【】お お と ろ【】
『世界樹周辺 ミオファの森』
「この辺りだよな?使徒の出現が確認されたってのは」
「クワガタ曰く、これだけのBAN獄蝶が飛んでいるのは異常事態らしい」
「そもそも、BAN獄蝶はBAN獄にしか生息してないって話だったじゃないか」
「それじゃあ何故、こんなに沢山……」
「マチン、魔眼にはなにか映ったか?」
「俺のこいつは二秒先が限界だぜ?探索向きじゃねえっての」
「エルフレの輪で、動物の視界まで共有できればいいんだがな……」
「スケベな輩だったら、真っ先に私の胸筋に寄ってくるんだけどね」
「異種間コミュニケーション……?」
「異種姦じゃないだけ、まだセーフ」
「どん坊」
「なんすかなんすかなんすかなんすか」
「いざとなったら、お前の兎化アンプルを使って使徒を仕留める。厳密には、封じ込めると言った方がいいか」
「それって、全人類兎化計画の名残りで生まれたものだろう?」
「そんな曰く付きのブツを持ってて、あんた大丈夫なのかい」
「問題ないっすよ、シエル団長……。世界樹に生える黄金のニンジンがあれば、人体の兎化は容易です」
「もちろん、黄金シリーズは激レアアイテム。組織的に大量に仕入れない限り、一斉に兎化させるなんてできません」
「しかも、ソーセージ守りがいれば、兎になった人間を元に戻すこともできます」
「オスバルもういパパから伝授されてるって話だけど、そんな希少な人材を当てにしていいもんかねぇ……」
「ん?」
「どうした、プロミネンス」
「いま、木陰に……」
「私が火矢を放つ。鏃にコヨリニウムを塗ってあるから、そのまま爆裂するぞ」
「おっと、いきなり臨戦態勢かい」
「どんな醜女が出てきても、俺は抱いてやるさ」
「なんの話?」
「仮にも相手は初見使徒。あまり油断し過ぎるなよ」
『×××××』
「え?」
「なんだよ」
「なんだよって、なんなんだい」
「シエル、お前の声じゃないのか?」
「それを言ったらマチンだって……。いや、いまのって」
「どん坊」
「内容は聞き取れませんでしたけど、あの声音は、間違いない」
『×××××』
「まただ」
「なんだい……!?この耳鳴りはっ」
「まるで、記憶そのものに訴えかけてくるような囁き」
「そのなにかを思い出そうとするだけで、脂汗が滲み、吐き気が込み上げてくる……」
「そうか、そういうことだったのか」
「説明してくれ、プロミネンス」
「憶測だが……。×××もまた、初見使徒なんだよ」
「なんだって!?」
「これも例の、時空の歪みってやつかい」
「そうとしか考えられないだろう。×××もまた、かつてはhIPの一員だったのだから」
「忘れもしないさ、思い出はこの大切フォトグラフに……」
「あれ?なんでここだけ、黒く塗り潰されて」
「プロミネンスあんた、鼻血がっ」
「これ以上は危険だ!!」
「精神を汚染するタイプの使徒……。早くこの樹海を離れないと、手遅れになるよ」
「どん坊ッ」
「理解ってますって……。この中で一番迅く動けるのは、僕ですからね」
『×××××』
「動きは鈍いな。身体能力そのものは、×××のままってことか」
「あれ、その肝心な×××って、なんのことだっけ……?」
「どん坊、余計なことは考えるな!!」
「目の前の使徒を討つことだけに集中しろっ」
「BAN獄蝶が集まって、×××の姿がより鮮明になっていく」
「あー、もう……。野兎同盟はこういう、シリアスなのはNGなんですけど……」
「ここまで来たらもう、やるしかねェ!!」
『ドウッッ!!(どんちゃんの両脚に凄まじい量のBANオーラが集中する音)』
「どん坊はこうして、常にやるしかない状況に追い込まれている」
「やればできる子……。流石は俺の息子だ」
「なんて?」
「しかし、いつから×××は初見使徒へ変異を遂げたんだい」
「気づいているだろう?」
「過去のコンテンツを振り返ると必ず現れる×××の姿を、いかにしてやり過ごすかという戦いが既に始まっていることに」
「そういう問題なのか……?」
「森のドルイドたちには悪いが、ちょいと暴れさせてもらうよっ」
『バキャバキャバキャバキャッ!!(木々が薙ぎ倒される音)』
「天魔刀髑髏には、あり余った性欲をBANオーラに変換する能力がある」
「そんな固有スキルが!?」
「まあ、TENGA五剣だし」
「これは俺だけじゃない……。みんなの力なんだ!!」
『キュィィィィィィィィィィィィィィィィィィン!!(マチン船長のマチン船長にBANオーラが集中する音)』
「そんなことより、お前の魔眼を借りるぞ」
「メン限秘技による視覚共有と、精霊術によるオートエイム……。あんたやっぱり、前線でも全然イケるね」
「倒木で×××の逃げ道を塞いだっ」
「決めろ、どん坊!!」
「兎化アンプルは効くまでに時間がかかる……。このままここで、大人しくしていて貰いますよ」
『×××××』
「……ッ!!」
「どうしたどん坊、早く」
「どん坊……?」
「かはァッ」
「どん坊!?」
「どん坊が吐血したぞっ」
「×××の肉体が、BAN獄蝶に変わっていく……」
「逃げられたな」
「どん坊、生きてるか」
「すいません……。絶好のチャンスだったのに、しくじりました」
「いや、こちらとしても人選を誤った……。私たちでは想起される思い出が多過ぎて、精神汚染が進むのが早い」
「はあ……。こんなに遣る瀬無い気持ちになったのは、久しぶりだよ」
「肛門括約筋が、はち切れそうだ……ッ!!」
『終わらないハロウィンナイトに囚われし亡霊 ×××』