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インフィニティ・ギア  作者: 雨乃時雨
第三部
112/122

第110話 進化の使途、空より来る

戦闘を開始してから約30分。

ハイエンドの総数は減少しつつあるが未だ数は健在。


「まだ…居るか!」


村雨と白露でハイエンドたちを切り裂きつつ、みんなの防護に回る。

私の飛脚は近距離型、最前線で戦うしかない。

遠距離攻撃である斬撃波もあるが…あれはエネルギーの消費が激しい。

今はまだ使うべきじゃない。

それなら最前線に出てフレヤやレベッカなどの遠距離型のみんなに近寄らせないようにする。


「はぁっ!!」

「アイヴィー、大丈夫か?」

「まだまだ行けます。葵の方は?」

「身体があったまってきたところだ」


それに最前線は私だけじゃない。

レベッカや御影先生も居る。

お互いを援護しつつ、最前線をここで押しとどめる。

ここから先にはいかせない!


(だが…!)


最前線に常にいるとエネルギーの消費が激しい!

一応、水津が開発した長期戦用の専用のパッケージが装備されていて、ある程度の消費が抑えられているが…もう半分を切りそうだ。


「アイヴィー、パワーエネルギーは?」

「まだ大丈夫ですが…この戦闘が続くのであればマズイかと。この後に元凶の二人がくるなら」


そう、私たちの戦いはまだ始まったばかりだ。

この後に本命が待ち構えている。

むしろ元凶の二人はこれが狙いなのかもしれない。

私たちのAGのエネルギーを消費させて、消耗しているところを叩く。

効率的かつ正々堂々としない悪役らしい思考回路だ、春斗が見たらキレるぞ?

アイツは…人数が不利でも関係がない。

虐められていた私を助けてくれた時もそうだ。アイツは、どんなことでも正面から壊す。

不利なルールがあろうとも、縛りがあろうとも、苦難があろうともアイツは…。


(…いつ、帰ってくるんだ)


春斗が消滅した、なんて思っていない。

それはみんな、同じ気持ちだろう。

また私たちに黙って何かをして春斗が一人で傷つき、帰ってきて私たちに怒られる。

…同じことを繰り返すに違いない。

だから、早く帰ってきてくれ。

もうお前が居ない、なんて考えたくもない。

私は…お前と共にありたいんだ。


『キャッスルにあった高エネルギー反応がこっちに向かってきてる!』

「来たか…!」


遂に本命が来た。

敵将自ら私たちを倒そうとしている。

むしろそうでしか倒せないと踏んだのだろう。


『みんな…!エネルギーは?』

『私はまだ行けますわ』

『私も行ける』

『僕も。でも…アイヴィーと葵は?』

「…既に半分切っている」

『こちらもです』

『やっぱり私と青葉も前線に行くべきでした…』

「仕方ない、遠距離も近距離もできる二人だからこそ中間地点に置くべきだったからな」

『すみません』

『小娘ども、反省会は後だ…今は』


――あのゴミを潰すぞ。


御影先生の声とともに空から来る厄災。


――ドゴォォォォォォォン!!


それが橋の上に着地した。


『貴様ら…!』


AGよりも一回りも二回りも大きい巨体が姿を見せる。

黒い装甲で全身フルフェイス…というよりアレは二人が乗るタイプの戦闘マシンだろう。

見た通り肩と両腕に武装があるようだ。

スキャンは…反応しない。どんな武装があるのかは不明だが、どちらにせよ敵であることは間違いない。


『何故、邪魔をする!新たな世界の誕生を!』

「貴方たちの世界に興味はありませんわ!」

『何だと!』

『僕たちは今の世界で満足してる。それに…そんな人の命を湯水に使うような人たちの世界なんていらない』

『良かったじゃないか、今を生きる小娘どもにそんな世界は必要ないという意見を聞けて』

『黙れ黙れ!!お前たちが克樹と夏樹が作り出した世界に毒されているに違いない!この場で殺してやる…!!』


本当に…理解ができない。

いや理解したくもない。私、いや私たちはこの機械に乗り込む二人がどんな実験をし、何人の子供たちが犠牲になったのか。

しかもそれを『たかが』と言い切る程の狂乱具合。

そんな世界に興味はない。


『だが…お前たちは疲弊しているはずだ!もうエネルギーは無いだろう?』

「…ッ」


実際、そうだ。

専用機持ちの内、アイヴィーと御影先生、そして私のエネルギー残量は既に半分まで行っている。

本命との戦いが始まったところで…ジリ貧になって負ける可能性がある。

このままIGD学園に戻ってエネルギーの補給なんてできない。

どうすれば…。


――ブォォォォォォォン!!


「!!?」


そう考えているとIGD学園城壁の入口の方から轟音が鳴り響き、『黒い波動』がこちらに向かってきた。

回避する間もなく私たちはその波動を受けたが…何もない?

