負ってこれを作ったかわかるか?』


青葉の首を握りしめるエヴォリューションの手に力が入る。


「があっ…!!」

『…自分たちの発明だけでここまで世界を滅茶苦茶にしてくれたアイツらの為に、最新型からこれまで作り出した全てのAGを強制的に止める波動を作り上げ…今!作用した!HAG?AG使えねぇよ!そんなゴミ!!』

「貴様…!」

『私たちの方の発明の方が優れている!故にお前たち、いやIGD学園その物がただのゴミだめだ!!』


この世の平和への橋が崩されていく。

世界を守るために作り上げられたインフィニティ・ギアやアーマー・ギアを侮辱する言葉の数々。


『そうだ…なぁ青葉、空を見ろ』

「…?」

『いいことを教えてやる。落としたはずのキャッスルには…butterflyがまだある』

「ごほっごほっ!!?」

『残念だったな、お前の計画は…結局無駄だったんだよ』


青葉の両目から光が消えた。

絶望に侵され、何も考えられていない。


『そうだ…絶望に侵されながら死ね!!』


エヴォリューションはもう一方の手でブレードを握り、青葉に向ける。


『椿…お前はまた、妹を守れなかったな!!』

「青葉ッ…!」

『死ねぇぇぇぇぇ!!!!』


青葉の首を目掛けてブレードが振り下ろされる。


(…ごめんね、お姉ちゃん。私のせいで)


青葉の心の中には謝罪と絶望しかなかった。


――…ィィィィ…。


(私がもっと上手くできたら…)


――…ィィィィィ…!


(私が守れたら…!)


――ィィィィィィイッ!!


(本当に…ごめんね)


――キィィィィィンッ!!!


青葉の首へと迫っていくブレード。

それは…青葉の首を跳ねなかった。


「…?」


跳ねなかったブレードは腕諸共空へと舞い上がり、地面に落下。


『なっ!?』


エヴォリューションに乗り込む二人が反応しきる前に、青葉を掴んでいた腕が切り落とされたと同時に上に打ち上げられる。


「何だ!?」


それを見て居た教員、専用機持ちの全員。

空に打ち上げられたエヴォリューションは目にもとまらぬ白い彗星に切り刻まれながら、吹き飛ばされて行き…。


『がっ!!?』


そのまま地面に叩きつけられた。


「ごほっ…ごほっ!!」

「青葉!大丈夫!?」


青葉の元へ走る椿。


「う、うん…なんとか」

「良かった…」

「それよりも…今のは?」


あの一瞬のうちにエヴォリューションの両腕を切り裂き、上に運び、目にもとまらぬスピードで切り刻み、地面にたたきつけた。

一瞬で起きた出来事に気が付かず、理解が追い付かない専用機持ちと教員。

そこへ。


――ドキュウゥゥゥゥンッ!!


