【】し ゃ っ も【】
『前回の粗筋』
『カーミラ率いる元ネタの元ネタ連合軍の一員、桃太郎と交戦するAZ、チャキ丸の前に現れたのは、様子のおかしい余さんだった』
「どーっち、どっち……。どっち?」
「AZ殿、あれは一体……?」
「禍々しいBANオーラ……。間違いない。あれは、どっち童子だ」
「どっち童子?」
「語呂が良いな」
「どっち、どっちと優柔不断な輩を絶対に許さない、鬼神の荒魂……。なにがなんでも天使族と決着をつけようとする魔族の本性は、彼の存在が影響していると言われている」
「そこのお前……。どっちだ?」
「拙者でござるか?」
「余より強いのか、弱いのか……。ここではっきり、させよう余〜!!」
「どっち童子の様子が!?」
「どっち童子にとっての快楽とは、白黒どっちかに収束した瞬間……。故に、彼は所構わず、手当たり次第に勝負を挑んでくる」
「なんて恐ろしい……」
「どっちが強い、か」
「拙者は桃太郎。桃から産まれて、鬼を斬る宿命を与えられし者……」
「そんな桃太郎が、鬼になんて負けたりしないッ」
「負けたり、なんか……」
「負け……」
「……」
「やっぱり、余さんには勝てなかったよ……」
『しゅわわぁ〜(悪霊が成仏する音)』
「どっち童子はなにもしてないのに、桃太郎が消滅した……!?」
「彼我に圧倒的なBANオーラの差があると、ああいう現象が起こるんだ」
「ふぅ〜……。口ほどにもない奴だったなぁ〜」
「なんか戦闘後みたいな雰囲気を出してるッ」
「そして、鬼神としての魂が完全に覚醒したいま……。彼はいまこの瞬間も、次なる標的を探している」
「まさかっ」
「おい、そこの甲冑とお侍……。余と勝負しよう余〜!!」
『ジャキィンッ!!』
「AZ殿は退がって!!」
「おお?余の二刀流に、一本の刀で立ち向かうとは……。その心意気、嫌いじゃない余ォ〜!?」
「ここで使いたくはなかったが……。やむを得まい」
「狐の掌印!?」
「何故、チャキ丸がそれを……」
「風真忍法帖に記されし奥義……。ツイ消し五芒星」
「ツイ消し五芒星……!?」
「チャキ丸が五人に分身したぞッ」
「かつて、しけむら縁起絵巻に描かれた神獣、誣憮邏を封印したとされる最強の封印術……。まさか、ここで使う気か?」
「やめておけ、チャキ丸」
「AZ殿ッ」
「しかし、戦えば戦うほど戦闘力が増していく鬼神に対抗するには、これしか……」
「封じ込めるのなら、いい道具がある」
「ちくわぶ……!?」
「ああ。ホロアース内において、強力な召喚獣をテイムするのに使うものだ」
「これをこうして、どっち童子に咬ませておけば……」
「もがが、もががががががががががががが」
「ちくわぶだぞ!?いずれ、喰われてしまうのでは……」
「問題ない。これは、500tを超える力でプレスしても潰れないように設計されている」
「ちくわぶとしては失格じゃね……?」
「それよりチャキ丸、その封印術はまだとっておけ。古参使徒と呼ばれる存在が、大阪湾から上陸した」
「なんとッ」
『ご報告!!ご報告!!』
「うわ!!なんだこの烏っ」
「声高ッ」
「ご報告烏……。ホロアースでの重要な情報をプレイヤーに伝えて回るNPCだ。ログインボーナスの受け取りも、この烏からと決まっている」
「耳、キーンなるで」
「他のアバターとか選べないんですか……?」
『古参使徒シン・フブラ、ドドドタウンの結界を突破した次第!!』
「京都へ進入したのか!?」
「チャキ丸、これをどう見る」
「風真隊は、御三家を守護することこそが使命……。そして、いずれもその本家は、ドドドタウンに位置している」
「急がねば、まずい」
「このまま、どっち童子も連れて行こう」
「もが!!」
『同刻 ギャングタウン』
「ズッ友条約改訂版の草案、作ってきましたよ」
「まっちゃんッ」
「松本です」
「スタバでキャラメル濃いやつ頼んで、二時間で仕上げました」
「そんなことは訊いてないけど……」
「ンナータ様が到着し次第、速やかに元帥との話し合いができる状況にしておきましょう」
「それが……。道中でなんやかんやあって、現状、滅流帝鬼救も大空警察もSSRBも、姫様の護衛につけていませんッ」
「なんやかんや……!?」
「いま、姫の周りには誰が」
「ナカタソと……。グレチャマですね」
「ぎりぎり、なんとかならなそうな面子だな……」
「SSSとの折衝は順調そうか……?松本ォ」
「黒上ッ」
「当然だよ。僕を誰だと思ってるんだ?」
「SSSと、レジスタンス……。どっちつかずな甘ちゃん野郎。どっち童子に斬られる日も、そう遠くはないだろうな」
「まつりすの巣には、いつでもSSSを揺さぶれる情報が眠っている」
「逆に言えば……。僕はレジスタンスにとっての地雷でもある。迎撃戦で壁を築き、KFPの到着まで時間を稼いだのも、誰だったかな?黒上」
「てめぇは、いちいち偉そうなのが鼻につくんだよ……」
「公式二重スパイなんて、いつ、どっちから捨て駒にされてもおかしくない不安定な立場さ」
「第二次ホロサマは恐らく、SSSとレジスタンスによる全面戦争になるだろうね……。加えて、カーミラに元帥、不確定要素が多過ぎる」
「で、お前は最後までシャトルランを繰り返す哀れな使いパシリだ」
「勘違いするなよ、黒上……。僕が真ん中に立つんじゃない。僕が立つ場所が、真ん中になるんだ」
「エデンの連中を、ホロサマに加勢させるつもりか?」
「もちろんだよ」
「改訂版のズッ友条約……。スーパーズッ友条約には、ホロサマを禁止する条文は組み込まれていない」
『そらトレインの時速……。400kmを突破しましたッ!!』