【】え び ふ ら【】
『ミオファの森』
「俺のバカタレ時空で、一日を七十二時間に拡張した」
「なんだと……?」
「ハト公、もんざえもんの方はどうなってる」
「必要な材料は全て、B地区にある事務所へ到着した。後は巫女様の詠唱を完了させるだけだ」
『ウホホウ、ホウ……(黒上、お前って奴は……)』
「やりたい放題ですね」
「凛さん、デローンさん。こうなった以上、私たちも余計なことはせずに引き上げましょう」
「いずれにせよ、第二次ホロサマは……」
『ふぁっ!!ふぁっ!!ふぁっ!!』
「な」
「なんだ!?」
「スマホから一斉に……」
「使徒接近を知らせるアラートか」
『ふぁっ!!ふぁっ!!ふぁっ!!』
『ふぁっ!!ふぁっ!!ふぁっ!!』
『ふぁっ!!ふぁっ!!ふぁっ!!』
『ふぁっ!!ふぁっ!!ふぁっ!!』
「う……。五月蝿ェ!!」
「しかし一体、どこに使徒が」
「黒上」
「ああ……。時空の歪みだ」
『ずにゅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅん!!(時空が歪む音)』
「悪おじ、お前はビーチクに向かえ」
「増援を呼ばなくていいのかい?」
「要らねェ。足手纏いが増えるだけだ」
『ウホ、ウホホッ(この気配、ドドンガ以上だぞッ)』
「地球の核すら、超越する力……?」
「お前ら、考えてもみろ」
「カーミラが永夜状態を発生させて、太陽はどうなった?」
「い、言われてみれば」
「お天道様も、行方不明ですね……」
「星川同様、な」
「その答えが、いま目の前にある」
『ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……(覇気)』
「な、なんだこのオーラは」
「凄まじい熱量……。まさかっ」
「その、まさかさ」
「アヒル頭の、怪人だと……!?」
『太陽の化身 ホロゾディア』
『シュバッ(鳴き声)』
「消えた!?」
「ハト公!!」
『ズドゴォッ!!(肉が凹む音)』
『シュバ?』
「まったく……」
「ドドンガといい、お前といい、骨の折れる連中ばかりだな」
「物理的に、な」
「ホロゾディアの一撃を、受け止めただと……!?」
『ウホ、ウッホホ(だが、かなり鈍い音がしたぞ)』
「心配ねェよ。こいつは自己修復できるから」
「お前が説明するな、黒上」
「ちょっと、待ってください」
「あの怪人は、あくまでも太陽の化身……。初見使徒ではない筈です」
「じゃあ、なんで使徒接近のアラートが」
『ウホ……。ウホホウホ?(実行委員長……。ドドンガはどうなってるんだ?)』
「もちろん、BAN獄に隠したままですよ。ぬんぬんが取り憑いたままでは、大きな脅威になりますから」
「ま、まさかっ」
「その、まさかさ」
「Part2」
『究極意思統一生命体 ぬんぬん』
「地球を乗っ取ってドドンガを操作していたぬんぬんが、今度はホロゾディアに憑依してる」
「今度は、太陽そのものが相手ですか……」
「三度目の正直、ってこと?」
「二度あることは三度ある、という言葉もありますよ」
「本当に増援を呼ばなくてよかったのか?黒上」
「ハト公、お前、日和ってんのか?」
「そういう次元の話ではないだろう……」
『ウホホウ、ホッホウ(久々に、俺の獣王状態を魅せる時が来たか)』
「最初からゴリラでは……?」
『シュババッ』
「来るぞッ」
「ここは、ミオとの思い出の地だ……」
「あまり、荒らされては困るな」
「う」
「嘘でしょう」
「ハトタウロスから、ドラゴン族の翼が」
『ウホホウ?(竜王状態か?)』
「私には、全種族の血が流れている」
「故に、天使族の恩寵もな」
『シュバッ……』
「天使の輪で、動きを封じたっ」
「しかも、両腕になにかを纏っていますよ」
「太陽の化身に通じるかは不明だが……」
「爆熱と氷結を同時に使えば、最強に見える」
『ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!』
『ウホホッ、ホウホホウ(エルフ族の精霊術で、氷精と炎精を操っているのか)』
「加えて、あれは獣王状態も混ざっていますね」
「おいおい、ハト公。あんまりかっこつけるな」
「俺の楽しむ分が、減っちまうだろうが……」
「よッ」
『ドドドッ』
「き、金スパチャを三連続で!?」
「凄まじい確率……。新作スマホゲームが、三年後もサービスを継続させているレベルですよ」
「流石にそれはもっと高いだろ」
「更に」
『ドウッッ!!』
「黒上から、虹色のBANオーラ……」
「知ってるか?」
「スパチャの色にはな、二百種類あんねん」
「単純に、赤や黒をぶつけりゃいいってワケじゃない……。青、緑、黄色、橙、その他諸々」
「あらゆる強度で同時に殴られた際の衝撃は、単純な黒スパチャラッシュをも凌駕する」
「ホロゾディア。てめェは、地上に来てまだ間もない」
「歓迎するよ……。俺の虹スパチャでな」
『しゃららら〜ん(虹スパチャが迸る音)』
「ミオファの森に、虹が架かったッ」
「美しいですね……」
『ウホ、ウホホ(単純な打撃力なら黒スパチャが勝るが、より対処が困難なのは虹スパチャ)』
『ウホホホ……?(ホロゾディアにはどうなる……?)』
『シュ』
『シュバシュバシュバシュバ……』
「こ、この身の毛もよだつような重低音はっ」
「ぶん殴られて、ちょっとはやる気になったみてェだな」
「永夜状態だと、姿を確認するのも一苦労ですね……」
「ていうか、太陽がないのに、なんで三日月は光ってるんだ?」
「気合いで」
「気合いで……!?」
「僅かな月光……。そこから伸びる影だけで、僕には充分さ」
「え?」
「お前は……」
『シュ』
『バ』
『バクゥゥゥゥゥン!!(ホロゾディアが何者かによって捕食される音)』
「な、何事ですかっ!?」
『ウホ、ウホウホ?(影から、式神?)』
「しかも、あのフォルムって」
「チンアナゴ!!チンアナゴだっ」
「そんな珍妙な生き物を、わざわざ式神にする酔狂な輩は……」
「奴しかいないだろう」
「はいはい、みなさん」
「そろそろ大人しくしてくれないと、僕がクロさんにどやされちゃうんでね」
「そうなったら、地上波出禁さ」
「ガチ丸……!!」
「うぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃす」
「なんか知らんけど、俺も呼ばれたんで来ました」
「ヤミーもいるぞっ」
「あ、そうそう」
「親分からの伝言」
「これ以上使徒に歯向かうようなら、インターネッツ出禁だってよ」