【】す め ー し【】
「私のメン限秘技で、ドドンガを隠しました」
「てめェ……。正気か?古参使徒を仕留める好機を、みすみす逃したんだぞ」
「レジスタンスとSSSでは、そもそも目的が真逆でしょう……。黒上フブキ」
『ドゴゴゴォッ!!』
「なんだ!?」
「黒上が吹き飛ばされたぞ」
「少し、距離が近過ぎるかな」
「りゅ……」
「緑仙さん」
「水滸流星脚を連続で……!?」
「彼は、天牙老師の一番弟子だからな」
「ふぉぬかぽぉ……。大丈夫ですかな?黒上氏」
「危なかった……。デブがクッションにならなかったら、死んでいた」
「ユキタミさんです」
「国際推し活連合は既に、第二次ホロサマは始まっているとする旨の宣言を発出しています」
「国家元首である虎畑ロペスが、ホロサマ開催に踏み切ったからな」
「こうなった以上、一刻も早くこの戦いを終息させることが第一の目標……。つまり」
「私たちSSSもまた、おか斗ともんざえもんの結婚に賛成の立場だということです」
「な、なんだって」
「ホロサマ実行委員長ってこと……?」
「ドドンガはいま、一時的にBAN獄へと転送されている状態です。一度に隠せる事象は一つまでですから、たまたま手が空いていて助かりましたよ」
「しかし、ドドンガが取り込んだもんざえもんの恥骨がなければ、彼を現世に呼び寄せることはできませんにぇ」
「その点も問題ありませんよ、巫女様。ドドンガを隠す寸前に、僕がそこら辺の石ころとスワップしておきましたから」
「よ、夜見レルだっ」
「有名人が沢山いるな……」
「これで、もんざえもんの復活に必要なアイテムは、御三家に伝わる三種のペンライトだけか」
「但し、最大の難問が残っているだろう」
「ええ……。星川と共に姿を消した、空白のBL本。あれがなければ、この縁談を遂行することは不可能です」
「ですので、こうして古参使徒を倒してしまうことで、教団と敵対することは得策ではない……。そうでしょう?神崎さん」
「まるで、我々がBL本の在り処を知っているかのような口振りだな」
「違うのですか?明確な証拠はありませんが、他に疑うべき余地のある勢力が見当たらないのですよ」
「状況証拠も大概にせぇよ!!」
「だが、確かに教団周辺には以前からグレーな噂が絶えない」
『結局のところ、正体不明な脅威を初見使徒とカテゴライズして、応急措置を繰り返しているに過ぎないのですねぇ〜』
「でも、初見使徒はしけむら縁起絵巻にも記されてる、古来よりの存在な筈だろ」
「それすらも、後付けだったらどうする」
「どういうことだよ」
「そうか……。時空の歪みか」
「そうです」
「私たちは誰一人として、織田信長に会ったことがない。ですが、誰一人として彼の実在を疑う者はいないでしょう」
「信憑性のある資料が見つかれば、教科書の内容だっていくらでも書き換わる。歴史なんてそんなものです」
「織田信姫なら、ワンチャン」
「いまそういう話してないから」
「いや、案外そういう話ですよ」
「ホロアースへ参加するプレイヤーは、日々増減を繰り返しています」
「この混沌とした戦況において、いつ、誰がどんな役割を果たすのか、まるで見当がつかない」
「それでも、#終わらないホロライブと化した現状、どれだけプレイヤーが入れ替わったところで、このゲームが終わることはない……」
「まさに、その通り」
「たとえYAGOOが凶弾に斃れたところで、私たちのシャイニースマイリーストーリーが途絶えることはないのです」
「そういえば、YAGOOってまだ生きてるのか」
「あの事務所は彼のメン限秘技で作り出したものなので、生きているかと」
「オリーの変装がバレなければいいが」
「そこで私たちは、既にホロアースからログアウトした人々……。所謂、卒業生たちにも協力を要請する必要がある」
「OB、OGの集いか」
「要するに、インターネッツ同窓会」
「会長が会長が務めるそこには、×××を除く全ての卒業生が属しているとされる」
「あいつとか、あいつとか、あいつとか、あいつか……」
「×××の罪、重過ぎるだろ」
「ていうか、ドドンガはいま、×××と一緒にいるんだよな」
「ぺこ××ってこと……?」
「目から精子が」
「卒業、引退……。うッ、胸が苦しい」
「やめてください!!トラウマになってる子もいるんですよっ」
「活動休止なら、まだ傷は浅いんだが」
「いっそのこと今生の別れなら、思い出の中の存在として割り切れるんですけどね」
「インターネッツを去った連中も、結局はこうしてインターネッツを通して俺たちを見てると思うと、なんか不思議な感覚だよな……」
「ちなみに、卒業生たちが有していたBANオーラは全て、キセキ結びに集積されています」
「そうなの!?」
「なんで、ナカタソ本人が知らないんだよ……」
「それで、星川の行方なんだが」
「大空警察の捜査によって、彼女が最後に連絡を取っていた人物が判明しました」
「それは、一体」
「グレチャマです」
「そうなの!?」
「なんで、チャマ本人が驚いてるんだよ……」
「いや、あいつの交友関係なんて知らんし、自分が最後とは思わないじゃん」
「星川に、こんなガチムチなおっさんの友達がいたなんてな」
「ガチムチなおっさんなら割といるだろ、にじさんじにも」
「俺がアマゾンの奥地で政府要人の警護をしている時、暇潰しに通話したのが星川との最後の会話だが」
「なにか、不審な様子はなかったか」
「特には……。いや、待てよ」
「どうした」
「語尾が少し、おかしかったような」
「三日後には語尾にぺこがつくようになり、一週間後には、完全に人語を失うことになる」




