【】か る ー び【】
「で……。黒上、このクソ忙しい時に、僕をどこまで連れて行く気だ」
「カーミラの居城だよ。通称、不夜城」
「どう見たって大阪城だが」
「黒上!!待ってたよ〜、久しぶりじゃん」
「お前、カーミラと面識あるのか……?」
「お互い、長いからな」
「そんで、こっちがまっちゃん」
「松本です」
「ふーん、まっちゃんっていうんだ。チャーミングな名前だね」
「松本だっつってんだろッ」
「そんなことより……。カーミラ、君が、元ネタの元ネタ連合軍を呼んだ理由はなんだ」
「それね……。端的に言えば、戦力の底上げかな」
「カーミラは、あの方の降臨に備えてんだよ」
「あの方?」
「おっと、俺も本当の名前なんざ知らねェぜ?それくらい、高位な存在なんだよ……。普段は、俺たちが観測すらできない、十三次元に存在しているって話だ」
「十三次元だと……!?」
「あの方は最終的に私たちの前に現れ、ありとあらゆる諸問題を、なんか、こう……。全ていい感じにしてくれると言われているわ」
「なにも確定的な情報がないッ」
「デウス・エクス・マキナ的な……?」
「あの方じゃ呼び名として不便だから、私たちは便宜上、親分とも呼んでいるけどね。人類、いや、この世界そのものの始祖として」
「お、親分」
「HIKAKINさんか……?」
「数多、蔓延る人類……。その起源を辿っていくと、必ずその親分に行き着くらしいぞ」
「まさに、元ネタの元ネタ」
「アダムとイヴとか、そのうち出てきそうだな」
「経緯は理解った……。いや、理解ったようで理解らないが、君は何故、この不夜城で籠城しているんだい。ギャングタウンも長らく常夜状態だし……」
「カーミラには、下手に前線へ出れない理由があんだよ」
「だって、私が死んだらみんな死んじゃうじゃん」
「どういうことだ……?」
「このインフレした戦況で、BANオーラの上限である×××ラインを気にせずに戦っていられるのは、私のBANパイアが機能しているからなんだよ」
「え……。何ラインだって?」
「だから、×××ラインよ、×××ライン。その一線を超えると、永久にこの世界からBANされちゃうの」
「BANされた向こう側にあるのが、BAN獄」
「カリサイズで首を刎ねられた相手も、そのBAN獄とやらに連れて行かれるらしい」
「そして、BAN要件に該当した背信者をBAN獄へ連行していく執行人たちこそ、ゲーム部と呼ばれる存在なのよ」
「怖過ぎ」
「いや……。結局、×××の中身は」
「有史以来、BAN獄へ幽閉された人間はたった一人だけ……。それが、×××」
「え?」
「ごめん、よく聞き取れない」
「あの人の名前が、思い出せないッ」
「なんか忘れちゃってんだ……」
「前立腺が、はち切れそうだ……ッ!!」
「万が一、私がBANパイアの発動を維持できなくなったら、BANオーラの上限である×××ラインが復活して、ほぼ全ての背信者がBAN獄送りになるわよ」
「だから、君はここでじっとしているワケか……」
「つーか、なんで大阪しか常夜状態を展開してないんだよ」
「してないんじゃなくて、できないの。目覚めて以来、まだ本調子じゃなくてさ……」
「カーミラは、いつ復活したんだ」
「三日月が紅く染まったあの時……。ンナータ、シオッコと共に覚醒したんだよ」
「真祖としての力を取り戻すには、やっぱりあれがないと……」
「なんだ、生き血か?」
「いいや……。五億年に一つ、世界樹に実るとされる黄金のアセロラだ」
「黄金のアセロラ!?」
「収穫の効率悪ッ」
「血とかほんと、そういうの無理なんで」
「吸血鬼なのに……?」
「でも、世界樹まで行くの面倒臭いし、探すのもめっちゃしんどいのよね、あれ……」
「カーミラが籠城している理由の一つは、単純に気まぐれだからというのもある」
「我儘姫……?」
「兎に角、僕は麺屋ぼたんに戻ってンナータ様の到着を待たないと……。黒上、君はシン・フブラを放っておいちゃまずいんじゃないか?」
「だったら、カーミラはどうする」
「それなら、もうすぐ序列一位の眷属が……。あ、きたきた」
「カーミラ様ぁ〜!!」
「千代男……!?」
「なるほど……。治癒能力がある千代男なら、カーミラの護衛にはぴったりってワケだ」
「じゃ、いつも通り炊事、洗濯、掃除諸々は宜しくね」
「了解でェす!!」
「念の為、黄金の果実とやらもあった方がいいのでは……?」
「アセロラな。それを取ってくるなら、適任がいる」
『俺を呼んだか?』
「うわ、クワガタ飛んできたッ!!」
「昆虫族の族長、クワガタ……。ミオファの森と世界樹を知り尽くしたこいつに、アセロラの回収は任せればいい」
「こいつ、まつりすの巣の場所まで知ってるのか……!?」
「いや、基本的にクワガタは食材の在り処しか知らない」
「単純で助かった」
「一応、インテリ寄りではある筈なんだが……」
『クワガタに多くを求めるな』
「そういうことだから、あとは宜しくね〜」
「なんか、厄介事が増えただけのような気がする……」
『ミオファの森に位置するSSRBの軍事基地から、収益化剥奪レールガンが盗まれましたッ!!』