第105話 赫色と翠色
避難区画。
その場に君臨した魔龍は実の親を殺すために攻撃の誤射で仕留めようとした。
しかし。
「俺たちは知っているぞ」
「なっ!?くっ…!?」
アジダハーカがその場で緊急停止。
何故アジダハーカが止まったのかよりも何故殺そうとしたことがバレたのか疑問に思う青葉。
「何故…!?」
「決まっているでしょう?」
『――ごめんなさい、青葉』
「mother!?」
なんと声を出したのは昔から青葉の体調管理や、現在の計画や作戦に親身に答えていたmother。
「ど…どういうこと」
『…マスター』
「えぇ、流石motherね?青葉の事を昔から理解してる。そのおかげでそろそろ狙うと演算したもの」
「そ…んな」
青葉の表情が絶望に染まる。
ただ一人の理解者であり親身に寄り添っていたモノが裏切り者だとは夢にも思わなかった。
(初めから…私に味方は…居なかったの?)
motherと青葉で計画を精密に練ったが結局は無駄に終わってしまった。
「青葉ッ!!」
「…」
「…どういう状況だ」
避難区画に侵入した青葉を追ってきた御影が後から突入してきたが、今の状況を理解できなかった。
停止しているアジダハーカ、ハイエンドを真っ向から否定した避難民が見合い、青葉は…絶望に打ちひしがれていた。
「御影紗月…」
「…貴様、何者だ」
槍先をその避難民、いや元凶に向ける。
「避難民にそんなことをしていいのか?」
「なら何故避難民がアジダハーカのコントロール制御機能を握っている」
「…これだから頭の切れるものは」
御影は見逃さなかった。
元凶と思われる男女の男の方がコンソールを操作していたことに。
「青葉」
「私に…味方は」
「…」
すると御影は槍を握りしめながら青葉の元へ近づき、青葉を左腕で抱え、一歩下がり槍を構える。
「どういうつもり?この戦争の発端を守るなんて」
「貴様らに語る必要はないな」
「…チッ」
そこへ。
「青葉!」
「青葉さん!」
「青葉ちゃん!」
専用機持ち全員がその場に到着した。
「御影先生…!」
「分かっている。いや、分かってしまっただな」
専用機持ちの先程の春斗の言葉を思い出し、御影先生をに『青葉を守ってほしい』と説得をしようとしたがその必要はなかった。
御影先生は青葉の状態と元凶と思わしき避難民の行動である程度察しが付いていた。
「アイツ…なんだろう?」
「…春斗曰くです」
「なら確定だな、アイツが裏切ると思えん」
説得力がある名前が挙げられたと同時に御影先生の前に並ぶ専用機持ち全員。
春斗に言われた通り青葉は元凶の暗殺には失敗した。
そして春斗も…今は地下で眠っている。
本人は助けに行けなかったが、代わりの増援が集結した。
「…この世界のゴミどもが」
「その言葉、そっくりそのまま返しますわ」
「アレクサンダー…専用機持ちたちを潰すつもりだったがまさか無事にこの場にいるとはな。全くガリアルド家は使えない」
「!!」
「貴様…何者だ!何故その名を知っている!」
アイヴィーがフレヤの前に出て、聖剣を元凶に向ける。
元凶から飛び出したガリアルドと言う名前。
『ガリアルド』という名前はこの場にいる専用機持ち、教員、生徒全員知っている。
そう、その名前はかつてフレヤとアイヴィーから平穏を奪わんとした金の亡者であり、敗北者の名前である。
だが尚更謎が深まる。何故この避難民が、元凶がその名を知っているのかと。
「まぁいい、話してやる。アレクサンダー、モルドレッド…それに他のお前達にも」
「何だと…?」
「どういう…こと」
「ガリアルド家に情報を流したのは俺たちだ」
「!!?」
「それにレオンのトレースシステム、ブルーノ社のブレイザーの開発、斎条の潜入協力に殺害、フロストクイーンの強奪及び操縦者の殺害もな」
まるで自分のやってきたことを誇るかのように話し始める男。
IGD学園の生徒や関係者しか知らない情報を持っている謎の避難民。
「ここまで根回しをしても…まさかアイツらの子が防ぐとはな…!」
アイツらの子、という単語で御影がハッとした表情をする。
(コイツか…!!)
