【】し ゃ ぶ し【】
「井の中の里って、てっきり、京都とか奈良とか、そこら辺にあるものだと思ってましたよ」
「その認識は、あながち間違いではございませんにぇ」
「そうなんですか?」
「古都、京都……。ドドドタウンと呼ばれる彼の地は、長らくこの国の政治的中枢を担ってきた」
「日本人の起源を辿っていけば、必ず行き着く心の故郷……。出身の遠近に関わらず、自然と原風景を想起するのもおかしくはないですにぇ」
「そういうものですか」
「巫女様、めっちゃ普通に喋るな……」
「語尾のせいで頭がバグりそうだ」
「そして、ドドドタウンにある電脳桜神社……。そこに御神体として祀ってあるもんざえもんの恥骨が、彼の完全憑依には必要なのです」
「何故、恥骨なんだ……?」
「指じゃなくていいんですか?二十本集めなくていいんですか?」
「死者が有していたBANオーラは、地脈を通ってこの国の地下深くを廻り続けている……。フォッサマグナ以西の地脈が全て集中する場所が、その電脳桜神社ですにぇ」
「じゃあ……。もしかして、そこでもんざえもんの降霊も行えるのでは?」
「それはできないのです。もんざえもんは坂東武者の系譜、東の要所である事務所地下の祭壇でしか儀式が完了しないのは、そういう由来があるのですよ」
「あーね……。アレか、地縛霊的な雰囲気のアレか」
「もんざえもんって意外と、ジモティーなんだな」
「ヤンキーって大体、地元大好きじゃん」
「そういう次元の話なのか……?」
「もんざえもんの恥骨の他にもう一つ、回収したいものがありますにぇ」
「それって?」
「風土記、日本書紀に並ぶ、大和の歴史が事細かに記された文献……。しけむら縁起絵巻」
『ギャングタウンよりすぐ西方の海域に、巨大な熱源を感知っ』
「なんだ!?」
「色々と、同時に起こり過ぎだろ……」
「目覚めたのだ……。シン・フブラが」
「あ、貴方はっ」
『神椿教団幹部 神崎』
「熊形県神椿市を本拠地とする、神椿教団の幹部……。何故、そんな人がここに」
「なんか、命に嫌われてそうなおっさんだな」
「私たち教団が掲げる教理、その核心は初見使徒を崇拝することにあります」
「信者たちは杞憂民と呼ばれ……。反対に、この星の導き手である初見使徒を滅しようとする貴女がたを、我々は背信者と呼んでいる」
「教団が目指す理想は、完全なる統一と融和……。その妨げとなる背信者の存在は由々しきものではありますが、私たちはあくまで、武力を有してはいない」
「統合思念体ぬんぬんの出現は、初見使徒の完成形だと期待しましたが……。それすらも、みなさんは打ち破ってしまった」
「結局、なにが言いたいんですか?」
「ぬんぬんを最後に途絶えていた、初見使徒による侵攻」
「あん肝と呼ばれる十三体目を除いて、貴女たちは完全に攻略してしまっている……。だが」
「メン限秘技が年単位で性能を向上させていくように、初見使徒もまた、生物としての進化をやめてはいないのですよ」
「まさかっ」
「大阪湾に現れた、シン・フブラって……」
「しけむら縁起絵巻に記された神獣、誣憮邏。恐らく、あの怪物がその正体でしょう」
「初見を超えた、その先にあるもの……。教団はその存在を、古参使徒と呼んでいる」
「なんだか、外が騒がしいようだが?」
「気のせいです、元帥、気のせいですからっ」
「みこだにぇー、会長の亡骸を乗っ取ったぬんぬん、そして召喚獣の出現……。巨大生物との戦闘を想定して、ブライトスーツを更に改良させてみました」
「BANオーラを出力させることで、空中での微細な体捌きを実現しているのか……」
「慣れるまでは、かなりの訓練が必要ですがね」
「このマイクは?」
「超広域高周波発生装置、KU100……。歌声をBANオーラの波動に変え、巨大な相手にも効果的に立ち回ることができます」
「それから、これが本題ですが……。シン・フブラのように、いつ何時、大怪獣バトルが勃発するか予想がつかない」
「故に、私たちは超法規的な遊撃部隊、hIPの創設を提言します」
「hIP?なんだそれは……。SSRBや、KFPともまた違うのか?」
「はい。最早、状況が混沌とし過ぎていて、背信者たちを同一の命令系統で纏めるのは不可能です」
「ですので、その場その場で戦えるメンバーを掻き集め、即座に作戦行動へ移行させる……。その為の特殊部隊が、hIP」
「自分の身は、自分で護れってことか」
「最悪の場合、もう……。地球脱出だよねェ!?」
「連邦政府からの使節団?」
「はい……。恐らく、地球サイドの思惑通りにズッ友条約を結ばせない為、あちらも手を打ってきたものと思われます」
「あのジジィ、座長の芸で爆笑してた割に、結構切れ者だな……」
『ご報告!!ご報告!!地球人類の調査、完了した次第!!』
「吾輩の使者たちによって纏められた報告書、デャマレ勧告……。この内容如何によって、お前たち人類がエデンの民にとって有益な存在か否か、判断させて貰う」