先程の白い彗星が皆の元へ駆けつけた。


「――ふぅ…間一髪だった」


聞き覚えのある声。

この場にいる全員は聞き覚えしかなかった。

決闘で知り、幼馴染と再開し、烙印を払拭し、和解し、少女を助け、最強すら虜にし、敵であった者に手を差し伸べ、兵器すら受け入れてしまう。

そんな無謀で愚かで優しい守護者の声。


「遅くなったな!」

「「「「「「「春斗!!」」」」」」」


純白で四本の翼を持ち、黒い刀身の刀を握りしめ、白い炎を纏うAGに身を包んだ守護者が今、ここに帰還した。


「ごめん、椿、青葉…遅くなった」

「むしろベストタイミングですよ、春斗」

「そうか。青葉の方は?怪我とかは…」

「全然…大丈夫です…呼吸を整えれば」

「良かった。これで間に合わなかったら積年の念で自殺するところだった」

「そ、それは本当にやめてください…」


AGを装着したまま座り込み、青葉と椿の様子を伺う春斗。

実際、春斗だったらやりかねないので否定するしかない。


「九条、大丈夫か?」

「先生方も遅れてすみません…ちょっと色々あって」

「大丈夫ですけど、そのAGは」

「青葉、motherは?」

「…記憶、感情などが消されてしまいました」

「…そうか」


春斗が握る焔に力が込められる。


「この機体は『白夜』。俺の父さんと母さんが作り上げた全てのAGのプロトタイプです」

「AGのプロトタイプ…」

「多分、あの波動を受けても停止しなかったのは…元凶共がこれを人が乗れる機体ではないと判断し、波動効果内のAGの枠に入れなかったからだと思います」

「人が…?」

「ほ、本当だ…何この数値…!?」


水津が白夜の数値を見ると、本当にその通りだった。

とても人が乗るとは思えない出力数値を叩きだしており、もし普通に人が乗ったら死んでしまうレベル。


「でも…何で春斗が…?」

「――因果と運命に勝ったから、かな」

「因果と運命?」

「あぁ、俺に『勝て』って事だろう」


春斗は座り込みながらエヴォリューションの方を見る。

キャッスルからの部品を受け取り、また立ち上がろうとしていた。


「さて…みんな、ここから避難してくれ。後は俺が何とかする」

「…出来るのか、九条」


刀を握り、立ち上がった春斗に声をかける御影。


「任せてください」

「…相棒と似てるな、返しが」

「???」


春斗は首を傾げる。


「なら任せた、援護はいるか?」

「大丈夫です。橋や壁の上で皆が戦ってくれたのであとは俺がその分、働きます」

「分かった…頼むぞ、夏樹と克樹の息子『九条春斗』」

「はい!!」

「総員避難区画に避難を」

『ま、待って!そうも言ってられないよ!』


すると吾郷から全員に通信が入る。


『たった今、ハイエンドの増援が来た!しかもとんでもない量の!』


モニターに映し出される映像。

そこには空から、橋から先程以上の数のハイエンドたちが押し寄せてきていた。


『いくら九条君でも一人じゃ…』

「吾郷さん、俺は一人じゃないです」

『え?』


春斗の返答はそこにいた全員も予想外の反応だった。


「とにかく後は『俺たち』に任せてください」

『何か策があるんだね?』

「はい、とっておきのが」

『…御影、どうする?』

「…信じよう。私の生徒がそう言ってるんだ、信じてやれずに何が教師だ」

『そうだね…分かった。信じるよ、九条君』

「はい!」


そうして御影を先頭に避難区画に向かう。


「…春斗!」


だが一人、春斗の元にいた少女がいた。


「葵、お前も早く…」

「必ず帰ってこい!」

「!」

「必ずだ、私はもうお前を失いたくない」

「…酷い言い方をするかもしれないが、その約束はできない」

「…」

「だが」

「?」


春斗は振り向き、葵を見る。


「勝ってくる。これからの未来のために」


春斗は小さく微笑み、エヴォリューションの方へ向きなおした。


(…勝ってくる、か)


葵は先程の春斗の言葉について考えていた。


(約束は出来ないなりに、私を安心させようとしたんだろう…)


彼の真意を見抜いていた。

帰ってくる確証はないが、せめて安心させようと考え、ひねり出した言葉がアレだった。

優しい彼なりの…約束なのだ。


「待っているからな、春斗!」

「あぁ!!」


そうして葵もIGD学園避難区画へと走っていった。


◇◇◇


「…行ったか」


焔を握り、敵を見る。

アイツが全ての元凶。

慈悲はいらない、徹底的に叩き潰し…。

何もかもを奪い返してやる。


「!」


俺は天高く焔の刀身を掲げた。


「子供たちよ、俺と一緒に戦ってくれ。全てを奪い返し、家族の元へ行くために!」


全身から大量の黒い蝶が飛び出し、宿らせていたハイエンドたちが一斉に動き始めた。


『九条…春斗ォォォォ!!!』

『アイツらの息子風情が…!!何故死なななかった!!』

「父さんと母さんが俺を治してくれたからだ、家族としてな」

『家族だと…?』

「先に言っておこう」


――テメェらの言葉なんぞ聞きたくねぇ。


行こう、子供たち。

これが…最後の戦いだッ!!

誤字脱字、語彙力がほぼ皆無に等しいのでミス等がありましたらご報告お願いします


感想も待っていますので気軽にどうぞ!


超絶不定期更新ですがご了承ください…

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