アイツらの子とは九条春斗のことだと理解する。
専用機持ちやこの学園に関する事件や問題の渦中には必ずと言っていいほど春斗が居て、解決者も春斗であったことがほとんどだった。
となれば…この避難民、いや元凶は。
「お前たちか!克樹と夏樹を殺したのは!」
御影先生の握る槍に力が籠められる。
どう考えたってそうとしか考えられない。
「この二人が…?」
「あぁ、言動的にもそうとしか思えない…それに私の生徒の専用機持ちのみを狙ったということはIGD学園の戦力を削ごうとしたのだろう」
「違うな」
「何…?」
即答で否定し、指をさす元凶。
「AGを持っていたからだ。アイツらが作り出したこの世のゴミを持つ者、それすなわち人としての価値もないだろう」
「は?」
「どうせ、己の権力に溺れて死ぬに決まってる。ならそれより先に私たちが引導を渡そうとした、それだけだ」
専用機持ち達と御影先生はこの二人が言っていることに理解が出来なかった。
身勝手な決めつけ、身勝手に価値を決められた挙句、求めてもいないのに勝手に殺そうとしてきた。
しかも…本人たちがやられたことを思い出す。
本当にそれが叶ったのなら引導どころの話じゃない、より惨く、より悲惨な最期を迎えていたに違いない。
「それをあの九条の息子が防ぐとは…余程、アイツらのせいで廃れた世界を守りたいらしいな」
「廃れた、だと?」
「あぁ、廃れているだろう。あんな研究成果で生み出したものを見ると反吐が出る」
「…お前たちがそれをいうのか?」
「何だと?」
獣すら恐れおののく御影の眼光が元凶に向けられる。
「お前たちの方がよっぽどイカレてる」
「それはお前たちが凡人だから理解できないだけ」
「いいや違う、お前たちは理解しなかっただけだ。じゃあ聞くが、何のためにこんな研究をした?何を思って適合手術やら何やらを強行した?」
「黙れ!AGやギアによって汚染されているこんな世界より私たちが作り上げた世界の方が優れている!」
「この世界や人間たちはお前たちの駒じゃない!!何人の命が潰えたかわかっているのか!?」
「たかが子供の命じゃないか」
「…たかが?」
顔色を何一つ変えず、元凶は話す。
「何も知らない子供たちを私たちのような天才が使うんだぞ?名誉だろう」
その言葉に場にいた避難民を含めた全員が戦慄する。
こいつらは一体何を言っているのだと。
凡人だろうとも天才だろうとも理解できない。
純粋悪や悪のカリスマなど悪役を言う名はあるが、こいつらは違う。
そんな悪たちよりも質が悪く、悪そのものを理解していない悪。
この二人は極悪非道も生ぬるい何か、ということが分かる。
「だから自分たちの娘を使ったんだ、この世界の未来のために」
「…」
「結果は散々だ、姉妹揃って使えないゴミめ」
あまりにも理不尽であまりにも酷すぎる。
この青葉という少女に向けられた物があまりにも惨すぎる。
実験のモルモット、元凶の傀儡として動かされ、挙句の果てには救いはなく人間を止めさせられ、捨てられた。
こんなことが許されるのか?
「…お姉ちゃん」
「青葉ちゃん…」
涙を流し、床に座り込み、空虚を眺める青葉。
あまりにも…可哀そうだった。
「専用機持ち、戦闘要員に告ぐ」
御影先生が戦闘要員全員に無線を飛ばす。
「――殺せ」
その声には様々な思いが込められていた。
憤怒。憎悪。怨嗟。殺意。
ドス黒く、怒りの炎を滾らす御影がそこにいた。
生徒や教員も初めてみる顔つきをしている。
「殺す?何故だ」
「天才だろうが知ったことか、お前たちは『害』だ」
「何だと?AGを作り出したあの忌々しい九条に比べたら」
「アイツらの方がよっぽどましだ」
「何を言う。この世界がどうなったのかよく分かっているだろう。AGを作り出しても根本的な解決には何一つつながらず、なんなら犯罪率も増えたじゃないか」
「…もういい、お前たちには何を話しても無駄だということが分かった」
御影は思った。
(こいつらは克樹と夏樹が何を思ってAGを作り出したのかを知らずに語っているだけだ)
克樹と夏樹がAGを作り出した理由。
そもそもインフィニティという代物を抑制するために作り上げたものが、神器『インフィニティ・ギア』。
世界が技術的にも一歩進歩できたのはこの二人のお陰とも言い切れる。
そしてインフィニティギアの悪用を防ぐために作られたのが『アーマー・ギア』。
その影響で大体の犯罪組織は消えたが代わりにギアを使った犯罪が増えた。
しかし、犯罪率はプラスではなく徐々に減少している。
「まぁお前たちが私たちといくら会話しようがどうでもいい、どうせ…詰んでいるのだから」
「何…?」
次の瞬間。
――ヴーンッ!ヴーンッ!
