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【】び ふ て き【】

『神椿市 市民ホール』


「えー、みなさん」


「定期集会にお集まりいただき、ありがとうございます」


「では、先月の月間MVPの発表に移りますが……」


「栗松さん、前へ」


「あ、あっしでやんすか!?」


『神椿教団一般信徒 栗松』


「ええ、貴方です」


「栗松さんは神椿市のみならず、出張先においても信徒への勧誘を怠らなかったということで、素晴らしい働きでした」


「いやあ……。それくらい、神椿の教えは尊いものでやんすから」


「そうですよね」


「では今一度、我々の理念を説明したいと思います」


「し、神父?」


「栗松さん、教団にとっての崇拝の対象とはなんでしょう」


「それは、初見使徒でやんす」


「その通りです」


「残念なことに、背信者の方々は使徒たちを滅しようと動いています」


「彼らは使徒を危険な存在だと見做していますが……。それは大きな誤り」


「全ての人類が杞憂民となれば、使徒たちも怒りを鎮め、融和と共生への道が拓かれることでしょう」 


「栗松さんも、そう思いますよね?」


「も、勿論でやんすっ」


「ぺこらんど共和国政府は、2050年までに完全なるBANオーラからの脱却を目指しています」


「は、はあ」


「これは、私たち教団にとっても追い風」


「野蛮な背信者どもを封じ込め、偉大なる使徒様を星の導き手に据えることの一助となりましょう」


「で、でも、神父も背信者としての力をお持ちでは……」


「これは、連中に対抗する為に仕方なくです」


「仕方なく、です」


「ち、近い」


「それだけではございません」


「神椿市は、プレアデス計画の最終達成目標、深脊界のモデルケースでもあるのです」


「その、深脊界とは」


「平たく言えば、理想の管理社会」


「ドドド因子の発生から、ステラ細胞の覚醒までを、人為的にコントロールしようということです」


「そんなことが、可能なんでやんすか?」


「シャ・ル・イースという書物があれば、可能な筈なんですが……」


「由々しきことに、それはhIPの掌中にある」


「ステラ細胞の覚醒さえ完璧に制御できれば、無益な争いを避けることも可能なんですがね」


「ドドド因子に導かれた者たちは、いずれ殺し合う運命にある……」


「そんな物騒な言い伝えが現実になったら、栗松さんも嫌でしょう?」


「それは、まあ」


「故に、プレアデス計画なのです」


「紛争の種を野放図にしておくのではなく、ちゃんと我々が管理する」


「結果的には、万人が使徒様を讃え、畏れ敬い、信仰心を拠り所とした理想郷が完成するのです」


「その、hIPはいずれ、神椿市にもやってくるんじゃ」


「心配は要りませんよ」


「こちらには、四天王のみなさんがついていますから」


「それに……」


「僕たち、幹部もね」


「あ、貴方はッ」


「神父、AHOの様子は?」


『神椿教団幹部 みきとP』


「問題なく、安定していますよ」


「結局のところ、AHO以外の使徒は全て、AHOへの狙いをズラす為のダミーに過ぎない……」


「なんせ、AHOが墜ちれば、インターネッツから歌という概念そのものが爆発するんだから」


「それは、誰にとっても不都合なことだろう?」


「そ、それはそうでやんすよ」


「みきとPさんなら、ピーナッツ君を片手で沈めることができます」


「えぇ!?」


「ロフマオを、たった一人で壊滅させた相手でやんすよ……?」


「神父、それはちょっと大袈裟だよ」


「僕が戦った時はまだ初見使徒だったし、形態変化なんて奥の手は見せてなかった」


「飛行形態、それに潜航形態を使い分け、常時ステルス状態ですからね」


「最新鋭のレーダーを用いても、その姿を捉えることは困難だ……」


「かくなる上はのじゃロリおじさんを、という声もあります」


「それは最終手段だろう?」


「いずれにせよ、四天王の相手ではないさ」


「あ、貴方はッ」


「AHOが立つ為の祭壇は、いつも通りセッティングしておいたよ……。神父」


「他に、やり残しタコとはないかい?」


『神椿教団幹部 抜ク果実』


「果実さん」


「果実さん……。相変わらず、独特な感性ですね」


「定期集会では必ず、集まった信徒たちにAHOの生歌を聴かせているんだ」


「その為の会場作りを担当してくれているのが、果実さん」


「私としても、hIPの隊員と手合わせしタコとはないんだけどね」


「いずれ彼らが攻めてくるとなれば……。神父」


「ええ」


「YAGOOBOTの手配は、既に済んでいますよ」


『おめでとう』


「うわあ!!」


「な、なんでやんすかこの、気味の悪いアンドロイドたちは」


『おめでとう』


『おめでとう』


『おめでとう』


『おめでとう』


『自律運転、開始コメ』


「ん……?」


「YAGOOBOTです」


「下手に触らないでくださいね。メテオ君から抽出したメン限秘技、みちづれが施してありますから」


「うっかりYAGOOBOTを壊そうものなら、そのままBAN獄まで道連れにされますよ」


「怖過ぎ……。って」


「星街メテオは、hIPの筈じゃ」


「彼は、星街一族だよ?」


「プレアデス計画には欠かせない人材、ということさ」


「はあ」


「それでは」


「お待たせしました、みなさん……。これより、AHOの歌唱へと移りたいと思います」


『うおおおおおおおおおおおおおおおお!!(鬨の声)』


「AHOの生歌きちゃッ」


「これで勝つる」


「……?」


「果実さん、AHOは」


「ちょっと待ってくれ」


「バックヤードに……」


「……」


「おーけー、おーけー」


「なっ」


「何故、貴方がここに……!?」


「まあまあ、みんな、安心してよ」


「AHOはただ、眠ってるだけだからさ」


「神父!!」


「YAGOOBOTを、出入り口に展開させますッ」


『ガシャガシャガシャガシャ(YAGOOBOTが移動する音)』


「そんなに警戒しないでよ」


「初見使徒を崇めようったって、正直、無理くな〜い?」


「だって、もっと尊い存在が、こんな身近にいるんだからさ」


「使徒様でも、神様でもなく……」


「みな等しく、猫様を信じるのです」


「僕はその全てを受け入れ、肯定しましょう」
























































『詠唱完了まで、残り十八時間』

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