第102話 戦乙女と獣
「クソ…!!」
いくらなんでも多すぎる…!
俺が自由に動き回れるように10分間だけはハイエンドの破壊通知が元凶の方へ送られないようになったけど…だとしてもこの数は流石にキツイ。
それに…!
「ぐっ…がぁぁぁ…!!?」
アレのせいでbutterflyの影響が徐々に強まってきている。
10分間のタイムリミットもあるけど、そこまで俺が耐えれるかどうかすらも怪しい。
(俺は早く地下区画に行かなきゃならねぇのに…!!)
赫蝶が示したIGD学園地下区画。
そこに、何かがあるはずなんだ!
その為にも…。
「邪魔だぁァァァ!!!」
――バギャアァッ!!
右手で人型のハイエンドの胸部を貫き、そのまま壁にしつつ他のハイエンドに突撃して一機一機破壊していく。
「ふん!」
貫いたハイエンドをそのまま後続から来ていたハイエンドに投げつけ、先頭に戻る。
だが…。
「どんだけ多いんだよ…!!」
キリがない…!
『シャアァァァッ!!』
「なっ!?」
反応が遅れた!
先頭に行き過ぎたせいで後続の奴が近づいていたことに気が付かなかった。
間に合うか…!?
(いや…間に合わせる!)
次の瞬間。
『春斗!避けろ!!』
「!!」
聞き覚えのある女性の声が聞こえた瞬間、俺はその場で停止し、後方へジェットを噴射しつつ後転しながら身体を捻り回避する。
そして。
――キィィィン!!!
青い斬撃波がハイエンドを斜めに切り裂いた。
「春斗!」
飛脚を身にまとった葵が…俺の代わりに救急車を助けてくれた。
「何故助けた葵!俺は敵「違うッ!!」」
「!?」
「私はお前の幼馴染だぞ…?嘘くらい、分かる」
「…嘘なんぞついて」
「なら何故私を見て言わない」
「ッ…見なくても嘘くらいつける」
「見ないのならお前は嘘をついてると言い切れる。それに私は春斗の癖を知っているからこそ言い切れるんだ」
俺の…癖?
「お前は嘘をつく、あるいはついているとき相手を見ようとしない。それは…お前の親友である三人も分かっていたぞ」
「アイツら…」
那由多に、谷氏に、蜂が…?
「それに私たちは春斗さんが敵に寝返ると思っていませんもの」
「そうそう、だって春斗は自分のことは考えないのに僕たちの事を考えちゃうから」
「全く、私たちの心労も考えてほしいぞ」
「心配…かけすぎ」
「まぁそこも春斗君らしいけどね」
「敵を助けるような奴だからな、春斗は。私の時と同じように青葉を助けたいんだろう?」
「みんな…」
みんなにも…バレていたのか。
「春斗、私たちを…信じてほしい。私たちはお前の味方だ」
「…」
「フッ」
「フハハハハハハッ!!」
あー…笑いがこみあげてきてしょうがない。
「な、何がおかしい!?」
「はーっ…そうだな、俺の友達は皆おかしいよ。敵に回った友人すら信じるなんて」
「…」
「別に元々みんなを信頼してなかったわけじゃない。むしろ…皆に何とかして情報を伝えたかったけどこっちもこっちで忙しかったからなッ!!」
尻尾のブレードで薙ぎ払い後続を巻き込みつつ、バックステップで救急車の元へ戻る。
「…今の俺がこんなことを言うのはアレなんだけど…手を貸してほしい。IGD学園にいるけが人や避難民を救うためにも」
「勿論!」
「言われるまでもありませんわ!」
本当に…。
「水津!雪華さん!波と氷壁で後続をせき止めてください!」
「うん…!」
「お姉さんに任せなさい!」
「レベッカ!フレヤ!アナスタシアはそこから零れたハイエンドの狙撃!」
「分かったよ!」
「お任せくださいまし!」
「あぁ!」
「アイヴィーと葵は俺と一緒に前方から迫ってくるハイエンドの殲滅!いいな!!」
「任せてくれ!」
「分かった!」
「…本当に」
――俺の友達は、良い奴ばっかりだ!!
