第一話 開戦
第一話
13:24
[うっ、う~ん。あれっ?」
目が覚めると佐藤翔はあまり知らない街の中に居た。
あまり知らないというのは、二年前に友達と来たっきり訪れたことがないからだ。
見渡すとやはり二年前に訪れた駅前の繁華街であるようだ。
なんでここにいるんだ…
意識がはっきりしない。ここにくる以前に自分がどこで何をしていたか全く思い出せない。
誰かに誘拐されたのか?
とりあえず荷物を確認してみる。
結局持っていたのはポケットに入っていた財布とスマホ。それに何も入っていないバッグ。
とりあえず家に帰るか…
スマホで現在地を確認しようと歩きながらスマホを起動する。まぁ誰もいないし歩きスマホしてもいいかな?
パスワードを軽快に打ち込み、ブラウザアプリでマップを起動…出来ない?
見慣れたはずのスマホの画面の右上には圏外のマーク。
どういうことなんだ?ここが山の中とかならともかく真昼間の繁華街で圏外表示…?
その時…翔は違和感に気づく。再びスマホを確認すると時刻は13:24を示している。
「真昼間の繁華街で何で俺以外に誰もいないんだ?」
「あーあーあーマイクテス。マイクテス。みなさぁ~ん?聞こえてますかぁ~?」
突然町中に響きだす奇妙なサイレン放送。聞いた感じでは若い女…?
「時間がないので手短に話しま~す。今からあなたたちには戦いあってもらいま~す。」
あなたたち…俺以外にも誰かいるのか?そもそも俺に向かって話しているのか?それに…戦い?
非日常的な出来事が連続して起こっていて翔は困惑するが、放送は待ってくれない。
「一応何ですけど、あなたたちにはitemという特殊能力が一人につき一つ通常であれば与えられていま~す。活用してくださいネ☆」
わからない。漫画やラノベの読みすぎでおかしくなっちまったのか?思わず頬をつねるが痛みがあるだけで何も起こらない。夢ではないらしい。
「で、後はぁ…あ、そうそう勝ち残った最後の一人の望みは何でも叶いま~す。」
なんでも望みが叶う…?ばかばかしいがこの状況では何が起こってもおかしくはないな。
「では説明も終わったので…もうすぐ始めましょうか。
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では~開始ぃぃぃぃぃぃぃ!!!!」
「終わった?何だったんだ…?」
item?特殊能力?戦い?意味が分からない。理解したくもない。
「帰ろう。なんかイベントでもあってんだろ 俺には関係ないな。」
でも…なんでも望みが叶うなら…何をかなえたい?
刹那、ものすごい振動とともに地面が揺れる。立っていられないほどだ。
「今からこのビルを崩す。君は対処できるかな?」
誰もいないはずの周りから声が聞こえる。
「は?は?は?何?何?何?」
何が起きているのかわからないが逃げるしかなさそうだ。ビルから離れるしかない。
直後、轟音、振動、翔の何十倍あるかもわからない巨大なビルが音を立てて崩れ去る。
瓦礫があたりに散らばり、煙が翔の視界を遮る。何が起きているのか、自分は安全なのか?
すべてわからない。間に合ったようだな。足だけは昔から早かった。
完全にビルが崩れ去り、辺りが静まり返る。
パチパチパチ。
気が付くとビルの跡地から人影が見える。人がいたのか?もしそうなら傷は?けがはしていないのか?翔は駆け出しながら、
「大丈夫ですか!? けがはありませんか!?」
現れた、金髪で眼鏡のホストのようなはっちゃけたサラリーマンのような、痛い大学生のようにも見える、形容しがたい容姿の、そんな男は満面の笑みでほこりを払いながら叫んだ。
「素晴らしい!あれくらいで死んでもらっては困るからね。
さぁ!!バトルを始めよう!!!」