【】て き ー ら【】
『ギャングタウン 純喫茶滅流帝鬼救』
「インターネッツ・ゴースト?」
「そう……。平成の亡霊と言い換えてもいいっす」
「ネットゴースト……。ピポパか」
「ピポパではない」
「インターネッツの流行を生み出す主軸は最早、Y世代からZ世代に完全に移行したっす」
「その過程において、令和の空気に馴染めなかった連中は自然淘汰されてしまった……」
「それでも成仏し切れずに、令和のインターネッツを漂う哀しき魂たちを、平成の亡霊と呼んでいるっす」
「ではまず、マチンという男から始末しなくては」
「船長は違うから、アレは善性だから」
「アクターン、シオッコ、そしてどっち童子……」
「卍組と呼ばれるお前たちは、まさに令和のインターネッツを象徴する存在」
「初めて聞いた余」
「なんだか、悪い気はしないじゃなイカ……」
「まあ、大天使はそんな肩書きがなくとも、みなから慕われていますが」
「そ、そうだね」
「思い込みの狂気……」
「だがしかし、眩い光に照らされて初めて、ドス黒い影が落とされるというもの」
「新しい風に晒されたインターネッツの住民たちは、その反動で多くの平成の亡霊を生み出してしまったっす」
「俺が戦ったキラメキライダー☆とかいうのも、その一種なのか?」
「そうっすね」
「千代男」
「この面子に、千代男がいてくれる安心感は異常」
「それはそうと、折角うちに来たんだからなんか注文してくれよ」
「じゃあ……。オムライスを全員分で」
「了解でェす!!」
「確認もなしに、私たちの分まで」
「お前らの返信をいちいち待ってたら、日が暮れるんだよっ」
「一理ある」
「オスバル以外、はぐれメタルだから……」
「とはいえ、君も平成の亡霊とは無関係ではないだろう?オスバル」
「ズバリ、痛いところを突かれたっすね」
「オスじゃない方のスバル……。即ち、メスバル」
「インターネッツに蔓延る草臥れた老人たちにとって、彼女の明るさはまさに劇薬」
「強い日差しに照らされ、このまま黒い影が生まれ続ければ、いずれは取り返しのつかないことになる」
「というと」
「太陽の化身、ホロゾディア」
「アヒル族の内側に眠るとされるそいつの封印が解かれ、最悪の場合、地球そのものが爆発する」
「地球、そのものが……!?」
「やべぇ余」
「世界が闇に閉ざされる程、ホロゾディアの力は増していく……。カーミラが生み出す永夜状態も、事態に拍車を掛けているっす」
「そんなの、私たちにはどうしようもないじゃなイカ」
「平成の亡霊とやらを片っ端から成仏させたとしても、いたちごっこに終わるだけでしょう」
「やり方はあるっす……。メスバルが放つ強過ぎる光を、みんなが分担して受け切ればいい」
「どういうことだ余」
「メスバルを観測する人々が一つの輪になり、彼女のあり余るパゥワーを過不足なく吸収しようということか」
「その通りっす」
「なんで理解できるの……?」
「しかし、そんなことが可能なのですか?」
「メスバルの明るさは常軌を逸しています……。言うなればこれは、太陽を素手で掴もうとするのと同義」
「大き過ぎる力に溺れた者は、いつだって最後には地に墜ちる」
「イカロスか……」
「尋常じゃない明るさを有していたとしても、メスバルも人間。体力の限界はある筈っす」
「だが、メスバルの明るさは船長たちのソレとは次元が違う」
「彼女は、誰かを照らすついでに存在感を放つタイプだからな……」
「謂わば、クソデカメガホン」
「太陽の押し売り」
「案件モンスター」
「理想の初見リスナー」
「考察厨だしな……」
「杞憂民でもある」
「ポカリがないと、暴れる」
「大空どうでしょう……?」
「老人会の弱った足腰では、メスバルを受け止め切ることは不可能なんだ」
「第一次ホロサマでも、各地に眠る魔族と天使族をラグナロクの舞台へ呼び出したのは、アヒル族だったそうじゃなイカ」
「声がでか過ぎるんだ余」
「それは仕方ないだろッ!!」
「厳密に言えば、アナウンス力ですね」
「どれだけ些細な出来事でも、メスバルの前では一大事に変わる」
「大盛りってこと……?」
「だけど、あまりにも明る過ぎるが為に、みんなそれを受け入れてしまう」
「北風と太陽の、太陽だな……」
「具体的な対応策は?」
「みんなは、マルチワースという言葉を聞いたことがあるっすか?」
「マルチワース……!?」
「あらゆる次元、あらゆる世界線にメスバルが存在し、そのどれもが偽物ではなく、全て本物とする考え方のことか」
「いかにも」
「だから、なんで知ってるんだ余」
「全ての世界でメスバルは団長と恋に落ちるが、決して結ばれることはない」
「そうなの!?」
「なんか、どっかで聞いたな……」
「メスバルの明るさに対抗するには、マルチワースの呪縛を解き放ち、団長の胸筋に全ての命運を託すしかない」
「太陽の化身が放つ明るさを、彼女の胸筋に吸収させるのか」
「YES」
「頭が、おかしくなりそうだ」
「精神汚染……?」
「オムライス五人前、お待ち遠様でェす!!」
「やったー!!」
「自分の分も作ったんだな」
「純喫茶のテンションではない」
「流石ですね……。店で出せるクオリティです」
「店で出してんだよ」
「ほなら、これを撮って」
「え?」
「なにをしているんだい、オスバル」
「まさか」
「愉悦の匂いが……」
「くぅ〜!!」
「卵が、蕩けてもうてますっ」
『ギャングタウンにて、大規模な飯テロが発生していますッ!!』