傷も受けてなければ、衝撃も来ていない。


『ま、待て!エネルギーが回復している!?』

『何ですって!?』


アナスタシアの声に反応し、各々がエネルギー残量を確認する。


(…本当だ。パワーエネルギーだけではなく、シールドもヘルスも全快まで回復している!?)


どういうことだ。一体どういう原理で…?

それにあの黒い波動はいったい何なんだ…!?


『貴様ら…何をした!?』

『どういうわけか分からないが、全快まで回復したのなら話は早い!城壁の生徒及び教員たちは引き続き鴉と狼を頼む!残りの専用機持ちたちでコイツを叩く!!吾郷はこの機体を調べろ!どれほど時間がかかっても構わないが、私たちが戦っている間で何とか終わらせろ!いいな!!』

『了解!!』

『行くぞ小娘ども!!』

「はい!」


今考えたところで…何の答えも得られない。

御影先生が指示を下した、その通りに従おう。

慈悲なんて必要ない。コイツのせいで数多の命が消え、数多の子供たちや人たちが不幸になった。

一緒に戦う青葉も椿もその中の人だ。

私たちで…コイツに引導を渡す!!


「はぁっ!!」

「はっ!!」


アイヴィーと私の斬撃を二人が乗り込む機械を向けて振りかざす。

すると左腕の武装が展開し、巨大なブレードが姿を現し私たちの斬撃を防ぐ。


『効かねぇ!!』

「…それがどうした?」

『あ?』

「私たちの攻撃を防いだところで何を傲慢に構えている!」

『その通りでしてよ!!』


空からビットとレーザーライフルによる、レーザーの雨が襲いかかる。


『バリア展開!』


今度は左腕の武装が展開し、エネルギーシールドが出現しフレヤのレーザーを防いだ。

だが…まだ攻撃の雨は続くぞ!


『レベッカ!』

『うん!!』


背後からレベッカとアナスタシアの連続射撃。

今度は背面に着けられた武装から新しい腕のようなものが展開され、腕を交差し二人の射撃を防ぐ。


『はぁぁぁぁぁっ!!』


正面から水津の拡張武装がチェーンソーを回転させながら迫ってくる。


『くっ!!?』

『あら?何処へ行くつもりかしら?』

『なっ!?関節部分が!?』


雪華さんが氷で両足の関節部分を凍らせ、メイスで叩き壊す。

右足を壊された機械はバランスを崩し、座り込む。

そのすきを…水津が逃すはずはない!!


『壊せ…ッ!!』


デュアルチェーンソーが展開し、機械を挟もうとするが…元凶の方が反応が早かったのか、壊れていない方の足で距離を取ろうとするが。


『ふん!』

『逃がしません!!』

『がっ!?』


距離を取る隙を狙って御影先生の槍と柊木先生のパイルバンカーが直撃し、空中でバランスを崩され…デュアルチェーンソーに左腕が挟まり、ガリガリと音が響き左腕が切り離された。


『ぐうっ!?』

『二人とも…!!』

『はい!!』

『お任せを!!』


水津の拡張武装の陰から飛び出したのは元凶の娘である二人。

椿と青葉。

二人の手には魔剣が握られており、既に蝶が纏っている状態だ。


『青葉!椿ィッ!!』

『もう、貴方たちを親とは思いません!』

『ふざけるな!実験のサンプル風情のお前らに!!』

『…私も決別する!お姉ちゃんがするように!もう二度と同じ過ちを繰り返さないように!!』

『青葉あぁァァァ!!!』

『私の過去も、何もかもを!!全部と決別する!はぁぁぁぁっ!!』

『灰燼に…帰せッ!!』


二人の魔剣が機械に襲い掛かる。

左腕に装備されたバリアで防ごうとするがそんな物では止まらない。

私たちは…その三本の魔剣の威力を間近で見てきたからな。

バリア諸共機械が弾き飛ばされ、橋を転がりながら飛んでいく。


『解析かんりょ…ってもう終わっちゃった?』

『そんなわけがあるか。この程度で終わるほどアイツらは馬鹿じゃない、とにかくデータを送れ』

『了解!』


そうして吾郷さんから元凶二人が乗り込む機械のデータが送られてきた。

機体名『エヴォリューション』。

対AG用殲滅兵器。

両腕と両肩に武装を変形できる機構が備わっており、代わりになるアームや様々な武装が中に収納されている。

…そしてAGではない。


『…じゃあこの機械は』

『待ってください、あの機械…翠蝶が居ます』


青葉の発言に耳を傾ける。


『翠蝶が…?』

『はい、しかも…反応的にギアと一緒に』

『…ゼフィルスの時のように、赫蝶とギアが混合になっているということか?』

『恐らくですが…』

『まぁ、その情報が得られただけ大きい。モルドレッド、水津、雪華は知らないと思うがかつてのゼフィルスには赫蝶と混合になっていたギアが搭載されており、専用機持ちを苦しめた。となればあのエヴォリューションと言われるマシンにも気を付けろ、しかも対AG用の兵器だ』

