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インフィニティ・ギア  作者: 雨乃時雨
第三部
111/122

第109話 決戦の火蓋を切る

IGD学園。

避難民や戦闘員全員の体制が完全に整った。

専用機持ちの整備は完璧、訓練機も実戦に近いような改造が施され、IGD学園の壁に付けられた砲撃の防衛システムやバリアの硬質化。

これに一番貢献したのは水津と青葉。

未だ成人になっていない科学者の卵のような存在の水津はとてつもない技術力と可能性を発揮し、青葉のハイエンドのデータを元に様々なものを開発した。

キャッスルに付けられたレーザー照射連装砲も防げるくらいのバリアや、キャッスルに付けられた攻撃システムを応用した防衛システムを作成。

今年で16歳になる少女が作ったとは思えないほどの精密で非の打ちどころのない武装やプログラムの数々。

完全に体制が整ったと言えよう。

そして…戦場で月日は流れ、三月に差し掛かり、最後の決戦が始まろうとしていた。


――ビーッ!ビーッ!!


けたたましくIGD学園内に響く警報。


「来たな。吾郷、状況は?」


壁の上にて待機していた御影が吾郷に通信を繋げる。


『戦闘員全員にモニターで展開するよ。それと…青葉ちゃん、あれはハイエンドだよね?』

「多分違います、ハイエンドは元々私の翠蝶で動くものですが殆どの翠蝶は私の中身戻ってきていますし、内部の原理が違う何かでしょう」

『なるほど、出力も似たような感じか…水津ちゃん、解析をお願い。私は周囲のスキャンをしちゃうから』

「わ、わかりました!」


モニターにはハイエンドのような機械の獣がIGD学園と大陸を繋ぐ橋を駆けてこちらに向かってきており、空からは鴉が飛んできていた。

装甲等も殆ど従来のハイエンドと同じだが、どうやって動いているのかは不明。

それに…。


「青葉、ハイエンドの操作は?」

「…やっぱりできない。各国の空港や港を制圧してるハイエンドも操作が効かない」


青葉の翠蝶が本体に戻ってきている理由。

青葉がいればハイエンドの操作は可能。なぜかというとハイエンドは翠蝶をエネルギー源として動いている。しかし、青葉がIGD学園に受け入れられた日から徐々に翠蝶は戻ってきており、ハイエンドたちのコントロールを失った、

だが…エネルギーがないハイエンドは動いている。

未だに各国の空港や港は制圧されたままだ。


「うーん…何これ…?」

「どうしました?水津」

「構造原理がよく分からない…ギアっぽい何かが積まれてるように見えるけど」


水津の解析データが椿と青葉に送られる。


「…何でしょうこれ」

「私もわからない…こんなものはキャッスルになかったはず」


表示されたコアのようなもの。

構造や出力などはギアに近いが、どちらにせよ下位互換に等しい謎の物体。


『周囲の敵スキャンは完了したよ。とりあえず命名はめんどくさいから…ハイエンドの軍勢が橋と空から来てる』

「助かる」

『それと全員に知ってほしいけど、キャッスル内に強力な反応が一機。分かってると思うけど…十中八九あの二人だと思う』

「…」


吾郷のスキャンが完了し、敵総数の数と位置。

そしてキャッスル内に高エネルギー反応があるということが告げられた。

どう考えても元凶の二人がそこにいる、ということしか考えられない。


「専用機持ち!」

「はい!!」

「柊木と私と共に橋の防衛だ。他は備え付けられた迫撃砲や水津が開発した量産型のレーザーライフルを使って鴉を撃ち落とせ!」


御影の指示により、戦闘員が一斉に動く。

水津製の量産型でレーザーのアサルトライフル『シューター』

マガジンがなく、基本ずっと撃ち続けることが出来るがオーバーヒートしてしまうため、定期的に撃ち止めなければならない。

しかし威力や撃ちやすさ等はフレヤとレベッカ、そしてアナスタシアの折り紙付き。

三人曰く。


『水津製ってだけで結構期待してたけど…ここまで凄い代物なんて…!ねぇ水津、他にはどんなものがある?シトリンに水津製の武装を加えたら僕は最強になれるよ!』


『素晴らしいとしか言えない。色々褒める要素があるのだが…むしろ褒める所がありすぎて何と言えばいいのか分からない。ふむ…水津、もしよければなんだが我がMS部隊の武装部門に正式に入隊しないか?安心しろ、話はこちらで』


『量産型とは言われましたが…量産型とは思えないくらい威力が高く、とても撃ちやすい銃ですわ!水津さん!正式にスプライトの強化案について本国でお話を…!』


としれっと水津をスカウトしようとしていたアナスタシアとフレヤだが『偶然』通りがかった雪華によってスカウトは無かったことにされた。

なお、それにともなって水津の拡張武装も強化されている。

装甲もそうだが武装がより殺意マシマシになり、チェーンソーはデュアルチェーンソー。

パイルバンカーはより威力を底上げしたオールブレイカーとなった。

ちなみにデュアルチェーンソーは鋏のように対象を挟むことができ、挟んだら…考えるだけでも恐ろしい。

他にも様々な武装が更新、追加された。


「青葉、椿…いけるか?」

「はい、行けます」

「私も!」

「特に椿、何度も言うが九条の相棒を名乗るならこの程度の障害を越えてなんぼだからな?」

「ふふっ…お任せを」


青葉を除く専用機持ちたちの顔がムッとなる。


「青葉、私たちの本気で一掃しましょう」

「うん!」

「「専用アビリティ解放…!」」


アジダハーカには二本の魔剣、ティターニアには一本の魔剣が握られ…剣先に蝶が集まっていく。

そして


「『虚無ゼロ』!!」

「『存在ワン』!!」


緑色の斬撃波が二つ、赤色の斬撃波が一つ。

計三つの斬撃が一つとなり、狼たちを襲う。

灰燼に帰す斬撃、全てを切り裂く斬撃が一つになった物。

それの威力は言うまでもない。


――チュドォォォォォン!!!


