【】れ ん こ ん【】
『地下帝国 スラム街』
「酔客同士の喧嘩だぁ?」
「そんなの俺たちが出る幕じゃないだろ……。大空警察に任せとけよ」
「地下帝国じゃ、ぺこらんど共和国憲法は通用しない。それが常識でしょ、Jr.さん」
「そういやそうだった」
『桐生会頭目 ココJr.』
「おい、あれって……」
「ああ、会長の息子だよ」
「桐生会って、既に壊滅したんじゃなかったのかよ」
「以前のような勢力はもうないよ。だけど一応、後継組織としてその名前は残ってる」
「ヤクザと言ったらこいつらだ!!みたいな理解りやすい連中がいないと対処しにくいんだよ……。大空警察としても」
「スラム街にゃ基本的に、身分の低い獣人族たちが細々と暮らしている」
「ま、その実は座長が取り仕切ってる奴隷貿易の商品たちだよ」
「綺麗過ぎても、汚れ過ぎていてもいけない……。ある程度は健康で、最低限の学識も求められる。ちゃんとした奴隷にはな」
「ドラゴン族は、全種族の調停役……。旧ズッ友条約にはそう記されていましたけど」
「スーパーズッ友条約でも、そこら辺は変わっちゃいないさ。お袋の存在感がでか過ぎるだけで、ドラゴン族が滅んだワケじゃない」
「ギャングタウンや王都の繁華街と、ここのどっちが安全かっつーと……。意見が分かれるところではある」
「ところで、その酔客たちはどこだよ」
「ここの酒場ですね」
『ドンガラガッシャーン!!(物騒な音)』
「や、やめてください」
「えェ!?なにをやめろって……。酒か?俺に酒をやめろって?」
「酷いこと言うなよおっさん。俺にはこれが生き甲斐なんだよ……」
「これをやめろってことは、死ねってことか?あァ!?」
「そんなこと言っちゃいけないって、小学校で習いませんでしたかァ〜?↑↑」
「痛い、痛いです。髪を掴まないでください」
「人の良さそうな人間族のおっさんが、獣人族の兄ちゃんに絡まれてるな」
「喧嘩というには、あまりにも一方的である」
「おい、兄ちゃん……。こんな陽も届かない地下に暮らして、将来を悲観する気持ちは理解る。だが、お前にはまだ」
「見境のない……。裏拳を、どーん!!」
「がはァッ」
『ズガガガガガガガガガ!!(三軒隣の建物までココJr.が吹き飛ぶ音)』
「Jr.さん!?」
「こいつの膂力、尋常じゃない……」
「なんだァ?ドラゴン族の……。その身なりからして、堅気のモンじゃあねえな」
「お前も充分、堅気じゃあないぞ」
「いきなり肩を掴んでくるなんざ、宣戦布告の合図だよなぁ……」
「俺はただ、このおっさんと仲良く酒を酌み交わしていただけなのに」
「どう見ても、理不尽に絡んでいたが」
「にしてもあのおっさん、どっかで見覚えが……」
「お前ら、Jr.さんを助けるんだッ」
「大丈夫ですか、Jr.さん」
「くそっ……。お袋の形見の一張羅が、汚れちまったじゃねえか」
「そんなに大事なものなら、着てこないでください」
「た、助かりました」
「おっさん、あんたは引っ込んでいてくれ」
「ドラゴン族は生まれつき、強大な力をその身に受ける」
「故に、他種族との諍いを無闇に引き起こしてはいけないと、幼少期から教え込まれるんだが……」
「会長が桐生会を組織し、荒くれ者たちを纏め上げたのも、調停者としての役割があったからですもんね」
「だが、あまりにも秩序を乱す存在が現れた場合は、その限りじゃない」
「お前ら、誰も近寄らせるなよ」
「まさかっ」
「やるんですか!?」
「獣人族における、獣王状態に並ぶ概念……」
「それって、ドラゴン族の」
「竜王状態だ」
『ドウッッ!!(ココJr.の全身から凄まじいBANオーラが迸る音)』
「や、やべぇよ」
「最悪、地下帝国が崩壊するぞッ」
「お前ら、逃げろー!!」
「なんなんだよ……。俺ァいま、機嫌が悪ぃんだよ」
「おっさんの面を眺めながら呑む酒は不味いし、なけなしの金はギャングタウンのパチ屋で擦った」
「こんな地下の掃き溜めにいても、なーんもいいことなんて起こりゃあせん」
「あー……。せめて俺にも、とびきり可愛い彼女の二人や三人、いてくれたら」
「たったそれだけで更生して、スーツも髪型もばっちりキメて、正常な社会生活に混じっていけるってのに」
「なんで……。なんでこんな人生なんだ。俺の前に現れるのは、頭のおかしい酔っ払いばかり」
「それはお前じゃい」
「少々、痛い目を見ないと酔いが覚めないみたいだな」
「ドラゴン族の尻尾は珍味だと、ネットかなんかのアレで見た」
「それ、デマだぞ」
「ところであんた、この中指が何本に見える」
「はあ?」
『デュオッッッ!!(なんか物凄い迅さで獣人族が移動する音)』
「消え……ッ!?」
「遅えなァ!!」
「会長が」
「吹き飛ばされたぞッ」
「馬鹿な……。獣王状態にすらなっていないというのに」
「お前は、一体」
「なんだってんだよ、まったく」
「どいつもこいつも、手当たり次第にステゴロ吹っ掛けてきやがって」
「そんなことされたら、折角の酔いが覚めちまうだろうがよォ〜……」
「これは、まずいことになってるぞ」
「応援を要請するんだ」
「どこに!?」
「大空警察、滅流帝鬼救、SSRB……。なんでもいいっ」
「ところで、もう一度お伺いしますが」
「この中指が、何本に見えてますかァ〜?」
「もしもォ〜し!?」
『レジスタンスの核弾頭 ルルド♂』