『分かりました!』

『了解です…!』

『承知しました』


かつてのゼフィルスを思い出す。

私、フレヤ、レベッカ、アナスタシア、そして春斗。

この五人で戦って失敗し、様子が変わった春斗によって倒されたあの存在を。

5機のAGを前にしても冷酷な判断をし、勝利を掴もうとした存在を。

そう考えれば、目の前にいるエヴォリューションも警戒すべき物だ。

この戦いの元凶である二人が乗っているので既に警戒済みだが…。


(技量が伴っていない)


私たちの連携の密度が上がっているのもそうだが、たった一度の攻撃を防いだ程度で調子に乗る心境…。

本当に思うが、戦いに出たことがないのだろう。

かつてフレヤを苦しめたルゥサも春斗と戦っていた時も己の怒りを思うがままに力を振るい、一方的に負けた。

…この二人はそれ以上に戦いの経験がないぞ。


『ぐっ…ゴミどもが…!!』

『…』

『…オイ!mother!追加のパーツを寄こせ!』

『mother!?』


motherという単語にいの一番に反応したのは…青葉だ。


『イエス。マスター』

「…?」


エヴォリューションの方から流れたmotherの声。

前の…青葉との訴えの時よりも感情の起伏がない。

棒読みというよりそもそもの感情がないような声色をしていた。


『motherに何したの!!』

『何したか?簡単だ、あんなAIに感情なんてものは必要ない!むしろ感情がない方が言い、無駄なあがきもなく、謎のバグも存在しない!これ以上に便利な存在があるか?』

『ッ…!!』


…消された、と理解せざるを得ない。

自分の願いの為にmotherの中にあった何もかもを消去し、己の為に改造したのだろう。


『青葉、大丈夫?』

『…大丈夫』


明らかに声が震えていた。

怒りか、悲しみか。私にはわからないが…。


(AIでありながら、本気で青葉の幸せを願っていたと思う…)


青葉の訴えの時は…本気で思った。

人間に近い感情を感じ取り、悲しみや願いが頭の中に入ってきた。

…motherの名のように、青葉の本当の母のように動いていたと思う。

それを、消したのか。


(外道という言葉が生ぬるいな…!)


白露と村雨を握る手に力がこもる。


――ガシャン!ガシャン!


真っ二つに切られているキャッスルから何かが射出され、空中で分解し、変形しながらエヴォリューションと合体していく。

破壊された右足と左腕は根元から取り外され、新しい右足が左腕が装着された。


『よくもやってくれたな、貴様ら!』


四本の腕を見せ付け、キャッスルから送られてきた4本の大剣を握りしめ立ち上がるエヴォリューション。


「…!」


何度立ち上がろうとも、切り伏せる。

ここで終わらせるためにも。


◇◇◇


「…?」


外から轟音が聞こえてくる。

来たか、あの二人が。

想定よりも早いが、準備も殆ど終わった。

あとは…。


「白夜のエネルギーチャージは…あと12分24秒で完了、か」


蝶でのエネルギー回復はさっき使った。

再度、使うなら…今じゃない。

右腕の黒いヒビを見る。


「子供の復活には俺の血が必要不可欠、それに血を使うなら血を流さなければならない…」


…みんなに話す機会がなかったが、俺はこの戦いで死ぬつもりだ。

傷を再生せずに戦う。遅かれ早かれ血は流さなければならない。

戦いが終わった後、俺の輸血で何とかすればいいかもしれないが…今の世界の一部の医師は信用に値しない。

戦いが終わり、あの元凶共に毒された奴がいれば俺の身体や血は悪用されるに決まってる。

なら…この戦いの最中に子供たちを復活させるしかない。


「なぁ、子供たちよ」


白夜の元に座り込み、両手にまとわせた黒い蝶…『黎蝶れいちょう』を見る。

椿の時、俺の身体の中には赫蝶が9000体位いたが今は違う。

俺の中には…それの数千倍以上の黎蝶が宿っている。

ずっと身体の様子がおかしい。

まぁ…どうでもいいが。


「早く…お前たちを呪縛から解放させてやりたいよ」


butterflyという枷に繋がれ続けたお前たちを。

見せてやりたい。

解放の先にある夜明けを。

始まりの日照りを。

誤字脱字、語彙力がほぼ皆無に等しいのでミス等がありましたらご報告お願いします


感想も待っていますので気軽にどうぞ!


超絶不定期更新ですがご了承ください…

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