「…」


斬撃の風圧を受けた御影は顔を真顔にしながら立っていた。


(…この姉妹が敵に回っていたらと思うと怖いな。九条が親と同じように人たらしで助かった)


若干、皮肉を込めた感想を心の中で呟いた。


『て、敵総数約3万減少…』

「やったね青葉」

「うん!」


二人の反応を見た専用機持ち達。


(な、仲間で安心した…!)


椿とは戦ったことはないが春斗の動きを知り、サポートするほどの技量を持つ。

対して青葉は専用機持ちたちと戦ったことがあるので破壊力や殲滅力は知られているが…二人がそろうとここまで凄いのかと若干引いていた。


「…しかし、ここまで脆い物でしたか?」

『脆いのかい?』

「春斗の戦いを見ていたときは…ハイエンドはもう少し強かったはずです。ですがこれで原型を残さないほど塵になるのは」

『ま、まぁ…とにかく脆いんだね?』

「はい」

「となれば…これは雑兵か」


元のハイエンドよりも弱く、謎のエネルギーで動いている。

しかし戦場において量や質は大切だが今のハイエンドは量は多いが前に比べたら質は中途半端。

かなりの弱体化を受けていると分かる。


「総員、ハイエンドたちを消し飛ばせ!遠慮はするな!」


御影先生の指令に全戦闘員が反応し、ハイエンドたちに攻撃を仕掛ける。

新しいハイエンドを切り裂き、撃ち抜いた専用機持ちたちも椿と同じ気持ちになった。

キャッスルで戦ったときよりも明らかに弱い。

反応速度も遅く、明らかに戦った時以上に脆い。


「これなら…みんな下がって…!」


水津が拡張武装を展開し、ガトリングガンで獣どもを風穴だらけにし、背面を展開。


「マルチロックオンシステム…ロック完了!一斉発射…!!」


展開された背面から一斉にミサイルが発射され、獣たちを木っ端みじんにしていく。

それはもう見事な鉄屑へと。


『ハイエンド更に減少!…ん?ちょっと待って!橋の方からハイエンドの増援!』

「なるほど…質を捨てきって量に力を入れたか!」


吾郷の通信の通り、橋の向こう側から更にハイエンドが向かってきている。


(人海戦術で一気に押し込もうとしているのか?甘い、ウチの生徒たちを舐めてもらっては困る!)


御影先生は生徒たちの動きを見る。

誰もかれも洗練された技でハイエンドたちを圧倒している。

壁の上で鴉を撃ち抜き、橋の上で狼を切り裂く。

初戦の時の防衛線に比べると見違えるくらい強くなっている。

運がいいことにハイエンドも弱体化し、技量の差は目に見えて分かるくらい離れている。

このままなら守り切れるが…一番の問題があった。


(しかし、常時この戦闘をさせられるならエネルギーが間に合うかどうか…)


AGのエネルギー問題。

ヘルスやシールドは今のところ問題は無いが、それ以上に問題なのがパワーエネルギー。

今は戦闘の真っ最中で、ほぼ動いていないとはいえ減るものは減る。

仮にこのままパワーエネルギーが減り続け、ゼロになった場合。完全に戦えないわけではないが、もしもの際に動けないということが起きたら命取りになる。


(…現状はどうしようもない。パワーエネルギーの消費を抑えろという事は簡単な事じゃない、とにかく目の前の敵を倒し続ければそれでいい)


御影は槍を握りしめ、槍先に蒼炎を纏う。


「克樹、夏樹。お前たちの無念を…私も晴らそう!」


世界最強の目にもとまらぬ槍捌き。

相手は弱体化されたハイエンド。

まともに太刀打ちできることもなく、ただ一方的に貫かれ、切られ、粉々にされる。


『御影先生、援護します』

「助かる」


そして世界最強を援護するのは秒殺の女王。

圧倒的な射撃センス、百発百中の弾丸はハイエンドたちがブリュンヒルデに指一本届くこともなく瞬殺する。


「流石、先生たちだね」

「私たちも負けてられない」

「その通りですわね、一方的に駆逐してあげましょう!」


戦う姿を見て感化される専用機持ち達。

だからこそ、気が付かないのだ。

橋の上や海の中で機能停止した狼や鴉に…『黒い蝶』が入り込んでいっていることに。


「――はぁ…はぁ…」


誰も見ていない。

壁の入り口にいる亡霊のような存在。


「く…助けに行けないのがもどかしい…!」


亡霊のような青年は双眸に黄色の光を灯し、両腕に『黒い蝶』を大量に纏わせる。

そしてその蝶をバレない様に破壊されたハイエンドの内部に侵入させる。


「…よし、破壊されたハイエンドの過半数はコントロールを奪えた。次は…」


頭の中にあるプランを考えながら次の行動を考える。


「…せめてもの援護だ」


ハイエンドの左手と自身の右手に力を貯めて黒い球体を作り出す。

それを周囲に波動として放つ。

波動に影響はない。人体にも機械にも。

だが影響が出るものはある、それはAG。


「行くぞ、子供たち」


亡霊は自身の身体を黒い蝶にし、何処かへと飛び去る。


(準備が間に合うかどうかわからねぇ…!)


少女たちの決め手となる為、そして己の計画を完遂するためにはまだ準備が必要だ。

誤字脱字、語彙力がほぼ皆無に等しいのでミス等がありましたらご報告お願いします


感想も待っていますので気軽にどうぞ!


超絶不定期更新ですがご了承ください…

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