この連載には、暴力的、性的な表現が含まれています
「お前ら、【弾劾魔女裁判】はまだ終わってないぞ」
【多次元移動教室】にて、帝の世界観説明は続く。
「つまり、この教室(?)で各地を移動しながら、散り散りになったガタコーの生徒を集めようと」
操がちゃんと、前回の粗筋を拾う。
「この教室が、私たちの生活の拠点になるってこと?」
断絶した異空間に取り残された教室を見渡しながら、不安げな薺。
「それなりに準備はしてある。まずは、【一騎当千放送室】。校内の機能を充実させたいんだが、空き教室がここしかなかったから、取り敢えず全ての機能を【多次元移動教室】に集約させることにした」
「当然の如く、特殊能力を使いこなしてやがる……」
篝の牽制ももっともで、帝は明らかに、先代の支配人……。
モョエモンが用意したこの世界、【異世界夭逝】の基本スペックを超越した仕様の数々を、独断と偏見で導入しまくっているのだ。
「外の世界で、色々とあったんでな。細かいことは突っ込むな」
「でも、まあ、あれだろ?この教室を皮切りに、この世界に俺たちの学校を作っちゃおうぜ、って、そういうことなんだろ?」
意外と察しのいい錦が、意外にも冷静な指摘をする。
「その通り。俺は、この幻想な世界のお約束なんぞに付き合ってやる気は、さらさらない。貴重な高校時代の青春や、教育を受ける機会を棒に振るつもりも、さらさらない。だから、まずは【一騎当千放送室】の能力で、各地に散らばったガタコー、二年の連中、全員の居場所を把握してある」
「僕たちを含めて、七十二人……。結構、大変な作業になるね」
操は明晰な頭脳を働かせながら、この教室に全員は入らないのでは?
という、素朴な疑問を抱く。
「いや、全員を回収するつもりは、ない」
「は?」
「俺が提示する標語……。【下克上の掟】に賛同できる素養がある奴だけ、俺たちは回収して回るんだ」
四人の脳内に、当然な疑問符が浮かぶ。
「いいか?責任感がある奴や、その気になれば一人で世界を救えちゃう奴とか、そういう奴らに、俺は興味がないんだ。屑で、雑魚で、どうしようもない。だが、つまらねえ夜は一日だって過ごしたくない。そういう傲慢な馬鹿どもを集めて、どんちゃん騒ぎで【大災害の夜】を迎える。それが俺たち、【末子的生存本能】を共有した、【倫理委員会】の本懐だ」
最初から、世界の滅亡を回避しようなんてつもりは、
帝には、ない。
なぜなら、いくら滅亡を回避しても、
いつか、誰しもが死を迎えるのだから。
「だったら、楽しい方がいいだろ?それに、天岩戸作戦だよ。乗りが悪い連中には、俺たち陽キャの雑な上機嫌を見せつけて、無理矢理にでも笑ってもらう。笑われるんじゃない、笑わせるんだ。人間、笑うか死ぬかしか選択肢がなくなったら、笑うしかねえんだ。もう俺は誰かを救うことを、躊躇したりしない」
もう、薺も錦も操も篝も、それなりの修羅場を潜っている。
「要するに、つまらない自意識は外して本気でやれよ、ってことね?」
薺が、帝の意図を酌む。
「そうだ。そして、A組、C組、D組、E組、それぞれのクラスの末っ子たちとの連絡には、この【一騎当千放送室】を使う。で、衣食住をどうやって賄うかだが……。それを補うのが、【脳汁全開購買部】と、【萌芽黎明保健室】だ」
「マジかよ。毎日、保健室のベッド寝られるとか最高じゃん」
篝は既に腰かけて、ぎしぎしベッドを軋ませている。
「これは、夜這いし放題……。ってこと!?」
「死ね」
「そして、ここで食糧品を賄う訳か」
【倫理委員会】の頭脳、操は大体、話を要約してくれる。
「それから、【合縁奇縁洗面所】。人間は畢竟、食って、糞して、寝てたら、死ぬ」
「トイレあって、よかった〜。野糞回避」
「いくらなんでも、機能集約させすぎでしょ……」
「更に、お前らには【倫理委員会】の一員として、制服を身に纏ってもらう」
個性を殺す為、ではなく、
己が社会の一員である自覚を促し、個性を爆発させるまでの手助けをする為の、
制服。
「それが、【童貞を護るパーカー】」
「基本的にちょっとふざけてるのは、なんなの?」
「篝。もう、諦めよう……。僕たちは、逆らえない流れに乗せられてしまったらしい」
「更に更に、この幻想世界を生き抜く為に、それなりな武器は必須だろ?そこで俺は用意しました、【超絶怒張金属棒】」
要するに、ただの金属バット。
「パーカーに金属バットで教室に屯するとか……。ただの半グレ暴徒集団じゃねえか!!」
「非行がますます、若年層に……。委員長として見過ごせないわね」
「おお、結構、着心地いいじゃん」
「もう、なんだかこの乗りにも慣れてきたぞ」
「そしてみなさん、お気づきでしょうが、【多次元移動教室】では常に、陽気なBGMが流れております」
現実が糞ゲーである、深刻な一つの要因。
それは、フィールド移動中に、壮大なBGMが流れたりしない点である。
「かっけえ〜!!」
「やたら重低音でテンポが速いのは、なぜ」
「う……。半殺しにしたダンス教室のババアの顔が、なぜか浮かんでくるっ」
「いや、普通に我々、半グレ暴徒集団なのでは?」
「反骨と流行の二刀流で夜を切り拓くのが、俺たち【倫理委員会】の流儀だ。そして、この曲名も既に決めてある」
それが、
「それこそが、【効果覿面腹上死】」
「「「「【効果覿面腹上死】っ」」」」
人間、本当に追い込まれたら、踊り狂うしかなくなる。
逆に言えば、馬鹿みたいに踊り狂えば、乗り越えられない難局はない。
「親が死のうが、隕石が降ろうが、誰と誰が結婚しようが、心のBPMはいつだって、ぶち上げていかないとな。俺たち【倫理委員会】に、チルい音楽は似合わないんだぜ」
ちなみに、
【異世界夭逝】の【非公認二次創作】は、常識の範疇でなら、いくらでも作ってもらって結構ですよ。
帝たちの容姿を考えたり、【効果覿面腹上死】を楽曲化したり、
才能の無駄遣いって、最高に贅沢な娯楽だと思うんだ。
「俺たちはこれから、都の【伏魔の神殿】を拠点にしている、A組の連中に会いにいく。だが、油断するなよ?奴らが、俺たち、【倫理委員会】の【下克上の掟】に賛同してくれるとは、必ずしも言い切れないからな」
【末子的生存本能】を貫く為の絶対事項、【下克上の掟】。
それを構成するのは、
一つ、【逝く時は一緒】。
一つ、【偉い人には逆らわない】。
一つ、【健康第一】。
一つ、【空気を読め】。
一つ、【空気を読み切れ】。
一つ、【空気を変えろ】。
そして、
「一つ、【俺たちは悪くない】」
理詰めでいこう。
理屈で説明できないことは、誰も理解できないからね。
「誰かのせいにしないと、誰かのせいにしてもらえないんだ」
伏線回収の、その先へ。




