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インフィニティ・ギア  作者: 雨乃時雨
第三部
102/122

第100話 沈まぬ太陽

『沈まぬ太陽』


「―――」

「九条春斗?どうしました?」

「あぁ、すまん。すこしぼーっとしていた」


キャッスルコア区画。

その場所に青葉とアンノウンに身を包み、床に座り込む春斗がいた。


「…分かっていますね?」

「あぁ、お前たちからの命令は頭の中で三度繰り返した」

「なら大丈夫です」

「…決めるんだな?」

「――はい」


青葉の表情は覚悟に満ちていて左手に握る魔剣に力が籠められる。


「そういえば気になったことが」

「うん?」

「何故ずっとアンノウンを装着しているんですか?」

「あー…まぁこれに慣れたというべきか」

「慣れた?」

「…俺が生き返ってからずっとこのアンノウンを装着し続けたからさ、逆に着てないと違和感が」


そういいながら春斗は自身の右手をグーパーしながら見つめていた。

今日という日に至るまで春斗は日本国内の全ての病院を破壊し、motherからの命令であった子供たちの遺体の回収も終えた。

青葉曰く『完璧すぎます』だそうで。


「そうですか…あと、その」

「?」

「椿…お姉ちゃんはどうですか?」

「今のところは声も聞こえないし、赫蝶は出せない。でも…何だろう?身体の中に居る気がするんだ」

「…生きているんですか?」

「そこは言い切れないが、生きている気がする」


春斗は右腕だけをアンノウンから露出する。

そこには今まで以上に輝きを放ち、脈動する赤い模様があった。

butterflyを接種し続けた影響なのか、あるいはある程度の時間が過ぎたので赫蝶が集まりつつあるのか分からない。

だか、確実に赫蝶達は元に戻りつつあるということはわかる。


「椿お姉ちゃん…」

「…さて、そろそろ時間か」

「任せますよ。露払いと…防衛は」

「あぁ、任せてく」


次の瞬間。


――…ゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥンッ!!!


「ん?」


――バギャアッ!!


轟音が響き渡りキャッスルが大きく揺れた。


「何だ!?」

「mother!何が起きたの!?」

『確認中…キャッスルに大ダメージ。エンジンシステムの区画に大穴が空きました』

「何ですって!?」

「スターゲイザーか…!」

「スターゲイザー?」

「IGD学園にあるキャッスルのバリアを貫通させるために作られた質量砲『スターゲイザー』。俺たちが乗り込むときにバリアとキャッスルに大穴が空いたろ?あの時の原因の奴」

「…納得です」


青葉は少し焦っていたがそれとは対照的に春斗は落ち着いていた。


(…スターゲイザーが放たれたってことはフレヤのスプライトの修繕は終わったのか。となるとまたキャッスルに突撃してくるかもしれない)


追撃を予測した春斗は膝に手を当てて立ち上がる。


「俺が出よう、恐らくだが突撃してくる可能性がある」

「…いえ待ってください」


出撃しようとした春斗を静止したのは青葉だった。


「キャッスルをここで破棄します」


青葉からの指令はキャッスルの破棄だった。

つまるところ、仮にこちらに向かってきていようとも迎撃はせず、このままキャッスルを放棄すること。


「…何故だ?」

「相手の狙いは完璧です。キャッスルのエンジン部分は大破し推進状態に異常が出つつあります、それに…丁度良く私が出撃できる口実が出来たので」

「青葉が言うなら従おう」

『青葉、ハイエンドを連れてキャッスルから脱出を。九条春斗は少々よろしいですか?』

「?」

「春斗に?」

『…アレを持ち主に返しましょう』

「あ…」

「アレ?」

『説明は道中でします、今は指定する場所へ向かってください』

「わ、分かった。じゃあ青葉、地上で」

「はい」


◆◆◆


俺はmotherに指定された区画へ向けて走る。

マップを確認すると俺がここに突入した時も来たことがない場所だ。


「グおっ!?」


また大きくキャッスルが揺れる。

みんな…。

いやいい、今は敵なんだ。気にせず走れ俺!

走らねぇと…!


「ぐっ…!?」


全身が張り裂けそうな感覚が内側から全身に広がる。

butterflyは…確実に俺の身体を蝕んでいた。

もう、限界に近い。だがこんなところで眠ってられるほど俺は暇じゃない。

自分の身体を縫いつけるかのように全身に力を張り巡らせ指定位置に走る。


『春斗聞こえますか?』

「!…あぁ聞こえる」

『今案内している場所に…貴方へ返すべきものがあります』

「俺に返す?」

『はい、見れば…わかるかもしれません』


mother曰く、俺に返すものらしい。

でも俺はmotherや青葉に何も渡していないはず。自覚していない間に何か渡していたのか?

そう考えているうちにその指定区画にたどり着いた。


『解錠します』


頑丈そうな扉がガコンと音を鳴らし、横へ開かれていく。


「…」


そしてその区画の中心部分に位置する場所にライトが照らされる。

そこには。


「――AG?」


純白の装甲、背の部分に浮遊する4つのジェット機構。

俺が使っていた焔に近しいフォルムを持つAGがそこに鎮座していた。


『この機体の名は…『白夜(びゃくや)』』

「白夜…」


俺が知らない機体のはずなのに何故か見覚えがある。


『この機体は全てのAGのプロトタイプであり…貴方の親である九条克樹、九条夏樹が初めて作り出したアーマー・ギア。それがこの白夜です』


父さんと母さんが初めて作り出したアーマー・ギア。

それが『白夜』。


「何故そんな機体がここに?」

『…前にも話した通り貴方の親を殺した青葉の親はこのプロトタイプすら強奪したのです』

「!?」

『ですが本来奪うはずだった機体『(かがり)』の行方が分からず、急遽この白夜を強奪しました。…これは貴方の親の物です、なのでその息子である貴方にお返しすべくこの区画へ案内したのです』


篝。

俺の母さんの専用機。

その行方が分からなかったのは、黒鉄の為に篝をベースにして拡張パーツを作り出していたからなのか…?

