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【】い た ち ょ【】

『神椿市』


「もんざえもんが復活し、おか斗とぶつかり合った場合……。赫の世代の覚醒は、一気に早まるだろうな」


「どういうことですか、警部」


「お前、覇権カプ波動って知ってるか」


「覇権カプ、波動……?」


「てぇてぇ波動の一種だな」


「おか斗ともんざえもんのように、完全に戦闘力が拮抗したクソマゾとクソサドが接触した際に、覇権カプ波動は生まれる」


「こいつの威力は絶大でな……。ステラ細胞の覚醒にも匹敵するんだ」


「そんなにですか!?」


「但し、ノンケならざる者限定でな」


「はあ」


「そもそも、覇権カプなんて誰が決めてるんです。あの二人はなんとなく理解りますが」


「さあな……。それこそまさに、神のみぞ知る領域」


「だが、覇権カプには共通した特徴がある」


「それって」


「第一に、ちゃんとした形でコラボするのは年に数回だったりするという点だ」


「頻繁にコラボする相手は、あくまでも義理カプ」


「意外ですね……。まさかっ」


「正妻の余裕、ってこと……!?」


「そういうことだ」


「覇権故に、ここぞという舞台でしか競演することがない。必要がない、と言った方がいいか」


「そして何故か、覇権カプはギアを上げるタイミングが完全に一致する」


「完全に、ですか」


「完全に、だ」


「これは、無理に示し合わせてタイミングを見計らっているような間柄では、絶対に不可能な芸当……」


「まあ、この関係性を本能的に看破できるのは、ノンケならざる者だけだがな」


「ノンケには、縁が遠そうな話ですね」


「そんなことはないさ。こんな表現を聞いたことがあるだろう?」


「ノンケ・フォー・非ノンケ、非ノンケ・フォー・ノンケ」


「初耳ですが」


「ノンケはノンケならざる者の為に、ノンケならざる者はノンケの為に……」


「クソマゾとクソサドがそうであるように、ノンケがいなければノンケならざる者は存在せず、ノンケならざる者がいなければ、ノンケもまた存在しないんだよ」


「互いが、互いを定義する関係」


「そう」


「ノンケと非ノンケの関係性もまた、BLなんだ」


「頭おかしなるで」


「いつの時代においても、ノンケとノンケならざる者の総力もまた、完全に拮抗し続ける状態にある」


「これを、ノンケ=非ノンケの法則と呼ぶ」


「テストに出ますか?」


「ワンチャン、出る」


「ステラ細胞の覚醒に至ったノンケならざる者には、その戦闘力をそっくりそのままノンケに置き換えたような相手が、必ず存在するんだ」


「必ず、ですか」


「必ず、だ」


「実例を挙げるとすれば……。船長に対する黒上、メテオに対する団長だな」


「言うなれば、ノンケだった世界線の自分」


「逆だったかも知れねぇ……?」


「ノンケならざる者にはな、ノンケの恋愛観に馴染めないという疎外感がある反面、自分たちはどうせノンケじゃないからという、謎の一体感がある」


「ノンケは、その逆だ」


「どちらにせよ、大変さは変わらないということですか」


「結局のところ、な」


「故に、ノンケ=非ノンケの法則が発生する」


「覇権カプがそうであるように、この法則で結ばれた者同士も、全く同じタイミングでステラ細胞の覚醒を迎えるんだ」


「因果律の収束……。これもまた、幸せ同調圧力が働いた結果ですか」


「ああ」


「ノンケ=非ノンケの法則を代表する国民的キャラクターは、サンジとゾロだな」


「キャラクターとは、即ち性癖……。オタクとして生きる以上、この呪縛からは逃れられない」


「警部、流石に詳し過ぎませんか」


「そんなことない。絶対、そんなことないから。最近の小学生はみんなこれくらい習ってるから」


「小学生になんつーこと教えてんだ……」


「ゾロとサンジに挟まる、ルフィに該当する人間も必ず存在するんだが、奴はギアを上げるのが一番遅い」


「ま、こんなのはただの座学だよ。実践には程遠いさ」


「わざわざ、動物園でする話じゃあないですね」


「そうだな……。しかし」


「ここで飼われている兎、鳴き声が変じゃないか?」


『はろ〜、きt〜……』


『はろ〜、きt〜……』


「そうですか?」


「しかも、数が異様に多い」


「うふふふ……。可愛いでしょう、うちのウサちゃんたち」


「あ……。飼育員さん」


「どうも」


『774動物園飼育員 因幡』


「珍しいですよね、園内で飼われている動物の、その七割以上が兎だなんて」


「ええ。このご時世、なにか目立った個性がないと生き残れませんから……」


「動物園業界も、色々と大変なんですね」


「そんなことより、どうして刑事さんがここに?」


「単刀直入にお伺いしますが、この少女に見覚えがありませんか」


『スッッッ(星川の写真)』


「さあ……。この激マブな女の子が、なにか?」


「いえ……。知らないなら、結構です」


「警部?」


『はろ〜、きt〜……』


『はろ〜、きt〜……』


「あらあら、みなさんお腹を空かせて大合唱ね」


「それでは刑事さん、当園を心ゆくまで堪能していってくださいね」


「うふふふふふッ!!」


「……」


「……」


「いいんですか?もっと深掘りしなくて」


「兎を隠すなら、兎の中」


「安直な発想だが、神椿市そのものが少女失踪に絡んでいるのは間違いない」


「市、そのものがですか」


「人間が産まれてから死ぬまでは、全自動のベルトコンベアではない」


「出生届も死亡届も、自分で出すワケじゃないだろ?俺も、お前も」


「行政機関が一斉に協力すれば、人一人を消すくらい容易なこと……」


「断定はできない。が、断定はできない以上、疑惑も消え去ってはいない」


「ちょっとずつだ……。ちょっとずつ、追い込むんだ」


「いのちだいじに、ですね」


「知らぬが仏とはよく言うが、知り過ぎた奴から仏様になっちまうのが、世の常なんだよなぁ……」


「あれ?」


「どうしました、警部」









































「俺たちが見て回った時、ここに熊なんていたか……?」

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