「行くぞ!!」
◆◆◆
無類無敵の最強の戦乙女と獣の陣。
その陣にありとあらゆる策や戦士を投入しても…勝ち目はない。
「波よ!」
「氷よ!」
後続に波と氷が押し寄せる、そして
「「大氷壁ッ!!」」
その一瞬のうちに敵を凍らせ。
「アクセラレータ…シングルポイント!!」
「一斉射撃で行くよ!!はぁぁぁぁっ!!」
「撃てぇぇぇっ!!」
そこから脱出できてもレーザー、弾丸、大口径弾が敵を穿ち。
「ここから先へは行かせない!」
「村雨!白露!」
「どけぇぇぇっ!!!」
後ろが無理なら前から攻めても聖剣、刀、爪が敵を切り裂き、守り行く。
最強の盾、最強の矛。
どちらも持ちえた最強の布陣は留まるつころを知らず、進むべき道をただひたすらに進みゆく。
「――フッ」
先陣を斬る獣はその光景を見て笑っていた。
その笑顔には様々な意味が込められていた。
友との再開、友との共闘。
(一人じゃなかったな、俺は…!)
青年は地面を蹴り上げて、更に前へと進む。
「俺を…いや俺たちを、止めてみろォォォォォォッ!!」
友への感謝。
青年の身体が弱り果てていても、彼女たちと一緒なら彼は負けない。
最強に近しい生物に更に最強の友が加われば、もう負けることはない。
戦乙女と獣の絆の力はありとあらゆる障害を蹴散らす。
完膚なきまでに!
ーーー
4分の時が立った。
本来、一人で守るはずの橋の防衛線は救急車に傷1つ…いや指一本も触れさせることもなく完全に守り切り、完全勝利を収めた。
「助かったよ!それでこれから避難民の区画に行けばいいのか?」
「…まだ待ってくれ、中からの連絡が来ない」
「中からの連絡…?なぁ春斗、その青葉に成し遂げて来いって言っていたが一体何を考えていたんだ?」
「…話すべきだな」
葵からの質問に春斗は少し考え込み、決意し話し始めた。
「俺たちの作戦…表向きは『IGD学園の避難民及び全校生徒、全職員の殲滅』だ」
「!!?」
「一方的な蹂躙でこのIGD学園を落とすつもりだったんだ」
「…でも表向きって?」
「あぁ、それが元々計画させられてた作戦だから表向き」
「なら裏は?」
「裏を語る前に伝えておくべき事がある。この情報に嘘偽りはない、だからこそ信じてほしい…信じてくれるか?」
春斗は目線を全員に配らせる。
その目線を受け取った乙女たちは…縦に頷いた。
「ありがとう。まずこの戦いの勝利条件から話そう」
「勝利条件?」
「…元凶を潰すことだ」
「元凶?」
「あぁ、その元凶っていうのが青葉ではなく椿と青葉の実の親だ」
「えっ!!?」
皆、驚きの声を上げる。
「青葉は命令されていたんだ。変革も、IGD学園に対する攻撃も」
「ちょ、ちょっとまって春斗君!なら…青葉ちゃんは」
「…元凶から見たらただの操り人形でIGD学園やAG行動隊の敵視を向けさせる囮って訳です」
「そんな…」
そう、青葉はこの戦いにおいて一番の『被害者』なのだ。
そこの事はこの場に居る誰よりも理解している春斗だからこそ、言える例え。
「元凶をぶっ潰せばこの戦いが終わる。それで青葉が被害者で元凶が親であると言うことを理解したうえで裏の作戦を話す。今、このIGD学園の避難区画にはその元凶である両親がいる」
「嘘!?」
「その両親を青葉は暗殺しに来たんだ」
「つまり…実の家族を殺めるために…?」
「あんなの家族なんて言えねぇよ…ッ!」
「…!」
春斗の顔が怒りに変わる。
「あんなことをして…許されるわけがないだろうがッ!!」
「春斗…」
「…すまん。それで青葉の作戦は元凶の殺害、んで俺が医療施設の医師や看護師、薬品等を守るために戦いつつ、ハイエンドたちの露払いをしていたってことだ」
「じゃあやっぱり、春斗は敵じゃないんだね?」
「あぁ。俺は青葉を救うために戦っていた、これからは普通の人として過ごして行けるように」
「…」
「…信じてくれるだろうか」
春斗がやや心配そうな顔をしながら皆を見る。
「疑うわけがないだろう?それに、春斗の行動には説得力がありすぎる」
そう話すのはアイヴィー。
「説得力?」
「…私は元々春斗の敵だ。それでも助けてくれた、敵すらも救ってしまうのがお前だろう?」
「アイヴィー…」
「なら私は信じる」
「それなら僕もだよ?元は…その春斗の事を…」
「じ、自分の傷を掘り返さなくていいんだぞ!?」
過去の事を思い出して若干悲しい顔をするレベッカ。
「ご、ごめんね?でも春斗のことは信じてるから」
「お、おう…」