元凶の声とともにIGD学園中に鳴り響くサイレン音。
「何が…!?」
「み、御影先生!IGD学園上空に高エネルギー反応!」
水津がコンソールを操作し、IGD学園周囲をスキャンした結果。
上空に高エネルギー反応ありと表示された。
「青葉、役立たずなお前でもまさか使えるタイミングが来るとは。キャッスルを放棄してくれてありがとう」
「お陰でIGD学園目掛けてキャッスルの砲撃の一斉射撃が可能になった」
「う…そ」
これでもかと畳み掛ける元凶たち。
「わたし…は」
「青葉…」
青葉の瞳から完全に光が失われた。
自分のせいで様々なものが消えてしまう罪悪感で。
「勿論、一点集中でIGD学園を貫こう。mother」
『…イエス、マスター。キャッスルの全砲撃を一点に集中、チャージ開始』
motherがキャッスルに指示を出し、キャッスルの全ての砲塔がIGD学園に狙いを定めた。
そして…砲塔の先端にエネルギーが集約していく。
「貴様ら…!」
「さて、私たちは脱出しましょう。ハイエンド…はもういいです、後で破棄しましょう」
「mother、代わりの物は」
『現在ありません』
「…ならゴミでいいですよ」
と不満たらたらで元凶たちが話すと龍のハイエンドがIGD学園の避難区画に突入してきて元凶たちを持ち、一瞬のうちに何処かへと飛び去って行った。
「クソ…!吾郷!バリアは!」
『今やってるけど…これはまずいかも』
元凶に逃げられ、御影は吾郷にキャッスルからの砲撃を防ぐためのバリアの状態を聞くが、吾郷からの答えは想像よりも酷かった。
『これは…確実に防げない。一発一発なら何とかなったかもしれないけど、一点に集中されるとバリアは確実に貫かれる!』
「なんだと!?」
『避難区画の破棄も検討すべきかもしれないけど、これを見て!』
吾郷は声を荒げながら御影と専用機持ち全員に映像を転送した。
その映像には
「何だと…!?」
『ハイエンドの増援が一斉に橋から攻めよってきてるし、何より数が多すぎる!今も捌き切れていないし、完全に袋小路になってる!逃げ場がない!』
全てのIGD学園へのルートがハイエンドの軍勢により埋め尽くされ、逃げ場が完全になくなってしまった。
一点突破でも何とかなるかもしれないがこの場にいる避難民全員と残り数秒でこの場から脱出するのは至難の業だ。
「水津さん!今からでもスターゲイザーを」
「…フレヤ、それはできない」
「ど、どうしてですの!?」
「…出力もパワーも何もかもがあの砲撃に勝てない。それに…チャージ時間を考慮しても確実に間に合わないし、もし間に合ったとしても、多分…威力負けしちゃう」
「そんな…」
フレヤも何か対抗すべくスターゲイザーで撃ち抜くことを考えたが、制作者である水津はそれを否定。理由は出力の問題やチャージ時間。
専用機持ちや教員たちが各々でキャッスルを止める方法を考えるが解決方法は何一つ見つからなかった。
「…青葉、さん」
「…」
絶望に打ちひしがれている青葉に話しかける葵。
「青葉さんはキャッスルの操作は出来ないのか…?」
「…アジダハーカでのコントロール権限は剥奪されていて…motherは」
「そう…ですか」
青葉も青葉の方で何とか対抗策を行っていたが万事休すであったことには変わりなかった。
避難区画、IGD学園全体に絶望感と恐怖が覆い尽くされてしまう。
――そこへ。
『ならその役、私が請け負いましょう』
女性の声がIGD学園全体に流れてくる。
「誰だ!」
『み、御影先生!地下区画から…新たな機体反応!これって…!?』
御影の元へ柊木からの通信が入る。
地下区画から新たな機体反応が出現し、その機体は近くから飛び出し、IGD学園の屋上に着地した。
「識別コード…ゼフィルス?いや何かが違う…」
御影は新たな機体反応の識別コードを確認する。
『Zephyrus』と表示されているが根本的には色々と何かがおかしい。
出力や武装などが元のゼフィルスよりも高く、何よりあの機体は動かないはずなのに、今は空を飛んでIGD学園にいる。
一体『誰』が操作しているのか。
『申し遅れました、私は九条春斗の相棒』
『――椿、と申します』
「えっ!?」
「椿さん!?」
「!!?」
「お姉ちゃん…!?」
ーーー
「このような感じなんですね、春斗の気持ちや心構えは」
IGD学園屋上。
ブラッド・ティターニアに身を包む椿が空に瞬く緑色の閃光を眺めていた。
(相手のレーザーを貫く、いつも春斗はこんな無理難題を解決していたんですね)
頭の中で春斗の気持ちを理解しつつ、魔剣を地面に突き刺し、両手にビームライフル『ディザスター』を装備し、チャージし始める。
するとディザスターの先端に赫蝶も集中していき、背中の蝶の羽から10連ビッドが展開され、背中辺りで輪を描き…全てのバレルがキャッスルに向けられた。
「さぁ、相棒の無茶を私も真似してみましょうか。行こう、ティターニア」
誤字脱字、語彙力がほぼ皆無に等しいのでミス等がありましたらご報告お願いします
感想も待っていますので気軽にどうぞ!
超絶不定期更新ですがご了承ください…




