駆けろ
「ふー、ふー」
老人は、ハンドルを握りながらひどく、興奮状態だった。
路上には、餓鬼だった肉塊が三つ、転がっている。
「違う……。違うんだ」
「どしたん。なにが違うの」
「えっ」
今回、俺が試す【本懐】は〜?
そうです、【黒幕】です。
突如、助手席に現れた俺に、老人はひどく怯えている。
「な、なんだっ」
「そんなに、興奮しないでください。お体に障りますよ?」
ご自愛ください。
よし、
俺も少しずつ、目上の人への接し方を覚えてきたぞ。
「まあ、お茶でも呑みながらゆっくり、喋りましょうよ」
騒然とした観客たちを無視して、帝は老人を連れ出してガソリンスタンドへと向かう。
「ずっと、気になってたことがあるんですけど」
「な、なんなんだね、君はっ」
「人って、ガソリンで動くもんなんかね?」
「おごっ」
老人の皺くちゃな体に、栄養満点、愛情の籠ったジュースがどくどくと注がれていく。
ん〜。
長生きしてね、お爺ちゃん。
それから、帝は【黒幕】の力で老人を四つん這いにさせ、その上にどっかと腰をおろした。
「よし。進め〜!」
老人の後頭部をぱしぱしと叩きながら、もはやその四肢は本人の意思を受けつけない。
「ほらほら、元気よくいこうよ。嘶こうぜ。もっと、爺ピョイしていこうぜ!?」
「ひひ〜ん」
鳴き声も全て、【黒幕】で設定済みである。
それから、
帝を乗せた老人は、国道へと発進する。
「お爺ちゃん、法定速度は守ろうね〜。もっと速く、速くっ」
「ひ、ひひ〜ん」
「おお!いいぞいいぞ、俺、腹減ったからさ、あそこのモ○バーガーまで連れていってくれよ〜」
それから、
老人カーはあえなくダンプに撥ねられ、使い物にならなくなってしまった。
廃車である。
「最悪、なんですけど……」
保険、入っとけばよかった。
ちなみに、帝は【臨界】で回避したので無傷である。
司。
俺もようやく、この世界と関わる為の免許を手に入れたよ。
いつか、お前を助手席に乗せてあげるね。
この、【黒幕】で。