…母さん、父さん。

あの時点で…俺の為に。


「…俺の家族のもう一つの形見とあれば、その息子である俺が受け継ぐ。受け取らせてくれ」

『かしこまりました。では…腕を前に出してください』


俺は右腕のアンノウンの装甲を外し、赤い模様が付いた俺の右腕を前に出す。


「来い、白夜」


鎮座していた白夜は粒子となっていき、俺の右手首に集まっていく。

そして俺の右手首に純白のブレスレットが装着された。


『白夜の転送完了しました』

「…く」

『春斗…?』

「…すまん」


俺の右目の視界が歪むと同時にブレスレットに一滴の雫が零れ堕ちた。

ブレスレットに左手を添える。


「母さん…父さん…!!」


今まで泣けなかった分、ここで泣ききってやる。

世界の事を思ってインフィニティギアを作り出し、俺の事を思ってAnotherやギアが搭載された人工血液で俺を治し…俺の為に黒鉄、白鉄、焔を作り…。

俺を守るために、自分の死が近づいていたにも関わらず実験レポートや俺に関する情報を何もかも焼き尽くした俺の家族。

とんだ親バカだよ…俺の事を考えすぎなんだよ…!


「うあぁ…!」


一緒に…生きて居たかったよ…!

俺の成長を見てくれよ…!

ここまでの頑張りを褒めてほしいよ…!

息子として…父さんと母さんに抱きつきたいよ…!


「うぅっ…!」


仲間がいても俺の親は二人だけなんだよ…!!

なぁ…聞いてるか!!

九条夏樹!九条克樹!

俺は…!!


「あぁぁぁぁっ!!!」


…失ったものは戻ってこない。

だからせめて…これを手向けにしたい。


「母さん…父さん…俺は」


二人が守ったこの世界を代わりに守る。

二人が愛したこの世界を代わりに愛す。

二人が愛してくれた俺を礎に皆を守る。


「…見てろよ、絶対に天に轟かせるくらいの俺の勇士を見せてやる…!」


「だから…!」


「自慢の息子と思ってくれてもいいんだぜ…?」


右目から涙を流し続け、俺は白夜を見る。


「共に…守ってくれ、白夜」


俺の涙に照らされた白夜。

心なしか…返事をしてくれたような気がした。


『…春斗』

「今までの分泣き切ったぞ」

『…貴方に返すべきものがもう一つあります』

「…?」


右目の涙を拭う。

もう一つ?


『こちらです』


天井が開く。

そこから…一本の刀が降りてきた。

AG並みの大きさを持つ黒色の刀身に赤色と橙色の炎を纏い、鞘にも様々な機構が付けられている。


『これは私たちが破壊してしまった焔を元に作り出した刀です。本来は焔を修繕し春斗に返却するはずだったのですが予想以上の損傷に修繕が出来ず、急遽武装として換装しました』

「これが…AGである焔を換装した武装」

『…お気に召しませんでしたか?』

「いいや、これでいい」


中に浮かぶ刀を両手で受け取り、鞘に納刀する。

お帰り『(ホムラ)』、また一緒に俺と戦ってくれ。


『…これで私から返すモノは全てです。春斗、キャッスルからの脱出を』

「あぁ…あ、それと青葉の方を頼む」

『何故ですか?』

「俺はアンノウンに白夜に焔も居る。ここからの脱出なんぞ容易い、逆に先に脱出した青葉にIGD学園の先鋭達に襲われていたらどうする」

『…分かりました。何かあり次第連絡を』

「あぁ、頼む」


そうしてmotherとの通信が切れたことを確認した俺は焔を白夜に繋げる。

専用武装として。

俺の家族の形見、俺の努力の結晶、俺を理解してくれたAG。

それを1つにする。


「…頼むぞ、俺の最終兵器として」


焔と白夜の接続が完了した。

よし、返してもらうものも返してもらった。


「俺も脱出を」


と思った時。


『―――!』

「うおっ!?」


右腕が明後日の方向へと自分の意思と関係なく引っ張られた。


「な、なっ!?」


腕がぐいぐいと引っ張られる。

右腕を見ると…。


「――か、赫蝶…!?」


俺の右腕には1匹の赫蝶が止まっていた。

いや赫蝶!?帰ってきたのか!?

だが椿の声は何一つ聞こえないのに何故赫蝶だけが…?


「つ、椿…?」


一応で問いかける。

…声は返ってこない、だがこの赫蝶は俺を引っ張り続けている。

何処かに案内しようとしているのか?


「…ついていくから腕を引っ張らないでくれ、少し痛い」


というと赫蝶は俺の腕から離れて、飛んでいく。

…ってこんな呑気に言っている場合じゃない、今思えばキャッスルは落ちかけている。

早々に行かないと崩落に巻き込まれかけない。


「行こう」


俺は走り始めた。

誤字脱字、語彙力がほぼ皆無に等しいのでミス等がありましたらご報告お願いします


感想も待っていますので気軽にどうぞ!


超絶不定期更新ですがご了承ください…

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