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第一話「始まり」
ワーワーと争いの声が聞こえる。
ここはどこだ。
ふと意識が戻っていこうとすると頭に衝撃が走った。
ずしりと重い痛みだ。
何が起こっているのかとうっすら目を開けると目の横に血が付いた石が転がっていた。
「……え?」
小味はこれが自分の血痕だと理解した。
「…やばい、とにかくここから逃げないと」
自分の出血に気づき、ここは戦場だと察知した。
空は赤く周囲の建物は炎で焼かれていた。
時々住民や兵士と思われる人たちがぶつかり合う。
「ここは一体どこ? 私はさっきまで体育してたのに」
頭を押さえながらとにかく走る。
「おい邪魔だ」
「ねぇ、私の子供を見なかった?!」
ぶつかる人たちは口を開いてはそう言ってくる。
だが、小味はそんなのどうでもよかった。
とにかく安全な場所に行きたい。
「ガオォォォォン!!」
「なにっ」
小味は頭を上げる。
すると目の前にいたのは赤い鱗、固い皮膚、建物より大きい姿、鋭い目つき。
なんとドラゴンであった。