【】び ん と ろ【】
『地下帝国 アジト』
「で、御三家の宝具は結局、どうなったんだ」
「三種類のペンライトな」
『無事、地下闘技場にて取り返したようですねぇ〜』
「雪の花に勝ったのか……」
「この為にわざわざ、変装までして盗みを働くとか」
「回りくどいっちゃあ、回りくどいな」
「仕方ないだろ、チャキ丸。この中で御三家に堂々とアクセスできるのは、お前だけなんだから」
「この期に及んで、暗躍めいたことをする必要があるか?」
「ある」
『あります』
「それは俺たちが、秘密結社だからだ……。そうでしょう?元帥」
「え?」
「聞いとけやッ」
「元帥、耳遠いから……」
「なになに、みんなして吾輩の噂してたの?」
「超、気になるわぁ〜!!」
『しかし、こうして初めて五人集まると、なんだか感慨深いですね』
「お前にも、そういう感情あるんだな……」
「元はと言えば、元帥のメル友から始まったんだもんな」
『まさか本当に、地球で相見えることになるとは』
「メル友って久々に聞いたわ」
「とはいえ、協力者を募ろうにも限界がある……。俺には隊士たちがいるが、ルイ兄」
「ああ。滅流帝鬼救の内部にも、秘密裏に結社への協力を促している」
「ふむふむ」
「みんな、吾輩がいないところで頑張っているようだな」
「ココロは?」
『こよラボの科学技術を転用できると考えれば、それだけでかなりの収穫だと思いますが』
「確かに、それはそうだ」
「じゃあ、黒江は」
「全国の港町を巡り、新鮮な海の幸を制覇している最中だ」
「食い倒れ道中……!?」
「おさかな天国しやがって」
『これは解散、待ったなしですねぇ〜!!』
「元から、結成してないだろ……」
「吾輩も海の幸巡り、したいしたい〜」
「そのうちしましょう、元帥」
「机を蹴るな」
「ていうか、召喚獣やらなんやらが、各地に蔓延ってるんじゃなかったか……?」
「と、いうのは冗談で」
「ホロ鯖百物語に描かれた怪談や都市伝説を追って、なんかそれっぽいことをしている」
「ということは、つまり」
『まだ、キャラを掴み切っていませんね』
「そんなことないから。次の展開を見越した布石だから」
「だが……。黒江の言うホロ鯖百物語で語られているかは知らんが、秘密結社とはそもそも、都市伝説に近い存在」
「まあ、秘密だからな」
『こうして薄暗い地下にアジトを構えているのも、それっぽさを演出する為ですからね』
「たまには日光、浴びた〜い」
「外に出ても、永夜状態ですよ……」
「結社のスローガンは、世界征服」
「世界とは即ち、全宇宙……。地球だけでも、エデンの星だけでも足りない」
『黒江同様、元帥にも秘めたる役割があるのでしょう』
「だから、キャラを活かす方向性が定まってないだけでは」
「そんなことない。絶対、そんなことないから」
「吾輩たちはまだ、本気出してないだけ」
「実際問題、征服と言っても、派手なドンパチはリスクが高過ぎるだろ」
『だからこうして、地下でこっそりひっそりと、密会しているのですねぇ〜』
「そもそも、なんの為のスーパーズッ友条約だよ……。エデンと地球の平和条約、それが本来の目的だろ?」
「そういや、そうだったな」
「ホロサマのことで頭がいっぱいで、殆ど意識してなかった」
「結果的に、吾輩はエデンの国家元首をクビになったぞ」
「ぺこらんど共和国か……」
『言わずもがな、野兎同盟は結社とも友好な関係にあります』
「というか、存在意義が似ているだけだが」
「これってある意味、国家転覆を成し遂げてるよな」
「俺たちの出る幕、なくないか……?」
「そんなことないから。ぺこらんど共和国樹立の立役者は、実は秘密結社ホロックス……。そういう筋書きでいこう」
『ともあれ、まずは元帥の歓迎が先でしょう』
「結社としてちゃんと迎え入れるのは、まだだったな。ルイ兄」
「集められるだけの人員は、広間に集めてある……。移動しましょう、元帥」
「獣人族の背中、あったけぇ〜」
『自分で歩かせた方がいいのでは』
「一応、尊い御方だから」
「護衛は任せたぞ、チャコ丸」
「チャキ丸です、元帥」
「黒江、お前も獣王状態になればルイ兄同様、戦えるだろ」
「えぇ〜……。やだよ」
「なんで」
「海獣族の獣王化は、かっこいいかどうか微妙なラインなんだよ」
「まあ、お魚だしな」
『シャチっぽいことが陸上でもできる』
「ヒロアカで見た!!ヒロアカで見たぞっ」
「落ち着いてください、元帥」
『Y・M・D!!Y・M・D!!Y・M・D!!Y・M・D!!(鬨の声)』
「ご覧ください。みな、歓迎ムードですよ」
「ここで歓迎ムードじゃなかったら悲し過ぎるだろ」
「え。なになに、みんな吾輩の為に集まってくれたの?」
「照れるわぁ〜!!」
『Y・M・Dってなんだか、違法な薬物みたいですね』
「まあ、秘密結社だし、多少はね?」
「元帥、マイクです」
「なにを喋らせるつもりだよ」
「あー、あー、てすてすてす……。アリーナ席、聞こえてるゥ〜!?」
『キィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィン!!(マイクが荒ぶる音)』
「吾輩たちの活躍は、まだまだこれからだッ」