【】じ ね ん じ【】
『ヘルエスタ』
「ロフマオが、壊滅に追い込まれた……!?」
「ああ。これが現場で撮影された写真だ、リゾ」
「この殻は、まさか」
「初見使徒であるピーナッツ君が、更に進化を遂げた姿だと考えられている」
「あの辺りは漁場としても有名……。ただちに処理しなければ、被害は拡大の一途を辿るぞ」
「ま、なんとかなるって」
「なんせ俺たち……。SSSの三羽烏なんだからさ」
「せやけどアンジー、それは三馬鹿を聞き間違えただけという説もあるで」
「どこ」
「戌亥、どこ〜?」
「ここだよ〜!!」
「つってw」
「は?」
『霊長類の王 ドドンガ・ド・ンドンド』
「マーラはんたちが対応に向かっとるやさかい、心配あらへんで」
「エセ関西弁、やめーや」
「しゃあないやろ、俺氏が茨城と福島のハーフなんやから」
「茨城と福島のハーフなら、仕方ないね」
「中通りです」
「ナマ抜かしてはりますのん?」
「そんなことは兎も角、アンジー」
「賢者の石の件、だな」
「無条件でBANオーラ出力を大幅に拡張できる、チート級アイテム……。それが賢者の石」
「せやけどアンジー、生成には莫大な量の聖水と、高度な錬金術が必要になるんやろ?」
「それだけの聖水を確保できるのは、命の泉を除いては考えられない」
「琵琶湖か……」
「ヘルエスタが統括する錬金術の技術体系が、外部に漏洩しとるっちゅうことか」
「由々しきことにな」
「四天王であるガチ丸がその存在を仄めかしている限り、教団がキーを握っているのは間違いない」
「錬金術ってのは、そんなに簡単にマスターできるものなんかいな」
「いいや、本職の錬金術師である俺から言わせて貰うけど、片手間に身につけられるようなものではないよ」
「アンジーが理解できている時点で、特殊な才能も必要なさそうだけどね」
「どういうことだ、おい」
「どっから情報が漏れたか、大まかな見当はついとるんやろな」
「ぺこらんど共和国で唯一、錬金術を専攻できる学術機関……」
「それが、ヘルエスタにあるあおぎり大学」
「確か以前、れじぇくろの案件を受けた容疑で、教授陣が一斉に解雇されてたよな」
「職を失ったアホンダラどもが、怪しげな教団にヘッドハンティングされたと」
「ありそうな筋書きだろ?」
「しかし、問題はもう一つある」
「命の泉は、エルダーエルフたちによって守護されている筈……。という点だ」
「エルフ族なら、うちらにもおるやろ」
「ローバ専の人!!ローバ専の人だっ」
「いや、ローバ専の人に訊いても、エルダーエルフの秘密には繋がらないって……」
「なんやねんその、エルダーエルフっちゅうのは」
「煩妙無の悟りを開いたとされる、大長老」
「ぺこらんど共和国のGDPそのものを担っている、不知火グループ……」
「その権威的な後ろ盾だとされているのが、大長老を筆頭とするエルダーエルフたちさ」
「実際は、命の泉を巡る権益を独り占めしとるだけやろ?」
「彼らは物凄いお年寄りで、殆ど廃人同然の状態らしい」
「聖水の力で、無理矢理寿命を引き延ばしているのか……」
「つまり、エルダーエルフの域に達しない少し下の世代が、実質的な権力を握っていることになる」
「エルフ族は、SSSとも親和性が高いしな」
「必然的に、獣人族がレジスタンス寄りとされる所以やで」
「ま、ゆうて俺は御三家やし、しもじもの諍いは関係あらへんけどな」
「感じ悪いわぁ……」
「冗談やで、冗談」
「地下帝国に広がる獣人族たちのスラムは、まさにエルフ族が死守する既得権益が生んだ影」
「魔族と天使族だけやあらへん」
「ユニーリアを故郷とするエルフ族と、リューキューを故郷とする獣人族」
「その二つがぶつかり合う地点もまた、スターテンドなんや」
「そういうことだな」
「第二次ホロサマは既に勃発しているというのが、国際社会の見方だよ」
「俺たちはどうすんねん」
「実行委員長の方針に従い、おか斗ともんざえもんの結婚に協力する」
「下手に独断専行すると、後が怖いしなぁ……」
「相変わらず、日和見主義やな〜」
「仕方ないだろ」
「リゾへの人望が一定値を下回った場合、なにかしらの仕組みが作動して、ヘルエスタそのものが爆発するんだから」
「第三皇子なのに……?」
「第三でも、皇子は皇子だぞ」
「皇子でもない奴らが、口出しするんじゃないよ!!」
「酷ぇハラスメントだ」
『×××××』
「え?」
「いま、なんて」
「リゾだろ」
「どこじゃないの?」
「アンジーちゃうんかい」
「……」
「……」
「……」
「やめとこうぜ、これ以上の深掘りは」
「せやな」
「なんでかは知らないけど、そんな気がする」
「見られてるんだ、奴らに」
「おいアンジー、やめとけっ」
「理解ってるって」
「来る者がいれば、去る者もいる……」
「ああ」
「道理とはいえ、世知辛いな」
「ほんまそれ」
『ズズズズズズズズズズ……(不穏な気配)』
『BAN獄への執行人 道明寺晴翔(二代目)』