第十一話「人質」
「くっ、こちらに来るというのか。おい、人間」
「えっ」
「今からお前をさらうのみ!」
ベロカは小味をさらった。
大きなひづめで小味をわしつかみし、宙へと羽ばたく。
「ベロカ!!」
「残念だったな、今からこの人間は我が輩のもの。もらってゆくぞ」
そういうとベロカは飛び去ってしまう。
「待てっ、ベロカー!!」
カリマは慌てて追いかける。
「おじさん達はどうすればいいの?」
ゼロは仲間と共に困り置いていかれた。
宙へ飛び続けるベロカとカリマ。
「キャー、助けてカリマちゃーん!!」
小味はひたすら叫んだ。
「くっ!!先に飛び立った速さでスピードがおいつかない。一体どうしたら」
「やっぱり我が輩のスピードでは追いつけまい。なにせレースで優勝してる我が輩だからな」
何か勝つ策はないかと考えた。
スピードで勝てないというのなら他に何か弱点はあるはずだ。
今日の出来事を考えると、カリマは走るのをやめ止まった。
そして。
「ん?」
「ベロカ、お前は今まで何をしていた?」
ベロカも振り返り止まる。
「一体何のことだ」
「もう忘れてしまったのか、お前の役目を!」
「まさか」
「そのまさかだよ。お前が飛び立ってくれて門番がいなくなった!!」
カリマは後ろを向き元いた場所へと飛び立った。
「待て!!」
「カリマちゃん!!」
小味が最後に叫ぶと何をするのか理解できた。
「うわっ、戻ってきたな、カリマ」
「今はおじさん達の相手をしてる暇じゃない!!」
「一体何を」
ゼロが見守ってる最中、カリマは宮殿を手で破壊した。
人々は破壊の衝撃で逃げまとう。
「魔石は一体どこに」
「カリマ!!絶対魔石は渡さないぞ」
「もう追いついたか。でも、私の勝ち」
カリマはある人物をとらえていた。
「うわあああ、助けてくれー」
それはこの宮殿の王であった。
「父上!!」
何故かベロカは叫ぶ。
「えっ、もしかしてあの王様は」
「我が輩の父上だ。許さんぞ、カリマ」
「人質同士、これでお相子だな、ベロカ」
カリマはベロカの父を握り潰す。
「うわああああ」
「やめてくれ」
「じゃあ、小味を離せ」
「離してやるものか」
「なんだと。じゃあ、お前の父もこれまでだ」
「うわああああ」
「くっ。わ、分かった。離してやる。ただし条件がある」
「条件とはなんだ」
「あの魔石に一切近づくな」
「なにっ」
「あの魔石は我が輩のもの。父上が我が輩のために魔力を入れて育てているのだ」
「そんなの知ったことか。あれは私も必要なのだ」
「じゃあ、この人間を離してやることはできない」
「小味」
「カリマちゃん」
小味とカリマは見つめ合う。
「カリマちゃん、私のことはいいからあの魔石を手に入れて」
「だが」
カリマは今までの小味の思い出を振り返る。
「くそおおおお」
楽しい思い出が頭によみがえり、カリマを困らせる。
「小味、魔石、小味、魔石、小味、魔石」
カリマは迷っていた。
そして。