「…なら春斗はこれからどうするんだ?防衛は終わったのだろう?」
「青葉の作戦成功を祈るばかりだが…正直、成功すると思っていない」
「何故だ?」
「IGD学園に元凶がいる、なんて戯言誰が信じる?」
「!!」
「多分、失敗に終わる、だから援護に行きたいが…!」
と言った瞬間、春斗はその場に膝をついて座り込んだ。
「春斗!?」
「どうしましたの?」
「ぐっ…はぁッ…すまん、最近連戦続きで身体がな」
息を荒げながら下を向き、話す春斗。
「だから…頼みたい」
「!!」
「殺しを手伝え、なんて言わない。どうか、青葉を守ってほしい…!」
「…」
「多分、教員からは何をしてるんだとか言われそうだけど…この戦いの一番の被害者は青葉だ。これで失敗なんてしたら確実に青葉が殺されてしまう…!冤罪のまま、元凶の烙印を押されたまま、青葉をこの世から失わせたくないんだ…!!」
地面に添えられた春斗の左手に力が入る。
「だから…!」
「春斗君」
座り込む春斗の肩にポンと手が置かれる。
置いたのは…雪華。
「君の願いはしっかりと受け取ったよ。それに君は自分自身がどれほど信頼されているか分かってないでしょ?」
「…」
「御影先生も柊木先生も先生方も生徒の皆もきっと話しに耳を傾けてくれるはず。だって君は一人じゃないんだから」
「雪華さん…」
「皆、分かってるわね?」
各々が雪華の指示を聞くより先に理解し、縦に頷く。
「それで、春斗君はどうするの?」
「…俺は俺でまだやるべきことがあります。先に行っててください」
「本当に大丈夫なのね?またこれで君を失うってことになったら恨むわよ?」
「…雪華さん」
「何かしら」
「…もう俺は一度死んでますから」
「はぁ…最悪の返しね、春斗君に対する好感度が下がっちゃいそう」
「…」
「つまるところ、帰ってくるかどうかはまだわからないって事ね?」
「…はい」
「…なら約束して」
「?」
春斗の右手を握って、春斗の小指と雪華の小指が交差する。
「帰ってきなさい、絶対に」
「…」
「このまま居なくなってもいいや、なんて考えないこと。帰ってこれるなら帰ってきなさい。私たちは待ってるから」
「…はい」
「はい、指きりげんまん以下省略!」
「ず、随分と雑な指きりですね?」
「いいのよ、これくらいで。さ、皆!行くわよ!」
「はい!!」
そういって戦乙女達は避難区画へ飛んでいった。
「…君は大丈夫なのかい?」
救急車から降りた一人の医師が春斗に問いかける。
「俺は大丈夫です。とりあえず皆さんは避難区画近くに待機しておいてください。もし危険な目にあわされそうになったら遠慮なく引いてもらっても構いません」
「わかりました」
「…じゃあ俺は行ってきます」
指示を出し、春斗はまた立ち上がってIGD学園の校舎の中を目指す。
(地下区画への行き方は…まだ覚えている)
butterflyに身体を蝕まれようとも彼は歩き続ける。
(…嘘をついているときは相手の目を見ない、か)
春斗は葵に言われたことを思い出し、考える。
(案外、的を得てるかもな。人の目を見て嘘なんぞ付けねぇよ、罪悪感で)
今、春斗は罪悪感を感じている。
butterflyに身体を蝕まれている事を告げず、疲労で膝を付いたと嘘をついてしまったからだ。
(悪いな、皆…俺はもう助かる気がないんだ)
春斗は歩き続ける。
赫蝶が導いた場所へと。
ーーー
「はぁっはぁっ!!」
『青葉、大丈夫ですか?』
「大丈…夫!!」
IGD学園の教員たちを無力化した青葉は避難区画目掛けて飛翔する。
『もう少しです』
「もう…見えてる!はぁぁっ!!」
そして元凶が居る避難区画の扉をぶち破って中に突入する。
「きゃあぁぁぁぁぁっ!!」
避難区画の中は元凶だと思われている青葉が単騎で突入してきたのでパニック状態になる。
(予想通り…!)
こうなることは青葉は予想していた。
このパニック状態になれば、目的の元凶を『誤射』という形で殺すことが出来る。
そうして青葉は4匹の龍の頭にエネルギーをチャージする。
狙うは一点、元凶ただ一人。
(今だ…!)
そして青葉は…放とうとしたところで。
『青葉』
motherではなく元凶である実の母親からの通信が入る。
『――私たちが知らないとでも?』
「…え?」
誤字脱字、語彙力がほぼ皆無に等しいのでミス等がありましたらご報告お願いします
感想も待っていますので気軽にどうぞ!
超絶不定期更新ですがご了承ください…




